巡視船しきしま船長の死に戻り   作:スカツド

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第1話 瀬戸船長の憂鬱

中央暦1642年6月30日 グラ・バルカス帝国 レイフォル地区

 

 海上保安庁巡視船しきしまの船長、瀬戸衛の生命は今や風前の灯火だった。

 壁際に立たされたうえ目隠しまでされるとこの先に何が起こるかは容易に想像が付いてしまう。戦争映画とかで良く見かける銃殺刑って奴だ。

 タバコでも咥えさせてくれたら絵になったのになあ。目隠しは断れば格好良かったかも知れんぞ。死ぬ前に何かコメントとか求められたらどうしよう? いろんな考えが次々と脳裏に浮かんでは消えて行く。

 

「捕虜たちよ。今からおまえたちの処刑を行うが最後のチャンスをやろう。先ほど聞かれた事柄について何か話す気があれば申し出るがよい」

 

 グラ・バルカスの外交官シエリアとかいう女の声が聞こえて来た。目隠しで顔は見えないが例に寄って酷い厚化粧をしているんだろうなあ。瀬戸は心の中で嘲り笑うが決して顔には出さない。

 

「もういないのか? これから殺されちゃうんだぞ? いくつか簡単な質問に答えるだけの簡単なお仕事だ? こんなチャンスは二度とないぞ?」

 

 今になって急に話すっていったらあのケバいオバちゃんはどんな顔をするんだろうか。想像した瀬戸は吹き出しそうになったが空気を読んで我慢した。

 

「そうですか…… ならしょ~がないですねぇ~」

「ふっ…… 今日は死ぬにはもってこいの日だ……」

 

 瀬戸は小さく呟くと不敵な笑みを浮かべる。

 

「構え~っ! 撃てぇ~っ!」

 

 シエリアの絶叫と同時に轟音が響いた瞬間、瀬戸の意識は唐突に途切れた。

 

 

 

 

 

「うわらば!?」

 

 瀬戸が目を開けると蛍光灯や火災報知器、パンカールーバー、エトセトラエトセトラ…… 雑多な物が目に飛び込んで来た。

 

「知らない天井だ…… って! いやいやいや、これって巡視船しきしまの船長室じゃんかよ。ここって死後の世界なのかしらん?」

 

 瀬戸はベッドから体を起こして周りを見やる。毎日使っているふかふかのベッドは普段と全く変わりない寝心地だ。

確かグレードアトラスターとかいう戦艦大和モドキに沈められたのが四月二十五日だったから二ヶ月ぶりの懐かしいベッドの感触に瀬戸は……

 

「って、いやいやいや! しきしまは沈んだんだよぉ~~~!」

 

瀬戸は自分で自分に激しい乗り突っ込みを入れた。

絶叫は部屋の外にまで聞こえていたらしい。ドアが四回ノックされ、ちょっと心配そうな声が聞こえて来る。

 

「船長、どうかされましたか? しきしまは沈んではおりませんが?」

「ああ、何でもない。ひとりごとだよ、ひとりごと。マジレス禁止」

 

 足音が去るのを確認した瀬戸はベッドサイドのデスクに置かれたカレンダー付き時計に目を向ける。

 

「三月一日ですと?! 確か日本を出港したのが四月十日だったっけ? んで、沈んだのが四月二十五日だったような。これってもしかするともしかして…… 死に戻り!」

 

 普通なら夢かと疑う場面だろう。だが瀬戸にとっては大和モドキに沈められてから二ヶ月間の記憶は余りにもリアル過ぎる。あれが夢だったと考えるくらいなら今の方がよっぽど夢っぽい。そもそも異世界転移の時点で常識なんて通じない世界に来ているんだし。

 

 とにもかくにも現状を把握せねばならん。これが死に戻りだとすると何もせずに手をこまぬいて…… こまねいて?

