大本営への報告書に白露がドロップ艦として出現したことを書いて提出した。
おそらく白露を連れて出頭せよというような指示がくるのではないかと思う。白露を大本営へ預けろという命令もあるかもしれないが、そこは断固として拒否だ。
なぜなら白露はもうウチの娘だし、私も含め皆がとても可愛がっている白露を取り上げられたとなれば士気の低下につながる。
いざとなれば、知り合いの鎮守府たちを味方に付けての抗議も辞さないつもりだ。
当の白露だが、電と夕立、北上、扶桑に連れられて近海の哨戒へと出ている。
電、夕立、北上は改へと改装してあるし、扶桑にも出てもらったので、よほど安全だろう。
私は大本営と悶着する場合のことを考えて、一番信頼ができて尚且つ力を持った知り合いに相談することにした。
波羅田元帥である。
昨日私が電話でウチのとある駆逐艦について相談したいことがあると話したところ、今日の今に我が鎮守府に訪れてくれた。
「元帥、この度は相談に乗っていただきありがとうございます。……でもわざわざこちらまで足を運んで頂けるとは…なんなら迎えも出しましたのに」
「駆逐艦のことで君が相談があるってことをゴリさん(長門)が聞いていてね、なにがなんでもすぐ行くんだって引っ張り出されたって訳、あと固っ苦しいから普通にしてくれ斧田少佐(笑)」
若干疲れた様子の波羅田さんだがいつも通りゆるい感じであった。
いつもゆるい感じだがいざというときは誰よりも頼りになるアツい人だというのを私は間近で見て、提督というものの本当の姿を学んできた。
艦娘からの信頼も厚く、私が理想とする提督なのである。
その波羅田さんの横にはいつもケッコン艦である鳳翔さんがいるのだが今日はいない。
代わりに横に立っていたのは長門さんだった。
「私が、キタゾ!」
「ゴリさんが行くって聞かないもんだから。俺も一度弟子の様子を見に行きたかったのもあるし、俺の代理は鳳翔がしてくれるっていうからね。急だったけどサプライズはどうだったかな?」
「普通にびっくりしましたよ、でもありがたいです。こんなにすぐなんて…」
「誠一郎、私と君の仲じゃないか。すぐに駆けつけるさ、同胞よ」
長門さんが私の肩に手を置いてアツい眼差しを向けた。
長門さんは私が新米の頃の世話役だった。
冷静でアツく、クールな彼女は鎮守府内においての信頼は高く、皆のまとめ役になることの多かった。
そんな彼女と時にぶつかり合い、夢を語り合い、アツい友情を結んだのだ。
「お久しぶりです、長門さん、とても心強いです!」
二人を連れて鎮守府内を軽く旅行したのち、執務室へ招き入れた。
「きちんと運営できてるようで安心したよ。休暇中の娘たちは好きにのんびりしてるようだし。あとやっぱり、新築の鎮守府は綺麗だなぁ」
「ウチは基本的に作戦に参加していない時は哨戒以外はオフにしてます。トレーニングや演習を指揮できる娘がくれば追々考えていこうと思ってますが」
今現在、ウチに在籍している艦娘は近海とはいえ実戦で錬度をあげている。
もう少し戦力に余裕がでるか練巡のような娘がきてくれれば演習や艦隊行動の訓練に手をつけることができるのだが…
「まぁ、戦力不足に備えてって配備された鎮守府だけど現在は相手勢力による侵攻はだいぶ落ち着いている。
それにここは本土の守りを固める目的が主だから今はそんなに焦んなくても大丈夫さ」
「ふ、君や皆が良いならこの長門が演習を見てやってもよいのだがな」
「本当ですか?それはかなりありがたいですが…」
「ゴリさん、提督である俺の許しも得ようね。…あと鳳翔の許しも」
「む、そうだったな」
波羅田さんの言葉を聞いて思わずほっこりした。
部下の艦娘には分け隔てなく接する波羅田さんだがケッコン艦である鳳翔さんは特に大事にしているようだ。鳳翔さんも波羅田さんが大好きだし、お似合いのコンビだ。
「しかし綾波型も良いものだな、私達に手を振ってくれて。フフフ」
中庭でキャッチボールをしていた朧と潮、磯波のことを言っているのだろうか、長門さんは表情を緩めていた。
磯波は吹雪型だが。
長門さんは可愛いものに目がない。
普段は艦隊のリーダーとして威厳を保つべく、クールな表情を維持していた。海に出れば波羅田さんがゴリさんと呼ぶ所以の超バ火力で敵艦隊を蹴散らし、たまに被弾しても怯みもしない頼れる存在。
一見気難しい武人気質に見えるが、艦隊の皆、特に駆逐艦に優しく丁寧に指導する態度からは彼女の本性がにじみ出ていた。
「ところで駆逐艦のことについて相談というのはなんだい?」
「そ、そうだった!その相談とやら、是非聞かせてほしい。件の駆逐艦とはさっき見て回った中の誰かか?」
執務室で一息ついたところで波羅田さんから本題について聞いてきてくれた。
