電です、今日の演習には横須賀の長門さんが監督に来てくれたのです。
艦隊運動と模擬弾を使った回避行動をやったあと、チームを組んで模擬戦をしました。
「みんな、とてもいい動きをするようになったな、お姉ちゃん嬉しいゾ!」
ふざけた感じで演習の総括をする長門さんですが、指導はしっかりしてくれるし、時にはお手本を示してくれたりするのでとても身になります。
「陽炎は被弾がだいぶ目立っていたな、どうやら頻繁に狙われていたようだが戦場ではそういった場面に出くわすことも無いわけじゃない。今日の訓練をしっかり心に留めておいてタフな艦娘になれるように頑張っていこうな!」
長門さんは鼻息を荒くしながら陽炎ちゃんの頭をナデナデしながら言っていました。
模擬弾なので身体へのダメージは少ないですが、ボロボロの制服から見ると陽炎ちゃんは大破相当の被弾率でした。
きっと、この前のリアルホラゲークソ企画の黒幕だったのでみんなから制裁を受けたのです!
陽炎ちゃんは全てを受け入れたような悟りを開いた表情をしていました。
「よし、陽炎は長門お姉ちゃんがお姫様抱っこで入渠ドックまで運んでやるぞぉフヘヘ!」
そう言って長門さんは陽炎ちゃんを抱き上げました。
「あ~、陽炎ちゃんずるいっぽい!」
「イ、イッチバーン!」
「フハハハハ、抱っこくらいいつでもやってやるから、あとでな!」
長門さんはすごく強くて優しいので私たちにとっては頼りになるお姉さんみたいな存在なのです。
その時ちょうど哨戒に出ていた五十鈴さん、那珂ちゃん、大淀さんが帰ってきました。
「あ、五十鈴さんたち、お帰りなさいなのです!」
「あら、今日は長門さん来てたんだ」
「みんな、ただいま~!」
「皆さんも演習お疲れ様です」
みんなでドックに帰りました。今日も目立った変化は見られず近海は平和だったようです。
「ねぇ電、相談があるんだけど…」
五十鈴さんが電にそう言いました。
「電に、なのです?」
「うん、まぁこの鎮守府じゃ電が最古参だから…」
「えへへ、電にもっと頼っていいのですよ!」
長門さんから聞いた雷ちゃんの口グセを真似た訳ではありませんが、五十鈴さんに頼られて嬉しいのです。
…雷ちゃんかぁ、会ってみたいなあ。
「ここじゃなんだから食堂で」
「了解なのです」
艤装のお手入れをしてみんなで食堂に向かうと壁に掛けられたボードに
「諸君、暑い中お疲れ様、冷凍庫にアイスクリームをたくさん入れておいたので食べてください 斧田」
と書かれていました。
これにはみんなニッコリ。
アイスクリーム、大好きです!司令官ありがとうございます。
「いやぁ、演習のあとのこのおやつタイムは最高だなぁ」
「うふふ、冷たい!」
「…うん、おいしい」
「姉さん、食べさせてあげます」
「うむ、あーん」
「…き、北上さん…!」
「大井っち、はいあーん」
「北上さぁーんっ!」
「大淀はどうしたクマ?」
「大淀ちゃんは扶桑さんと執務室まで提督と長門さんに持って行ったよ」
「最近、お腹周りが……でも……!」
「高雄姉さん?」
時間はちょうどおやつ時でみんなゆっくりしてます。
五十鈴さんは電の隣に座りました。
「五十鈴さん、それで相談っていうのは?」
「……電、その、なんていうか…」
五十鈴さんは少し恥ずかしそうにしています。
「…私、私には、その…」
……モジモジする五十鈴さんの様子からみると、もしかして…
「私には、笑わせたい人がいるんだけど…」
笑わせたい人……って、そう言われて心当たりがあるのは一人しかいません。私たちの前で笑顔を見せないあの人…。
「…笑わせたい……なのです?」
「そ、そうなの、最近ふとそう思いだしちゃって、寝ても覚めてもそのことばかり考えちゃって…」
そ、それはつまり、私たちの前で笑顔を見せないあの人のことを考えると、寝ても覚めてもドキがムネムネしちゃう感じなのです!?
「この鎮守府が稼働し始めた時からその人の近くにいた電に聞けば、笑わせられるヒント、というかツボみたいなのが分かるかなって…」
…ん?あれ?これはただ単に笑わせたい、ウケを取りたいってことなのです?いや、そういうところから始まっちゃうLOVEもあるかもしれないのです。
「……あの人を笑わせたい…そうなるとライバルとなる方たちがもしかしたらいるかもしれないのです」
「!そう、ね、この鎮守府の娘たちはわりと個性的だしね。でもライバル…っていうか…」
「電がもしその中の一人だったらどうしますか?」
「ええ!電もそうだったの!?」
「……電だってあの人を笑顔にしてあげたいと思っているのです!きっと私だけじゃなく、扶桑さんも」
あと怪しいのは大淀さん、大淀さんもあの人のこと……。
あの人は、司令官は、マジヤバクリーチャー顔グロメンでも、優しくて気づかいができて男らしさのある素敵な方に違いはありません。
周りのみんなももしかしたらそのことに気づき始めている?現に五十鈴さんも司令官に興味を持ち出し始めているのです。
「扶桑さんも!?なんかめっちゃ意外!」
「…ライバルと言っても、おんなじ気持ちを持つ仲間がいてちょっとは嬉しいのです、でもやっぱり負けたくないっていうか……」
「……そうかも、確かに笑わせることにおいてはそれくらいの気持ちがないとね」
五十鈴さんってひた向きで真っ直ぐでなんていうか、ストイックだなぁ。
とりあえずまずは笑わせたい、今はまだそれだけを考えているみたいです。でも何故笑わせたいかを考え始めた時、きっと内なるLOVEに五十鈴さんは気づくはずなのです!
