合同演習後の夕食会の様子。
演習が終了し、場所は食堂、これから夕食会が始まる。
テーブルにはカレーに親子丼、ペペロンチーノ、大根サラダにポテトサラダが並べてある。
演習に参加した娘たちが入渠している間に私と扶桑、高雄、青葉でカレー、親子丼、ペペロンチーノを作り、途中で今日の哨戒組だった北上、大井、不知火が入渠あがりにサラダ類を作ってくれた。
「えー諸君、演習よく頑張ってくれた。さむそん鎮守府の皆さんも今日は本当にありがとう。ささやかだが夕食を用意させてもらった、扶桑をはじめウチの娘の料理の味は確かだ、遠慮なくたくさん食べるように。
では、いただきます!」
『いたぁだきます!!』
みんな好きに食事を摂りだした。
さむそんの艦娘たちの口にあったようで皆モリモリ食べてくれている。
私は器にカレーを大盛りし、隣の席の矢間田の前に置いた。
矢間田は白露型の娘たちが固まって座っている席をガン見している。
「ほら、カレーだ、好きだろう?大盛にしといた」
「あぁ、どうしてあそこに僕の席がないんだ。いいなぁ、そうだ、僕だって時雨だ。交じってきてもいいんじゃないかな……」
なにやら、ぶつぶつと言っている。
時雨って名前でもお前は矢間田だろうが。
「私の隣でもいいじゃないか」
「せ、誠一郎…しゅき……!」
「お、おう…とりあえずカレー食べろよ」
「うん!……あ、誠一郎が食べさせてよ!トモダチだろ?ほら、あーん」
「よしなさい!艦娘たちの前で…」
一応艦娘たちの前だ、提督の威厳は保たなければいけないだろうに。
それにこいつ、相変わらず距離感が近いな?
いや、この距離感の近さがこいつだったか…。
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あの矢間田時雨とかいう提督、髪は短いし、胸もぺったんこだけど………。
間違いない、白露型の時雨ね。
艦娘のはずである時雨がなぜ提督に?
そして…………
なぜあんなに私たちの提督にベタベタしているのかしら?
「ねぇ、大淀…?」
「はい、扶桑さん」
「さむそんの矢間田提督って……」
「時雨ちゃんですね、艦娘あがりのようですが」
聞けば艦娘あがりとは試験に合格して艦娘を退役して戸籍を得た娘のことらしい。
矢間田提督は時雨が退役して、提督として軍に戻ってきたということになるのね。
ということは……矢間田提督は……正真正銘、女ということになる。
でも、提督は時雨を男だと言っていたけど、どういうことなのかしら?
というか時雨、よその女が……提督のそばで、ベタベタと……。
「扶桑さん、落ち着いてください!スプーンが愉快なオブジェになっているじゃないですか…」
「大淀こそ、湯呑みが粉々になっているわよ…」
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「はぁーっ!!」
食事中に鳥海さんが突然気合いを入れだしました。
まるで内なる何かと戦っているかのように。
「ど、どうしたんですか?鳥海さん…?」
「は、羽黒ちゃん、私を、私を殴ってくれ…」
「え、えぇ…?」
鳥海さんはまるで大罪を犯してしまったかのように懺悔しだしました。
「あの矢間田とかいう提督……」
「……時雨ちゃんですね、びっくりしました。艦娘でも提督になれるんですね」
「確かに…ってそうじゃなくて、彼女、髪が短いし胸がなくてボーイッシュでしょ?」
ボーイッシュ、その言葉を聞いて私は提督の横にいるであろう矢間田提督に視線を向けました。
なんだかやけに二人の距離感が近い感じがします。
ご、ごくり……!
鳥海さん、あなたまさか……。
「彼女がもしショタボーイだったら……、ショタボーイ攻めの野獣受けだったら……、そんな妄想をしてしまったのよ…」
「!!」
カワイイ系男子×野獣……っ!!
圧倒的…!破壊力…!!
ハァハァ、こんな場面でソレを見つけてしまうとは、鳥海さん、あなた流石だよ!!
