近海迎撃作戦、後編
那珂が青葉に連れられてドックに帰ってきた。
状態は大破とのことらしい。
現在、明石の応急修理を受けている。
海の上は相当な激戦が繰り広げられているのだろう。
ボロボロになって帰ってきた那珂を見た時、目の前がグルグルして立ってられないような感覚だった。
だが私はこの鎮守府を治める者として気張っておかなければ。
応急修理を終えた那珂が今また海へ出ようとしている。
「那珂、いけるな?」
「もちろん。提督の願い、叶えてみせるよ。
それに…私を待ってるファンが海の上にいるから!」
「っよし、では行ってこい、私はお前が輝くのをここで祈っておこう!」
「那珂ちゃん、現場入りまーす!」
私は今まさに光り輝きながら海に出ていく那珂を見送った。
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作戦開始前に提督から沈む時は一緒だなんてドラマチックな言葉をもらって、ついついテンションが上がりすぎちゃった、テヘッ!
敵を引き付ける役なんて、アイドルの那珂ちゃんにぴったり!…だったはずなのにうっかりたくさん被弾しちゃったテヘペロ!
ファンの子たちってば元気いっぱい!
大破して青葉ちゃんに助けられてドックに戻ったら提督が酷い顔してた。
酷いのは元からだったけど、そうじゃなくてとっても苦しそうな哀しい顔をしてたの。
那珂ちゃんのファン第1号でもある提督にそんな顔をさせちゃって、本当にごめんなさい!
ちゃんと提督と鎮守府を守って「この国を護る」って提督の願いを叶えなきゃ。
海に戻る時、提督が輝くのを祈ってるって言ってた。
提督がそう望むなら私は輝く存在でなきゃね!
そう思うと私の中のアイドルパワーが覚醒したのを感じたの。
今の私なら例え戦艦相手でも負けない!
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『たった今艦隊A側最後の戦艦ル級を沈めました』
そう後方部隊の高雄から通信が入った。
「こっちもさっき片付いたクマ」
みんないつも以上の力を発揮して敵艦隊を撃破したけど、さすがにみんな疲れたクマ。
「…イッチバーン」
「ぽい~、もうヘトヘト、弾薬もほとんどないっぽい」
「こっちの被害は那珂が大破したのと白露以外が小破ってところね」
「みんないっぱい頑張ったから司令官さんがきっと褒めてくれるのです」
『こちら艦隊B、こっちも終わったよー。魚雷も弾薬もほとんど使い果たしたけど』
「北上と大井も良くやったクマ、お姉ちゃん鼻が高いクマ!」
『エヘヘ』
『皆さん、鎮守府に帰るまでがお仕事ですよ、あと皆さんの写真も撮りたいのですが…』
みんな大艦隊相手に勝利して少し浮かれた時だった、高雄から驚きの通信が入ったクマ。
『え、…!?っ青葉さん、緊急回避してっ!!皆さん、気を引き締めて、姫級の存在を確認!』
「なんだと!?」
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クソッ!!!
アリューシャンとミッドウェーに敵勢力を集中させたはずなのに、敵の本拠地にはまだこれほどの戦力が残っていようとは!!
集めた50を超える配下もほとんどがエリートやフラッグシップだったのにたった19隻相手に沈められるだとォ!?
だがヤツラはもう充分に戦える状態ではないはずだ。
私の配下を沈めた勝利の余韻に浸って油断しているようだな、私自らの手でキサマラを深海へといざなってやるわ!
「シズミナサイ…!!」
相手は相当な手練れ共だったが、この戦艦棲姫、弾薬もなく疲弊しきっている相手に負けるはずがない!
まずは、補給部隊と思われるヤツらだっ!!
私の16inch連装砲の砲撃が火を噴く。
これで敵の艦娘の一隻は大破だ!
そのはずだった…
硝煙が晴れて姿を表したのは大破するはずだった艦娘の前に立ちはだかる探照灯をマイクのように持った軽巡だった。
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現場に追いついたと思ったら砲撃が青葉ちゃんに飛んで来てたから慌てちゃった。とっさに弾頭めがけて魚雷を投げたらうまく空中で爆発してくれた。
まさに間一髪ぅ。
「ぜぇー、はぁーあお、はぁーばぁーはっ…ちゃ、はぁー、だいじょ、ふー?」
「な、那珂さん、あ、ありがとうございますっ!!…那珂さん?制服が……」
ちょっと息を整えさせてねぇ。スー、ハー、
爆発の煙が海風で払われてきた。ここでポーズを取って…フー、
「みんな、ありがとーっ!!」
相手戦艦は青ざめた顔でこっちを見てる!
那珂ちゃんに会えて感激してるのかなぁ?
「バ、バカナ…!軽巡ガ私ノ砲撃ヲ…!?」
こっちのみんなは疲れきっていて充分に戦えないみたい。それなら、
「みんなはしばらく休んでてね!これからセンター那珂ちゃんのソロパートだよ!」
那珂ちゃん頑張るぞぃっ!!
「単ナルマグレダ!!ッモウ一度!!」
敵の主砲が飛んで来てるけど、
見えてる!那珂ちゃんは蝶のように避けるっ!
