レイオニクスと9人の少女 【大怪獣バトル・サンシャインギャラクシー】 作:ふらんどる
本当にお久しぶりです。
2年以上止めていて申し訳ございません。
その間待っている人がいるかもわかりませんが、このブランクで得たものを最大限生かしていきます。
前半はこれまでの粗筋も含めてます。
ヤプールが送り込んだ二匹の超獣との戦いから数日、幸いにも大きな被害のなかった内浦には今日も綺麗な青い空が広がっていた。
「おはよう千歌ちゃん、朝から大変だね」
「本当だよ~、朝から疲れちゃった」
学校でも先日のPVは大きな話題となった。Aqoursの皆は学校に来るなり多くの生徒に取り囲まれ一躍時の人といった具合である。
「だからと言って授業中に寝ちゃだめよ。俊くんからもなんか言って」
「ええ、ああ。気を付けろよ」
「…うん」
千歌は俊の方を見てうなずいたがその表情や言葉はどこかぎこちない。
先日の戦いの後、皆の前に戻ってきた俊は千歌に激しく問い詰められた。
怪獣からの避難の際に突如としていなくなった自身の身を案じての事だとは俊も重々わかっていたが、普段はおとなしい千歌が珍しく感情的となっていたのは俊にとってさすがに予想外であった。
あれこれともっともらしいことを言ってはぐらかしたが千歌ははっきり言って納得はしていない。それ以降、俊と千歌とは距離ができてしまったような感じとなってしまった。
そんな様子を見かねた梨子や曜はたびたびこうして間を取り持とうとするが、それがかえってふたりの距離感を一層微妙なものにしてしまっていた。
気持ちを切り替えようと俊は視線を窓の外に移した。この美しい海と町の平穏がいつまた脅かされるかわからない、彼にとっては千歌との関係以上にそれが気になっていた。
そしてふと、これまでの日々を思い返す。
俊は幼いころ大雨の日に路上で倒れていたところを拾われ、千歌の両親を里親に今まで育てられてきた。本当の両親のように思っているし、自身の境遇を過度に負い目には感じていない。
しかし、それにしてはあまりにも謎が多い。
拾われた時から片時も離さなかったという怪獣を操れる謎の機械バトルナイザー、そして突然現れた謎の生物である怪獣の名前と特性が、何故か元から知っていたように頭の中に流れ出す。
自分はいったい何者なのだろう、これまで日々を過ごしてきた中でそう考えたことは何度もあった。
しかし、何度考えてもそれがわかることは無かった。
「次、移動教室だよ」
いつの間にか机の前に来ていた千歌の言葉にはっとして慌てて時計を見ると、確かに間もなく授業が始まる5分前、多くの生徒はすでに教室から出ていた。
「ああ、ありがとう」
しかし、俊の言葉が終わらぬうちに千歌はもうすでに背を向けて教室から出ようとしていた。
「俊くん、大丈夫…?」
二人の様子を遠巻きに見ていた梨子が心配そうな表情を浮かべた。
「…ごめんね、なんかいろいろ気を使わせちゃって」
「いいの。千歌ちゃんだって意地悪でしているんじゃないと思うし…」
「そんなのはわかってる。けど…」
俊の目に映る千歌の背中は、その距離以上に遠く感じられた。
その瞳にはいつもの輝きは見えない。
こんな状態が続くのは好ましくない事はわかってはいるが、どうしていいのか誰も分からない。
結局その日は事情を知る面々にとって晴れた空とは対照的に心に雲がかかった一日となった。
~~~~~~~~~~~~
「…というわけなんです」
「なるほどねぇ、うーん…」
話を聞いた松浦果南はそれだけ言うとしばらくの間海を見ながら考えこんだ。
俊と千歌にとって年上の幼馴染である果南は昔から幾度もふたりの喧嘩を仲裁してきた。今回俊が放課後にわざわざ淡島まで渡ったのもその力を借りるためである。
「梨子ちゃんの言うように、単に俊の事を心配してるだけだと思うよ。ただ」
「ただ…?」
「最近いろんなことがありすぎたから、千歌もどうしていいか分からなくなってるんじゃないかなって思う」
「そうなんですかねぇ」
俊にとって『いろいろなこと』の心当たりはありすぎるほどあった。とはいえこれ以上自分が怪獣を操って戦わせている事を知る人物を増やすわけにはいかない。
そのジレンマが一番の悩みの種だった。
「まあ、一番は千歌をこれ以上不安にさせない事かな、千歌は昔からああ見えて繊細だから。私から言えるのはそれだけかな」
そう言うと果南は俊の頭をぽんぽん、と軽くたたく。
「でも、俊も気負いすぎないこと。また何かあったらいつでも相談に乗るからさ」
「やっぱり果南さんに相談して正解でしたね」
「うむ。頼っていいからね」
『千歌をこれ以上心配させない』そのことがどれだけ難しいか俊も自覚していた。
いつもは心安らぐ果南の包み込むような笑顔が、戦いの日々に身を置く今の俊にとっては素直に受け入れられない複雑なものとなっていた。