い、いやそれでも鳥海さんは何をそんなに後悔している様子なんだろう?
……カワイイ系男子…?…ハッ!
否っ!!矢間田提督は女の子であって、男の娘ではない!!
それに提督には憲兵さんっていう立派な嫁(※羽黒の独断と偏見)がいるじゃない!
駄目ですよ!提督、誘惑に負けないで!
「……鳥海さん、きっと提督もあそこで誘惑と戦っています。だから、私達は信じましょう。
私達の提督を…!」
「は、羽黒ちゃん…!そ、そうよね、確かにショタボーイは魅力的だけど、提督ならきっと…!」
「あなたたち、さっきから何言ってるの?大丈夫?
鳥海もだけど羽黒ちゃんも大切な妹みたいなものだから、お姉ちゃん心配になるわ…」
高雄さんが鳥海さんと私を困った感じで見つめていました。
お姉ちゃんとして接してくれる高雄お姉さんに少し萌えました。
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今日は私の妹たちに会えてとっても幸せ。
見た目はなぜかみんなよりちんちくりんな私だけど、演習ではいっぱい活躍したから1番艦としてちゃんとお姉ちゃんらしいところを見せられたかな。
「白露姉さん、すっごく強かった!」
「こっちの砲雷撃が全然当たらないなんて…」
「こんなに……ちっちゃいのに……」
「イッチバーン!」
ふっふっふ、春雨と五月雨は私を尊敬した目で見ているようね。
山風?お姉ちゃんは自分でご飯食べられるからとりあえず膝から降ろしなさい。
「…スンスン」ギュゥ
降ろしてください…。
「ちょっと!夕立も頑張ったっぽい!」
春雨に五月雨に山風ももちろんだが夕立だって可愛い妹だ。イチバンは私だとしても夕立もかなりいい動きをしてた。
砲撃による弾幕と私の動きで春雨たちを誘導して、その先で魚雷で仕留めてMVPを取ったのが夕立だった。
「イッチバーン!」
「白露が褒めてくれてるっぽい」
「私達も精進しないと」
「ウチの村雨もかなり強いよ!」
「白露と…いい勝負……」
へぇ、今日はいないようだけどさむそんには村雨もいるんだ。会ってみたかったなぁ。
そういえば、なんで時雨はこっちじゃなくて提督の隣に座ってるんだろう。
「時雨は戦わないっぽい?」
「時雨姉さんは艦娘を退役して提督になったらしいです」
「一応艤装は出せるらしいけど、見たことはないかな」
「私達を大事にしてくれてる…」
ふーん、よく分かんないけど、提督になれちゃうなんてさすが私の妹ね!
後で撫でてあげるわ!
「そっちの司令官は…」
「その、なんていうか、すごく怖そうだなって」
「……大丈夫なの…?」
私の提督が怖そう?そうかしら?全然そんなことないと思うけど。ねぇ夕立。
「提督さんは優しいっぽい!全然怒らないし」
「そ、そうなの?」
「国防だとか堅いところがあるけど、夕立たちを大事にしてくれてるし、頼りにしてくれてる」
「へぇ」
「男らしいところもあってカッコいいっぽい!」
「か、カッコいいですか…?」
夕立はよく分かっているじゃない!そういえば一応私より先にここに着任してたもんね。
「時雨姉も……すごくなついてるみたい…」
提督のほうを見てみると、相変わらず無表情だがいつもより優しい目をしている気がする。
時雨はニコニコしているし。
姉妹艦に優しくしてくれる提督に笑顔の妹。
そんな光景を見れて私はすごく嬉しい。
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夕食会を始めてしばらくすると、厨房のほうから瑞鳳がひょっこり出てきた。
手には玉子焼きの載った皿。
それを持って私と矢間田の席へ寄ってきた。
「あ、あの、よ、よろしければどうぞ…!」
「ウチの瑞鳳の玉子焼き、美味しいよ!夕食までお世話になってるし、是非食べてみてよ」
「ほう、瑞鳳が作ったのか」
「あ、す、すいません!勝手に厨房をお借りしました!」
「いや、かまわない。…どれ、一ついただこう」
皿の上の玉子焼きを一切れ摘まむ。
……っ!!
