サトライザーを変態銃でいじめるBOB   作:篠乃丸@綾香

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サトライザーを変態銃でいじめるBOB

銃で撃たれると現実のプレイヤーまでも死ぬ凶悪犯罪事件、《死銃事件》が解決し、再び平和が戻ったGGO。プレイヤー達は死銃の事など忘れ、純粋にGGOを楽しみ始めていた。

 

そして、そのGGOの最強プレイヤーを決める大会、バレット・オブ・パレッツ(BOB)も、今回で第4回になる。昨日から開催されていた予選には数百人規模のプレイヤーが集まり、トーナメントを行って勝ち上がっていた。

 

しかし、そのBOBの予選大会に思わぬ来客が来ていた。ナイフどころか素手で、何も装備せずに戦い、相手の動きを先読みして回り込んで極近接戦に持ち込んでキルをする。そんな強烈な強さを持つプレイヤーがいきなり登場したのだ。

 

 

Your soul will surely be sweet(君の魂はきっと甘いだろう)

 

 

彼は勝利の際にこのような決め台詞を必ず言う。それは、かつての第一回BOBにて日本人プレイヤーをナイフとハンドガンだけで無双して皆殺しにし、運営から出禁を食らうほどの大暴れをした伝説のプレイヤー。

 

サトライザーの再降臨だと、誰もが思った。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

朝田詩乃こと、GGOをプレイする女性プレイヤー《シノン》は、BOBの予選大会が終わってからしばらくしてもログアウトしていなかった。

 

それどころか、シノンは自分のプレイヤーハウス内で一つのチャットをしきりに眺めては、たまにキーボードを打ち込んでは頭を悩ませている。

 

かれこれ夜の11時を回っており、いくら朝田が一人暮らしでも、寝不足は明日のBOBの決勝大会に響く。しかしそれでも、彼女にはこのチャットから離れるわけにはいかなかった。

 

チャットのタイトルは……

 

 

『BOB決勝戦のサトライザー対策の会』

 

 

第二回BOBで2位になったトッププレイヤー、《闇風》が立ち上げた特別チャットで、メンバーは29人。その全員が、このBOBのトーナメントを勝ち上がり、決勝にまで進んだトッププレイヤー達である。

 

このチャットはサトライザーの再降臨を警戒した闇風が、厳重なセキュリティの下で特別に立ち上げた意見交換会だ。闇風は第一BOBでサトライザーに手も足も出せずにやられたプレイヤーの一人、警戒するのも頷ける。

 

そして、このチャットの中には他にも第一BOBでサトライザーに一方的にやられた経験のあるプレイヤーも多数いる。そんな彼らが口コミやメール、予選が終わった会場で直接声をかけて集め、ようやくサトライザー以外の29人が集まったところだった。

 

シノンも今回のBOBのトーナメントを勝ち上がり決勝にまで進んだ為、このチャットに呼ばれていた。シノンにとっては参加する気は初めはなかったが、トッププレイヤーである闇風が直接打診してきたのと、サトライザーの実力を噂程度で知っていたシノンにとっては興味深い集まりだった。

 

 

闇風『とまあ……こんな感じでサトライザーはナイフとハンドガンのみで無双ゲームをしていた。その強さは計り知れないくらいで、俺を含めたJPサーバーの出場者の全員がやつに弾丸を当てることなく一方的な試合をされたんだ』

 

 

闇風が当時の様子を悔しそうに語る。かつてのゼクシードに比べてまだ人のいい闇風は、当時の様子を悔しいながらに話してくれた。経験者の言葉は重みが違くて、他のプレイヤー達も押し黙ってしまう。

 

 

ダイン『改めて聞くととんでもねぇ野郎だな……銃が主体のGGOで、ナイフとハンドガンのみで近接戦闘仕掛けるなんて、只者じゃないぜ……』

獅子王リッチー『ああ、しかもほとんどのプレイヤーが行動を先読みされて回り込まれたと言うのも恐ろしい話だな』

 

 

前回に引き続き決勝戦に出場しているダインとリッチーが口々に言う。闇風の用意した資料では、倒されたプレイヤー達は全員弾丸を当てるどころかその前に倒されたプレイヤーが多かったと言う。

