笑わない提督   作:オマエモ

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艦娘の前で全く笑わない提督。


暴走した長門を救え。



笑わない提督6

「それで、このおかしな格好のおかしな女は何者なんだ…?」

 

あのあと、白露の悲鳴にも似た声を聞いた絵口さんが秒で駆けつけ、呆然とする私たちをよそに長門さんを目にも留まらぬ早業で地に押さえつけた。

陸上とはいえ、横須賀の最強格の艦娘をこうも容易く無力化するとは…。

なんというワザマエ。是非今度ご教授願いたい。

 

「く、憲兵だと…!待て、私はただ任務を終えたしらちゅゆを労っていただけだっ!!」

 

「イ、イッチバ~ン…」

「だ、大丈夫ですか、白露ちゃん」

 

白露は電の後ろに避難し、長門の様子を窺っている。

 

「は、はぅあー!いなじゅまとしらちゅゆちゃんがこっち見てる!アー浄化されるぅ!」

 

「う、動くんじゃない!おい、斧田提督!ちょ、手伝ってくれ…!この女、力つよい…!!」

 

絵口さんに助力を求められて我にかえった私は長門さんに呼びかけた。

 

「と、とりあえず、長門さん!落ち着いてください。これ以上は白露に怖がられますよ?」

 

「な、なんだと…、それはイヤだ!」

 

「…長門さんのような巨大戦艦に急接近されたら駆逐艦は戦慄しますよ」

 

私の言葉が刺さったのか長門さんは動くのをやめ大人しくなった。

 

「うぅ、私はただ、しらちゅゆちゃんを可愛がりたいだけなんだ…!」

 

思った以上のダメージを負ってしまったようだ。もうちょっとオブラートに包んで言った方がよかったかもしれない。

ちょっとかわいそうになってきた。

憲兵に取り押さえられめそめそし始めた大戦艦を見ていたたまれなくなったのか電と白露が長門さんに近づいて、

 

「…イ、イッチバーン」

「かあいそかあいそなのです」

 

と長門さんの頭を撫でた。

 

「ファッ!?ーー」(嬉しさの余り失神)

 

 

 

「ーーっは!ご、ゴリさん!?」

 

ここでやっと波羅田さんが我にかえる。

 

「な、なんてこと……!」

 

部下である長門さんがよその鎮守府で憲兵沙汰。

波羅田さんもさすがにまずいと思ったのか顔が青くなっている。

 

「なんてこと…!ーー鳳翔に怒られるっ!?」

 

うん、波羅田さんもまだ混乱しているみたいだな。

 

「斧田提督、そちらは誰だ?」

 

「え、えぇ、こちらは横須賀鎮守府の提督であられる波羅田太平元帥です」

 

「!?じょ、状況を説明してもらおうか?」

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

現在、執務室のソファに私、電、長門さんと白露、波羅田さんが横並びに座り、対面に絵口さんが座って事情聴取のようなものが行われていた。

白露は長門さんの膝の上に座っている。

長門さんは事情聴取される側とは思えないような緩んだ表情だった。

 

「ーーーそれで白露のかわいさのあまり大げさに労ってしまった。と…」

 

「そ、そうだこんな小さな身体なのに一所懸命に任務をやり遂げてきたんだぞ!ついつい大げさに労ってしまったんだ!よく頑張ったなぁ、白露!」

 

「イッチバーン!」

 

「そうなのです、ちょっとびっくりしたけど、長門さんは悪い方ではないのです」

 

いつの間にか白露は長門さんになついていたようだ。

あれでも、長門さんは皆に憧れられ慕われた大戦艦だ。

白露もその例に漏れず長門さんに対しての印象は元々良かったのかもしれない。

しかし、僅かとはいえ怖い思いをさせられた相手に自ら手を差しのべることができるなんて……ウチの娘はなんと優しい娘なんだろう、まさに天使。

そういえば電だってそうだった。

初見で怖い思いをさせてしまった私にも電は自ら近寄って、私の、この鎮守府の支えとなってくれている。

 

「ふむ、ということは今回も俺の先走りか…」

 

「いや、そのなんだ、騒ぎをおこしてしまったのは事実だ。この長門、謝罪しよう。絵口殿、誠一郎、すまなかった」

 

「…受け取りました」

 

「ではこれで聴取を終了する、今回も俺の早とちりだったな。上に報告することも特にないし俺の出る幕ではなかったな」

 

