レイオニクスと9人の少女 【大怪獣バトル・サンシャインギャラクシー】 作:ふらんどる
今年は本格的に更新していこうと思っておりますので、何卒よろしくお願いします。
「くそっ!あの女はいったい何者なんだ!」
とある場所に作られた星人たちの秘密基地。地球には存在しえない構造の機械が並ぶその部屋の中で、ゼラン星人が怒鳴り声をあげた。
俊のバトルナイザーを奪い、その力を我が物に使用としていた星人たち。しかし差し向けた配下のフック星人を謎の少女レナに撃退された。彼女の存在は全く想定外であった。
「あの男以外にレイオニクスがいるなど聞いていた話と違うではないか!」
「しかし奴はいったい何者なんだ。ただの地球人ではないようだが」
暗い部屋の奥から異形の星人がまた一人出てくる。
「そんなことはこの際どうでもいい。むしろバトルナイザーが二つも手に入れられて好都合だ」
暗闇の中星人たちの目が不気味に光った。
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俊は一足先に屋上を去った後レナを追いかけたが結局彼女を捕まえることはできなかった。
まだいろいろなことが整理できていない中、もう日も沈みかけたバス停への坂を下っていく。
「俊くん」
そして長い下り坂の終わり、俊を待っていたのはバス停の前にひとり立っていた千歌だった。
「忘れ物、あった?」
「お前何でこんな時間まで・・・・・・」
「ちょっと俊くんと話したくって」
声のトーンはいつもと変わらないが、その笑顔のない顔と逆光のせいかその言葉に異様な圧を感じる。
「これから、うちに帰って来て」
「そんないきなり・・・・・・」
『うち』とは言わずもがな十千万旅館の事だ。高海家の里子の俊にとっては実家といえる確かに千歌の言う通り、最近は顔を出せていなかった。
「なんで」
「なんでったって」
「だって俊くん、最近全然顔出してないし」
「それは・・・・・・」
「お願い」
怒鳴ったわけでも、語気を強めたわけでもないその言葉にはただならぬものが感じ取れる。その様子に俊はただ頷いてついて行くしかなかった。
「ごめんね、俊くん」
しかし、千歌の部屋に連れてこられた俊が聞くことになったのは謝罪の言葉であった。
自分のことを問い詰められるとばかり思っていた俊にとっては予想外のことだった。
「最近いろんなことがあって、心の中が落ち着かなくって」
「千歌・・・・・・」
「だから私、どうしていいか分からなくなっちゃって、それであんなふうになっちゃった。ほんとごめん」
そう言って千歌は申し訳なさそうに頭を下げる。
「私が、いや、私達が今一番やるべきなのはAqoursとして学校を救うこと。そんな大事なことを見失ってたみたい」
「そう・・・・・・だっただな。こっちも同じだ。ごめん」
あまりにも急な展開に理解が追い付いていなかった俊だったが、千歌の言葉に思わずはっとした。目まぐるしく変わる日々の中で自分がAqoursのマネージャーであるという事を、どこか忘れてしまっていた分があったのかもしれない。
そう思うと申し訳なさが胸の奥からあふれ出してきていたたまれなくなる。
「これからは、なるべく迷惑かけないようにするから」
「わかった。この話はもうおしまい!改めて、これからもよろしくね」
俊としてはどこか釈然としていなかったが、千歌は俊の前で久しぶりの笑顔を見せた。
「・・・ってことなんだ。なんか梨子ちゃんにもみんなに迷惑かけてたみたいで申し訳なかったよ」
「良かった、二人が仲直りできて」
そしてしばらく後、建物を挟んだ向かいのベランダにいる梨子に事の経緯を伝えた。
「でも正直よくわからないんだ。なんで千歌があんなにすんなり変わったのかが。梨子ちゃん、何か知らない?」
「えっと・・・・・・実はね」
梨子の話を整理すると時は俊がレナを見つけて皆の前から去った時まで遡る。
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「ねえ、千歌ちゃん。何がそんなに気になるの?」
俊が去ってから続いていた重苦しい空気を破って梨子が問いかけた。
「何って、だって俊くん最近おかしくない?授業でも部活でもいつも何か考えてるみたいだし、雰囲気も前より全然暗くなってる。話し方だって変わったよ。みんなは気にならないの?」