 どっちだ? どっちが正しいんだ。確か戦前の国語辞典で『こまねく』を載せているのは非常に少なかったんだそうな。だとすると伝統的な用法は『こまぬく』で決まりだな。

 

 それはそうと取り敢えず初回は様子見してみるか? おそらく死に戻りに回数制限はないだろう。だとするとランダムな要素がどれくらあるのかを見極める所から入って見るのが吉かも知れん。

 瀬戸船長は身だしなみを整えると船長室を後にした。

 

 

 

 石橋を叩いて渡る慎重派の瀬戸船長は詳細な記録を取りながら死に戻りを五回繰り返す。

 その結果、分かったことはランダム要素は発生しないということだった。こちらが積極的に流れを変えない限りイベントは決まって発生し、その時刻には秒単位のズレすらない。

 とは言え、捕虜になった後には楽しい事など何一つとして起こらない。なので二周目からはスルーを決め込む。船が沈んだらさっさと自決してループを強制終了させ、とっとと次の周回に進むのだ。なぜならば最終的な目標は撃沈を回避することなんだもん。撃沈された後のルートに進む気なんてこれっぽっちも無いんだからしょうがない。

 

 

 

七周目 中央暦1642年4月22日 神聖ミリシアル帝国 港街カルトアルパス

 

 そろそろ下調べは十分だろうか。ここに至って瀬戸船長は初めて積極的な行動に出た。先進十一ヵ国会議に紛れ込む事にしたのだ。

 

 会議が始まって暫くするとエモールの竜人が占いの結果を発表する。いつもに…… いつにも増してケバい化粧のシエリアおばちゃんがバカ笑いして会議が紛糾した。

 

「グラ・バルカス帝国、帝王グラルークス様の御名において宣言する。我らに従い我らと同化せよ。抵抗は無意味だ。従わぬ者には容赦せぬ。沈黙は反抗とみなす!」

 

 シエリアが絶叫するように金切り声を上げる。

 一瞬の沈黙を破って瀬戸が不規則発言をした。

 

「いま『従わぬ者には容赦せぬ』と言いましたね? 我が国は貴国に服従する気は毛頭ありません。すると貴国は我が国に容赦しないということになる。今の言葉は宣戦布告と受け取って宜しいか?」

「如何にも。そう受け取ってもらって結構だ」

 

 ドヤ顔のシエリアが顎をしゃくる。

 取り敢えず言質を取ったどぉ~! 瀬戸は心の中で絶叫した。

 

 外務省の近藤と部下の井上が呆れた顔で振り返る。

 

「瀬戸船長。いったい何でこんな所にいるんですか? それに勝手に発言しちゃいけませんよ」

「ですけど今、連中がはっきり言いましたよね? 日本に宣戦布告するって」

「そ、そうですね。大至急、本国に報告しなきゃなりませんよ。船長もすぐ船に戻って不測の事態に備えて下さいな」

「了解しました。グラ・バルカスからの宣戦布告の件、間違いなく伝えて下さいよ」

 

 

 

 巡視船しきしまに戻った瀬戸船長は丸二日間を掛けてフォーク海峡の出口付近を徹底的に調べさせた。

 港町カルトアルパスが位置するのはミリシアルの最南部だ。街の東と西からは南に向かって長さ六十キロもの半島が伸びている。その出口は幅十四キロといったところだろうか。

 しきしまには二機のヘリや二隻の警備艇が搭載されていた。これらを使って両岸の地形や水深を微に入り細にわたってとことんまで嗅ぎ回らせたのだ。

 

 グラ・バルカスが会議で全世界に宣戦布告したのが四月二十二日。

 ミリシアルの第零式魔導艦隊が一方的にボコられたのが四月二十三日。

 四月二十四日は特にこれといった事は無かった。

 

 

 

 そして運命の四月二十五日。例に寄って瀬戸船長は議場の隅っこに潜り込んで聞き耳を立てていた。

 先進十一ヶ国会議の冒頭でミリシアルは魔導艦隊がボコられた事を発表する。

 だが、会議の開催地をカン・ブラウンに移したいと言った途端に各国代表が猛反対を始めた。この場に留まって迎え撃とうと言うのだ。

 集団での意思決定は責任感が分散されるので危険性の高い選択肢を選びやすくなるらしい。この現象をリスキーシフトというそうな。

 

 

 

 瀬戸船長の持つ前回までのループ記憶によればこの後、船で四時間以上も無為な待機を強いられるはずだ。そして散々待たされた挙げ句に本国から届いた指示は退避命令だ。だが、ほぼ同時にグラ・バルカス艦隊がカルトアルパスの南百五十キロを北上中との報告が入って来る。

