レイオニクスと9人の少女 【大怪獣バトル・サンシャインギャラクシー】 作:ふらんどる
Twitterでは怪獣のチョイスの理由や豆知識などもちらっと語ってるので良ければご覧いただければ。
「ドラコ・・・」
現れたドラコは雄叫びをあげると、その巨体を一歩一歩前に進める。
彗星怪獣ドラコ。宇宙怪獣の一種で、彗星に乗って惑星間を移動する。その種族は両手が鎌な個体と鞭になっている個体の二種類が存在しており、背中の巨大な翼を用いてその巨体に似合わない身軽な動きをすることができる。
先ほどと同じように頭の中から怪獣に関する情報が沸いてくる。
夕日に照らされる内浦の浅瀬で、怪獣同士の決闘が始まった。
最初はドラコの出現にあっけに取られた様子のベムラーだったが、やがてにらみつけるような目つきに変わり、前かがみになって一気に突進してくる。それと同時にベムラーは手が極端に小さいため、体当たり攻撃を主とするということを思い出した。
ドラコは動じる様子も見せず鞭になっている右手を大きく振りかざす。
普段は丸まっている右手の鞭は、カメレオンの舌のように伸びて瞬時にベムラーの胴体に巻き付く。
そして、右手を払いのけるように降り、巻かれているベムラーを海面にぶつける。
「よしっ!」
ドラコはそのままボディプレスを仕掛けるがうまくかわされ、逆に立ち上がったにベムラーに強烈な蹴りを入れられて跳ね飛ばされてしまう。
続けてベムラーは青白い熱線を放つが、ドラコは瞬時に身をかがめて見事にかわす。
熱線はそのまま十千万の真上を突っ切りその後ろの山肌に命中し、周囲の木々が燃え上がる。
このままでは被害が広がる一方だ。そう直感した僕は叫んだ。
「ドラコ、海を背にして戦うんだ!」
僕の叫びに応じたのか、ドラコは瞬時に翼を広げてその巨体を飛び上がらせ、ベムラーの頭上を飛び越えて背後を取った。
ベムラーは驚いた様子で振り返るが、振り向きざまにドラコの左手の鎌の直撃、さらに続けて頭突きをお見舞いされ、背中から海面に倒れこむ。
「よし!ドラコ止めだ!」
ドラコは大きく雄たけびを上げると翼を広げて大空高く飛び上がった。そして、滑空しながらベムラーに向かって急降下を開始する。
それに気づいたベムラーは口からの熱線を連続発射するが、突っ込んでくるドラコは全く動じずにうまく回避しながら徐々に距離を詰めていく。
そして、そのままベムラーに体当たりした瞬間、左手の鎌でベムラーの喉元を切り裂き、振り向きざまに右手の鞭を勢いよく打ち付けた。
激しい打撃音と絶叫のような鳴き声が周囲にこだまし、ベムラーは倒れた後そのまま海底に沈んでいった。
「倒した・・・」
ドラコは大きく雄たけびを上げ、僕はその場に立ち尽くす。
「ありがとう!ドラコ戻れ!」
そう呼びかけると、たちまちドラコは光となってバトルナイザーに吸い込まれていった。
その瞬間、はっと我に返った。
「僕は・・・何を・・・」
全身の緊張が一気に解けて、その場にへたり込む。
僕は今目の前で起こったことと、自分がやったことにただただ呆然するだけであった。
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翌日は怪獣出現の影響で学校は臨時休校となり、急に丸一日暇ができた。
しかし、僕は何もする気になれず部屋で一人ため息をつく。テレビやネットも怪獣の話題で持ち切りだから、見る気にもなれない。
もしかして昨日の事は全部夢ではないだろうか、とも思ってしまうが、町の被害やテレビのニュースなどを見ていると、本当に現実のようだ。
「本当に何なんだよ・・・」
このバトルナイザーの中には怪獣が入っているということ、その怪獣は僕の指示通りに動くこと。そして、僕がバトルナイザーから呼び出したドラコを操ってベムラーを倒したということ。
まるで信じられない。しかしこれは現実に昨日起こったことだ。
考えていても仕方がないので散歩に出ることにした。
玄関のドアを開けると、いつもの潮の香りではなく、昨日の火災による、物が焦げた臭いが辺りに漂っていた。
道には消防や警察の車が行き交い、上空にはヘリコプターが何台も飛んでいる。
昨日の平穏な風景とは一変した町の様子を見ていると、普段の平穏のありがたさが身に染みてわかる。
幸いなことに、昨日の事件で死者は出ておらず、火災の被害も大規模なものにはならなかった。
しかし、いつまた怪獣が出るかもわからず、自分の怪獣が暴れだしてもっと被害を出すかもしれない、そう考えると途端に恐ろしくなってきた。
そんなことを考えながら歩いていると、向こうからワインレッドの長い髪の人物が歩いて来るのが見えた。
「あのっ、すみません!」
「あっ、君は・・・」
「あのっ、昨日は本当に、本当にありがとうございました!お怪我とかされていませんか?」
彼女は僕の前で立ち止まるのと同時に、途端にそう言って深々と頭を下げた。
「僕は大丈夫。千歌と一緒にいた娘だよね、君も怪我してない?」
「はい、おかげで大丈夫です。私、最近東京から引っ越してきた桜内梨子です。」
「僕は浅間俊、よろしくね」
そのまま内浦の案内を兼ねて梨子ちゃんと散歩をすることになった。