 

 

銃士X『海外ならともかく、JPサーバーでは近接戦闘の経験があるプレイヤーはほとんどいないからねー

Keith『……あの光剣使いのキリトちゃんは除いてだけどな』

 

 

と、プレイヤーの一人がからかい気味に言う。チャットはすぐに笑いの渦に呑まれ、重苦しい雰囲気が少し改善する。事情を知っているシノンもそれには苦笑いで答えるしかなかった。

 

 

闇風『あーあの光剣使いのキリトね。彼女、決勝大会どころか予選にすら出ていなかったな、前回優勝者だった筈だが……』

ダイン『シノン、お前コンビ組んでいたから何か知っていないか?』

 

 

ダインに質問され一瞬事実を言っていいのか血迷うが、ここは素直に話したほうが良さそうだと思いコメントする。

 

 

シノン『あいつは別のゲームからコンバートして来ていたから、今は元のゲームに帰っているわよ。今回は出場しないって』

闇風『そうか……それは残念だな。彼女が居れば近距離戦タイプのサトライザーが相手でも勝てるかと思ったんだが……』

 

 

たしかにキリトがいれば、極接近戦を仕掛けてくるサトライザー相手には相性がいいかもしれない。しかし、映像を見るにあの圧倒的な強さの前ではキリトでも勝てるかどうかは分からないとシノンは思う。

 

それほどまでにサトライザーは強いのだ。しかし、キリトのようにフォトンソードの一つでもあれば一矢……いや、一刃サトライザーに報いることができるかもしれない。

 

 

夏候惇『とかなんとか言っちゃって、本当はキリトちゃんに会いたいだけじゃないのか?(笑)』

闇風『そんなわけないだろ……まあ、居ない人ねだりをしても仕方がない、話を戻そう』

 

 

チャット主となっている闇風が、話の路線を元に戻す。

 

 

Korean_11『とにかく、そのサトライザーって奴は馬鹿みたいに強いってことだな?』

 

 

今回BOB決勝戦初出場となる女性プレイヤー、《コリアン11》が闇風に質問する。彼女は実装されたばかりのレア武器、『K11複合小銃』という現実世界でも非常に珍しい銃を使う新参のトッププレイヤーだ。

 

 

闇風『まあ、そういうことだ。それも桁外れに強い』

Korean_11『なるほどな。しかも、倒した相手の武器を鹵獲して使っているんだよな確か』

闇風『ああ、俺のキャリコも奪われてゼクシード相手に使われたからな……どんな武器でも使えるスキルがあるんだろう』

Korean_11『じゃあさ、そいつが使ったことのないようなレア武器を鹵獲させるってのはどうだ?』

闇風『レア武器?』

 

 

コリアン11はそう言って自慢げに話を続ける。シノンもやっとまともな意見がで始めたのかと、話に注目する。

 

 

Korean_11『そうだ、例えば実装されたばかりのレア銃……私のK11みたいな武器を使用すれば、鹵獲されても使い方がわからずパァだ。それに、K11はGGOではグレネードランチャーが標準でくっ付いた銃だから、サトライザー相手にも戦えるはずだぞ!』

Price『無理だな、あいつは第一回の時当時実装されたばかりのレア銃であるファマスをも使いこなしていた。その戦法は効かないだろう』

 

 

と、これまたBOB決勝戦初参加の《プライス》というプレイヤーが口を挟む。

 

 

Korean_11『いやいやいや、K11はかなり重いからそれだけで重石になる。鹵獲した状態で近接戦闘はできないだろうし……』

Price『それ、お前がやられる前提になっていないか?』

Korean_11『あ……アハハハハ……』

Price『笑って誤魔化すな、これは重大な案件なんだぞ……』

 

 

冷静沈着なプライスは、コリアンを宥める。彼は英語訛りの日本語を喋り、手にしたL85A1でしたたかに立ち回るプレイヤーだ。

 

 

夏候惇『そうそう、重い武器でもどっかの英国産アサルトライフルみたいに鈍器になる可能性もあるからな〜』

Keith『確か……鈍器の名前はL85A1とか言いましたよね?(笑)』

Price『よしお前ら、本戦で覚悟しておけ』

夏候惇『ヒェ……』

Keith『ヒェ……』

 