圧倒的…!フワッフワッ……!!
卵の優しい風味と優しい口当たり、そして何よりこの……フワッフワッ感!
まるで職人の奥義を垣間見たかのようだった。
「どうだい?」
「こいつは、美味い!……ありがとう、瑞鳳!」
「は、い、いえ、お口にあって何よりです!」
「……瑞鳳、そんなに緊張しなくてもいいんだよ、誠一郎は顔は怖いけど全然怒ったりするようなヤツじゃないから」
う、うむ、やはり私の顔が怖がらせてしまっていたか、かといって笑顔で接しようとすれば電の二の舞になりかねんしな……。
「え、えへへ、他の皆さんにも玉子焼き持っていきますね!」
瑞鳳は照れたようにそそくさと離れていった。
いいなぁ、戦力にもなって演習でも頼りになって飯も上手い、……空母、ウチにも来ないかなぁ。
「……誠一郎、今日はずっとどうしたんだい?」
「何がだ?」
「君、全く笑わないじゃないか、そんなんだから怖がられてしまうんじゃないか?」
「………うむ、威厳を保つのは提督としての務めだからな」
い、言えない!以前に私の笑顔が電のトラウマになりかけたことなど、同じ提督としてライバルとして恥ずかしい!とりあえず提督の威厳のためと弁明しておこう、嘘ではないしな!
「ふーん…僕と会うのが実は嬉しくないのかと思ったよ…」
「そんなことはない、正直ホッとしたまである」
普段周りは艦娘たちしかいないし、気心の知れた同性の友人との再会でだいぶリフレッシュできた気がする。
「せ、誠一郎……」トゥンク
矢間田よ、お前が友情に厚いのは知っているが、頬を染めるんじゃない!
「「那珂ちゃん!今日もカワイイ!!」」
余興のつもりか、ウチの那珂とさむそんの那珂が一緒に歌い出した。
さむそんの長良や秋月はウチの五十鈴や球磨型と談笑していて、白露型や電たちと一緒になって那珂の歌を聴いている。
扶桑と大淀、瑞鳳、利根や高雄たちも茶をしばいて皆を見守っているようだ。
そんな様子を青葉が写真に収める。
もう少し頑張って鎮守府の規模を大きくしたらこんな風にさらに賑やかな感じになるんだな。
夕食会を終えて、さむそんの面々を私と扶桑が正門で見送る。
「それじゃあ、今日はありがとう」
「いや、それはこちらこそだ、お前のおかげでどんな鎮守府にしたいか、改めて考えることができた」
「…今度はウチに来なよ、もてなすからさ」
「ふ、そうさせてもらおう。では気をつけて帰るんだな」
私が敬礼すると矢間田も返礼してバスに乗り込んだ。
そしてさむそん鎮守府のバスは走りだし、帰っていったのだった。
「提督…矢間田提督は……」
「どうした……、イケメンだったろ?」
「……いえ、なんでもありません」
「?」
とりあえず、明日からまた頑張っていこう。ウチの娘たちと共に。
登場人物
斧田誠一郎
今回も最後まで矢間田が女だとは気づくことはなかった。この翌日空母レシピで建造を回す。出てきた艦娘は……。
矢間田時雨
斧田に対して距離感が近い。トモダチだからね。
シスコン。
扶桑
提督に対して距離感の近い矢間田、それを許す提督にモヤモヤ。今回最後に提督が矢間田を男だと勘違いしていることを察した。
羽黒
高雄お姉さんにも萌えちゃう。腐の使徒。
白露
ぬいぐるみ大サイズの白露。
妹たちに会えてハッピー。
瑞鳳
戦力になり、演習の助けになり、玉子焼きが職人レベルの軽空母。斧田に空母レシピを回そうと決意させた要因。
CBさん、誤字脱字修正ありがとうございました。とても助かりました。
自分ではなかなか気づけないもんだなぁと改めて思いました。
反省する為に週末は禁酒禁煙します。←6/10