笑わない提督   作:オマエモ

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艦娘の前で全く笑わない提督。艦娘たちの肝だめし回。




笑わない提督14

「肝だめしがしたい、だと…?」

 

「そうそう、ヒトナツの思い出といえば肝だめしでしょ!」

 

執務室にやってきた陽炎が唐突にそう提案してきた。

確かに夏の風物詩といえば肝だめしはその一つだろう。

ウチの娘たちは日頃国防の任に精を出していることだし、ここらで慰労の一つとしてそういった催しを開いてみても良いかも知れないな。

 

「うむ、いいだろう」

 

「やったぁ!」

 

「だが……」

 

しかし、肝だめしといっても私は富士急◯イランドの戦慄てきな病院のヤツしか経験がない。

しかも私が入った時は何故か脅かし役と思われるお化けに全く遭遇しなかった。

まぁ、雰囲気だけでもホラーな感じは楽しめたのだが。

それゆえそういった経験がほぼないに等しく、ウチの娘たちに楽しんでもらえる肝だめしを提供できるか不安がある。

 

とそんな感じのことを陽炎に正直に打ち明けると、

 

「大丈夫だよ司令官、私に任せてよ。明石さんと妖精さんに頼んで上手くセッティングしてみるからさ!」

 

「ほう、そこまで自信があるのなら任せてみよう。よし、陽炎、明石と妖精さんたちと共に鎮守府肝だめしを開催せよ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

アタシ、綾波型駆逐艦の朧!

夕食のあと、提督がみんなに向かって肝だめしを開催するって言った。

陽炎が企画して提督と明石さんと妖精さんの協力の下、鎮守府をお化け屋敷にするらしい。

参加希望者フタマルマルマルにグラウンドに集合だって、こりゃ行くッきゃない、多分!

 

「楽しみだなぁ、潮も参加するでしょ?」

 

「え、えと私怖いのは……」

 

「大丈夫だって、私たちは普段から提督の顔見てるからホラー耐性ついてるって、多分」「…オ…オゥフ…!」

 

「朧ちゃん声大きいよ、ほら提督、なんか落ち込んでない?」

 

あ、まずい、聞こえてたかな…食堂の提督の席でゲンドウポーズの提督。哀愁を漂わせていた。

あと、隣の席の大淀さんが俯いてぷるぷる震えている。

 

「あ、…えへへ、ほ、ほら怖くなったら提督の顔を思い出せば勇気もらえるってことだよぉ!」

 

「もう朧ちゃんてば……」

 

 

 

その後潮を説得するのに成功してグラウンドに向かった。

参加希望者はほぼ全員みたいね。

今グラウンドにいないのは陽炎、青葉さん、扶桑さん、提督。

 

時刻になると、集まったみんなの前に提督と明石さんが現れた。

 

「あー、皆さん、日頃の任務ご苦労様です。今日は陽炎さん企画の肝だめしです。不肖この明石、今回、皆さんの慰労をとのことで張り切りました」

 

こちらをご覧下さい。と明石さんがナゾのボタンを押すと目の前の鎮守府が和風の大きな廃屋に姿を変えた。

 

「妖精さんとの協力でホログラフィックと3Dサウンドによって鎮守府を擬似的に変化させました」

 

す、凄い…。みんなも雰囲気が出てるとか、どうなってんの?とか言って驚いてる。

確かに雰囲気が凄い、彼岸花に囲まれた廃れた和風の御屋敷はめちゃくちゃミステリアスだった。

 

「当然、中のお化けもほぼホログラフィックなので安心してください、…フフフ、オタノシミニ……」

 

ほぼって何!?どういうことなの?

意味深な明石さんの発言に息を呑む面々。

 

「皆、日頃の国防の任、大変よくやってくれている。今日はその慰労の一環として肝だめしはどうか、と陽炎から提案があった。どうか無理せず楽しんでもらいたい」

 

 

陽炎は開催者側かぁ。となると、ここにいない青葉さん、扶桑さん辺りも開催者側なのかな。

陽炎は企画者らしいし、青葉さんはみんなのビビり顔を激写する係で…扶桑さんは……もしかしてお化け役かな多分。

 

「まずは今回のルールを説明しよう。2~3名で組になり、廃屋を探索しゴール地点を目指してもらう」

 

「た、探索…?フツーにゴール地点を目指しちゃダメなんですか?」

 

「ゴールするためにはゴール地点の祭壇に勾玉を納める必要があるのだ。勾玉は廃屋内のどこかに置いておいた。探索して勾玉を取得しゴール地点の祭壇に納めることでゴールの扉が開く」

 