 

そんなやりとりを見ながら、シノンはサトライザーへの対策を考えていた。彼は行動を先読みして攻撃を仕掛けてくるのなら、それをなんとか潰すか、それを逆手に取るかの二つが考えられる。しかしそのどちらとも、サトライザーを上回るとは考えられなかった。非現実的だ、頭を振るってそれを追い出す。

 

 

リッチー『それにしても、コリアンさんのK11はすごいよな。よくあんな……言っちゃ悪いがゲテモノ武器を使いこなせるものだ』

ダイン『確か……コリアンさんって日本に住んでいる韓国の方でしたよね? 韓国にいた頃に軍とかでK11を触ったことあるんですか?』

 

 

と、ダインがリアルの事をデリカシーなく聞くので、注意しようとしたがコリアンは気安く答えてくれた。

 

 

Korean_11『ん? そうだぞ、20になった年から2年間軍に勤めてた。徴兵制でな』

 

 

韓国では2022年から女性も徴兵されるようになったと聞く。どうやらコリアンはGGOの武器の扱いを、軍で学んだようだった。

 

 

ダイン『なるほど……通りで強いわけだ』

闇風『そこでもK11を使わされていたんですか?』

Korean_11『そうそう、K11は重くってさ……あれを抱えて走るの辛かったなぁ……まあ、それでもそのおかげでGGOで活躍しているんだけどな!』

Price『まあ、GGOで実際に銃を使った事のある人間が強いのは自明の理だな』

リッチー『一昔前のFPSゲームならまだしも、体の経験がモノを言うVRゲームでは、徴兵制や銃社会のある海外とそれらが無い日本とじゃ、プレイスキルに歴然とした差があるのは仕方のない事だからな』

銃士X『それなのに、なんなのあのサトライザーって奴……銃社会の海外から来ては日本人相手に無双して……マジムカつく……』

 

 

シノンも銃士Xの意見に賛同だった。

 

 

シノン『そうそう。まあ、言っちゃ悪いけど、サトライザーのやっている事は、格下相手に無双して俺TUEEEEで喜んでいるお子ちゃまそのものよ』

闇風『違いないな!』

ダイン『その言葉、直接サトライザーに言ってやりたいぜ!』

 

 

たしかに言ってやりたいが、その前にねじ伏せられてあの決め台詞を言われるのがオチだろう。その前に、なんとか奴を倒すことができれば……あるいは……

 

 

ダイン『そう言えば気になったんですけど、K11って現実ではかなりのポンコツじゃ無いですか。暴発とか、動作不良とか無いんですか?』

 

 

と、ダインがまた話の流れを変える。

 

 

Korean_11『ああ、それなら知り合いのガンスミスに頼んで調節してもらっているんだ』

ダイン『ちょ、調節?』

Korean_11『そ、銃の整備スキルを上げて調節をすれば、例え動作不良が起きやすい銃でも完璧に動くように直せるんだ』

Price『ああ、それなら俺もガンスミスにL85を調節してもらっているぞ』

 

 

と、案外意外な答えが返ってきた。シノンはガンスミスの知り合いはいなかったが、それでも銃の整備スキルについてのシステムは知っている。デフォルトでは動作不良の多い銃でも、きちんと直せば使えなくは無いのがGGOなのだ。

 

? 待てよ。となれば素の状態では動作不良を起こす銃も存在すると言うことだ。さらに言えばK11はグレネードランチャーが標準で付いた複合小銃、扱いづらいことこの上ない。というか、それはもはや変態銃の類にも入る。ならば、その動作不良の多い銃や扱い辛い銃をサトライザーが鹵獲したら、どうなるだろか?

