神様って、主人公を間違えて殺してしまって謝罪しながら殺してしまってお詫びに転生特典をくれてくれるそんな寛大で優しい神様。
それ、当たり前だよ、と思っていませんか?
神様転生杯作品です。

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神様は間違えて殺して詫びて特典をくれて転生させてくれる。当たり前、と思っていませんか?

 

 

 

「───────は?」

 

 

 眼下、いや私の視線の先に転がっているモノを見て、私はあまりの事に視線が錯綜した。

 何が起きた。

 いったい何が起きた。

 

 アスファルトに転がる私の下半身、血みどろに濡れてアスファルトに半ば突き刺さったマンホールの蓋、周囲に響き渡る喧騒。

 なんだ、これは?

 何が起きたのか全くもって私には分からない、分かるとしてもこれが、いま起きてしまったこの事態が私の最期であるということだけだろう。いったいどうしてこんな事になったのだ。

 いや、どうして私は死ぬのか。違う違う違う違うそんなことよりもだ、私はこの後早く家族のもとに帰らなきゃいけないんだ。その為にも私はこんな所で寝転がっている訳にはいかなくて、そうだ、ケーキを買ったんだ落としてぐちゃぐちゃになってはいないだろうか。

 妹が志望校に受かったんだ、祝ってあげなきゃいけないんだ早く帰りたい、やめろやめろ、意識が、視界が暗くなっていく、違う違うまだまだまだまだ。

 止まってくれ、どうかどうか、時よ止まってくれ。

 私はまだ死にたくないんだ─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────え」

 

 

 闇に染った視界、だが次の瞬間には私の視界は白一色に染まっていた。

 普通ならば軽く眼が痛くなりかねないような純白、いやこれはどちらかと言うと潔癖的な白。生き物なんていう点など要らないと言わんばかりに徹底された白。

 塩白。

 そんな世界?空間?部屋?ともかく、死んだはずの私はそんな所にいた。

 もしかしたら意識を失った私は救急車か何かで病院また何かそういう施設に運ばれて手術を受け、助かったのかもしれないというあまりにも荒唐無稽なIFが脳裏を過ぎったがそんなわけが無いだろう。

 人工物如きでこんな塩の如き白を創り出せるものかよ。

 では、ここはどこでいったいどうして私がこんな場所で意識を持っているのだろうか。少なくとも私が生きているなんていう可能性は..............認めたくない例え世界が滅んだとしても認める事は出来ないが.......ない。少なくとも主観的にはない。

 いや、それ以前にあの時、何が起こったんだ?

 気がつけば私の下半身と上半身は分離していた。そして、近くには恐らく私のモノであろう血に染ったマンホールの蓋がアスファルトに突き刺さっていて.......ああ、そうだ、妹、家族.......みんなはどうしているのだろうか。

 せっかくの妹の祝うべき受験合格の日だというのに、大変な事になってしまったじゃないか、どうしてどうしてどうして────違う違う。

 

 

「思考が纏まらない.......混乱しているのか?」

 

 

 ここがいったい何なのか考えているというのに、いつの間にかあの時何が起きたのかを考え、次の瞬間には家族の事を考え始める。

 まるで思考が纏まらない。さながら目の前のものに目移りする子供のようで胸中に苛立ちが降り積もり始めているのを感じながら私は頭を抱える。

 

 

「落ち着け落ち着け落ち着け.......」

 

 

 どうすればいい。どうすれば落ち着ける。

 いや、落ち着く云々以前にだ。最初の疑問、ここがどこなのかをそれだけを考えるんだ.......他に余計な事は考えるな.......。

 少なくともこの世、言い方が違うな.......現世、そう現世だ。現世ではないだろう、私は死んでいるのだから..............?いや、待てよ。腹から下が無くなったからと言って死んだとは限らない筈だ。少なくとも即死ではなかったのだから.......なら、上半身だけで何とか止血か何か処置をされて今、私は眠っているのかもしれない。つまり、ここが夢の中である可能性は決してありえないわけじゃない。

 .......で?

 

 

「そんなIFを考えてるぐらいなら、もう少しまともに頭を回せよ」

 

 

 はぁ、どうする。

 もう、生存してるかもしれないなんて考えるな。私は死んだ、それでいいもうそれでいい。

 ともかく、それならここはどこなのか。

 死後の世界?自分が天国に行けるか、と聞かれれば小一時間悩んでしまうが、少なくとも地獄に堕ちるような人間ではないはずだ。

 無論、そういう諸々や価値観は人間が決めることではないのかもしれないが.......。

 

 

「少なくとも非科学極まりないのは当たり前だろうな。そもそもこの事態がありえない事なのかも人間の尺度だけじゃあ到底分からなくて─────」

 

 

 瞬間、私の視界が灼かれた。

 この塩白の世界に唐突として何か、到底理解出来ないような光のような何かが現れたのだ。唐突な光に私の目は灼かれ、その場に屈んだ。

 ダメだ、ダメだ、思考を紛らわせていないと眼の痛みに耐えられない.......!

