レイオニクスと9人の少女 【大怪獣バトル・サンシャインギャラクシー】 作:ふらんどる
暖かい春風が浦の星女学院に吹き抜ける。その風が飛ばした満開の桜の花びらは、新入生たちを祝福する紙吹雪のようにようにひらひらと舞い落ちる。
そんな景色の中、まだあどけなさを残す新入生たちが校門をくぐり、在校生が部活動に勧誘をする元気な声が響き渡る。
「春から始まる、スクールアイドル部でーす!」
その中でも千歌はひときわ大きく目立つ声を出しながら、曜と共にチラシを配っている。
しかし、その熱意もむなしく足を止める生徒は一人としていない。
そのせいか、千歌の元気もだんだんなくなっていき、その声も徐々に小さくなっていく。
「大人気、スクールアイドル部でぇす・・・」
二人はがっくりした様子で台座にしていたミカン箱の上に腰かける。
「二人とも朝からお疲れ様」
「むー、俊君手伝うって言ったんだからもっと早く来てよ」
「あはは、ごめんごめん。ちょっと男子がいないかなーって思って」
そう、浅間俊は浦の星女学院の生徒なのである。
なぜ「女学院」の生徒なのかというと、昨今の少子化による生徒数減少により共学を検討しているそうだ。
そこで昨年度から「テスト生」として数名の男子を受け入れているのだが、僕はその一人なのである。
先生曰く名前は完全に共学制に移行したら変えるそうだが・・・
「それで、結果はどうだったの?」
「僕が見た限りでは、片手ほどでした・・・」
「あー、やっぱりね・・・」
無論、女子高に入学しようとする男子などそう多く入るはずはなく、昨年度に入学したのは僕一人というありさまである。
「まあ、今日のところはあきらめるんだな」
僕がそう言ったと同時に、遠くからでもよく目立つ赤いツインテールの女の子と、おっとりした雰囲気を持った栗毛の女の子が目の前を通った。リボンの色から見て新入生のようだ。
そして、その少女たちを見た瞬間、千歌の目がきらりと光った。
瞬時にその子たちのもとへ駆けだす。
「あのっ!スクールアイドルやりませんか!?」
「ずら!?」
「ピギィ!?」
その一年生二人は驚いたのか、変わった声を出す。
「大丈夫、悪いようにはしないから。絶対人気になれるって!」
どうやらツインテールの方の娘は興味があるらしく、チラシを熱心に見つめたり、千歌に質問したりしている。
「あなたみたいなかわいい娘にぜひ!」
ツインテールの娘の両手を握った。
「おい千歌、あんまり引き留めると悪いから、その辺にして・・・・」
「ピギィ!おっ男の人・・・」
先ほどまで笑顔だったその子の顔が一瞬にして硬直し、栗毛の娘は咄嗟に耳に手を当てた。
えっ、僕今何かまずいことした?
「ぴぎゃああああああああ!!!!」
次の瞬間、耳をつんざくような絶叫が周囲に響き渡った。
「な、なんなんだぁ」
足元がふらふらする。どうやら千歌にいきなり手を握られたことに驚いたようだ。
「きゃあああ」
「うげぇ!?」
すると突然上から何かが落ちてきて僕はその下敷きになってしまう。
「俊君大丈夫!?」
「痛てて・・・」
「あっ、ごめんなさい!」
立ち上がって顔をあげると右頭頂部にまとめられたお団子髪が特徴的な女の子がこちらに頭を下げる。
つくづくこの学校はかわいい娘ばっかりだな。
しかし、すぐさま千歌たちの方を向く。
「クックック、ここはもしかして地上?」
そしてヨハネ?と名乗るその娘は堕天使とかリトルデーモンとかなんとかよくわからないことを話し始めた。
すると今度は栗毛の娘がその娘と名乗る女の子と話し始める。話を聞くに二人は昔知り合いだったらしい。途端に置いてけぼりとなった僕たちはただその光景を見つめることしかできない。
どうやら栗毛の娘は花丸ちゃんという名前らしい。
「私はヨハネ、ヨハネなんだからねー!」
