レイオニクスと9人の少女 【大怪獣バトル・サンシャインギャラクシー】   作:ふらんどる

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前回のあとがきで月内更新というできもしないこと言って誠に申し訳ございませんでした。

最近色々作品を見直して熱が出てきたのでとにかく頑張ります。


第16回 落日の少女

 

 

 

「また、怪獣……」

 

 怪獣出現の報を受けてにわかに慌ただしくなる内浦。

 夕食前のうたた寝をしていた千歌もまた、今まさに旅館から避難しようとするとこであった。

 

 その時スマホが鳴り、千歌は反射的に電話を取る。

 

『千歌! 俊ってそっち来てない?』

 

「え? え、俊くん?」

 

『さっきまで淡島に来ていてちょっと前に帰ったとこなんだけど!』

 

 今起こっている状況をうまく呑み込めていない千歌あったが果南のただならぬ様子に千歌はすぐさま状況を察した。

 

「……まだ、戻ってきてない」

 

『とにかく今は避難を……千歌! 千歌!』

 

 果南の言葉が最後まで耳に届くよりも前に、千歌は皆とは反対へと駆け出した。

 

「俊くん……!」

 

 

 

 

 

 

 

 そしてその視線の先、長い夏の陽も落ちた内浦の海に二体の怪獣が対峙していた。

 

「あんた、一体どういうつもりで」

 

「離している暇なんてない」

 

 その言葉が終わらぬうちにタイラントの左腕の鋭い鎌が振り下ろされる。

 ドラコは危うくそれをかわすが、すぐさま右腕の鉄球が叩き付けられ、さらにそこに強烈な蹴りが繰り出される。

 

「しまったっ!」

 

 そこからタイラントの猛烈な打撃や蹴り技が次義と繰り出される。

 

 

 すかさずドラコの方も反撃しようと羽を広げて飛び上がろうとするが、その瞬間タイラントの口から放たれた猛烈な火炎が直撃する。

 

 

「詰めが甘い!」

 

 

 火炎放射を受けて怯んだその一瞬の隙に右腕の鞭に絡めとられ動きを封じられ、そこに殴打や強烈な足蹴りが加えられる。

 

「うぐぅっ!」

 

 その後も立て続けに鎌と鉄球が打ち付けられる。

 

 俊も負けじと反撃の指示を出すがドラコの鞭と鎌はことごとくかわされ相手に触れることすらできない。

 

「ダメだっ、このままではっ……」

 

「その程度なのね。張り合いもない」

 

 少女の冷たい視線が俊に突き刺さる。

 

 タイラントが姿を見たその瞬間から並大抵の相手ではないことはわかっていた。しかし、戦いが始まってみると相手はあまりにも強かった、強すぎたのだった。

 

 

 

 

「はっきり言うけど、弱いわね」

 

 少女の冷たい視線が俊に向けられる。

 そこからは戦いと呼べるものでもない一方的な蹂躙だった。

 

 幾度となく鎌と鉄球の腕と太い足から繰り出される足蹴りを受け続けたドラコは、もはや体制を保つのがやっとの状態になる。

 

 

 

 何もできない俊はただただ呆然とその場に立ち尽くすしかできない。

 

 今まで自分が積み上げてきたものがことごとく破壊されていく感覚。

そして、『初めての敗北』という目の前で起こっている逃れようのない事実がただただ恐ろしく感じられた。

 

「これで終わりよ」

 

 その言葉と共にタイラントの口から凍てつく冷気が放たれ、その直撃を受けたドラコは一瞬にして動けなくなった。

 

 

「これがあなたの実力よ。身の程を知りなさい」

 

 今度は対照的に周囲を焼き尽くす暑さの猛烈な火炎が放たれ、激しい炎がドラコの全身を包む。

 

 そして断末魔ともとれる凄まじい雄叫び光となって消えていった。

 

 

 

 

「ま、負けた……」

 

 眼の前で起こっている光景を受け入れる間もなく、俊の体にも異変が生じていた。

 

 

 

「あっ……熱い! 熱い!」

 

 突如として全身が焼けるような熱さと体が張り裂けそうな痛みが俊の体を襲った。以前からバトルナイザーを使っている時の体の異変は自覚していたが、今回は以前のそれとは比べ物にならないものだ。

 

「感覚の同化……。やっぱり素養はあるみたいね」

 

「何を……言ってぇ……くうっ!」

 

 その言葉の意味を理解する余裕は今の俊には無く、ただただ悶え苦しむ。

 

 

 

 そしてタイラントは勝ち誇るように咆哮をあげ、そして現れた時と同じく眩い光となって少女の手に握られたバトルナイザーに帰っていく。

 

 ますます強くなる耐え難い熱さと痛みに立っている事さえ困難となっていた俊はついにその場に倒れ込んだ。

 

 

「所詮、こんなものね」

 

 もはや言葉を発する気力は残されていなかった。

 全身を焼かれるような熱感と体が引きちぎれるような痛みに意識が朦朧とする。

 