まずどこから話そうか、電の哨戒任務から話すか…
「今、海に出ていてここにはいないのですが、先日電が…」
「電か!!胸がアツいなっ!!」
「ゴリさん、落ち着け!」
「長門さん、落ち着いてください」
電が鎮守府近海を哨戒中、単騎のはぐれらしきハ級と邂逅。
戦闘しこれを撃沈したのち、海面が光り、そこに白露が出現。
各鎮守府に捜索願等ないか確認したところ、どこも出しておらず。
白露はドロップ艦だと思われる。
電が白露を我が鎮守府に所属させたいと強く希望。
私も電に同意し、白露に加わってもらった。
「いなじゅま×しらちゅゆ尊い!!」
「ゴリさん、ちょっと黙ろうか。……なるほど、ドロップ艦ね~、確かに大本営もびっくりだろうね」
「私は…、私たちじぇいこぶ鎮守府は、白露を仲間だと受け入れました。仲間は家族同様。もし、大本営が引き渡せと言ってきた場合に…」
「なるほどなるほど、俺に擁護してほしいって訳か」
「はい、知り合いの鎮守府にもお願いするつもりですが、はじめに最も力のある波羅田さんにお願いしたいと思って…」
「……ふふ、良いんじゃないか、自分に使える手を最大限に使って自分の艦娘を守ろうとする提督。そんな提督に弟子がなってくれていて俺は嬉しいよ」
「は、はい!ありがとうございます、なら…」
「いいだろう、本当にもしも、万が一、大本営と悶着があれば俺は君の味方につくよ」
ーー本当に、もしも、万が一………?
ん、何か違和感があるような…
「ーーただ、ドロップ艦は非常に珍しく、資料としてはわずかしか残ってないけど、今でも前線じゃ実は極々稀にあるんだ、その際の扱いは敵艦を撃破した艦隊の鎮守府に所属することになっている」
「えぇ!なんですって!?」
あれれ、つまりはーーーー
「だから白露は間違いなく君の鎮守府の娘になるはずだよ」
私の独り相撲だったという訳か……
「わっはっはっは、君の心配は杞憂だった訳だなぁ」
「え、えぇ、わざわざ来て相談に乗っていただいて、お手数をおかけしました」
久しぶりに自分の勉強不足を実感してしまった。まだまだ理想とする提督には道が遠い。
自分にはまだまだ学ぶべきことがあるのだ、精進しよう。自分の艦娘たちが自分たちの提督を誇れるような、そんな提督になるために。
私の目下最大の心配がなくなり、執務室で茶を飲みながら朗らかに談笑してしばらくすると、電から通信が入った。もうすぐ皆無事に帰投するらしい。
白露の初哨戒任務、無事に成功してくれて良かった。
ウチの娘が初任務の場合、私は港で送り迎えをすることにしている。もう港に着くらしいので少し急いで向かわなければ。
「私はこれから港で帰投する娘たちを迎えてきます」
「お、提督らしいな、俺もついてっていい?」
「かまいませんよ、ではいきましょう」
「おい待て、私を置いていくな、私もいなじゅまのお迎えをするぞ!」
港湾の小さな影が5つ、シルエットはだんだん近づいて大きくなり、私たちの前に姿を表した。
「イッチバーン!」
「司令官さん、ただいまなのです!」
「夕立、ただいま戻ったっぽい!」
「おーおー、元気だねぇ駆逐艦は、北上も戻ったよ」
「扶桑、ただいま戻りました、提督」
「よく戻ったな、お前たち。ご苦労だった。今日はもうゆっくり休め」
任務を終えて疲れた彼女たちに長々と話すのは厳しいだろう、短く労いの言葉をかけてゆっくり休んでもらおう。
あ、いかん、波羅田さんたちを紹介するのを忘れていた。
「イッチバーン!イッチバーン!」
「…………」
「…………」
二人とも白露を見て固まっているようだ。
「司令官さん、こちらの方たちは…?」
「こちらは私の恩師でもあられる、横須賀鎮守府の波羅田元帥である。横にいるのは横須賀鎮守府の長門さんだ」
「え、えぇ!!?」
電たちは急いで直立し敬礼した。
白露もしっかり敬礼している。白露は見た目と言葉は独特だがこちらの話は分かるし言うことも聞く。
電たちの敬礼で波羅田さんは我にかえった。
「諸君、任務ご苦労であった。楽にしたまえ。今日は知り合いで新米提督である斧田少佐の様子を見にきただけ…「きゃ、キャワイイィィ!!!!」インターセプトォ!!?」
波羅田さんの挨拶を奇声を発して断ち切ったケモノが一人
「ムハァッ!キャワイイ!イイにほい!!しらちゅゆちゃんペロペロ!!ふ、ふおォォぉおお!!!」
ウチの白露を抱えあげ大興奮するビッグセブン、長門だった。
登場人物
波羅田太平
はらだ たいへい
横須賀鎮守府の提督。階級は元帥。
鳳翔の影に怯えてるって?
バカ野郎、いつも鳳翔を側に感じてるんだよ。
長門さん
ながとさん
にほんがほこるだいせんかんのだいめいし。
ちょうつよい。