ーー, ーー, ーーー~♪
「っ!?あ、あの動きはっ!!」
「知っているのか陽炎?」
ーーーーーダンスダンスレボリューション!
ーーーーーーーーbutterfly!!
「クソッ副砲スラ当タラナイッ!…一体、オマエハ何者ナノダ!」
相手戦艦が訊いてきたから答えてあげましょう。
「清楚な心を持ち激しいダンスによって目醒めた
艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよー!」
しばらく相手戦艦の砲撃を踊りながらかわし続けた。
そして体力が回復してきたみんなが残りの弾薬を全て使って集中攻撃!
「グァアッ!?コノ私ガッ!」
他の敵戦艦、空母が跡形もなくなった砲撃を受けたにもかかわらず大破に留まり、なお沈まない相手戦艦。
そのタフネスはすごい。
だけどもうこれでおしまい、那珂ちゃんの魚雷全部プレゼントしちゃう!
「……那珂チャンカ、覚エタゾッ!私ハ戦艦棲姫!次会ウトキハ必ズシズメルッ……!」
戦艦棲姫ちゃんは沈みながら那珂ちゃんにライバル宣言してた。
次も負けないんだから!
……新しい力に慣れていないのと激しいダンスで疲れちゃった。ちょっと動けない、かも。
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「戦艦棲姫ガヤラレタヨウネ、ハジメカラ戦果ヲ横取リスルツモリダッタケド、チョウドイイ」
戦場からやや離れた場所で艦載機を全て放ち、動けない艦娘たちを一気に葬ろうとした空母棲姫とその少数精鋭の配下。
いざ攻撃命令を出そうとした時、艦娘たちのいる方向とは違う方向の空にモヤがかかっていて首をかしげた。
「……ナンダ?、アレハ?」
そのモヤがだんだん近づいてきてその正体に気付く。
艦娘の艦載機だ、それもなんて数!
空母棲姫はあわてて対空命令を出した。
「オ、オマエタチ!アレヲ撃チオトセ!!ハヤクシロォ!!」
己の艦載機全てを襲いかかってきた敵の艦載機に差し向けたが逆に撃ち墜とされていく。
何なんだ?何が起きてる?
空母棲姫自身の艦載機だけでも200を超える数だが敵の艦載機の規模はその十倍ほどはあった。
大規模な正規空母の機動艦隊?
一体どこに?
爆撃、雷撃に曝されて沈んでいきながら空母棲姫は一人の艦娘を確認した。
軽空母、鳳翔
確かそう呼ばれていた艦娘だった…。
「戦場ではいついかなる時も気を抜いちゃいけませんよ、誠一郎君のところの娘たちもまだまだね」
応援要請を受けて横須賀鎮守府から飛び出してきた鳳翔は離れた場所でじぇいこぶ鎮守府の面々が無事なのを確認してひっそりと帰っていった。
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『提督、近海に接近していた敵の大艦隊の撃破に成功しました!』
大淀から作戦成功の通信報告が入った。
「被害状況は?みんなは無事なのか!?」
作戦成功の報せだけでは落ち着くことができず、疲れているはずの大淀に通信ごしに詰めよってしまった。
『ご安心ください、みんな無事です。これより全艦、帰投します』
「そうか、……良かった、良くやった」
「斧田提督、お疲れ様。艦娘たちは俺や貴方が思うよりだいぶ強く、逞しかったようだな」
「本当に良かった…!」
私は絵口さんの前だというのに涙が止められなかった。
絵口さんは窓から外を向いていて顔が見えなかったが時折鼻を啜る音が聞こえていた。
艦娘たちにこんな情けない姿は見せられないと涙を拭い、出迎えのために港へと向かった。
夕陽をバックに帰投してきたウチの娘たち。心なしか出撃前よりも逞しくなって帰ってきたような気がして、また涙が出そうになった。
顔を引き締めて、帽子を目深に被り直し、整列している彼女たちの前に立つ。
「お前たち、良くやった。私はお前たちを誇りに思う。そして、この国を守ってくれて、無事に帰ってきてくれて、ありがとう…
今日はもうゆっくり休んでくれ、では解散!」
伝えたいことは伝えた私は、涙を我慢し必死に引き締めようとする顔を見られないように足早に港を後にした。
作戦成功と引き替えにした資材の消費に違う涙を流したのは次の日のことだった。
それにしても空母はいないのになんでボーキまですっからかんになってたのだろうか?
登場人物
斧田誠一郎
このあと空母狙いで建造しようとして資材がないことを思い出して泣く。
那珂
じぇいこぶ鎮守府で一番早く改二に至る。
ダンレボ上級者。
戦艦棲姫
姫級は海の負の念があればよみがえる。
戦いの時のことを思い出しては那珂ちゃんにまた会いたくなる。
空母棲姫
戦場で鳳翔を見かけたら相手にしないことに決めた。
賢い。
鳳翔さん
艦載機の妖精さんから莫大な信頼を寄せられているため、戦場に出るとよその各鎮守府の艦載機たちが勝手に集まり勝手に戦闘に参加してしまう。消費するボーキはその艦載機たちの各鎮守府のボーキ。勝手に消えるボーキは各鎮守府七不思議のひとつ。