何人か書こうと思ったけど今回は香取教官の視点だけです。
○月○日
今日は新しく士官候補生を迎えた。今年の新人で私の受け持つ香取組には十名ほどだった。
その中でも気になる候補生が二人ほどいた。
まずは矢間田(やまだ)候補生、どこか見たことのあるような娘だと思ったらどうやら私と同じく艦娘あがりの娘らしい。
現場を経験している分、将来的には提督として私たち艦娘を上手く運用してくれる士官になってくれると嬉しい。
そう思うと教練に熱が入りそうだ。
もう一人は斧田候補生…なんというか、ごめんなさい。
見た目が強烈だったために印象に残っただけ。
いや、私たちが見た目だけで判断するのは愚かよね。
駆逐艦のように幼い見た目でも大人びた娘や巡洋艦、戦艦以上の実力を持つ娘もいるもの。
どんな見た目の候補生だろうと私は教練を通して海軍魂を伝授するだけよ。
○月◎日
各艦ごとの長所や短所を伝えた上で、敵戦力を軽巡一、駆逐三とした時等の近海のみを想定した場合の艦隊を組む教練。
「戦艦だけで良いじゃん」
「空母でも良くね」
「先の資材を考えて…」
「なるほど…」
候補生たちは良く話し合い励んでいた。
ただ、斧田候補生はその見た目で敬遠されて上手く馴染めていないようだった。
矢間田候補生も初歩中の初歩だからと積極的にはなっていない。
後者は仕方ないかも知れないけど、斧田候補生については考えなければいけないわね。
○月☆日
それとなく矢間田候補生に斧田候補生と他の子たちとの橋渡しになってもらえないか頼んでみた。
彼女は二つ返事で引き受けてくれた。
△月△日
新人たちの教練を開始してもうひと月ほどたったのか。
皆一人も脱落することなく良く励んでいる。
初めに心配していた斧田候補生もいまや皆に馴染めているようだ。良かった。
そこは矢間田候補生のおかげか。
士官同士の連携が普段からしっかりできていれば合同作戦時の連携に役に立つはずだ。
□月○日
ここ二ヶ月間での斧田候補生の成績の伸びが凄い。
矢間田候補生に彼の様子を尋ねてみると、
「彼は教練がない時も自主的に勉強したり、鍛練したりしているみたいだよ。見た目はアレ(笑)だけど彼のような真面目な人が海軍を志してくれるのは、誇らしいね」
って。
普段の教練でも予習している子はいるが、その上鍛練も重ねているという。
見た目に反して今時珍しい好青年だと思った。
◎月△日
最近、香取組の子たちの成績が良いと褒められた。
嬉しいことだが私の教え方だけの力じゃない。
なんと斧田候補生を見習い、矢間田候補生をはじめとして他の子たちも自主的に訓練をやっているらしい。
誇らしいことだが私の普段の教練では物足りないのだろうか。
今週末に横須賀から波羅田大将が視察にいらっしゃるらしい。
そこで案内役を任せられた。失礼のないように気をつけよう。
◎月◎日
波羅田大将が視察にいらっしゃった。
思ったより若い方だったので驚いたが、護衛艦だろうか、側に仕える鳳翔さんを見て納得した。
非常に高い錬度と絆を持つ艦娘特有のオーラのようなものを感じた。さすがはこの国トップレベルの鎮守府だ。
少し手合わせしてみたいと昔の血が騒ぐ。
この自尊心のような気持ちを振り払いたくて思わず香取組の自慢話をしてしまった。失礼のないようにと思っていたのに、恥ずかしい。
●月○日
最近、週に一度ほど斧田候補生に面会者が訪れるようになった。
波羅田大将だ。
私が視察の案内中、斧田候補生のことを話した際に興味を持たれたらしい。
大将自らの課題を彼に課しているようだ。
やはり私の教練だけじゃ…。
そう矢間田候補生に相談したら
「いや、今の香取先生の教練は充分高レベルだから。むやみにレベル上げないでね。イヤ、マジで」
「自主練は別腹というか、皆斧田くんみたいに毎日やってるわけじゃないから」
とフォローしてもらった。
己の指導力を棚にあげるみたいだが、やはり斧田候補生は今まで見てきた候補生とは違うのかも知れない。
◆月○日
斧田候補生にどうしてそこまで頑張っているのか尋ねてみた。
すると、