しばらくすると話していたヨハネ?ちゃんが逃げるように走り出した。
「どうして逃げるずらー」
「待ってよ花丸ちゃーん」
花丸ちゃんはヨハネ?ちゃんの後を追い、ツインテールの娘も彼女の後に続く。何が何だかさっぱりわからない。
「3人ともかわいいなー。後で絶対勧誘しないと!」
「あなた達ですの、このチラシを配っていたのは」
すると、意気込む千歌の背後から先ほどの元気な3人組の声とは真逆の、凛とした雰囲気の声で呼びかけられた。途端に気が引き締まる。
後ろを振り返ると一人の生徒が千歌が配っていたチラシを手に持っていた。リボンの色は緑、つまり3年生だ。
「あなたも新入生?」
「ばかっ!あのな千歌、この人は3年生で・・・」
千歌の発言に慌てて急いで耳打ちをする。千歌は昔から間が抜けたところがあるが、さすがにここまでとは思わなかった。
「ええっ、生徒会長!?」
まっすぐ伸びた長い黒髪ときりっとしたエメラルド色の釣り目、そして特徴的な口元のほくろ。
生徒会長の黒澤ダイヤさんである。
「あらっ、浅間さん、あなたも一緒ですの?」
「いえ、僕はただ見ていただけというかなんというか・・・」
生徒会長とは、僕がこの学校の数少ない男子生徒であるということでいろいろと親しくさせてもらっている。
「まあいいでしょう。とにかく、全員生徒会室まで来ていただきますわ」
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「なるほどねぇ・・・」
帰りのバスを待ちながら千歌の話を聞く。
どうやら千歌は部活新設に関わる申請をしていなかったらしく、生徒会長にこってり絞られたらしい。
「それにしても生徒会長ったらひどいんだよ!いくら部員を集めてきてもスクールアイドル部は認めないって」
「まあ、あの厳しい生徒会長だからねぇ」
生徒会長の家は格式高い旧家であり、本人も日本舞踊や茶道など様々なことをたしなんでいると聞いた。だからスクールアイドルのような目新しいものに対して拒否反応を起こしても不思議ではない。
「あの生徒会長絶対にスクールアイドルを誤解してるよ、」
「まあ、そこは根気強く交渉するしかないかな。僕の方からも言ってみるからさ」
「ありがとう俊くん!そういえば、果南ちゃんのとこに行くけど、一緒に行かない?」
果南ちゃん、とは僕のもう一人の幼馴染の松浦果南の事である。淡島にあるダイビングショップの一人娘で、僕も千歌も姉のように慕っているのだ。
「ごめん、今日はちょっと家でいろいろとやらなきゃいけないから・・・」
「そっか、一人暮らし大変だもんね」
僕、浅見俊は浦の星女学院の寮で一人暮らしをしているのだ。そのため炊事洗濯掃除などの家事は自分でやらねばならない。そのうえ時間は少ないがアルバイトもしているから大変なのだ。
「じゃ、果南さんによろしくね」
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「懐かしいなー、この本」
まず家に帰った僕は明日の準備をしようと机に向かったが、次第に近くにおいてあった昔読んでた本や教科書、遊んだおもちゃにアルバムなどの懐かしい品をあさり始めた。僕の悪い癖だ。
そして、あるひとつのものに目が止まった。
「ほんとなんなんだろ、これ?」
それは長さ20㎝ほどの長方形の箱型の機械で、青地に白いラインが入っており、窓のような3つの液晶がついている。
唯一覚えていることは、これは「バトルナイザー」という名前だということ。
これは昔から持っているものなのだが、何のおもちゃなのか、どのメーカーなどは全く書かれておらず、それどころか電池ボックスさえ見当たらない。最近はネットで検索をかけているが全く情報が見つからない。もしかして外国のものだろうか?