 そして薄れゆく視界に最後に映ったのは何度目か分からないほど見た、相手を見下す青い瞳だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……?」

 

 そして次に俊の目に入ったのは年季の入った木目の見知った天井だった。

 

 辺りを見回してここが十千万旅館の一室だという事はすぐに分かったが、自分の身に何が起こったのか理解できていない。

 

 少なくともあの地獄のような苦しみから命が助かったことに安堵するが、あれから一体どうなったのか、そう思って起き上がろうとするが体中に痛みが走る。

 

「そうだ、あいつは……」

 

 すると眼の前の襖が開く。

 

「ああ、千歌……、志満姉さん」

 

「俊くんっ……」

 

「良かった……意識……戻ったのね……!」

 

 

 

 志満の話によると、路上で倒れていたところを果南から連絡を受けて駆け付けた千歌によって助けられた。

 そう聞かされた俊だったが自分でも何があったのが理解しきれてない。

 

「それにしても、何であんなところに」

 

「それがあんまり覚えてなくて……。帰る途中ではあったんだけど……」

 

 俊はいつものように言葉を濁す。

 

「でも、もう大丈夫」

 

 

 

 

 

 

「大丈夫なんかじゃないでしょ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 先程まで口を閉ざしていた狭い室内に千歌の声が響き渡る。

 

「なんでいっつもそうやって平気なふりするの!? なんでいっつも危ないところにいるの!? なんで、なんで……」

 

 そう言いながら千歌は激しく詰め寄り俊の肩をがっちりとつかんで離さない。初めて見るその激しい様子に俊はただ唖然とするばかりであった。

 

「だから大丈夫だって」

 

「嘘! だって今も俊くんいっぱい怪我してる!」

 

「だからこれは」

 

「そうやっていつも平気なふりして!」

 

 目つきがさらに険しくなり肩を握る手の力が一層強まる。

 

「もし果南ちゃんが連絡してきてくれなかったら……」

 

「千歌ちゃん! やめなさい!」

 

 さすがにその様子を見かねた志満が止めに入り強引に千歌を引きはがす。

 

「千歌、お前……」

 

 引きはがされた千歌は何も言わずただじっと俊を見つめる。

 

「何で私には……」

 

 それだけ言い残して足早に部屋を後にした。

 

 

 

『またやってしまった』

 

 果南から『これ以上千歌を心配させるな』と言われた矢先の出来事なだけに、俊はただただやるせなかった。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、ちょっと。本当に大丈夫なの?」

 

 怪獣出現から数日たち、一時の平穏がある訪れた内浦。

いつものように練習を終えてバス停へと向かう道すがら善子が小声で問いかけてきた。

 

「大丈夫だよ。この通り元気さ」

 

「そうじゃなくて」

 

 いつになく真剣そうな声の調子で俊は善子が言わんとしていることを察した。

 

「当分戦えないんでしょ。これからどうするつもりよ」

 

「どうするって言ったって……。分からないとしか言えないよ」

 

 偶然事の成り行きで俊の秘密を知ることになった善子は、俊にとっては良き理解者でありこの話ができる数少ない存在だ。

 しかし、それは彼にとっては「無関係な人を巻き込んでしまっている」という重荷にもなっていた。

 

 

「あと、千歌から勘繰られてるわよ」

 

「千歌が?」

 

 結局その後千歌との関係も改善できないまま今日まで至り、二人の間の微妙な空気は善子たち一年生にも知れるところとなっていた。

 

「そうよ。あんたの前では普通にしているかもしれないけど、『何か知らないか』ってルビィとずら丸に聞いて回ってたし。それに今だって」

 

 その千歌は曜、梨子の二人と話ながら少し前を歩いている。一見後ろの二人の事など眼中にないようだが、三人の話が途切れた際など時折向けられる視線は俊も感じていた。

 

「千歌とは近いうちに決着をつけたいと思ってる。けど今は、目の前の事に集中してほしいから」

 

「そう。長引かせるとこじれて後々面倒よ」

 

「わかってるよ」

 

 その言葉の意味を重く受け止めた俊はふと校舎の方に顔を向けた。

 初夏の夕日に照らされる浦の星の校舎。

 

 

 そして何気なく屋上に目を向けた瞬間、目が釘付けになる。

 

 

 

 

 

 

「……ごめん、善子ちゃん、みんな、先帰ってて」

 

「えっ!? ちょっと俊!」

 

 それだけ言うと俊は脱兎のごとく走り出し今下ってきた坂を登ってゆく。

 

「まさか、あいつ!」

 

 

 俊の急な行動に皆一様に困惑していたが、千歌だけは俊が戻っていった校舎をじっと見つめている。

 

「善子ちゃん」

 

 問いかける千歌の声にいつもの明るさはない。

 

「俊くん何か言ってなかった?」

 

「さあ? 忘れ物なんじゃないの?」

 