提督のルール説明を聞いてもう一度鎮守府の方を見る。

古い御屋敷の探検と考えると、何だか冒険心がくすぐられてきた。

これは面白そうだ。

みんなも心なしかワクワクしている様子でチームを組み始めている。

 

「潮、磯波!一緒に行こうよ!」

 

「う、うん思ったより怖くなさそうだし、大丈夫だよね」

 

「…探検、ちょっと楽しそう」

 

アタシは潮と磯波とでチームを組んだ。

他のみんなは利根さん筑摩さんのトネチクチーム、高雄さん鳥海さんのお姉さんチーム、那珂ちゃん五十鈴さん大淀さんのナカチャンチーム、球磨さん北上さん大井さんの球磨家チーム、電ちゃん白露ちゃん夕立ちゃんの電チームになったようだ。

 

「うむ、皆早速チームを組んだか、では順番を決めようか」

 

「あの、司令官さんは参加しないのです?」

 

ふと電ちゃんが提督に聞いた。

 

「私はリタイアしたチームを出口まで誘導する係だ」

 

「リ、リタイア…?」

 

「私も陽炎とゴールまでテストプレイをしてみたが……なかなか怖いぞ、お前たちは途中でリタイアしても構わないからな」

 

提督、アタシたちを怖がらせようとしてくれてるのかな多分。リタイアしてもいいって言ってたけどアタシたちはきっと大丈夫だよ。逆に楽しく探検してゴールしよう。

 

「あ、もしリタイアして提督が急に出てきたらそれが一番ホラーかもね!」

 

「お、朧ちゃん…!」

 

「う、うむ…なるべく怖がられないよう善処しよう……」

 

アタシの発言にみんなが苦笑いしてた。

 

順番はトネチクチーム、球磨家チーム、ナカチャンチーム、電チーム、お姉さんチーム、朧チームになった。

うーん、最後かぁ、ネタバレにならないように皆が帰って来てもどんな様子かは聞かないようにしなきゃ……。

 

「ワクワクするなぁ、探検すごく楽しみ!」

 

 

この時の私は知らなかった。

冒険心なんて吹き飛ぶほどの恐怖をこのあと味わうことになるなんて。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ゴール部屋となる執務室で私はモニターを見つめる。

鎮守府(屋敷)内のあちこちに能面を設置しカメラを仕掛けモニタリングしている。

とあるホラゲーをプレイしその怖さに戦慄した私はこの恐怖体験をみんなにも味わってもらいたいと思い、提督に肝だめしを提案したのだ。

明石さんに協力を求めると快くOKしてくれた。どうやら明石さんもプレイしたことがあるらしく私の提案にだいぶ乗り気だった。

提案した次の日には鎮守府を屋敷に変装させる装置が完成し、みんなが遠征や哨戒で出払っている間に私と提督、オフの青葉さんと扶桑さんでテストプレイしてみたがその完成度の高さに感動した。

◯廊だ…薄暗い長い廊下にどこかから不意に聞こえる鈴の音、走り回るドタドタ音、女のすすり泣く声。

ゲームをプレイしていた時の手が汗ばむ感じを思い出す。

鎮守府内はゲームの屋敷ほど広くはないのでクリアに必要な勾玉も1個でいいだろう。

私と提督は無事にゴールできたが、青葉さんと扶桑さんは途中でリタイアした。

二人ともあれから寝込んでいるようだ。

 

「あ、一組目は利根さんと筑摩さんのようね。

ふっふっふ、私が味わった恐怖をみんなも味わうといいわ」

 

ヒィッヒィッヒ、みんなの恐怖に歪む顔が目に浮かぶわい。とてもいい顔をしているヨォ、キット。

 

 

利根さんが不意に走り回るドタドタ音を聞いたらしい、筑摩さんに抱きついた。筑摩さんは恍惚とした表情をして利根さんを抱きしめ返していた。

走り回るドタドタ音が大きくなり、全身真っ黒で沢山の手足が付いた姿で大きな能面を付けた音の主が二人の前に現れた。『ぢ、ぢぐま゛ぁ~っ!!』『 』『き、気絶しておるっ!?リ、リタイア!リタイア~!!』

筑摩さんが気絶したのは恐怖からか、それとも……

 

「走り回る音の正体に気づいた時…その造形のグロテスクさに戦慄する……クックックッ」

 

二組目球磨家チーム、北上さんの腕をがっしりホールドした大井さん、その北上さんは球磨さんの腕をがっしりホールドしている。仲良いな球磨家。

球磨さんが「懐中電灯」を発見し、点灯するが灯りが明滅している。…近くに居るなこりゃ、十二単を纏い能面を付け鈴を鳴らしながら屋敷内を徘徊する鈴の徘徊者『シャン…シャン…』