淡島からの船を降りると気づけば長い夏の陽も落ち、内浦には完全に夜の帳がおりていた。
果南からもらった言葉の意味について、色々と考えながら街灯と月明かりが照らす海岸沿いの道を歩く。
しかし、そんな俊の背後にもう一つの人影があった。
歩く速度を速めても、立ち止まっても不自然なほどぴたりとついてくるその人影に当然俊も気が付いていた。
「あの、なにか……っ!」
そして意を決して振り返った俊がそう言い終わらぬうちに素早い握り拳がこちらに向かってきた。
寸前のところで体をそらしてなんとかそれをかわしたが、今度は背後から強烈な蹴りが直撃した。
「…痛ったぁ…お前いきなりっ……!!」
痛みに耐えながらもいきなり襲い掛かってきた相手を睨みつける。
そして街灯に照らされたその姿を直視した瞬間言葉を失った。
その灰色の顔には目鼻口と呼べるような器官がなくしわのようなものが顔中を埋め尽くしている。そして顔の横には兎とも馬ともつかぬ大きな耳が小刻みに動いている。
『バトルナイザーをよこせぇ!!』
どこから発せられているのかわからない叫び声とともに二人の怪人たちはすかさず飛びかかってきた。
「…なにをっ!」
俊はバトルナイザーを守ろうと死に物狂いで抵抗するが、二対一では当然圧倒的に不利である。そのアクロバティックな動きは相手の体に触れる事すら難しく、防戦一方となるのは時間の問題だった。
数分の間痛みと恐怖に耐えながらも抵抗を続けるが、ついに限界を迎え態勢を崩した折についに俊の手からバトルナイザーが滑り落ちた。
『おい!今だ!』
「しまった!」
一人が取りに向かおうとする俊の両腕を掴んでいる隙に、残りの一人が地面に落ちたところを拾おうと手を伸ばした。
『ぎぇっっ!!』
しかし薄黒い手とその体はバトルナイザーに触れる前に宙に舞い、堤防を越えて大きな音としぶきを立てながら暗い水面に消えていった。
「は?」
『え?』
顔はよく見えないものの月明かりの下に人影があった。
襲う方も襲われる方も一瞬何が起こったのか分からなかったが、その人物は同じく困惑して動きが止まったもう一人に向かって今度は強烈な廻し蹴りを叩き込む。
『ぎゃううっっ!』
そして先程同じく大きな音とともに夜の海へと消えていった。
「フック星人、一人だと何もできないから仲間とつるむしかできない雑魚ね。汚らわしい」
「あなたは…」
謎の怪人、もといフック星人を撃退したその人物には見覚えがあった。
不自然なほど綺麗な余所行きの服を着た、ふくらみのある金髪のボブカットにコバルトのように真っ青な目の少女。以前道を尋ねられただけだが、そのいかにも外国人といった容姿と不躾な物言いでよく覚えてる。
「やっぱり地球人って貧弱なのね。こんな奴らにも勝てないなんて」
「地球人…?」
「そんなのでよくレイオニクスをやってられたわね。心底呆れた」
少女の無知を蔑み相手を見下す瞳は俊にとって困惑する以外の何物でもなかった。未だ恐怖と困惑が抜けないのに淡々と言葉が投げかけられる。
「それにしても、この間のあれは何?あんなレベルの低い戦い久しぶりに見たわ。たかだか異次元人如きにあの体らくなんて」
「あなた、何を…言って…」
「もういい。さっさとはじめましょう」
言っている事への理解が追い付かない俊をよそに少女は肩にかけていた鞄に手を入れた。
「…バトルナイザー」
『私が、本当の'レイオニクスバトル'を教えてあげる』
少女の手元から飛び出した眩い光は夜の闇を切り裂いて宙へと昇り、徐々に一つの形を成していく。
名だたる怪獣や星人の怨念が形となった、顔、胴体、両手足、尾、全く統一性のない体の各部位が特徴的な宇宙の暴君とも呼ばれる強力な怪獣。
「タイラント…」
「あら、知っていたのね」
暴君怪獣タイラントがその姿を現した。
「早くしないと踏みつぶさせるわよ」
少女の言葉を解したかのようにタイラントは腕と足を大きく振り上げる。
俊を睨みつけるのその瞳は睨まれただけで命を奪われそうな圧と、暴君と呼ばれるに相応しい血走った狂気をはらんでいる。
「わかった、やるよ…」
「話が早くて助かるわ」
俊にとって少女の言っていることはよくわからないが、これ以上被害を出すわけにはいかない。その一心で俊もまたバトルナイザーを掲げた。
≪バトルナイザー、モンスロード!≫
そしてバトルナイザーから飛び出した光もまた空へと舞いあがり、一つの形を作り出す。
俊が現状使役できる唯一の怪獣、彗星怪獣ドラコが姿を現した。
本格的なレイオニクスバトルは次回以降どんどんやります。
次話は月を跨がず出せるかと。
今回から文体も変えました。以前の話も書いてある内容は変えず折を見て修正していきます。