 海峡の奥行きは六十キロくらいだ。ってことは海峡入口から九十キロ南にいるんだろう。

 

 二十五ノットのしきしまが六十キロ南に進んで海峡を抜けるのに必要な時間は七十八分。その間に二十七ノットの大和モドキは六十五キロほど進める。ということは海峡の二十五キロ南までしか来れない。

 四十六センチ砲の射程は四十二キロもあるから射程内ではある。けれども煙幕を張りながら逃げに徹すれば逃げれんこともないかも知れん。

 まあ、今回は捨て回だ。適当にやってみよう。

 

「大使を船から放り出せ。緊急発進するぞ。急げ急げ急げ!」

「他国の艦隊とは行動を共にされないのですか?」

「そんなの知ったことか!」

 

 

 

「日本国、巡視船出港! 日本の船はなんであんなに急いでいるんだろうな?」

 

 港湾管理者ブロンズは唖然とした顔で見送る事しかできなかった。

 

 

 

 しきしまは海峡入口を目指して二十五ノットで南下する。暫く進んだ所で魔信から声が聞こえて来た。

 

「グラ・バルカスと思しき飛行機械が南西よりカルトアルパスに接近中。距離七十海里、数およそ二百!」

「二、二百だと!」

 

 ここまでは瀬戸船長の記憶と寸分違わぬほど一致している。問題は一隻だけで先行した影響がどれくらい出るのか出ないのか。そこが問題だ。

 とは言え、所詮は捨て回。データさえ取れればどうでも良いんだけれど。

 

「西方向、低空より敵機接近。数…… 二十四!』

 

 しきしまに搭載されたOPS-14レーダーもグラ・バルカス機の姿を捉える。

 海峡の西に伸びる半島の尾根を掠める様に越えて現れたのは…… 全て雷撃機らしい。

 まあ、こっちには直援機なんて一機もいない。だから護衛戦闘機なんて全く持って必要ないんだからしょうがない。

 

「って言うか、しきしまだけに二十四機も向かってくるですと? 今までと違うパターンやないかい!」

「船長、餅付いて下さいな。慌てたって何にもならないですよ」

「そ、それもそうだな。捨て回、捨て回。気楽に行こうや。それにしても奴らの雷撃機は九七式艦上攻撃機にくりそつ(死語)だよな。だとすると搭載している魚雷も九一式航空魚雷にくりそつ(死語)なんだろう。だとすれば射程は二千メートルしかない。もしかすると千五百メートルに減らされた改良型かも知れんしな。なんでそんなに短いかっていうと旧日本海軍では千メートルくらいまで近付いてから魚雷を投下していたんだとさ」

 

 ドヤ顔を浮かべた瀬戸船長は顎をしゃくる。だが、副長は人を小馬鹿にした様な薄ら笑いを浮べると鼻を鳴らした。

 

「ふ、ふぅ~ん。船長って顔に似合わず意外と物知りなんですねえ。ちなみに三十五ミリ機関砲の有効射程は三千五百メートルでしたっけ。雷撃機が時速三百六十キロだと仮定すれば秒速百メートルだから…… 二十五秒も射撃時間がとれますよ。二基四門で九百発は撃てますね」

「って言うか、即応弾が一門当たり二百八十発しかないんだもん。どのみちそれ以上は無理だな。あとはJM61二十ミリ機関砲の有効射程が千五百メートルくらいあったっけ。もし肉薄されたら五秒くらい射撃時間が取れるので四十発くらいは撃てるな。一機か二機くらいなら落とせるかもしれんぞ」

「敵が雷撃コースに入ったら艦首を四十五度くらいに向けましょう。そうすればJM61が二門とも使えるからちょっとだけお得ですよ」

 