話していてわかるが、都会から引っ越してきたというのに派手さは全く感じず、見るからに清楚でおしとやかな人物だ。
「浅間さんはこの近くに住んでるんですか?」
「うん、今は学校の寮にね」
「そうなんですか。親と離れて生活なんて、私になんか到底できそうにないから、尊敬しちゃいます」
「両親・・・いないんだよね、僕。拾われたから」
「拾われた・・・?」
そう。僕、浅間俊の人生は普通の人とは違っている。
始まりは今から13年前。大雨の日に、だぶだぶの大人用の服を着せられて、傘もささずに道端に立っていたところを保護されたそうだ。
あの謎の機械を持って。
保護された僕はそのまま施設に引き取られて小学校に入るまではそこで過ごしていた。この名前も、保護されたときに「あさましゅん」と名乗ったからだそうだ。もしかしたら本名じゃない可能性だってある。
「それで、十千万って旅館に引き取られて、そこで高校生のころまでずっと暮らしてたんだ」
言うまでもなく十千万とは、千歌の実家の事である。板前をやってる寡黙なお父さんと、優しいお母さん。そこの三姉妹、特に千歌とは、毎日遊んだり、喧嘩したりと毎日楽しかった。
僕も新聞配達のアルバイトをして、自分で必要なお金は工面するようにしていたが、
浦の星に入学したのも、慣れ親しんだ土地にあるという以外にも、通学に費用が掛からないことや、テスト生ということで入学金や学費の免除があるという理由もあるのだ。
それでも高海家の皆さんには感謝してもしきれない。
「それで今は学校が提供してる寮で暮らしてるってわけ。ごめんね、なんか湿っぽい話しちゃって」
「そのっ、私こそごめんなさい。浅間さんの事情も知らずに・・・」
「いやいや僕が言い出したんだし気にしないで。そういえば、何で水着なんか着ていたんだい?まだ海水浴には早いし・・・」
先ほどから何度も彼女に謝らせてしまってなんだか申し訳なくなってしまうので、ずっと気になっていたことを彼女に聞いてみることにした。
「へっ!?水着!?」
しまった、いきなりこの話題はまずかったかと後悔したが、口に出してしまってはもう遅い。すぐに謝ることにした
「ごめんいきなり変なこと聞いちゃって!やっぱりだめだなぁ僕は」
「いっ、いえ、全然大丈夫です!・・・私、海の音を聞きたかったんです」
「海の音・・・?」
話を聞くに桜内さんは東京でピアノをやっていたらしく、こっちに引っ越してきたのもそのことに関係しているらしい。
「それで、飛び込もうとしたところを高海さんに止められて、二人で落ちた後に上がったと思ったら今度はあんなことに・・・」
「なるほど、そういうわけか。それにしても引っ越し早々災難だったね。もしかして、嫌いになっちゃった?この町の事」
「いえ、全然そんなことないです!景色は綺麗で、みんな優しくて、とってもいいところです」
「そう思ってくれてよかった。何か困ったことがあったら力になるよ」
「あっ、ありがとうございます!」
結局、彼女とは日が傾くまで一緒に歩いて回った。
昨日はあんなことがあったけど、今日は新たな出会いもあって悪い事ばかりではないなと、別れ際に僕はそんな事を思ったのであった。
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「全く、俊君は無茶しすぎだよ!本当に心配したんだからね!」
翌日、学校に着いて早々千歌に怒られた。
「ごめんごめん、千歌も桜内さんも無事だっんだから」
正直言ってあの時は自分の事なんて考えていなかった。もしあの機械がなかったら確実に命はなかったであろう。
「ほぇ?俊くんどーして梨子ちゃんの名前知ってるの?」
「まあ、ちょっとね」
「あっ、そういえば」
千歌は何かを思い出したようにハッとする。
「なんと!曜ちゃんが一緒にスクールアイドルやってくれるんだって!」
嬉々とした様子で見せてきた申請用紙には、千歌の他に曜の名前が書かれている。
「曜、そうなのか?」
「うん!水泳部と掛け持ちだけどね」
その綺麗な瞳は千歌と同じようにキラキラとしていた。
「私ずっと思ってたんだ、前に俊君に言われたとおり千歌ちゃんと一緒に何かやりたいって。だから、やるなら今しかないって思って!」
「ねぇねぇ、俊くんも一緒にやろうよ!」
「へ?僕!?」
唐突な千歌の言葉に驚いてしまう。協力するとは言ったがまさか自分が勧誘されるとは思わなかった。
「そうそう、悪いようにはしないから・・・」
「ぼ、僕はそんな柄じゃないよ・・・。自分自身が輝くよりも、千歌たちが輝けるように精一杯応援するからそれで我慢してくれ」
「うぅ、曜ちゃーん!俊くーん!」
すると突然感極まったのか千歌は僕と曜に勢いよく抱き着いた。
「千歌!?」
「千歌ちゃん!?」
「よぉちゃん!しゅんくーん!」
「おい千歌、紙!紙!」
抱きつく際に手から離した紙はひらひらと地面に向かって落ちていく。
「「「危なーい!!」」」
しかし叫んだときは時すでに遅く、申請用紙は水たまりに浸かってしまった。
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