辺りを懐中電灯で照らす球磨さん、灯りが廊下の角を照らした時、ちょうど鈴の徘徊者とバッティング。『シャンシャンシャンシャン!』『グマ゛ァー!!』『わぁあぁあぁ!?(北上)』『ヴぉ゛お゛ォ゛!?(大井)』

球磨家リタイア。

 

「ふへへ、心臓に悪い出会い方ねぇ…」

 

三組目那珂ちゃん、五十鈴さん、大淀さん。

屋敷内の薄暗さにドン引きしている。すすり泣く声が聞こえたようだ。不意に五十鈴さんが手を挙げる、次いで大淀さんが手を挙げた、那珂ちゃんが青い顔しながら最後に手を挙げると二人が同時にどうぞどうぞと、那珂ちゃんがぎこちないスマイルを貼りつけながら泣き声の主に近づく、五十鈴さんと大淀さんにアイドルだから元気付けてあげなよ的なことでも言われたのだろうか?

『ナカチャンダヨー』『ドコ?ドコニイルノ?』『ヒェッ!』泣き声の主が警戒モードに入った。

『ナ、ナカチャンダ!!ヨォォ!?』那珂ちゃんの声を発した瞬間、能面を付けた泣き声の主は侵入者を捕捉し、襲いかかった。『うわぁぁああ!!』『っっっぅ!?』

那珂ちゃんチーム、リタイア。

 

「那珂ちゃん……」

 

四組目、電、白露、夕立チームも意気揚々と屋敷に乗り込むが薄暗い長い廊下に一瞬で顔色が悪くなった。

『ポ、ポーイ…』『イッチバーン…』『ナノデス…』『…ポーイ』

なんか言葉を話さなくなった。『ポ、ポーイッ!!』『イ、イッチバーン!!』『ナ、ナノデス!?』急に走り出した夕立と白露、その後を追うように電も走り出す。『シャンシャンシャンシャン!』走った足音に反応して鈴の徘徊者が三人を捕捉。

『ナノデスッ!!』迫ってきた鈴の音から走って逃げるが、運悪く前方の曲がり角から走り回る徘徊者出現!!

『 ッポ!!』『 イッ!』『deathッ !』三人とも倒れてリタイア。

 

「あちゃー、挟み撃ちだね」

 

五組目、高雄さんと鳥海さん。

二人は冷静に慎重に屋敷内を探索し、泣き声の主のいる部屋の前で中の様子を窺っている。

勾玉が泣き声の主の近くの机に置いてあるのを発見してどうやって手に入れるか作戦を立てているところらしい。

どうやら、屋敷内で見つけたアイテム「爆竹」で泣き声の主の気を逸らしてその隙に勾玉を取る作戦に出たようだ。

作戦が上手くいき、勾玉を手に取る二人。その瞬間この世のモノとは思えないおぞましい叫び声を聞く。

『fooooo↑↑』『な、何!?』『ア゛ァ゛ァ゛ァ゛,ア゛ァア゛ァア゛ァ!!』『ヒィッ!』

急いで部屋を出て「コンパス」の示すゴール、執務室を目指そうとするが前方から死装束を纏った長い髪の爛れた顔の女、憎悪を振り撒く影が迫ってきた。その姿を見て腰を抜かす二人、ゴール目前でリタイア。

 

「フゥハハハハ!誰も突破できんとは!恐ろしかろう!これが影◯の恐ろしさよ!!…次が最後の組ね…」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「変だね、誰も帰って来ないね…」

 

肝だめしが始まって1時間くらい経った。

待ち時間の間はグラウンドで花火をしてたけど、気づいたらアタシたちのチームだけになってた。

 

「きっと、みんなゴールで待ってるんじゃないかな」

 

「帰ってきたときの様子でネタバレしちゃうかもだしね」

 

そこで明石さんからアタシたちのチームがお呼ばれした。

 

「はーい、お待たせ、朧チームの番だよ!」

 

「よーし、やっときたね、行こう二人とも!」

 

アタシたちは明石さんの案内で御屋敷の入り口に立つ。

入り口の扉がひとりでにゆっくりと開いた。

中の様子は照明がロウソクだけで思ったより薄暗い。

 

「うわぁ…」

 

「それじゃ、頑張ってね!」

 

 

 

薄暗い廊下を三人で固まって歩く。

なんとなく無言だった。

外からじゃ想像がつかなかったけどロウソクの灯りだけの薄暗い屋敷の中は不気味すぎる。

 

………タッタッタッタッ!

