レイオニクスと9人の少女 【大怪獣バトル・サンシャインギャラクシー】 作:ふらんどる
今回は今までの中で最長です。戦闘描写に結構苦労しました
「りーこーちゃーん!」
「ごーめーんーなーさーい!」
今日も相変わらず千歌は桜内さんを勧誘のため追い回している。
きっかけは数日前。生徒会長に作曲は誰がやるということを指摘された千歌はちょうど転校してきたピアノができる桜内さんに目を付け、毎日こうやって勧誘しているというわけである。
それにしても噂の桜内さんだと知ったときはまあ驚いた。最初に引っ越してきたと聞いたときに学校はどこだろうとは思っていたが、まさか浦の星だとは考えもしなかった。
「むー、梨子ちゃん絶対スクールアイドル向いてるのに・・・」
放課後、ステップの練習を終えて中庭のベンチに腰掛けながら千歌は言った。
「気持ちはわかるが、あんまりしつこすぎると嫌われるぞ」
「だってぇ、この内浦で曲が作れる人なんて梨子ちゃんしかいないじゃん」
確かにピアノができて、しかも容姿端麗な桜内さんはメンバーを探し回っている千歌にとっては格好の人物だ。勧誘したくなる気持ちもわかる。
「でも、曲の他にもやることあるだろ。たとえば衣装とかダンスとか」
「おっと、衣装の事は曜ちゃんにお任せであります!」
「おお、そうだったな」
曜は昔から気に入った衣装を自分で作ってしまうほどの大の制服好きである。
もうすでにデザイン案があるということなので、早速教室に移動してスケッチブックを見せてもらうことになった。
「じゃじゃーん!曜ちゃんの自信作であります!」
「「うーん・・・」」
曜のデザインした服はデザインはよくできているのだが、どれも制服チックでスクールアイドルの衣装として使えるかという点では微妙なところだ。
「よ、曜ちゃん、他のはないの?」
「じゃあ、これ!」
「武器持ってんじゃねえか」
ある一枚の絵に目が留まった。
「曜、これ・・・」
青と灰色を基調とした制服で、ヘルメットをかぶっている。
いかにも曜が好きそうな制服の一種であるが、どういうわけだか見覚えがあるような気がする。
「あっ、この衣装?これ、結構気に入ってるんだ」
「もしかして、着てみたくなっちゃった?」
「もー曜ちゃん!もっとかわいい衣装はないの?」
「もっちろん!」
しかし、あの青っぽい服にはどうも引っかかるところがある。
考えるとますますわからなくなってきた。
「俊くん?おーい」
「どうしたの?なにかあったの?」
「ご、ごめん。僕、先帰るよ」
「ちょっと、俊くーん!」
僕はそのまま立ち上がって、カバンを手に取り逃げるようにその場を後にし、浦女からバス停まで続く長い坂を下っていく。
いつもなら美しい海の風景や会話を楽しんでいるところだが、今日はそんなことをしたい気分ではなかった。
そのまま坂を下っていくと、バス停の横にワインレッドのすらっとした美しい髪の人物の後ろ姿が見えた。
「おーい、桜内さ・・・ 」
「ごめんなさっ・・・って、浅間さん!ごめんなさい、てっきりまた高海さんだと思って・・・」
振り向いた桜内さんは慌てた様子で頭を下げた。
「いいよいいよ、そんなに謝らなくて。むしろ謝るのは僕の方さ。ごめんね千歌が迷惑かけてるみたいで」
「いいえ、浅間さんが謝ることないです。今日は高海さんたちと一緒じゃないんですか?」
「うん、ちょっと体調がね。もしかして、梨子ちゃんはああゆうの嫌いだったりする・・・?」
「いえ、嫌だとか嫌いだとかそういうことではないんです。ただ・・・」
桜内さんはそこまで言うと少しうつむいたようになり、言葉に詰まった。
「ただ、ピアノをあきらめきれてない私がスクールアイドルなんかやったら、中途半端になっちゃって本気でやってる高海さんに失礼かなって思って・・・」