まあ、考えても仕方がないのでしまって夕飯の支度でもするか
『四次元現象発生!四次元現象発生!』
すると何か操作をしたわけではないのに、突然持っていた機械から音声が鳴り出した。
「うわっ、なんだ」
今まで一度も点くことがなかった液晶にも光がともり、ボタンを押してもその音が止まることはない。
すると同時に次第に外が騒がしくなってきた。
何事かと思って部屋から出てみると、僕と同じく騒ぎを聞きつけて家から出たり、車から降りたりした人が大勢集まっていた。そして皆一様に海のある一点を見つめている。
「あっ、海が!」
僕も思わずそう叫んでしまった。この間千歌と曜と一緒に見たのと同じように海面が渦巻いているのだ。
しかも前回とは違い、渦は衰えることなくむしろどんどん巨大になっていく。
『宇宙怪獣接近!宇宙怪獣接近!』
「へっ!?怪獣!?」
するとまたも手に持っていたバトルナイザーから音声が鳴り出す。もちろんなにも操作はしていない。
次の瞬間、大きな水しぶきが上がる。
そしてそれが消えた後、呆然とした。
胴体に比べて極端に小さい手に、鱗のついた巨体。いかにも凶悪そうなぎょろりとした目と背中の棘。
夕日に照らされる内浦の海に巨大な怪獣が姿を現したのである。
「キャー!!!!」
誰かが挙げた悲鳴を皮切りに見物していた人たちが一斉に逃げ出し、周囲は一転してパニック状態となった。
「なんだあ・・・」
そこまで言いかけた時、言葉が止まった。
俺はこの怪獣を知っている。
宇宙怪獣ベムラー
宇宙の数々の星で乱暴を繰り返す凶悪かつ獰猛な怪獣で、口から発する青白い熱線が武器。頭の中からその怪獣に関する情報が次々にあふれ出してくる。
「なんで俺はあいつのことを・・・」
逃げていく人々をよそに、僕は呆然と立ち尽くした。
今初めて目にした怪物の情報を瞬時に、一発で判断することができた。
そんな自分に対して何か言いようのない恐怖感を覚える。
岸に向けて歩き出したベムラーは、僕の頭の中の情報通り口から青白い熱線を発射した。
熱線は近くに停泊していた漁船に命中して大爆発を起こす。
ベムラーは喜ぶかのように鳴き声を上げると、さらに続けて熱線を放って山肌の木々や付近の船や建物を燃やしていく。
幼いころから慣れ親しんだ景色は一瞬にして周囲は火と黒煙に包まれ、人々の悲鳴が響き渡る。
千歌たちが心配になり、逃げ去る人々とは反対方向へ駆け出す。高海家の人たちには返しきれないほどの恩があるのだ。
「無事でいてくれよ・・・」
幸い十千万には火の手が上がっていないが、近くに停泊していた漁船や車が炎上し、周囲には黒煙が充満している。
「おーい、千歌!」
僕は必死に叫びながら周囲を探して回る。
「しゅんくーん!!」
その声に振り替えると遠くに特徴的なみかん色の髪の人物が見えた。僕は急いで彼女のもとに向かう。
セーラー服は火災の煤のせいで所々黒くなっている。
そして、この辺では見ない顔の水着姿の少女も一緒だ。
無論なぜ彼女はこんな格好なのかとは思ったが、今はそんなことを気にしている状況ではない。
「二人とも大丈夫!?」
「俊くん!」
「早くあっちに・・・」
その瞬間、すぐ近くの道路に熱線が直撃し、ものすごい熱風が僕たちに襲い掛かった。
「僕は大丈夫だから、二人とも早く逃げて!」
必死で千歌ともう一人の娘を突き飛ばすような形で向こうに追いやる。
「しまった、くっそお・・・!」
しかし、自分が逃げようとしたときはもうすでに周囲は炎と煙に包まれており、身動きがとれなくなってしまった。
「おい!知らせるだけじゃなくて他に何かできないのかよ!」
自分が何もできない苛立ちと、炎が迫っている焦りで藁にもすがる思いで持っていたバトルナイザーに向けて叫んだ。
『バトルナイザー・モンスロード!』
「うわっ!?」
すると、手に持っていたバトルナイザーからまばゆい光が一つ飛び出した時だ。
その光に驚き目をつぶったと同時にものすごい音と共に地面が揺れ、突風が吹き抜けた。
しばらくして目を開くと、僕の周囲を囲んでいた火は消えており、前には信じられないような光景が広がっていた。
前向きに伸びた短い角と、とがった口先に細く鋭い目。
特徴的な丸まった鞭状の右手と、鋭利な鎌になった左手。
そして、白いラインが入った黒い体にオレンジ色の模様がついた大きな翼。
「ドラコ・・・」
僕の目の前に、彗星怪獣ドラコが現れたのだった。
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