 

誰かが走っているような音が聞こえた。

 

「っ!何かが近づいてくるよ」

 

音は段々大きくなってくる。

 

「か、隠れよう!そこの部屋っ」

 

「う、うん」

 

小部屋に入り扉を閉める。

タッタッタッタッ!タッタッタッタッ!…………

 

「と、遠ざかった…!」

 

「う、うぅぅ…怖いよ」

 

「あ、ここの棚にコンパスと鍵があるよ」

 

磯波がアイテムを見つけたようだ。説明書のようなものも一緒に置いてあった。

 

「このコンパスの赤い針が示す方角にゴールが…?」

 

「で、でも私たち勾玉持ってないよ」

 

「そうだった」

 

このお化けの徘徊する不気味な屋敷を探索して勾玉を探さなければならない。

そう考えると冒険心でワクワクしていた自分を殴りたくなった。いや、あれは仕方ない、だってこんなに怖いとは思わなかったんだもの。

 

「みんなちゃんとゴールできたのかな?」

 

「……リタイアする…?」

 

リタイアか、その手があったか。

でも、ゴールできなかったのがアタシたちだけだったら恥ずかしいし……

 

「こ、怖いけど…私はもうちょっと頑張ろうかなって…」

 

「潮ちゃん……そうだね、リタイアしたのが私たちだけだったらちょっと恥ずかしいもんね!」

 

磯波もアタシと同じこと考えてたらしい。

いつも怖がりな潮だってああ言ってるし、私ももうちょっと頑張ろう!

 

「よし、こうなったらサクッと勾玉ゲットしてササッとゴールしちゃおうか!」

 

やるぞ、勾玉見つけるぞ、絶対ゴールしてやるんだ。

 

 

小部屋を出て暗がりを進む。

シャンシャンと鈴の音が聞こえては近くの小部屋に隠れ、すすり泣く声が聞こえたら静かにゆっくりと避け、ドタドタ走り回る音に終始ビビりながら進んで行くと

鍵の掛かった扉を見つけた。

 

「鍵…さっき見つけたヤツ…!」

 

「…開けるよ…!」

 

鍵穴に金色の小さな鍵を挿し込み回す。

カチャリと音がなり解錠すると鍵は崩れてなくなってしまった。

 

「あ、開いた…!」

 

「鍵、壊れちゃったけど」

 

扉を開けて中を窺うと机の上に緑色の小さな光がみえた。

あれはなんだろう、三人で恐る恐る近づくとその正体に気づいた。

 

「ま、勾玉だ!」

 

「…やった!」

 

「キレイ…」

 

しばらく勾玉を三人で眺めていると、走り回るドタドタ音が聞こえた。そうだ、勾玉を見つけたんだ!アタシたちはコンパスも持ってるし、あとはゴールに向かうだけ、早くこの不気味な空間から抜け出していつもの日常に戻ろう!

 

「「朧ちゃん」」

 

「…うん」

 

アタシは勾玉を掴んだ。

 

『foooooooooo↑↑』

 

「ヒィッ!?」

「こ、今度はなに!?」

「こっっっわ!!」

 

勾玉を掴んだ瞬間、遠くからおぞましい叫び声にも似た悲鳴が聞こえた。

同時に聞こえていた鈴の音やドタドタ音が消えて、辺りからは何の気配も感じなくなった。

 

「も、もしかして勾玉ゲットしたからお化けが成仏したのかな」

 

「……やったか?」

 

「は、ははは、磯波、今それは洒落にならないから」

 

「ごめん」

 

「と、とりあえずゴールを目指そうよ、コンパスコンパス!」

 

「よ、よーしみんな!ゴールまでダッシュだぁ」

 

コンパスの赤い針が示す方角にダッシュ。入り組んだ廊下を右に次を左に…。

やっと、やっとゴールできるぞ!

…ァァァ、ァ゛ァァ゛ァァ゛ァ…

 

「っ!?」

 

かなりイヤな予感が多分三人ともしたんだと思う。

アタシたちは急停止した。

 

「おいおいおいおい」

「何か聞こえたぁ…」

「絶対いるよ、この先に」

 

長い廊下の先、曲がり角がほんのり赤みを帯びてくる。

同時に女の叫び声みたいなのも大きく、

 

『ァ"ァ"ァ"ア、ア"アアアアア!アア゛アア゛アア゛!!ア゛アアア゛アア!!』

 

うるさ、うるさいっ!!何これ、めっちゃうるさいんだけどォ!?