千歌の言葉を否定できるものはいなかった。他の皆から見ても最近の俊の行動や言動の変化は明らかだったのだ。
「たしかにそうだけどきっと俊にも何かわけが」
彼がその身に抱える唯一知る善子は何とかその場を収めようとするがうまくいかない。千歌の視線が一層厳しくなる。
「ねえ、やっぱり善子ちゃん何か知ってるんじゃないの?さっきもずっと話してたし」
「し、知らないわよ!」
「千歌ちゃん、い、一旦落ち着こう」
曜は何とか千歌をなだめようとしているがその声は震えており、ルビィと花丸に至っては委縮しきって身を寄せ合っている。
「でも!」
「千歌ちゃん!」
梨子の凛とした強い声に思わず千歌も黙り込む。
「今は、俊くんを信じてあげない?」
そして優しい声色に変えて、そっと千歌の肩に手を置く。
「多分、俊くんも千歌ちゃんも最近いろんなことがあってちょっと疲れてるんだと思う」
「だから千歌ちゃん、思い出してみて。今の私たちにとって一番大切な事を」
「大切な、事・・・・・・?」
そして今度は千歌の手を優しく握る。
「Aqoursの皆で学校を救う事、そうじゃなかった?」
その言葉に千歌の心の中でつかえていた何かが弾けた。
今までずっと隣にいた大切な仲間を疑い、不安にさせていた。そしてずっとを支えてくれていた大切な人を信じてあげられなかった
「・・・みんな・・・・・・ごめん・・・・・・」
そして千歌の眼には自然と大粒の涙があふれていた。
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「そんなことが。なんだか皆に心配かけてて悪かったよほんと」
事の真意を聞いた俊はどういうわけか妙に納得した。千歌は意地を張るところもあるが、大切なことはちゃんとわかっている。今の話を聞いて改めて安心した。
「それと、私が聞くことじゃないかもしれないけど、昔何かあったの?」
「昔?」
「うん。千歌ちゃんが言ってたの『俊くんはいつだってそう』って」
そういわれてしばらく考え込んだ俊だったが、どうしても心当たりが見いだせなかった。
少なくと内浦に初めて怪獣が現れる前までは、千歌とは他愛もない喧嘩はあれど亀裂を生むようなことは無かったと記憶しているからだ。
「どうだったっけなぁ・・・・・・思い出せないや」
「変なの。俊くんも、何かあったら言ってね。と言っても私には話を聞くくらいしかできないけど」
こういった他愛もない会話が今の俊にとっての数少ない心のよりどころだった。少なくともAqoursに関してはこれでひと段落がついた、そう思うと俊の顔は自然とほころんでいた。
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『来て』
夜中脳内に直接響く声に俊は目を覚ます。そしてその声に導かれるように布団から立ち上がり部屋を出る。
たどり着いたのは月明かりに照らされる旅館の前の砂浜。そしてそこに待つ人影が一つ。
「呼んだのはやっぱりお前か」
「さっきは余計な邪魔が入ったけど、今なら話せるでしょ」
呼び声の主、レナは先ほどと変わらぬつっけんどんな態度で言った。
「それで、一体何の用なんだ」
「前も言ったけど、私が聞きたいことは一つ。あなた、いったい何者なの?ただの地球人とは思えないのだけれど」
「・・・・・・それはわからない。ただ、普通の人間ではない事だけはわかる、それだけだ」
バトルナイザーで怪獣を操れること、初めて見るはずの怪獣の事を知っていること、自分がただの人間ではないことはもうすでに自覚していた。しかし、俊はそんな「普通でないこと」をどこかで認めたくなかったのだ。
しかし今レナに出会って改めてその現実に突き付けられているのだ。
「そもそも地球人なの?あなた」
「そう言うお前は何者なんだ」
「もう言わなくても分かってるんじゃないの?」
レナの蒼い瞳がきらりと光る。そして、声が聞こえるのに口が動ておらず、頭の中に直接響いている。この事実だけでも彼女がただの人間でないことは明らかだ。
「じゃあ、この前襲ってきたのも」
「ああ、あの下等生物ね。あなたというよりは、バトルナイザーが目当てなんでしょうけど。何でこんなところにもいるのかしら・・・・・・っ!!」
その瞬間、まばゆい光と共に数発の光弾が二人の間近をかすめた。
