笑わない提督   作:オマエモ

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艦娘の前で全く笑わない提督。

今回の時系列は青葉取材回の前の時期です。




笑わない提督8

あれは季節が夏になった頃。

大本営から満を持してのある大きな作戦が発表された。

北方のアリューシャン方面、ハワイ北西のミッドウェー方面の二方面同時に大規模な敵艦隊群の出現を確認、その二方面を同時に叩く、というその大胆な作戦はAL/MI作戦と名付けられほとんどの歴戦の鎮守府が参加し、各方面へと進出していた。

 

 

そんな中、我がじぇいこぶ鎮守府は作戦に参加できるほどの錬度に達していないとの評価により、日本近海の哨戒を命ぜられた。

 

「今頃、長門さんたちはアリューシャンですか」

 

哨戒任務の報告書を受け取りにきた大淀さんが呟いた。

 

「ちょっと羨ましいですね、名誉ある大作戦に参加できるようにこの鎮守府も盛り上げていかないと」

 

あ、私はここの艦娘じゃないんでした。と大淀さんは続けた。

最近、大淀さんは「あ、ここの艦娘じゃなかった」と言うことが多い気がする。これは暗にウチのような弱小鎮守府の担当が恥ずかしい、私はお前たちとは違う、ということなのだろうか。

この鎮守府がそこそこサマになってきている要因の一つは大淀さんがいてくれたからだと思っている。

大淀さんもこの鎮守府の仲間だと私が勝手に思っていただけだったのだろうかと思うとすごく寂しくなった。

いや、こんな感情すら大淀さんには迷惑かもしれない。

私は悟られないように顔を引き締めて返事をした。

 

「確かに、だが、この国の主力が出払っている今、国民の安全を保障するべくなおさら近海のパトロールは重要な任務だと思っている」

 

「……さすがです。提督」

 

その時突然に哨戒に出ていた巡回中の利根から無線が入った。

 

「提督!!敵艦の群れが接近中!30!いや、50はいるぞ!!」

 

「な、なんだと!?」

 

「巡洋、駆逐、多数!空母、戦艦も見られる!」

 

「今すぐ迎えを出す!下がりつつ合流後、警戒を怠らず速やかに退却してくれ」

 

「承知した!」

 

 

 

「まさか、主力が出払っているこの時に侵攻してくるとは…ーーーー」

 

「AL、MIの大規模艦隊群は…陽動!?」

 

まさかの敵勢力による陽動作戦と思われる行動に私と大淀さんは戦慄した。

 

近海にそんな大部隊が接近しているとは。これは間違いなくこの国、そしてこの鎮守府存亡の危機である。

まずは速力があって索敵のある那珂、五十鈴、高雄、鳥海を利根と筑摩の迎えに出さねば。

その間に鎮守府の皆を集めて状況を説明し、大本営にも連絡を入れて応援を要請しよう。

 

だが最悪の場合、この鎮守府と最期をともにする覚悟を固めなければ……。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

現在、食堂に利根と筑摩、迎えに出した4名を除いたこの鎮守府に所属する者全員が集合している。

 

「諸君、この国存亡の危機だ。AL、MIに主力が出払っているこの隙を突いて空母、戦艦含む50隻を超える敵の大部隊が近海に接近中だ」

 

食堂内が少しざわついた。無理もない近海でも空母や戦艦を含む敵艦隊との交戦はあるが大体が3~6隻の艦隊だった。

 

「大本営には既に通達し、応援を要請している。だが大規模作戦中ですぐに動ける鎮守府がないのも事実だ。我々ができるだけ敵を足止めし、本土が守りを固める時間を稼がなければならない」

 

私は軍人として、彼女たちに残酷な命令を下さなければならない。

 

「最悪、この鎮守府と最期をともにする覚悟を固めろ、お前たちが沈むことがあれば、その時は私も一緒だ」

 

私の命令に皆が息を呑んで耳を傾けていたようだった。

 

突然、私は抱きしめられた。

隣にいた大淀さんだった。

 

「提督、この鎮守府も貴方も最期になることはありません。私もこの鎮守府の仲間として戦わせてください!

安心してください、私が、私たちが貴方もこの国も必ず守ります!」

 

 

先ほどは大淀さんを疑うようなことを思った自分を恥じた。

私は大淀さんの言葉に涙が出そうになったがギリギリで踏ん張った。

泣いている暇はない。

なぜなら鋭い殺気を感じられるほど敵が近くまで接近しているのだ。

大淀さんの温かい言葉、寒気すら感じる殺気らしきものの中で私は自分を奮い立たせる。

 

「大淀さん、ぜひ力を貸してほしい。よろしく頼みます」

 

「大淀、とお呼びください提督。お任せください!」

 

大淀さんの心意気に皆も心打たれたのか意気軒昂な声を上げた。

 

 

 

「電は初期艦なのです!!司令官をお守りするのは電なのです!!」

「イッチバーン!」

「私、私もお守りします提督!」

「改装して得た新しい力、試すのが待ち遠しかったわ」

「まあ、この鎮守府が好きだし、失うわけにはいかないよねぇ」

「まだやってない積みゲーあるし」

「別に全部倒してしまっても構わんのだろう?」

「おい、最後のヤツ誰だクマ!!」

 

「お、お前たち……!」

 

「艦娘たちよ、お前たちが海に出ている間の斧田提督の身と鎮守府は俺が護ろう。俺が言うことではないだろうがお前たちは目の前の敵に全力を尽くすといい」

 

「絵口さん…!」

 

「利根、筑摩並びに那珂、五十鈴、高雄、鳥海、今戻ったぞ!」

 

「よく戻った!お前たち、敵の様子はどうだった」

 

「大型の艦はひとまずゆっくりと前進中だが、やはり足の速い軽巡、駆逐が先鋒として先駆けておった。

潜水艦もおったようだが安心せよ、那珂と五十鈴が全部蹴散らしおったわ」

 

「そうか、那珂、五十鈴良くやった!」

 

「フフッ当たり前よ、五十鈴には丸見えなんだから」

「おうちにまで襲撃しちゃうような迷惑なファンにはお仕置きだよ~」

 

 

私はなんと素晴らしい仲間たちに恵まれたのだろう。

彼女たちはこの国を、鎮守府を必ず護ると言ってくれている。

そんな彼女たちのことを信頼しないで何が提督か!

信じよう、彼女たちの力を。

 

「私は信じよう、お前たちの力を。そしてこの危機を皆で打破するのだっ!!」

 

『応!!』

 

 

 

こうして私たちの近海迎撃作戦が始まりを告げた。

 

 




登場人物


大淀さん
おおよどさん

ちょくちょく斧田に配下に置いてほしいアピールをしていたがこの度一時的にだが抱きつきショットガンVをキメた。

利根
とね

筑摩と巡回中に敵大部隊を感知。
いつもカタパルトの調子が悪いらしい。




今回短いですが、作戦導入回となりました。



頭が高いオジギ草さん、狐目の狸さん、orioneさん誤字報告ありがとうございました。

主に高雄を高尾と誤表記するという結構ヒドイ間違いをしてました。
読者の方々から高雄のあの台詞が聞こえてきます。
反省のため高雄にグーで殴られときます。5/14


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