 しばらくして、漸く眼が快復し少しずつ慣れてきたのか私は薄目ながらも顔を上げてその光を見て

 

 

───不遜なり

 

「ッッッッ!!!???」

 

 

 瞬間、眼が、眼球が煮えくり返った。

 いや、そんな感覚なんて分かりはしないがしかし、少なくとも自分の眼球が唐突に熱くなっていくのはわかった。それに視界が白く白く白く染まっていく。

 これが眼球が沸騰するという感覚なのだろうか。

 さっきも言ったがこうして冷静に思考を回しているように見えるがそうでもしないと気が狂いそうな激痛が絶え間なく目に来ている。

 光を見ようとしたら、こうなった、いやそれよりも今誰かの声が聴こえて───

 

 

───不遜なり

 

「..............?.......は?」

 

 

 耳が転がっている.......違う、アレは.......耳?耳のような形をした塩か何かそういう塊があって.......、ああ、耳が無い。

 

 

───不遜なり

 

「............................」

 

 

 声が止まった。

 分からない。一体何が起きているんだ?

 いや、分かっている。眼球が死んで、耳が無くなって、そして声が出なくなった。

 そういうありえないような出来事が今起きた。それがいったいどうして起きたのかが私にはさっぱり分からない。

 少なくとも唐突に現れた光が原因なのだろうが.......。

 

 

───いったい誰が許可をもって、あの場にいたのか、あまりに不遜。吾が放ったアレで何故死んだ、何故吾を煩わせるのか、不遜不遜であるぞ

 

 

 頭に直接入ってくるような声?音?ともかくその何かに私は頭が割れそうになりながらも理解した。

 私が死んだのはこの何かのせいだ、と。

 文句を言おうにも声は無く、睨みつけようにも眼は無く、言葉を拒もうとも耳は無く、私は違います何も出来ずこの声を聴くばかり。

 

 

───よもや吾のせいと思うか。不遜である、吾ではなく汝のせいであろう。汝があの時、彼処にいたが故に起きた事態であり、汝が悪也

 

 

 ああ、なんて、なんて傲慢なのか。

 そう思っているのにも関わらず、私の中でこの声の言っていることを真摯に受け止め、仕方なく私が悪であると納得しているかのような感覚があった。

 どうして、なんて考えるほどマトモでは無い。

 そもそもマトモだったら、こんな状況で思考なんて回せるものかよ。頭が割れてしまいそうな中で私は今の自分に呆れつつも、性懲りも無くどうすればいいのか思考を回している。

 

 

───だが、吾も寛大故に汝を赦そう。所詮は人、人如きに吾も憤激する事は無い

 

 

 いったい何様だ、そんな考えが頭を覗かせかけたがどうせろくでもないことになりかねない為、無理矢理押し殺しつつ、あちらの反応を伺う。伺う眼なんてもう生きてないが。

 

 

───そして、汝に栄誉を与えよう。汝の魂、汝の死を吾が有効的に活用す

 

───吾の世界で不遜な事に人を管理していると豪語する芥がいる。人とは弱く脆いならばなるほど、芥に騙されるやもしれぬ。故に吾はその芥を滅ぼそうと考えた

 

───だが、吾とて一々芥風情に構うつもりはない。為せばその瞬間、終わることと言えどもその瞬間が吾には惜しい。故に汝を使う

 

 

 つまり?塵掃除しようと思っていて、掃除自体は一瞬で終わらせられるがその手間が面倒だからちょうどよく死んだ私で代わりに掃除させようってことなのか?

 私はどこぞのルンバか何かだと?

 巫山戯るな、そんな思いが強くなった。どうして、そんな事を私がやらされなければならないのか。

 だが、それを吐こうにも声は無い。

 ただ、ただ、当たり前のように何かは一方的に神託を告げる。

 

 

───もはや塵ですら無くなる汝を吾が拾い上げよう。歓喜せよ、讃美せよ、尊崇せよ

 

───吾だけが汝を掬い、救け、意味を与えよう。吾だけが汝の価値を知る

 

 

───ああ、これ(・・)は邪魔だな

 

 

 ────は?今、何が、起きた。

 明滅する視界。やけに清々しくなった思考。

 ぽっかりと胸に何か空いてしまった様な感覚。

 

 

「いったい、何を.......した.......!!!」

 

 

───不遜、だが好いとく赦す

 

 

 奪われたモノが全て取り戻された。いや、この場合返却された、が正しいのだろう。

 耳も、声も、眼も全て戻った。だが、だがしかし、何か何か足りないのだ。何が無くなったのかは分からないが何かが無くなったのは理解出来た。

 このぽっかりと空いた孔が訴えている。返して返して返して、と取り上げられた子供のように喚いているのが私には痛いほどわかったのだ。

 

 

───吾が与えた加護を受け容れるには人の身にはあまりにも足らない。吾とて無為に溢れてくだけるのは望むものではない。故に汝から一つ抜き、その隙間に吾の加護の一端を捩じ込んだ。その栄誉に歓喜するがいい