そう語る桜内さんの表情は、以前の曜と同じように迷いがあるように見えた。
「なるほどねぇ。優しいんだね、桜内さんは」
「優しいのは浅間さんの方です。わざわざ私の事を気にかけて、話を聞いてくれて。そういえば、大丈夫ですか?」
「ありがとう、ちょっと頭が痛くってね。もう大丈夫、多分考え事のしすぎかな」
「もしかして・・・、怪獣の事ですか?」
「よ、よくわかったね・・・」
僕の心を見透かしたような彼女の言葉に思わずドキッとしてしまう。
確かに彼女の言う通り、ここのところ僕の頭の大半は怪獣と例の機械の事について占められている。
怪獣の出現自体は今回が初めてではない。
最近は全く現れていなかったそうなのだが、ごくまれに世界各地に出現しており大きな被害をもたらしている。
調べてみても、どの事例も怪獣は突然何の前触れもなく現れたかと思えば、突然煙のように消えてしまうという事例が大半だそうだ。
全くわからないことだらけだ。
「この間は本当にありがとうございました。いつか必ずお返しをさせてください」
「いいよいいよお返しなんて。当然のことだよ」
そんなことを話していると、下校のバスの音が近づいてくるのだった。
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「もう、俊くん遅刻だよ!」
「女の子を待たせるなんてひどいであります」
「みんなごめん、ちょっと寝坊しちゃって」
翌日、僕は果南さんの家である淡島ダイビングショップに集まった。きっかけは先日の夜、千歌からダイビングをしないかという連絡があり、遅くまで考え事や調べ物をしていたので案の定寝坊してしまったのである。
「浅間さんありがとうございます。わざわざお付き合いしてもらって」
「気分転換にちょうどいいよ。それよりもなんで急にダイビングなんかを?」
「海の音を聞くんだって」
桜内さんに代わって、もうすでにダイビングスーツを着ている果南さんが答えた。
「海の音って前に桜内さんが言ってたやつ?実際音ってするんですか?」
「人によって感じ方は違うけど、海の中では音を遮るものがないから結構聞こえたりするんだよ」
「そうなんですか、さすが果南さん」
昔から、この内浦で海の事で果南さんにかなう人はいないと思っている。
「さあみんな、早く準備して潜りに行くよ」
「「「「はーい!」」」」
早速海に潜り、船に乗り込み海へ出る。何と果南さんは操船もできるのだ。そのカッコ良さには僕も昔からあこがれている。
残念ながら天気はあいにくの曇りで、水の中も太陽光がないのでいつもより視界がきかない。
桜内さんの方に目をやってもどうやら苦戦しているようだ。
「あれ、俊もういいの?」
「うん、いろいろとすっきりできたよ。残念ながら僕には海の音ってのは聞こえなかったけどね」
船の上に上がってからはしばらくそのまま海を眺めていた。
海を見るとどうしてもあの時の事を思い出してしまう。さすがにいつもこうだとつくづく嫌になってしまう。
「俊、どうしたの?さっきからずっと考え込んで、らしくないよ」
そんな僕を変に思ったのか果南さんが話しかけてきた。
「何でもないよ・・・」
「そう。なら・・・ハグっ!」
そう言って果南さんはいきなり僕に抱き着く。果南さんは昔から何かにつけてハグをするのだ。
「うわっ!?果南さん!?」
昔はされてもなんとも思わなかったが、この年になるとさすがに恥ずかしい。しかもダイビングスーツを着ているので体のラインがくっきりと出ておりそのことが余計に恥ずかしさを増幅させる。
「言うまで離さないぞー」
「わかったわかった、言うから離して!」
「それで、悩みごとはなにかなん?」