 雷撃機は高度数十メートルまで緩降下するとまっすぐに向かって来る。あいつらは対空砲火とか怖くないんだろうか。まあ、怖くても我慢するしかないんだろうけれど。

 ちなみに雷撃隊の損耗率は非常に高い。とてつもなく高い。第二次大戦初期で三~五割。末期の昼間攻撃だと九~十割にも達したそうな。

 搭乗員だって死にたくはないわけで機体を左右に横滑りさせて回避行動を取ったらしい。弾が三千五百メートル先まで届くのに三秒くらいは掛かる。だからこれはかなり有効な作戦だ。とは言え、重さ八百五十キロもある航空魚雷を抱えているのでそれほど機敏には動けない。それに上下方向に動くのは非常に難しい。なので迎撃する側としては左右に適当に弾をバラ巻くだけで済むだけの事だ。

 

「敵は十二機ずつの二波に分けて攻撃する気らしいですね。間もなく三千五百メートルに入ります。うちぃ~かた…… 始め!」

 

 第二次大戦中にドイツが使用していた三十ミリMK108機関砲は一発で戦闘機を撃墜できたそうな。日本陸軍のホ二〇三という三十七ミリ機関砲に至っては一撃で四発重爆撃機を撃墜できたらしい。

 三十五ミリ弾の破壊力もそれらに負けないくらい強烈だ。四門あわせて毎秒三十七発ほど発射される弾丸は両端から雷撃機をバタバタと落として行く。事が終わるまで五秒と掛からなかった。

 

「ぜ、全滅? 十二機の雷撃機が全滅? 五秒もたたずにか?」

「余裕でしたね。もしかして二十四機が一度に来てても何とかなったんじゃないですかね」

「それくらいなら何とかなったかも知れんな。ただ、敵の航空戦力はトータルで二百六十機くらいだったはずだ。そんな数の雷撃機と急降下爆撃機が一遍に来たらアウトだぞ」

「三分の一くらいは戦闘機なんじゃないですか? まあ、雷撃機と急降下爆撃機が八十機ずつやって来たら詰みますけどね。アッ~! 残った連中も来ましたよ…… はい、終了」

 

 低速で雷撃コースを直進する九七式艦攻モドキは動く標的以外の何物でも無い。敵とは言え、ちょっと憐れみすら感じてしまうほどだ。

 

 雷撃機を片付けた巡視船しきしまはフォーク海峡出口の東側に移動すると隠れて待機する。

 待つこと暫し、こっそり先行させていた警備艇から無線で報告が入って来た。大和モドキが海峡に近付いて来るのが見えたんだそうな。大慌てで警備艇を回収すると大和モドキに向かって二十五ノットで突撃する。距離は約七キロだ。

 大和モドキは正面のミリシアルやムーの艦隊と盛んに砲撃戦を行っている。当然と言えば当然だが圧倒的に優勢らしい。だが、そちらに気を取られていたせいだろうか。しきしまの接近に気付くのが少しだけ遅れたようだ。

 距離は約六キロ。向こうも慌てているのだろう。盛んに副砲や高角砲を撃って来るが照準が甘い。

 

「撃ち返せ! 敵の進行方向に頭を向けろ。艦尾の三十五ミリも使える様にするんだ」

「了解!」

 

 流石に六キロも離れていると三十五ミリの散布界はかなり広がっている。だが、三千五百メートル離れた戦闘機を狙える代物だ。六キロ離れても大和モドキの何処かしらには確実に当たっているらしい。毎秒三十七発ものペースで三十五ミリ弾が当たると流石の巨大戦艦にも地味に被害が蓄積しているはずだ。

 厚さ二十五ミリの装甲しか施されていない副砲、爆風を避けるための薄っぺらい装甲しかない高角砲、レーダー、測距儀、エトセトラエトセトラ……

 だが、千百二十発しかない即応弾は僅か三十秒で撃ち尽くされる。大和モドキは後方の第三主砲をこちらに指向して来た。

 

「面舵!」

「おも~か~じ!」

「戻せ!」

「もど~せ~!」

 

 直後に大和モドキの主砲が火を吹いた。

 

「取り舵!」

「とり~か~じ!」

「当舵!」

「取舵に当て」

 

 四十六センチ砲の初速は七百八十メートル。弾着までは七秒ほどだろうか。飛んで来る砲弾が肉眼で視認出来るほど大きい。

 だが、しきしまの幅は真正面から見ればたったの十七メートルしかない。しかも大和モドキは秒速十四メートルで疾走しているのだ。

 この距離での四十六センチ砲の散布界はどれくらいなんだろうか。正確な数値は知らないが照準が正確ならば正確なほど回避運動を行っている目標にそうそう当たるはずがない。直後に船の真横を重さ一トン半の金属塊が音速の二倍以上で飛んで行った。

