「あら、長門。最近よその鎮守府まで、演習の指導に行っているらしいわね」
その演習の為の外出許可証をもらいに行く途中で私は同僚の加賀に出会った。
別に秘密にしているわけでも、後ろめたいことがあるわけでもないので私は素直に頷く。
「あぁ、そうだが、それがどうかしたのか?」
「いえ、別に、ただ小耳に挟んだから気になっただけよ。あなたが自ら赴くほどの逸材がよその鎮守府にいるの?」
「ふむ、そうだな、まあ逸材というか……実は誠一郎のじぇいこぶ鎮守府なんだが」
「……あぁ、あの青年ね。なるほど、あなたたち仲が良かったものね」
「たちあがったばかりで鎮守府全体の錬度はまだまだだからな、手を貸してやっている次第だ」
それに……
「あと、むこうの駆逐艦たちにだいぶなつかれてしまってなぁ!」
いやぁ、しらちゅゆと夕立の甘えっぷりはこの長門といえど参ってしまうなぁ!全く!
しっかり指導して一人前の艦娘にしてやらないといけないからなあ!できればおはようからおやすみまで世話して、いや、指導してあげたいところだ。フフフ…。
「そ、そうなの……あの、長門、ほどほどにね」
「ちなみに明日はヤツの鎮守府に行く日なんだ。それで今から提督のところへ外出許可証をもらいに行くところだ」
「あら、そうだったの。また指導に?」
「あぁ、先週、とうとうヤツの鎮守府に空母が来たらしくてな、私は門外漢(艦)だが基礎的な訓練の指導はできるから」
「そういえば、彼のところ、今まで空母がいなかったらしいわね。上手く運用できるのかしら?」
「ヤツは己の艦娘の話をきちんと聞くヤツだ、最初こそは分からんがきっと大丈夫だろう」
「……そうね」
加賀も誠一郎とは付き合いがあったし、ヤツの人となりは分かっているのだろう。
「それで、彼の待望の空母は誰なのかしら…?」
この加賀の問いに答えたことを私は直後に後悔することになる。
「確か、誠一郎の話だと、翔鶴型二番か…」
「ふぅん……」
「あっ…!」
そうだった、ウチの加賀は瑞鶴好き好き、瑞鶴フリークなんだった…!
以前エンガノで瑞鶴に良く似た深海棲艦に違う意味で襲いかかり、撃退させたこともあったな。
幸いウチには翔鶴型がいないから問題ないが、いや…いないからこそ、こいつはここまで拗らせてしまったのだろうか?
「私が指導について行ければ空母としての訓練もできるのだけど?」
「あっ、あー、提督が執務室にいる内に向かわなければだったー」
面倒なことになりそうな予感がしたため、会話を無理やり切り上げて執務室に向かうことにする。
スタスタスタスタ……
スススススススス……
っ!?つ、ついて来ただと!?
「私が指導について行ければ空母としての訓練もできるのだけど?」
「お、そうだな」
スタスタスタスタ……
スススススススス……
しまった、執務室の前に着いてしまった。
「か、加賀も提督に用事があるのか?」
「私が指導について行ければ空母としての訓練もできるのだけど?(ねっとり)」
「……………、提督に進言してみる」
「ふふ、鎧袖一触ね」
こうなったら仕方ない、執務室には鳳翔もいるはずだ。
第2艦隊の主力と第1艦隊の主力が揃って出払うなど鳳翔が許可を出さないだろう。
コンコンコン
『ん、入ってどーぞ!』
ガチャリ
「長門だ、失礼する」
「加賀です、失礼するわ」
「あら、加賀ちゃんも一緒なの?」
やはり鳳翔もいてくれたか。おそらく私が許可証をもらう為に来ることは分かっていただろう。だが加賀も同じタイミングで来たことに不思議そうに首をかしげた。
「ゴリさん…は、演習監督で外出許可証…だよな。…で加賀はどうしたんだ?」
提督が加賀に来訪の旨を尋ねるが
「チラ、チラ」
露骨にチラチラ私に視線を向ける、というかチラチラと声に出している。
「あー、そのだな、誠一郎の鎮守府に空母が来たと話したろ?さすがに私は門外艦だから同じ正規空母の加賀を同行させればと思ってだな…」
「あらまあ、加賀ちゃんも?」
「なるほどね、えっとスケジュールは………うん、問題なさそうだな」
あれ、鳳翔は普通に茶を出し始め、提督はスケジュールを確認して問題なさそうとか言っているんだが…。
「いいだろう、許可しよう」
「やりました(ペカー!)」
あのクールな加賀がガッツポーズだと!?