 そのただならぬ雰囲気に気圧される善子。彼女を見つめる目は普段部室にいる時とは違ってどこか光が入っていない。

 

「……わかった。さっき俊くんと話してるから何か知ってるかなーって思って」

 

「あ、あれね。ゲームの話よ」

 

「そう。わかった」

 

 

 

 

 

 

「……何かある、絶対。俊くんは、いつだってそう」

 

 そのつぶやきに気が付くものは誰もいなかった。

 

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 夕陽に照らされる校舎の屋上。一心不乱に階段を駆け上ってきた俊の目の前には見知った顔の人物が立っていた。

 

「随分と早いじゃない」

 

「お前はっ…!」

 

「久しぶり、という程でもないわね」」

 

 驚きを隠せない俊とは対照的に夕陽に殊更に生える金髪の少女は淡々と告げる。

 

「それにしてもあなた随部のタフなのね、普通の地球人なら一生動けなくなってもおかしくはないはずだけれど」

 

「何を言って」

 

「まさかこんなところでレイオニクスに会えたことも驚きだけど、当の本人が何も知らないってことの方がもっと驚きね」

 

「待ってくれ。まずそのレイオニクスって何なんだよ」

 

「呆れた。本当に何も知らないのね」

 

 

 

「簡単に言えばレイオニクスは昔全宇宙を支配したレイブラット星人の遺伝子を受け継ぐ者、そしてレイオニクス同士は互いに戦い続ける宿命を負う。バトルナイザーは戦うための道具ってこと……知らないはずはないんじゃないの」

 

 宇宙人だの後継者だの宿命だのとにわかには理解し難い言葉だ。しかし、確かにその意味をすんなりと受け入れている自分がいた。初めて聞く「はず」の単語にも関わらず、今その意味をはっきりと自覚している。

 

「……怖い。わかるんだよ、言ってることが」

 

 なぜ知らないはずの怪獣の名前がわかるのか、何故バトルナイザーを使うことができるのか。

 

 この時、俊は自分の中に『存在しない記憶』が確かに存在していることをはっきりと自覚した。

 

「……そう言うお前こそいったい何者なんだ」

 

 

「私? この星の人間じゃないわよ。もっと正確に言えば、この世界の、ね」

 

 

 少女は何食わぬ顔で現実離れしたことを言ってのける。しかし、今の俊はそう驚かない、あまりにも非現実的な事に慣れてしまったのだ。

 

「別に今あなたと戦う気はないわ。弱い相手には興味はないの。それにしてもあなたって何者なの? どう見てもただの地球人ではないようだけれど」

 

 その場に沈黙が流れる。

 俊自身も自分が普通の人間ではないという事はもうすでに自覚していた、しかし『何者か』と問われてもそれは俊自身が一番知りたいことなのだ。

 

「僕にもよくわからない。ただ……」

 

「ただ?」

 

「この世界で生まれた普通の人間じゃないんだなって。これまでの事と今の話でそれがはっきりわかったよ」

 

俊は今この瞬間、自分の中に全く知らない自分の存在を今ここにはっきりと自覚したのだった。

 

「……そう。あなたに何があったのかは知らないけど、その様子だと思いだすのもそう遠くないかもね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん! もうとっくに下校時刻ですわよ!……あら」

 

 強い語気の声に振り返るとそこにはダイヤの姿があった。

 

「ダイヤさん……」

 

「下校前に校舎を一廻りしていまして。てっきり千歌さんたちかと思っていましたが、これは意外なお二人ですわね」

 

 途端に柔和な表情に戻るダイヤ。そして、

 

「ちょうどよかった、浅間さんにも彼女をご紹介しようと思っていまして」

 

 

 

 

「こちらアメリカからいらした交換留学生のレナさん」

 

 

「交換、留学生……?」

 

「そういうこと。そう言えば、名乗るのは初めてだったわね」

 

 

 にこやかなダイヤとは対照的に、レナと呼ばれた少女は表情一つ変えずに淡々としている。

 

 

「あら? もう既にお二方ともお知り合いでしたのね」

 

「……ええ、まあ」

 

 頭の整理がつかない中そう返事するしかなかった。

 

「しかしお二人といえども下校時刻は守っていただかないといけませんわ」

 

「悪かったわね。俊、だったわね、また話しましょう。今度は邪魔が入らないところで」

 

「じゃ邪魔っ!? レナさんあなた!」

 

 棘のある一言を残してレナは悠々と階段を下りて校舎内へと戻っていった。

 

「まったく……。いくら理事長のお知り合いだとはいえあの態度はどうにも……あら、浅間さん?」

 

 

 

 驚きと戸惑い、そして得体のしれない恐怖が混ぜ合わさった複雑な感情を胸にしながら俊はただその場に立ち尽くすのみだった。

 




「謎の少女」としての期間が長すぎたレナちゃん、容姿は頭の中でイメージできてるので次回更新の際にでもイラスト乗っけられたらと思います。
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