かつて、私は、私達はまだ充分な錬度ではないあの娘を一人残したまま………。
今度こそ、未熟なままのあの娘を一人になんかしない。
新しいカラダと強い意志がもたらす力で、今度こそ……。
~他鎮守府との合同演習~
『加賀さん…!?』
『えぇ、あなた、瑞鶴なの?』
『……ウチの加賀さんとはやっぱり違う感じがしますね』
『あら、そうなの?』
『なんだか雰囲気が柔らかいような…』
『五航戦、こんなところで陰口でも叩いてるのかしら?』
『げっ、加賀さん!』
『ほら、こっちにくるのよ。まだまだ教えないとダメなところがあるのだから…!』
『は、はーい!』
『……あの瑞鶴にはもう別の私がいるから大丈夫ね』
……瑞鶴。
~別の他鎮守府との合同作戦~
『どうだ!加賀さんっ!!』
『今回はたまたまよ。慢心してはダメだといつも教えているでしょう?』
『ぐっ、つ、次もきっと私が…』
『だけど、五航戦にしては良くやったわね。瑞鶴』
『か、加賀さん…!』
『あの瑞鶴にも別の私が……』
…瑞鶴…瑞鶴。
~別の他鎮守府との宴会~
『瑞鶴、顔にごはんつぶが付いてるわ』
『え、ウソ!』
『じっとしなさい……ほら、取れたわ』
『う、あ、ありがと。加賀さん』
『全く、五航戦はもう少し行儀良くしなさい』
『う、う~~!』
『……………』
…瑞鶴、瑞鶴、瑞鶴…。
ーーーー『加賀さん!!』ーーーー『五航戦』
ーーーー『加賀さん…!』ーーーー『瑞鶴』
ーーーー『加賀さん!?』ーーーー『…五航戦』
ーーーー『加賀さんっ!』ーーーー『瑞鶴』
ーーーー『かがしゃん!』ーーーー『瑞鶴?』
『……………』
私には…、私の瑞鶴は、どこかしら?
あぁ、瑞鶴。
瑞鶴、瑞鶴、瑞鶴、ずい、ずい、ずいずい、ずいずいずいずいずいずいずいずい………。
~捷号決戦、エンガノ~
『ノコノコトキタノ? ハッ、バカ…ネ……。
ワザワザシズミニ……シズムタメニ…キタ『瑞鶴っ!!』エッ!!?』
『瑞鶴っ、瑞鶴、瑞鶴ぅ~!!』
『か、加賀!?単騎でどうにかなる相手じゃない!!戻れっ!!』
この時に起きた現象は忘れることはない。
私以外の全てが止まっている。
いや、完全に止まっているわけではない、ゆったりと動いてはいる。
私達空母は多数の艦載機を同時に扱うために非常に高い集中力を身に付けなければならない。
その集中力が極限まで高められると高速で動く物体もスローモーションに見えることがあると聞く。
この時の私に起きた現象はそういったものだったのだろう。
瑞鶴への想いが私に極限まで高められた集中力をもたらしたのだった。
『瑞鶴ぅ!』
『シュ、瞬間移動ッ!?』
『瑞鶴、瑞鶴!』
『ヒエッ!ハ、放セッ!離レロ!!』
瑞鶴(?)にしがみつく。離さないわ!今度こそあなたをひとりぼっちにしないから。ハアハア。
瑞鶴(?)の顔が怯えているかのように歪んでいる、なんだか可愛らしいわね。ムラムラ。
…ちょ、ちょっと、瑞鶴(?)落ち着きなさい!暴れないで!
そんな表情でハアハア、抵抗されたら!ハアハア、……容赦しないわよ…!
『ヤメ、チョ、ソコハ!!』
『ハアハア、ハアハア』
『ヒイ、ヤッ、ヤメテヨウ!!ーーアァッ!?』
『…やりました』
瑞鶴(?)の下着を引き抜いたところでつい気が緩んでしまった。
その隙を突かれ、瑞鶴(?)は全速力で離れていったわ。
いけない、どうやら慢心してしまったようね。
『コ、コレデ勝ッタト……思ウナヨォ…!』
そう言って瑞鶴(?)は猛スピードで遥か後方へ逃げ去り、見えなくなってしまったわ。
『か、加賀……』
当時同じ艦隊だった長門が瑞鶴(?)の温かさを残す下着を握りしめた私を見つめていたのだった。
あれからも私は瑞鶴を探し続けたわ、きっと一人で待っているだろうから。
そして遂に今日、私は私の瑞鶴に会うことになる。
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「航空母艦、加賀です。あなたが瑞鶴ね、それなりに期待しているわ」
演習場となる近海に立つ私の前で加賀さんが挨拶してくれた。
青い襷と袴が良く似合っていて、涼しげな表情で薄く笑いかけるとサイドテールがふわりと風に揺れた。
加賀さんって、こんなにキレイな艦娘だったの!?