 

「撃って撃って撃ちまくれぇ~っ!」

 

 まるで絶叫するかの様に瀬戸船長は指示を出す。給弾を終えた三十五ミリ砲が猛然と射撃を再開した。二基四門合わせて毎秒三十七発のペースで砲弾を撃ち放つ。この距離での散布界はどれくらいなんだろう。運良く四十六センチ砲の砲口にでも飛び込んでくれれば目っけ物だ。

 

 瀬戸は双眼鏡で大和モドキの第三砲塔を注視する。砲身が僅かに動いた。

 

「取り舵!」

「とり~か~じ!」

「戻せ!」

「もど~せ~!」

 

 直後に大和モドキの主砲が火を吹く。

 

「面舵!」

「おも~か~じ!」

「当舵!」

「面舵に当て」

 

 すでに大和モドキまでの距離は四キロを切っている。弾着まで五秒と掛からない。さっきよりも飛んで来る砲弾が大きく見えるのは気のせいではないだろう。

 激しい振動と同時に鼓膜が破れるかと思うほどの金属音が狭いブリッジに響いた。

 

「今のは危なかったですね。一発掠りましたよ」

「せ、正確な射撃だ。それゆえコンピューターには予想しやすい」

「そうなんですか?」

「マジレス禁止! とにもかくにももうちょいの辛抱だぞ。懐にさえ飛び込んじまえばこっちのものだからな。みんな頑張れ!」

 

 飛び込んだからといってどうなるわけでもない。どうせ今回は捨て回だし。そんな本音を瀬戸はおくびにも出さない。

 第三射を紙一重で躱すと距離は三キロを切っていた。流石に大和モドキも本気でこっちに気を取られているらしい。そのせいでミリシアル艦隊に対する警戒が疎かになってしまう。

 その時、歴史が動いた!

 

 神聖ミリシアル帝国の巡洋魔導艦隊、旗艦アルミスの放った魔導砲弾は十キロほどの距離を飛翔した後、グレードアトラスターの前部艦橋防空指揮所に命中した。

 砲弾は防空指揮所甲板、第一艦橋、作戦室甲板を貫通して爆発する。破片を撒き散らし爆炎が第一艦橋へと吹き込む。防空指揮所にいた艦長ラクスタル、高射長、測的長、外交官シエリアら十数名が即死した。

 作戦室では軍医や参謀ら数名が即死、十数名が負傷。第一艦橋の航海長ら数十名が即死、負傷者多数。副長が指揮を継承し、通信長が航海長を代行することになった。なったのだが…… そのための僅か数分間が致命傷となった。

 

 しきしまは主砲の最短射程内に入り込むと未だに息のある高角砲に三十五ミリ弾を叩き込む。弾倉を交換すると今度は四十六センチ砲の砲身の付け根付近をピンポイントに射撃して無力化を図る。ほとんど効果は無いがJM61二十ミリ機関砲も非バイタルパートをチクチクと攻撃した。

 大和モドキの前方にある第一、第二砲塔は未だに射撃を続けている。だが、幹部要員をごっそり殺られたうえ、レーダーや十五メートル測距儀を失った事が響いているんだろうか。射撃精度は大幅に低下しているようだ。

 一方で距離が詰まったこともあり、ミリシアルやムーの砲弾はガンガン命中している。相変わらずバイタルパートにはこれっぽっちも効いていない。だが、非バイタルパートには凄まじい被害が出ているらしい。沈む気配は全く無いが、見るからに艦首が下がっているようだ。

 

「勝ったな!」

「やりましたね、船長!」

 

 固い握手を交わす瀬戸船長と副長。だが、そのときふしぎなことがおこった!

 

「左舷に雷跡!」

 

 瀬戸船長が慌てて振り向くと遠くの海上に浮かぶ三隻の駆逐艦が目に入った。

 直後に巡視船しきしまは真っ二つになって沈む。

 瀬戸船長は死んだ。

 

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