絵口さんがそう締めて執務室をあとにした。俺の出る幕ではなかった、と言っていたがこういった小さなトラブルを収めてまとめてくれるのはありがたい。

というか、絵口さんの介入のおかげでウチの娘たちと長門さんの距離感がより縮まったような気がする。

あえて厳しく目を光らせる。私が実践しようと思えばただ怖がられるだけで良い結果は導けそうにない。

だが彼は良い結果へと導いた。

私にはない力を持った彼の株がまた私の中で上がったのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「電、白露と一緒に長門さんの相手をしててくれ」

 

「はいなのです!」

 

「ゴリさん、まぁ、ゆっくりしてきな」

 

「では行くか!電、白露、鎮守府内を観光させてもらおう!」

 

緩んだ表情のまま白露を抱っこし、電に連れられて執務室をあとにした長門さんを見送る。もう長門さんの暴走の心配はなさそうだ。今回も丸く収まって良かったなぁ。

 

「うすうす気づいていたけど、ゴリさんも、皆のリーダーたれと知らないうちに自分を追いつめちゃってたのかもなぁ」

 

ソファで茶を飲んでいた波羅田さんが呟いた。確かに、ウチに来たときからテンションが少しおかしかった気がする。

 

「彼女が、なにがなんでもここに来たがったのは、なんとなく君に会いたかったからかなと思ってたんだ。…ほら君たち仲良かっただろ?だから息抜きになればと思って同行を許可したんだ」

 

 

 

長門さんが私の世話役になった当初はそうでもなかった。

むしろはじめは気難しそうな感じが苦手だったのだ。

ある日偶然長門さんが可愛いものに目がないと知り普段はわざわざ気難しそうに振る舞っていることを知った。それから周りに私だけの時は、長門さんはその素で接していった。

私は次第に

「初雪ちゃんを思い切り甘やかしてみたい」だとか、「響を肩車したい」だとか、「陸奥が幼くなる薬とかできないかなぁ」だとかのたまう彼女が微笑ましく感じるようになっていったのだった。

 

友人とのバカ話でもするような感覚、それは居心地の良さを与える。私は彼女にとって居心地の良い、友人となれたのだとその時思ったのだ。

 

 

 

「君が良ければだけど、ゴリさんが、演習をみてやるだとか言ってたの許可してやろうかなぁ、ホント、たまにって感じになるけど」

 

おそらく、演習をみるというのは建て前で、ウチで息抜きさせるってことだろう。

よその鎮守府だからリーダーとして振る舞う必要はないし、今日の一件で長門さんがどんなキャラかは今いるウチの娘たちは知っているから長門さんも素でいられるはずだ。

 

「もちろん、お願いしたいですね。ウチの白露がなついてしまったみたいですし面倒みてもらえたらと」

 

「はっはっは、そうかい。…それじゃあそろそろ帰らなきゃな、鳳翔が待ってる!」

 

 

 

窓から見える中庭に長門さんが白露に引っ張られながら出てきたのが見えた。その顔はだらしない顔をしていたが、私は友として彼女のそんな顔が見れるのが嬉しく思った。

 

 

 

「いやぁ、はっはっは!それはそれとして今回のことは他言無用で頼むよ、斧田くん。問題にならなかったとはいえ元帥ともあろうものがよその鎮守府でトラブルをおこしてしまったとなれば鳳翔に怒られてしまうからね、鳳翔怒らせると、アレだから、頼むよ」

 

 

窓際で長門さんたちのいる中庭から視線を上げると青い空と白い雲、そして彩雲。

キレイなコントラストはもうすぐ夏だと私たちに告げていた。

 

 

 





登場人物


長門さん
ながとさん

かつて斧田にぬいぐるみに話しかけているところを目撃される。恥ずかしさの余り斧田に泣ギレかますが当時の斧田が語った可愛いもの(者)に囲まれた鎮守府にしたいという夢を聞き同士認定。


絵口信二
えぐちしんじ

妹の言いつけを守り、全力で艦娘を護る。
体術の技量がすんごい。
知らないうちに斧田の中で株が上がり続ける。


波羅田太平
はらだ たいへい

帰りにお土産を買って帰ったおかげで急死に一生を得たらしい。


白露
しらつゆ

長門さんホイホイ


電
いなずま

梨花ちゃん?誰ですかそれは


斧田誠一郎
おのだ せいいちろう

友の笑顔と青空、そして彩雲に心がほっこり

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