予想以上の加賀さんの美しさに私は思わず見蕩れてしまい、返事が遅れちゃった。
「しょ、しょうかくがたこうくうぼかんにばんかん、ずいきゃくでしゅ!」
はぅぅ!か、噛んじゃったよぉ、恥ずかしい!
「激カワ(ボソッ)」
「え、えと、今日はよろしくお願いします!」
加賀さんはそんな様子の私を穏やかに見守っているようだった。
「あら、緊張しているの?緊張感を持つのは大事だけど、空母は落ち着いて構えていないとね」
提督さんからは厳格な艦娘だって聞いてたから苛烈なイメージをしてたけど凄く優しそう。
その美しさも相まってまるで戦女神様みたい!
心なしかキラキラしている気がするし、これがマブシイってことなのかな。
まずは海上に浮かせたブイを狙って爆撃や雷撃の演習。
加賀さんがまず手本を見せてくれたけど凄かったなあ、長弓を構えて射る動作がキレイだったし、ピンポイントでブイを撃沈していって。
私も私なりに一生懸命頑張った。
「爆撃はなかなか良かったわね」
「あ、ありがとうございます!」
ティヒヒ、爆撃は少し自信があったから褒められて嬉しいな。
「次は制空の訓練よ、戦闘機を発艦してバルーンを撃ち落としなさい」
「はい!」
加賀さんの零式艦戦21型がバルーンを引きながら上空に飛び立った。
私も弓を引き零式艦戦21型を発艦させる。
同じ型の艦載機なら撃ち落とせるはず、なのに加賀さんの零戦に私の零戦は追いつけなかった!
しばらくして加賀さんの零戦が加賀さんの甲板に着艦する。
私も零戦を着艦させると加賀さんがゆっくり近づいてきた。
「発艦速度は充分速いし、筋はいいのだけれど、まだまだのようね」
「うぅ、どうすれば追いつけるようになりますか?」
「へへ、激カワ(ボソッ)」
錬度の差なのかも知れないけれど、追いつけないのはちょっぴり悔しい。
「焦らなくても大丈夫よ、と言いたいところだけど、そうね、集中力を高められるように修練方法を教えてあげるわ。じぇいこぶ鎮守府には弓道場はあるかしら?」
加賀さんが私の頭を撫でながら聞いてきた。
加賀さんの匂いがふわりと私の鼻を擽る。
顔が少し熱い。
「あ、ありがとうございます!確か、トレーニングルームの隣にあります」
「そう、それじゃあここで一旦休憩にしましょうか、私達二人はお昼から弓道場で稽古しましょう」
「はい!」
食堂でお昼ごはん(提督ラーメンしょうゆ味 大盛 ライス付き)を加賀さんと食べる。
「このラーメン、美味しいわね」
「はい!今日は加賀さんと一緒なのでいつもより…あっ…!」
「激ペロ(ボソッ)」ニッコリ
私ったら変なことを、いや別に変じゃないけど口走っちゃった。加賀さんは微笑んでくれたけど、変な娘だって思われてないかな?
恥ずかしくなってライスを掻き込む。
「…瑞鶴、頬にごはんつぶが付いてるわ」
「え、あ、ヤダ恥ずかしい」
「じっとして……ほら取れたわ」
加賀さんの指先が私の頬に付いたごはんつぶを取ってくれた。
「あ、ありがとう、加賀さん」
「やりました(ボソッ)」
……キレイで面倒見が良くて凛々しくて、こんな素敵な人が私の先輩なんだ。
この時、私は自分が幸運の空母なのだとはっきりと自覚したのだった。
登場人物
加賀さん
今まで数々の加賀×瑞鶴らしき場面を目の当たりにしてきた。クールビューティーの皮を被った瑞鶴スキー。
瑞鶴
クールでビューティーな加賀さんに憧れを抱く。