レイオニクスと9人の少女 【大怪獣バトル・サンシャインギャラクシー】 作:ふらんどる
真っ赤な雲が空を覆い、果てしない荒野が広がる宇宙のとある惑星。
原始的な生物しか生息しておらず、普段は静寂に包まれているこの星に、怪獣達の咆哮と、それらが戦う激しい音が木霊する。
そして、その怪獣たちの足元でも一人の地球人と異形の星人たちが死闘を繰り広げていた。
『レイオニクスバトル』
それは、かつて全宇宙を支配した究極生命体レイブラッド星人の遺伝子を受け継いだ怪獣使い、通称『レイオニクス』たちによるレイブラッドの後継者をめぐる戦い。
彼らは『バトルナイザー』と呼ばれるマシンで怪獣たちを操り、日夜他のレイオニクスと戦っているのだ。
「貴様ら自分たちがレイブラッドに利用されているだけと、わからないのか!」
男は銃から放たれた光弾を除け、星人たちに向け叫んだ。
「まだそんな戯言を言うのか。レイブラッド様は我々に力を与えてくださったのだ。決してそんなお方ではない」
このレイオニクスバトルには真の目的があったのだ。この男はそれに気づき、元凶であるレイブラッド星人を打倒すべく戦っているのである。
「貴様のような邪魔なレイオニクスはこの世から抹殺されるべき存在なのだよ」
「ドラコ、今だ!」
男の指示に彗星怪獣ドラコは鞭状の右手を振り下ろす。
鞭が直撃する激しい音と共に、星人が操る黒煙超獣レッドジャックに直撃する。
怯んだ隙にドラコは相手の懐に飛び込み、鎌状の左手で喉元を切りつける。
悲鳴に似た鳴き声を上げたレッドジャックは反転し、その長い尻尾を振りかざすが、ドラコは羽を広げて飛び上がりひらりとかわした。
「ええい、ならこいつだっ!」
星人がバトルナイザーを高く掲げると、蛇のような鋭い目と背中に無数の長い棘を持った、残酷怪獣デモスが現れた。
「くそぉ、二対一なんて卑怯だぞ!」
ガモスが戦いに加勢したことで怪獣同士の戦いは一層激しくなり、これまで優勢だったドラコも二対一では一転して防戦一方となる。
「ゆけガモス!」
ガモスは前かがみになって、特徴的な背中の棘をミサイルのように発射するが、ドラコは右手の鞭で叩き落す。
すると今度は口から真っ白な泡のようなものを勢いよく噴き出し、ドラコはもろに直撃をくらう。
「アトミックリキダール」と呼ばれるその液は、あらゆるものを溶かしてしまう強力な溶解液なのだ。
「しまった!」
男が怪獣に気を取られた一瞬の隙を突いて星人達は一斉に彼に向けて攻撃を放った。
男もそれに気づいて咄嗟に回避行動をとるが、いくつかは直撃して彼はその場に倒れこんでしまう。
「うぐぅ!」
それとほぼ同時に、もう一方のレッドジャックの口から放った火炎がドラコに直撃し、さらに駄目押しと言わんばかりに、続けて両手を合わせて光線を放つ。
連続攻撃を受けた男の怪獣は、そのまま倒れると光となって手に持っているバトルナイザーに吸い込まれた。それは彼が操る怪獣の内の最後の一匹であり、彼にとって最後の切り札だったのだ。
「おのれぇ・・・貴様らぁ・・・」
満身創痍の彼は息も絶え絶えに、恨み言をつぶやく。
先ほどの光線が深手となり、息も絶え絶えになり、最後の力を振り絞り体を起こそうとする。が、星人が発したまばゆい光線とともに、体に強烈な衝撃が走り、またも崩れ落ちるように倒れた。
「うぐぅ!!」
「やはり地球人の生命力はすごいものですねぇ。おとなしくやられていれば苦しまずに済むものを」
別の星人の嘲るような響くような声に続いて、威嚇するように先ほどの怪獣たちが雄叫びを上げる。
奮戦したが多勢に無勢だった。
「お前たち・・・すまん・・・」
彼は徐々に薄れていく視界で手に握っているバトルナイザーを見つめる。
その中には先ほどまで彼と共に戦っていた怪獣たちが、彼と同じように深手を負った状態で。収納されている。
無論彼自身も、怪獣たちもまともに戦える状態ではないことはわかっている。