「いやー、今日の晩御飯何にしようかなーって」
無論果南さんに怪獣の事を話すわけにはいかないから咄嗟にそう言ってしまう。
「本当?」
果南さんは顔を近づけてくる。昔から果南さんは僕の嘘を見抜くのがうまいのだ。
「ほ、本当だよ・・・」
「まあ、そういうことにしとくよ。でも、何か困ったことがあったら言ってね。俊は弟みたいなもんだから
「ありがとう」
すると、海面から人影が出てきた。千歌、曜、桜内さんの三人だ。
「聞こえたよ、海の音!」
「私も!」
3人の嬉しそうな声がこちらまで聞こえてきた。
そして空を見上げると、いつの間にか曇っていた空から一筋の光が差し込んでいた。
僕もこんな3人の力になれればいいな、そう思ったことで先ほどまで曇っていた僕の心にも光が差したような気がした。
ダイビングを終えた僕たちは一通り淡島を観光した後、船着き場の桟橋へと移動した。淡島には果南さんのダイビングショップの他にも水族館やホテルもあるのだ。どうも浦の星の新しい理事長もホテルの関係者らしい。いったいどんな人だろうか。
「果南さん、今日はありがとうございました」
「また潜ってみたくなったらいつでも言ってね」
「ねえねえ、果南ちゃんも一緒にスクールアイドルやろうよ!」
「そうそう。体力もあるしかわいいし、絶対向いてるよ!」
すると千歌と曜が果南さんを勧誘し始めた。確かに僕も体力と美しさを兼ね備えた果南さんはスクールアイドルに向いていると思う。
「えっ、私はいいよ・・・。もう三年生だしお店の事もあるから・・・」
すると、どこかためらった様子で果南さんは答える。何かあったのだろうか?
「ほら二人とも、そろそろ出発の時間だよ。それじゃ、果南さんまた」
「うん、またね」
果南さんに挨拶をして僕は船に乗り込み、千歌と曜も続く。しかし、なかなか桜内さんが乗ってこない。
「見て!空が!空が!」
どうかしたのかと見に行こうと思った途端、桜内さんの叫び声が響いた。
その声であわててデッキから身を乗り出して空を見上げた僕は自分の目を疑った。
空がガラスのように割れていくのだ。
そして、その割れ目の先には真っ赤な空間を背景に異形の怪物が顔をのぞかせていた。
「か、怪獣・・・」
そして、その怪獣はそのまま海上に落下し、ものすごい水しぶきが上がる。
それと同時に水族館のお客さんたちが一斉に逃げ出した。
「みんな、早く山の方に!」
果南さんの声で急いで船から降りようとするが、船を降りようとした瞬間に怪獣の起こした波が大きく船を揺らす
「うわっ!?」
そしてそのままバランスを崩してしまい海へと落下してしまう。
「俊くん!」
桟橋から千歌が顔を出し、千歌が投げた浮き輪に何とか掴まる。
「僕は大丈夫だから早く逃げて!」
「でも!」
「いいから!」
千歌を振り切って岸に向かって泳ぎだす。
「またかよ・・・!」
岸についた僕は服が濡れているのも気にせず、逃げていく人たちと反対方向へ走りながら例の機械をカバンから取り出した。
そして、島の先端まで行き、遠くにいるその怪獣を見上げる。
巨大な角とも鼻先とも思える形をしている先端がとがった顔。
全身は青色の鱗で包まれており、腹部からは六つの真っ赤な角が突き出ている。
そして、見る者の目を引くまだら模様がついたうちわのように極端に大きな手。
あの独特の姿には見覚えがある。
怪魚超獣ガラン
異次元人ヤプールがデボン紀の魚と宇宙怪獣を合成して作り出した超獣。その手は大きな水かきがついており、吸い込んだガスをガランガスと呼ばれる毒ガスに変えて口から放出する。テレパシー能力もあり、たしか最初に現れたときはヤプールに利用されていた漫画家の指示で動いていたと聞いたことがある。
また以前のように頭の中に怪獣に関する情報が流れた。