直前にただならぬ気配を感じて咄嗟に体を翻し直撃は免れた。二人は飛んできた方向をきっと睨みつける。
『すばしこいやつらめ!』
二人を襲った声の主はシャプレー星人。手にした銃のようなものをこちらに向けてる。
「シャプレー星人ね、余計なことを!」
レナもまたどこからか銃のようなものを取り出して星人に向けて放つ。
『ぐぅっっ!!しゃらくさい女め!』
放たれた光弾でそして星人が怯んだ一瞬の隙をついて俊がとびかかる。
どうしてこんなに体が動くのか、俊自身もよくわからない。
しかし、目の前の敵を倒さなければならないという強い闘争本能が彼の体を動かしていた。
自分でも信じられない力と動きでシャプレー星人を地面に打ち付ける。
『おとなしくしろレイオニクス共‼』
が、しかし今まで目の前の相手を倒すこと以外考えられていなかった俊ははっとして声の方を見る。
「・・・・・・っ!ち、千歌!どうして!」
その光景に俊は目を疑った。部屋にいるはずの寝間着姿の千歌がぐったりとした様子で別の星人に抱きかかえられていたのだ。
「ゼラン星人まで、ほんと厄介ね」
その隙に俊に組み伏せられていたシャプレー星人は隙を見て抜け出した。そして千歌を抱えたままゼラン星人は続ける。
「バトルナイザーを我々に差し出せ!それまでこいつは預かっておく」
「待てっ!」
俊が体を動かす間もなく千歌を抱きかかえながら星人たちは夜の闇に溶け込むように消えていった。
「・・・・千歌っ・・・くっそぉ!」
俊はしばらく呆然としていたが、千歌がさらわれたという現実を目の当たりにして地団駄を踏むことしかできない。
「はぁ、全くしつこいわね」
「どうするんだよ」
「『どうする』?あの子がどうなろうが私の知ったことではないのだけれど」
そんな俊とは対照的にため息交じりに淡々と服についた砂を落すレナ。
「いい?バトルナイザーはレイオニクスにとって命に等しい物よ。これくらいの事で手放すなんで愚の骨頂よ」
「おまえっ!」
レナの突き放すような言葉に今までこらえていた感情が頂点に達した俊は口よりも先に手が動いた。その場から去ろうとするレナの腕を思いきりつかみかかる。
生まれも分からない天涯孤独の俊にとって、家族に等しい千歌の安否をこれほどまでに軽んじられるのはあまりにも耐えがたかった。
「しつこい!」
が、しかし、レナはいとも簡単につかんだ手を振りほどき、華奢な身体からは想像もできないほどの力でいとも簡単に俊を組み伏せる。
「あんな下等生物の言うこと真に受けるなんて馬鹿じゃないの?」
「それでも!千歌が!」
「くどいっ!!」
その言葉と共にレナの右足が大きく動き勢いよく俊の体に叩き付けられる。
「レイオニクスにとって一案大事なことは、戦うこと、そして勝つことよ。他に何もいらないの」
そしてその言葉を最後に俊の意識は途絶えた。
「おーい、こんなところで寝てると風邪ひくぞー」
日課の早朝ランニングの途中の果南の目に入ったのは、十千万前の砂浜の壁に力なくもたれかかっている俊であった。
「か、果南さん・・・・・・」
「どうしたのこんなところで?」
「千歌!千歌は⁉・・・・・・っ痛っ!」
果南の声に目を覚ました俊はすぐさま千歌を探そうと立ち上がろうとするも未だに残る強烈な痛みにうまく立ち上がれない。
「千歌?千歌ならさっき会ったけど、どうしたの?」
「あ、会った!?どこで!どこでですか!?」
ものすごい勢いで果南に迫る俊。
「どこって、すぐそこだよ。そういえば、俊に伝言を預かってるんだ」
「伝言・・・・・・?」
困惑する俊をよそに果南は続ける。
「『渡すものの用意ができたら連絡してね。はやくしないとどうなってもしらないよ』って」
俊の一抹の希望はあえなく砕かれた。
その言葉は千歌のものではなく、彼女を攫った星人の言葉であることは明らかだ。
「どうしたの?あっ、もしかして、また喧嘩でもした?」
しかしそんな俊の事など果南は知るはずもなく普段通りの様子である。
「えっ、いや、そんなもんです。ありがとうございます!じゃあ!」
そう言って俊は果南から教えてもらった方向へ駆け出してゆく。
「ふーん。・・・・・・そういうことにしておくよ」
去り際に放った果南の言葉、しかし俊にそれを気に掛ける余裕はなかった。
過去に俊視点で書いた部分を三人称視点に書き換えを検討中
次回は久しぶりに大怪獣バトルらしい怪獣プロレス回。
新怪獣もぞくぞく登場予定。