「別にライバルだからという訳じゃありませんが、私からアドバイスできることは恥ずかしながらないのです…」
「うーん、そっかぁ、こういうのってわりと、てさぐり感があるのよね。まぁ色々試してみないと分かんないかも」
「た、試すって……ま、まぁ五十鈴さんの気持ちが聞けて電は嬉しかったのです。電も頑張ろうって気持ちになりました」
「そ、そう…?」
「お互い頑張りましょう!司令官の攻略!」
「………は?」
電がそう言って手を差し出すと五十鈴さんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔になりました。
こう、口が半開きで鼻の穴と目がクワッて感じで開いています。
「て、提督の…攻略…?」
あれれ、なんか様子がおかしいのです……
「笑わせたい人…って、司令官じゃないのです?」
「ち、違うわよ!私の笑わせたい相手は…大淀よ」
その言葉を聞いて電は自分の顔が真っ赤になったのを感じたのです!
勘違いで結果的に司令官が気になっていることを暴露してしまったのです!ハ、ハズカシイィイ!
あれ、でも五十鈴さんが笑わせたくて気になっている相手は…、五十鈴さんが内なるLOVEを抱いている相手は…!?
「…電が司令官のこと好きってのは分かったけど」
「い、五十鈴さんは違ったのです!?」
「だ、だから私は大淀についての話をーー」
「五十鈴さんは大淀さんが好きなのですっ!?」
「ち、違う~!大淀のあの気持ち悪い笑い方がなんかクセになっちゃってふと自分がその笑い方を引き出したいと思っただけだから!」
ガチャンーーッ!
その時、食堂の扉の音がしました。
みんな静まり返り、扉の方を見ると
「おい、今大淀が来たと思ったらすぐに引き返して走って行ったぞ」
利根さんが呆然とした声を出しました。
電は知っています。こういう時は
「五十鈴さん!追いかけて!早くっ!!」
「え、えぇ!?なんで!?」
その場の空気と電の勢いに圧されたのか五十鈴さんは走って大淀さんのあとを追いました。
「やれやれだぜ、なのです」
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「ハァ…、ハァ…!」
何故かあの場の空気と電の勢いに圧されて大淀を追いかけるハメになったんだけど……しんどい!
あー、ダメだ、アイスクリーム食ったばかりでいきなり走っちゃったからお腹つりそう。
「ヒィ…、ヒィ…お、大淀~!…待って~!!」
私の先を走っていた大淀は私の声に気づいたようで、グラウンドの木陰で止まった。
少しして私も追いつき、大淀のいる木陰に入った。
「ゼー、ハァ…、ハァ、大淀、あんた…、長良型の私が追いつけないなんて、なかなか、やるじゃないのぉ…」
「…………」
大淀は木陰でうつむいて震えている。
こ、これは、もしかして……!
「お、大淀…?」
「フ…!ヒィ…!ッホ…!」
で、でたぁー!!大淀名物気持ち悪い笑い方じゃあー!!
「ッホ…!ご、ごめんなさいね…プフ…!食堂に近づいたら電ちゃんと五十鈴さんの話を聞いて…ングッ…!すれ違いが……ゥウッ…!」
「!、あー、…大淀のことが好きかって聞かれて、違うって言ったけど、仲間としてって意味なら好きなんだからね…」
「ッホグ…!ツ、ツンデレ…!フヒッ…!」
な、なんだろう…?もしかして、私、ウケてる…?
「あと、私は普通にイケメンが好きだから…!」
「ッ!…ヒィッ…!て、提督…ゥウッ!」
「イケメンが………好きだから!!」
「なんで…っ!…へヒヒッ!…二回も…フグッ!」
私はそうやってしばらく大淀の気持ち悪い笑い方を堪能した。
大淀のこの気持ち悪い笑い声を私だけがこの瞬間に独り占めしている。
ふと、そんなことを思って、今までに感じたことのない満足感や充実感にも似た何かを感じた。
「フフッ…!ヒィ…!…ッホッ…!ゥウッ!」
私は、五十鈴は、大淀のこの気持ち悪い笑い方が………
ーーーー好きだ。
登場人物
電
マジヤバクリーチャー顔グロメン斧田の初期艦。
ラブコメマンガに最近はまっている。
長門さん
私もいなじゅまに「お帰りなさい」って言われたいんだが!?
五十鈴
大淀の笑い方がクセになっちゃった娘。
大淀のウケを頻繁に得る斧田をライバル視するようになる。
大淀
※大淀名物気持ち悪い笑い方じゃあー!!
は全ての大淀さんがやる訳ではありません。