 

 

シノン『ねぇ、一つ思いついた事があるんだけど……』

闇風『お、なんだ? いいアイデアでも思いついたのか?』

 

 

闇風が食いついてきたのを皮切りに、今思いついた事を全て明かす。

 

 

シノン『サトライザーって、確か倒したプレイヤーの武器も鹵獲して使うのよね?』

闇風『ああ、さっき言った通りだ』

シノン『なら、サトライザーが扱いに困る銃を与えたら、どうなるのかしら?』

闇風『……というと?』

シノン『ほら、コリアンさんのK11やデフォルトのL85みたいに、動作不良の多い銃……所謂クソ銃ってあるじゃない? それをサトライザーに与えたら、どうなるのかしらと思って』

 

 

とは言ってみたものの、これは半分ふざけた回答のつもりだった。単に、サトライザーのプレイスタイルが気に入らないため、嫌がらせの意味を込めて言ってみただけである。

 

 

シノン『他にもGGOにはいろんな銃があるけど、なんの用途に使うのかわからない銃とか、おかしな銃とか、馬鹿みたいな銃とか、所謂……変態銃? を全員で装備して、サトライザーを困らせるのよ』

 

 

すると、チャット内のプレイヤー達が一斉に入力を開始してシノンは焦る。少し的外れな事を言ってしまったかと思い、考え込むが……

 

 

闇風『そ……』

シノン『そ?』

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『それだ!!!!!!!』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

途端、チャット内のプレイヤー全員が一斉に賛同した。

 

 

シノン『え?』

闇風『それだそれそれ!! 奴が武器を鹵獲して使うなら、扱いに困る変態銃を全員で装備して決勝戦で戦えば、戦うサトライザーも激しく困惑する筈だ!!』

ダイン『さらに言えば、例え誰がやられて武器を鹵獲されたとしても、サトライザーの手元には扱い辛いクソ銃しか残らない! シノン! お前天才かよ!!』

 

 

と、あまりに周りが褒め称えるので、シノンは逆に焦って困惑する。

 

 

シノン『ま、待って待って!本気にしないでよ! 第一この作戦はそんな変態銃がGGOに実装されているか、そもそもどうやって1日以内でそんな武器を手に入れるかが解決していないわ……』

Korean_11『いや、さっき言った私の知り合いのガンスミスプレイヤーが、GGOの武器を大量にコレクションしているんだ! 多分、その変態銃とやらもあると思うぞ!』

Price『なんなら私の知り合いのガンスミスもそうだ、変態武器の調達源なら幾らでもあるぞ!』

シノン『えぇ……』

 

 

シノンは話がとんとん拍子に進んでいくとこに、少しばかり引いていた。初めはほんの出来心と嫌がらせのつもりだったのだが、ここにいるトッププレイヤー達は本気にしているらしい。

 

 

銃士X『となると、他にも動作不良の多いクソ銃でもいいかも……!』

Korean_11『それなら、私はK11の状態を悪くして動作不良が起き易いようにするぞ!』

Price『なら私は、最高に状態の悪いL85を用意しよう!』

Korean_11『グレネードも暴発しやすい危ないものに変えて……そんでそんで……ぐへへ……』

闇風『シノンさんはどうする?』

 

 

と、シノンの静止虚しく、チャット内は変態銃やクソ銃で武装する流れになってしまった。本当は正々堂々真っ正面から戦いたかったシノンだが、ここまで言われたら逆に合わせない方が卑怯である。

 

 

シノン『わ、分かったわ……私もやる!』

闇風『よし! そうと決まれば今夜は徹夜で武器集めだ! 早速そのガンスミスの元に突撃して、変態銃やクソ銃を手に入れよう! コリアンさん、頼めるか?』

Korean_11『任せてくれ! そいつは深夜までログインしているから、アポはいつでも取れるぞ! 場所はここだ!』

闇風『よし確認した、では善は急げだ! 対サトライザー対策作戦、決行だ!!』

『『『『『『『おう!!』』』』』』』

 

 

こうして、BOB決勝戦は対サトライザー対策として、出場者全員が変態銃やクソ銃で武装するという、かつて例を見ない可笑しな大会となったのであった……

 




コリアンさんの外見はドルフロのK11さんです。
GGOにK11みたいなクソ銃って実装されているのやら……

それと、作中に出して欲しい変態銃を募集しております。

この作品のオチはどうするか?

  • サトライザーが生き残る(トラウマになる)
  • サトライザーが誰かにやられる。
  • 爆発オチなんてサイテー!!!!
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