しかし、それでも、それでも彼は立ち上がろうとしたが、その力はもう彼には残されていない。
「あっ・・・」
何か言葉を発しようとしたが、それもかなわず彼はそのまま動かなくなった。
同時に星人たちの勝ち誇った笑い声と、怪獣たちの勝どきのような咆哮が荒野に響き渡るのだった。
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「それでね、μ´sはすごいんだよ!」
春の夕日に照らされた内浦の砂浜に、高海千歌の元気な声が響いた。
「どこにでもいるような普通の女の子たちが歌って踊って・・・って、俊くん聞いてるの!」
「聞いてる聞いてる。」
話しかけられた青年、浅間俊は、そう返事はするものの、木切れで足元にとりとめもない絵を描いている。
「むー、それ絶対聞いてないじゃん!」
「そもそも、なんで急にスクールアイドル始めようなんて思ったんだ?」
「千歌ちゃん、アキバで見たμ´sみたいにキラキラ輝いてみたいんだって」
千歌の代わりに隣にいた同じく彼の幼馴染である渡辺曜が答えた。
「キラキラ輝くねぇ・・・」
「だって私、何のとりえもない普通怪獣だから」
そう言って千歌は少しうつむいた。
「そんなに卑屈になるなよ。別に僕はそんなんじゃないと思うんだけどな。なにかできることがあったら、協力するよ」
「本当!?俊くんありがとう!」
俊の言葉に千歌は満面の笑みを浮かべて喜び、彼の手を握った。
「うわっ、近い近い」
「もう、千歌ちゃんったら」
「えへへ、嬉しくてつい」
それからしばらくの間は沈黙が続いた。
「海、みかんの色に似てるなぁ」
不意に千歌はそう言った。
彼女の言葉の通り、海は夕日を反射してオレンジ色に輝いているように見える。この町で生まれ育った三人にとっては幼いころから見ているなじみの光景だ。
「もう、千歌ったら本当にみかんが・・・曜、どうかした?」
二人の会話をよそに、曜は不思議そうにとある一点を見つめている。
「二人とも、あれ・・・」
彼女が指さすその海面は他の部分とは明らかに色が違い、よく見ると渦潮のように大きな渦を巻いている。
「なにあれ・・・知ってるか千歌?」
「ううん、今まで見たことない・・・」
三人が眼前で起きている奇怪な現象にあっけにとられる。
しばらくすると渦は徐々に小さくなり、最終的には消えていった。水面の色も他と変わらぬオレンジ色に戻る。
「み、見間違いじゃないよな・・・」
「うん・・・」
三人は顔を見合わせて呆然とする。
「とりあえず、後で果南ちゃんに聞いてみない?海とか潮の流れに詳しいかもしれないし」
「そ、そうだね」
「千歌~、ちょっと来て~」
すると背後からの声に3人が振り向くと、千歌の家である十千万旅館から彼女の姉の高海 が出てきた。
「うえっ、また手伝わされるよ~。曜ちゃん、俊くん、また明日ね」
「うん、また明日」
千歌は立ち上がり、道路へ上がる階段を上り旅館の方へ駆けていった。
「そういえば、曜は一緒にやらないのか、スクールアイドル?」
残された俊は曜にそう問いかける。
「えっ、私は水泳部があるから・・・」
そう言う曜の表情はどこか少し迷っているようであった。
「でも、前から言ってたじゃないか、千歌と一緒に何かやりたいって。千歌の事を一番よくわかってるのは曜なんだから」
「俊くん・・・」
「さっきも言ったけど、何かあったら協力するよ」
「ありがとうであります!」
敬礼をしながら曜は答えた。
「そういえばバスの時間大丈夫かな?」
二人ともスマートフォンを取り出し、時間を見る。
「いっけない、もうすぐバスきちゃう!急ごう!」
「うん!」
そのころにはもう先ほどの事は頭の片隅に追いやられていた。
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