大音量の叫び声に凄まじい嫌悪感を受けていると曲がり角からその叫び声の主が姿を表した。

長い黒髪に白い死に装束、顔は腐敗して爛れているようで分からないが顔の両端まで裂けた大きな口で、この世のありとあらゆるモノを憎悪するかのような叫び声をあげてこっちに迫ってくるソレはあまりにもグロテスクだった。

 

「に、逃げなきゃ!」

 

「ゴールはもうすぐだってのに!」

 

「ヤバいヤバいヤバいヤバい、ヤバいヤバいヤバいヤバい」

 

来た道を引き返し、一目散に駆け出すアタシたち。

叫び声の主はものすごいスピードで迫ってくる。

 

これだけ入り組んだ御屋敷だ、違う道からでもゴールに行けるはず、そう信じてアタシたちはでたらめに走り回った。

叫び声は後ろから聞こえてくる。このままゴールを目指すしかない。

 

コンパスをちらりと見るといつの間にかアタシたちの進行方向に赤い針が向いている。

 

「二人とも頑張れ、このまままっすぐ行けばゴールかも知れない!」

 

「「ヒィッ、ヒィッ、ヒィッ…」」

 

「……あ、あぁ!?祭壇だ!きっとゴールだ!」

 

ゴール地点と思わしき祭壇まで目測で20メートルくらい。

うるさい叫び声もすぐ後ろにまで迫ってきていた。

 

「ヒィッ、ヒィッ、ヒッ!」ズササー!!

 

「う、潮ぉ!?」

 

潮がゴール目前で転んでしまった。

『アア゛ァアアアア、ア゛アアアアア!!』

 

「ヒィッ、二人とも、私のことはいいから!早く…!!」

 

 

 

「I・SO・NA・MIフラッシュ!!!」パシャン!

 

 

 

『foooooooooo↑↑』

 

「き、効いた…!?」

 

磯波がどこからともなく取り出したカメラのフラッシュが焚かれると叫び声の主は追跡を止め、顔を手で覆ってうずくまった。

 

「今のうちに!」

「ありがとう!二人とも!」

 

潮を抱き起こし、祭壇のある部屋へ飛び込んだ。

『foooooooooo↑↑』

 

「まだくるの!?」

「…しつこい!!」

「朧ちゃん、早く勾玉!」

 

祭壇の中央に勾玉がちょうどはまりそうなくぼみが!

アタシは勾玉をくぼみに嵌め込む。

目の前にまで迫ってきていた叫び声の主は一瞬でフッと消えた。

アタシたちの後ろから扉の開く音がした。

三人ともビックリして振り向く。まだ何かあるの!?

 

「……」

 

「……」

 

「………もしかして、ゴール?」

 

恐る恐る扉を抜けると………

 

 

 

 

 

 

 

「クリアーおめでとー!!」

 

そこは見覚えのある執務室だった。

 

「いや、すごいすごい三人とも!他のみんなはギブアップしたのにまさかクリアできちゃうなんて!

でもでもすんごく怖かったでしょ?私こと陽炎企画の肝だめし!みんなのことはここからモニタリングしてたんだけど、もうリアクションが最高だったわ!!企画した甲斐があったってもんよ!

実は今回の肝だめしは私がプレイしたホラゲーから思いついたっていうかパクったっていうか、でも楽しかったでしょ?そのホラゲーをみんなにもプレイしてもらいたい、あの恐怖を味わってもらいたいって思って。

みんなは肝だめしを楽しめてハッピー、私は間接的にみんなにホラゲーをプレイしてもらえてハッピー!

まさにWIN-WINってね!実はそのホラゲーなんだけどーーーーーーーー………………」

 

 

 

執務室の陽炎は興奮しながら訳の分からないことをしゃべくり散らかしている。

ただ一つ分かることはこのリアルホラゲーだとかいうクソ企画を企てた張本人、それが陽炎だということ…。

 

 

ホラゲーはゲームだからいいのであって、肝だめしだってもっとみんなが楽しめるレベルなら全然良かったのに…。

 

 

 

 

 

「他のみんなはどうかは分からないが」

「今ここにいる私たち三人は」

「陽炎を次の演習でボコボコにすることに」

「「「決めた!!絶対だっ!!」」」

 

「ヒェッ!?何でぇ!?」

 

 

 




登場人物

斧田誠一郎
肝だめしのあとで特に鎮守府内演習でヤル気いっぱいの艦娘たちを見て、肝だめしの慰労のおかげだと陽炎に感謝した。

陽炎
陽炎の◯廊。今回もやらかした。


「多分」はあんまりあてにならない。


後日、陽炎のシャドーコリドー生実況プレイを見る。

磯波
趣味で持ち歩いているカメラが役に立った。

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