「お、おい、いいのか?さすがに主力が二人も出払うなんて……」
「君たちの要望にはできるだけ応えたい、いつも頑張ってくれてるし。それに、主力が二人抜けてもいざとなったら鳳翔いるから」
「」
「二人とも、大丈夫だとは思うけど問題行動なんて起こしちゃダメよ」
「もちろんです鳳翔さん!かわいい後輩に格好悪いところは見せられませんもの」
外出許可証を受け取った私達は執務室を出て寮の方へと向かう。
明日は加賀が随行することになったが鳳翔と提督の許しも出たことだし大丈夫だろう。
加賀は基本的にしっかりした娘だ、いくら瑞鶴フリークだったとしてもよその鎮守府で粗相をすることはさすがにないだろう、ないはずだ。多分。
「明日はマルナナマルマルに出発する予定だ」
「分かったわ、海路を行くのよね?」
「あぁ、ヤツの鎮守府まで2時間ほどで着く」
「そう、それじゃ私は準備があるからこれで…」
加賀はそう言って空母寮に戻っていった。
クールなイメージをぶち壊す、エビス顔でニヤニヤしながら。
あ、誠一郎に加賀も付いてくることを連絡しとこ。
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「え、本当ですか!それはありがたいですね、是非よろしくお願いします。……はい、それではお待ちしておりますよ」
最上ちゃんと一緒に近海のパトロールを終えて提督さんに報告しに行くと提督さんが電話をしていた。
報告するのは今日の旗艦の最上ちゃんだけでいいらしいけど執務室に行くと提督さんからエンゼルパイを貰えるから付いてきちゃった。
鎮守府のみんなにはナイショだよ。
「提督、近海の哨戒、行ってきたよ」
「うむ、ご苦労だった。ありがとうな」
「途中でヌ級2、へ級1、ロ級2と会敵したけど瑞鶴のおかげで凄く楽に撃退できたよ」
「ほう、さすが正規空母だな」
「ティヒヒ、そんな…私なんてまだまだ錬度が低いから、一生懸命やってるだけだし…」
最上ちゃんも提督さんも私みたいな新参者を褒めてくれるのは嬉しいけどちょっぴり照れくさくもある。
私が建造されたのは先週で、つい最近のことだった。
この鎮守府で最初の空母だったらしく、みんな凄く歓迎して優しくしてくれたから戸惑っちゃったよ。
提督さんは歴戦の大提督みたいな見た目だけど、
「私もこの鎮守府もまだまだ新米でな、お前がこの鎮守府で初の空母だ。これから苦労をかけるかも知れないが仲間たちと共に是非力を貸して欲しい」
って言ってた。提督さんも新米だけど頑張ってるんだよね。私も新米だけど、この鎮守府のみんなの為にも一生懸命頑張ろうって思った。
「そういえば、さっきの電話は?」
ソファに座ってエンゼルパイを頬張る私の横で最上ちゃんがニコニコとお茶を出しながら提督さんに尋ねた。
最上ちゃんはぱっと見ボーイッシュだけど、仕草が所々上品な感じで女の子らしくて可愛らしいなぁ。
「うむ、ちょうど良かった。先ほどの電話は横須賀の長門さんからでな」
「あぁ、明日は長門さんが来てくれるんだったね」
横須賀の長門さんってあの戦艦長門のことかな?艦娘としては初対面だ。どんな人なんだろう。
「長門さんって戦艦の?」
「そうだよ、横須賀鎮守府の長門さんは提督の知り合いらしくてちょくちょくこっちに来て演習の指導や白露たちの遊び相手をしてくれてるんだ」
「へぇー、優しそうな人だね」
「それで明日なんだが、長門さんが瑞鶴の為に加賀さんを連れて来てくれるらしい」
「わぁ!本当!?」
加賀さん!空母としても艦娘としても先輩なんだ。
艦娘としてはやっぱり初対面だけど、きっと立派な人なんだろうなぁ!
「加賀さんも提督の知り合いなの?」
「うむ、厳格な人だが、常に厳しさの中には優しさがある人だ。瑞鶴、演習では加賀さんからハードな要求があるかも知れないがそれは瑞鶴のことを考えてのことだと頭に入れておいてくれ」
「へぇ、立派な人なんだね」
「私、頑張る!頑張ってみんなを守れるくらい強くなりたいから!」
艦娘として、空母としてみんなを守れる力が欲しい。
私が最後の一人にならなくてもいいように、私がみんなを守りきれる力が。
だから頑張って強くなりたいと思うの。
それに、加賀さんに会うの楽しみだなぁ!
登場人物
長門さん
後進であるじぇいこぶの面々を指導し、可愛い駆逐艦にちやほやされるリア充。
加賀さん
普段は人前ではクール。横須賀の主力の一人。深海鶴棲姫を素手で撃退した(ように周りには見えた)ことがある。
深海鶴棲姫
お気に入りのパンツを加賀さんにひん剥かれて退散。
斧田誠一郎
建造時間06:00:00を見てあまりの長さに内心びっくり。出てきた瑞鶴に内心ガッツポーズ。
最上
鎮守府初の空母瑞鶴を甘やかす。可愛い。
瑞鶴
ツインテールで弓を使う。じぇいこぶ鎮守府初の空母。みんなが甘やかしてくるのがちょっぴり照れくさい。