「なんなんだよほんとにぃ!」
何が何だか全く訳が分からない。でも、ここではやるしかないのだ。
「行け!ドラコ!」
『バトルナイザー・モンスロード!』
まばゆい光と共にバトルナイザーからドラコが飛び出し、淡島に向かってくるガランの前に立ちふさがった。
「ドラコ!淡島を守るんだ!」
ドラコは僕の声に答えるように咆哮を発し、そのままガランめがけて突進して頭突きをくらわす。
続けてドラコはよろけたガランめがけて右手の鞭を振り下ろすが、水かきのついた大きな手で払いのけられてしまう。
そしてガランはその大きな両手で連続でビンタをくらわし、さらにその長い尻尾を振りかざしてドラコにたたきつける。
立ち上がったドラコもすぐさま鎌を振りかざして反撃し、一進一退の攻防が続く。
「いいぞ!そのまま押し切るんだ!」
僕の言葉に答えたようにドラコが振り下ろした右腕の鞭は、カメレオンの舌のように伸びては首元に巻き付く。
そしてそのまま腕を横に振ってガランをそのまま海面に打ち倒し、そしてそのまま追撃をかけようと突進していく。
「よしっ!」
しかし、ちょうどドラコが近づいたタイミングでガランは反転して仰向けになり、瞬時に口から白いガスを勢いよく噴射した。
「しまった!」
ドラコはすかさず翼を広げて風を起こしてガスを押し返そうとするが、勢いよく噴射されるガスに力及ばず徐々に苦しみだす。
さらに、ガランの顔の先端がスパークし、ドラコがその光に怯んだ隙に畳み掛けるようにビンタや頭突きを繰り出してくる。
海の戦いではガランの方が圧倒的に有利だ。いくら幾多の激戦を勝ち抜いてきたドラコとはいえ、戦う環境が不利ではその力も存分に発揮できない。
繰り出されるビンタの連続に先ほどとは逆に、ドラコの方が海面に押し出された。
「くっそぉ・・・」
指示も出せない自分がふがいなく思えてしまう。こうしている間にもガランはその大きな手でドラコをビンタし続ける。
大きな手・・・・?そうだ!
「ドラコ!奴の弱点は手だ!」
思い出した!ガランは手が大きい分、その付け根部分の皮膚は他のところに比べて少しもろくなってるんだ。
確か一番最初に現れた時も、手を狙われたら弱体化してあっけなく倒されたはずだ。。
「手の付け根を狙うんだ!」
僕の声に答えたドラコは、一瞬の隙をついてガランの腹に蹴りを入れる。
「よしっ!」
そして、怯んだガランの懐に潜り込み、左手の鎌を思いっきり振り上げた。
『グエェェェェェェ!!』
切り落とされた大きな手が落下したと同時に、ガランの絶叫が周囲に木霊する。
更にもう一度鎌を振り下ろしてもう片方の手を切り落とす。
「止めだ!」
そして、ドラコはそのままガランめがけて火炎弾を発射した。
『ガァァァァァァ!!』
ドラコの口から吐きだされた真っ赤な火の玉は、腕を切り落とされてのたうち回っていたガランに直撃する。
「よし、やった!」
そしてそのままガランは水しぶきをあげながら倒れ、そのまま消滅していった。
「戻れ、ドラコ!」
掲げると、ドラコは光となってバトルナイザーの中に戻っていった。
「ふぅ・・・、またやっちゃった・・・」
水蒸気が漂う沼津の海を見つめながらそんなことをつぶやく。なぜ自分がこんなことができるかわからない。しかし、私がやるしかないのだ。
「しまった、また千歌たちに心配かけちゃった。早く戻らなきゃ」
腕時計を見ると桟橋から落ちて別れてからもうかなり経っている。以前も同じように心配かけたから謝らないとな。
僕は急いで向きを変え、水族館の方へと走り出していった。
「wow、unbelievable・・・」
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