 

「なにを、なにを、奪った.......私から、私から、なにを奪ったんだ.......!!」

 

───有象無象の記憶である

 

 

 ヒュッ───、そんな食う気が漏れる音が聴こえた。有象無象の記憶、その言葉に込められたモノはどうでもいいというモノではあったが、それが間違いなく私にとって大切なものである事は分かる。

 どれほど大切だったのか、いったいどれが奪われたのか、分からない。

 

 

「返して、かえ、して..............お願いします.......返してください.......何でもしますから.......だから、だから、どうか奪わないで.......返して.......お願いしますお願いします」

 

 

 外聞も恥も何もかもを捨て去って、私は額を擦り付けてでも頭をさげて、懇願する。

 どうか返して欲しい、と。

 

 

───吾に願うか不遜。だが、吾は寛大である故に汝が使命を成した暁に還す事を約束しよう。吾は契約を違うことは無い

 

「.......使命.......はい、はい.......成します.......きっと、きっと、きっと─────」

 

 

 強制、命令、無理矢理、ならばまだ逃げられたのだろう。

 だが、私は自分から進んで首を縦に振ってしまった。迂闊過ぎるなどと言われるかもしれない。だが、だが、仕方がないじゃあないか。

 奪われた記憶が果たしてどんな記憶なのかは分からない。それでも大切な記憶だということは分かっているのだ、ならば手を伸ばしてしまうのは仕方ないじゃあないか。

 例え、その伸ばした手の先にあるものが地獄であろうがなんだろうが、私は────

 

 

 

───此処に契約はなった。人よ、欲する物が為に我が栄誉の元、駆け抜けるがいい

 

 

 嗚呼、なんて悲劇。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この世界に大いなる慈悲深き地母神より勇者が遣わされる。

 そんな祝報が大国の王都より報されて早数ヶ月。

 

 この世界には魔王という存在と大いなる慈悲深き地母神という存在がいた。

 片や魔族を率いて人類より領地を奪わんとする一族の長。

 片や人類を庇護し祝福する侵されざる聖母が如き女神。女神は度々、人類へと祝福を施して魔族と魔王を辺境に追いやらんとし、魔王らはその度に反発し自分たちの種族の未来を求めた。ある種、拮抗していたと言うべきだろうちょうど良い具合に保たれていた均衡、そんな平和ではない、とは言いがたかった妥協の安寧を崩すかのように地母神はこの世界へと一人の勇者を送り出した。

 女神曰く、優しく、正義感があり、誰かの嘆きに手を差し伸べられ、そして見目麗しいそんな絵に描いたかのような理想図そのものとも言える勇者。

 召喚される勇者が必ずや悪を討ち世界を良き方向へと導くだろう、と女神寄り神託された人類は大いに湧いた。

 大いなる慈悲深き地母神がそう太鼓判を押してくださるのだ、きっと勇者が魔王を討ち果たし世界を救ってくれるだろう、と誰しもが期待し胸に淡い願いを抱いた。

 

 召喚される大国の王都、その儀式場が王城に住まう美しい姫君はそんなまだ見ぬ勇者と世界が救われた暁に結ばれる事すら夢見ている。

 例え、汚職に濡れていようとも少なくとも甘い汁は吸えるだろうと考えた貴族たち。

 より権威を得んが為に勇者を聖女で篭絡せんと目論む聖職者たち。

 多くの人間が召喚される勇者に期待し、儀式の場へと集まった。

 

 

 召喚陣を整えた術者や賢者が長たらしい文言を唱え、女神の神託を受けた教皇が恭しく女神へと祈り、儀式の場に光が満ちた。

 誰しもが現れる勇者へと期待した。願った。祈った。

 色は様々なれど願いに貴賎はなく、願い応えようと光は大きくなって収束し、そこには勇者の姿が─────

 

 

 

「いったいどうして、わざわざ待ってくれると勘違いしていた」

 

 

 光が消えた儀式の場にいたのは二つの人影。

 片や白い鎧に身を包んだ人影、片や深い蒼と黒の装束に身を包み身の丈ほどの大剣を片手で握る青年。

 二人?そんな疑問が最初は誰しもが抱いていた。

 だが、目の前の光景を理解すれば悲鳴と恐怖ばかりがそこに満ちていく。何故ならば白い鎧の人影には頸から上が無かったのだ。

 その代わりに青年の握る大剣、その刀身の腹に置かれた麗しい表情のままの少年の首。

 

 

「これも仕事なんだ、悪く思うなよ」

 

 

 刎ねた勇者の首を大剣の腹と床に挟んで潰し、身体を四分割にしながら青年は至極どうでもいいように吐き捨てて、ただ告げた。

 

 

「『不遜、吾を見るな聴くな話すな(テトラグラマトン)』」

 

 

 

 

 

 

 その日、女神を信奉していた大国の王都がソラより降り注いだ星によって滅び去った。

 

 

 

 

 

 






 ドラクエ系世界に神座系ステータスを投げ込むようなもの。


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