笑わない提督   作:オマエモ

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艦娘の前で全く笑わない提督。そのルーツとは?


笑わない提督

かつてはこの私も可愛い艦娘に囲まれたハーレム鎮守府なるものに憧れた。

 

 

そう憧れただけだ。

 

鎮守府の運用が上手く、戦果を上げている提督は艦娘や妖精さんから非常にモテるというプロパガンダを素直に受け取っていた若い頃の話だ。

 

 

地元の学校で高等教育を終了した私はこの「提督」という職業に憧れて海軍の養成施設に入り、1年程の訓練過程を終えて軍人となった。

一応大本営所属の末端軍人として各地の鎮守府と大本営を行ったり来たりして地道に働いて7年、各地の鎮守府とも顔見知りができた。

そこで見せつけられたのは国を護る誇り高き艦娘たちと提督たち現場軍人。

 

海域開放に向け艦娘たちと力を合わせて努力する提督たちの姿は男である私から見ても格好良いものだったのだ。

激しい戦闘で見るに耐えない傷を負った艦娘を見て自ら海の上に立てない自分に憤ったりした。

 

ハーレムなんて言葉はその辺りで私の頭からはなくなっていた。

まぁ、提督と艦娘たちの絆や信頼の強さからいうとあながち間違いではないかも知れないが。

 

 

 

ある日、私が大本営で新たな海域開放へ向けての各鎮守府の動向をまとめているとき、上司である波羅田元帥から呼び出しを受けた。

元帥の執務室に通され、元帥の秘書艦である鳳翔さんから茶を貰い一服した後、元帥が言った。

 

「斧田くん、君、来月から提督やってよ」

 

 

 

なんでも戦力増強の為に鎮守府を新しくいくつか建てるらしく、そこの一つに私が提督として抜擢されたらしい、少佐の階級を与えられた。

かつてこの職業に進んだ動機は恥ずかしいものだった。

だがこの時は軍人として現場で艦娘たちと協力してこの国を護れるのだとアツく、嬉しい気持ちでいっぱいだった。

 

 

 

 

そして提督としての第一歩、時瑛古布(じぇいこぶ)鎮守府へ着任日のことである。

黒塗りの車から降りた私は鎮守府の門を見上げた。

 

「ここが私の新たなる職場、じぇいこぶ鎮守府か…胸がアツくなるな…!」

 

 

思わず新米の頃、横須賀鎮守府で面倒を見てもらった某戦艦のような口調で独り言を呟いてしまった。

 

 

「お待ちしておりました。斧田…、斧田提督ですね。」

 

「!、はい!新しく提督着任の辞令を受け、参りました、斧田誠一郎です」

 

「自分はじぇいこぶ鎮守府担当の憲兵、絵口信二であります。」

 

 

門前へやってきた憲兵に声をかけられハッとした私が返事をして互いに自己紹介した。

絵口さんは高い身長に整った顔をしたイケメンだった。

ちなみに私は身長は低く割と不細工な造りの顔だったので素直に羨ましく思った。

 

 

「絵口さん、と呼ばせて頂きますね、これから国の為尽力していく所存です。一緒に協力して頑張っていきましょう」

 

そう言ってよろしくと手を差し出した私を絵口さんは軽く睨んだ様子で言った。

 

「分かっているとは思うが、国から賜りし艦娘への不当な扱いを確認した場合は容赦なくしょっぴく」

 

「……」

 

 

提督にもあまり良くない噂を聞く者がたびたびでるらしい。艦娘を不当に扱う提督は信頼を結べず戦果が乏しくなるという。そんな提督を取り締まるのが彼ら憲兵の仕事だ。

戦力と軍の風紀を維持する為に彼ら憲兵がいる。

着任初日からその憲兵に睨みを利かされた私は、仕事に忠実な絵口さんに好感を覚えた。

イケメンのメンチはそこそこ怖かったが。

 

「…心得てます。……では」

 

切り上げて門をくぐり、正面玄関へと進む。後ろに絵口さんのアツい視線を感じながら。

玄関口には駆逐艦の娘が立っていた。こちらに気づき敬礼をして迎えてくれた。

 

「は、はじめまして司令官、特Ⅲ型駆逐艦の電なのです。」

 

私の初期艦はこの娘らしい。目の前の艦娘こそ見た目は可愛いらしいが軍艦の力を秘めた存在なのだ。

先人たちの時代に国を護り、この時代も国を護る為に顕現した敬意を払うべき守護神だ。

 

 

…そう、敬意とか畏怖とかそういう神聖なものなのだ!

なのに…これは…この感情は…

 

カワイイッ!!

 

他の鎮守府で見かけたことはあるが今ほど胸がアツくなったことはなかった。

誰かに伝えて回りたい!この気持ち!

皆さん、ウチの娘が、可愛いんですよ!!

 

ある鎮守府の提督が言っていた、自分の部下だと認識すると愛しさや大事にしようって気持ちが強くなる、と。

 

こんなに愛しい存在に不当な扱いをするような提督がいるなんて考えられないよ。、と。

 

提督と部下の艦娘は特殊な絆や信頼で結ばれ強くなっていく。

もしかしたら、今この瞬間、私と目の前の電との間で絆や信頼が構築されているのかも知れない。

 

目の前の電はどうやら緊張しているらしい。少し震えている。早くできるだけニッコリ返事を返して緊張を解いてもらおう。

 

 

「じぇいこぶ鎮守府に提督として着任した、斧田だ。よろしくな、電」ーーーーニチャア(会心の笑み)

 

 

 

「ーーーーッヒィ!」(膝から崩れ落ちる電)

 

 

 

「っ!ーーーー検挙-っ!」(仕事にアツき絵口)

 

 

 

 

 

 

 

 

この日を境に私は艦娘の前で笑顔になるのをやめた。

 

 

 

 




二次小説は割と読みますが作るのははじめてでした。誰かの暇潰しになれば幸いです。
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