「提督になりたいからです、私は……提督になりたい!」
とアツい決意の籠った瞳で強く答えてくれた。
普段仲間内で彼が「ハーレム」だとか言って「その顔でかい?(笑)」とジョークを飛ばし合ってヘラヘラしているところは見たことがある。
しかし、この時のように真剣で真っ直ぐな瞳の彼を見たのは初めてだった。
私は彼の一途な想いを知ってしまった。
彼の志を叶えあげたい。
彼の真剣な気持ちを受けてより一層教練に力を入れようと思った。
◆月★日
最近、斧田候補生の話しばかりだよね、と妹の鹿島に言われた。
確かにそう言われればそうだ。
なぜか少し恥ずかしくなった。
「斧田くんは、逸材なのよ」
「ふーん、姉さんがそこまで言うって珍しいよね」
「きっと素晴らしい提督になるわ」
そう、斧田くんは必ず立派な提督になる。
私が提督にしてみせる。
◆月◆日
最近、鹿島を斧田くんの周りでちらほら見かけるようになった。
私が彼の話ばかりするから気になったのだろうか。
★月◆日
珍しく鹿島から斧田くんの話が出た。
「斧田候補生、ものすごい努力家なんだね。見た目は怖いけど、話し掛けてみると真っ直ぐ!って感じで。ウフフ、可愛い!」
どうやら鹿島も斧田くんの人となりを認めたようだ。
彼の見た目に惑わされることなく彼の志のアツさが認められるのは良いことだ。
なのに、
「………そう、ね」
「あんなに真面目で努力家な子が提督になったら艦娘を大事に運用してくれそう」
鹿島が嬉しそうに彼のことを話すのを見てなぜかモヤモヤした。
いやいや、そうだ、斧田くんはいずれ立派な提督になる。
斧田くんなら艦娘たちを上手く、大事に運用してくれるに違いない。
斧田くんの、……艦娘…?
その時、私は閃いた、
圧倒的、閃き。
今は退役して養成施設の教官をやっているが、申請すれば復役も可能かも知れない。
なにせ、戦果トップの一角、元呉鎮の私だ。
復役するとなると錬度は少し落ちるかも知れないが、戦力にはなる。
彼が提督となった暁には復役して、
「彼の艦娘」
になるのはどうだろう。
私は彼を立派な提督にすると心に決めている。
それならこの養成施設で指導するだけじゃなく、彼の艦娘として彼の側で指導していけばよいではないか。
★月★日
斧田提督がこの養成施設に来てもうすぐ一年が経とうとしている。
なんだか最近、鹿島が斧田提督を不埒な目で見ている気がしてならない。
いや、私は何をおかしなことを、不埒って。
自分でも嫉妬じみた話だと思うが彼の志の高さを知っている分、鹿島には彼に近づいて欲しくない。
彼は私の教え子であり私の提督なのだ。
彼を立派な提督にできるのはワタシダケ…。
いやいや、何をおこがましいことを考えているのだ私は。
しかし、ふとありえないことでも考えてしまうのだ、鹿島が、斧田提督を…。
斧田提督カラ鹿島ヲ引キ離サナイト!!
いっそのこと、斧田提督を飛び級で修了させるのもありじゃないか。
実際彼はもう現場で補佐官としてでも通用するレベルだ。
斧田提督のことだきっとすぐに頭角を表し、提督となってくれることだろう。
そして彼が提督になれば、私はーーーー
ーーーー待ッテイテクダサイ、斧田提督。
登場人物
香取教官(?)
カトリーヌ・ヤンデル 女
見た目の良くない斧田を嫌悪するも、対してその一途さを評価し陰ながら見守る恩師、というキャラにしたかったのにどうしてかこうなった。コワレハジメタ。
タグを増やさなきゃ。
矢間田時雨(?)
やまだ しぐれ 女
候補生時代の斧田の同期生。
艦娘が退役した艦娘あがり。
候補生時代、斧田の一番近くで長く一緒にいた。
あれ、もしかしてこいつ前話に…?
艦娘あがりという設定について
艦娘が試験を受けて合格すると戸籍を与えられ退役することができる。
身体を改造されて艤装が出せない、とかはなく普通に出せる。(緊急時以外は出してはいけない)
いざというとき提督も戦えたら…
というコンセプトの元、艦娘あがりの提督もいたりする。
艦娘あがりの違反を取り締まる
艦娘あがり憲兵もいるお。
他の艦娘の話も書いてみたいです。