いよいよBOB決勝大会当日となった。GGOで最も強いプレイヤーを決めるこの大会、その注目度は他のゲームからも厚い。各種ネット媒体から動画配信サイト、そしてVRMMOをテレビやインターネットで繋いでいる番組『MMOストリーム』でもその模様が中継され、最強のプレイヤーが決まるその瞬間を観戦できる。
『さあ! まもなくBOB決勝大会が始まります! MMO史上最もハードなGGOの最強を決めるこの一戦! 皆さん! 準備はよろしいですか!!』
「「「「「「「「「「おおおお!!!!」」」」」」」」」」
『それではカウントダウン! スタート!!』
その様子をGGOにいる仲間と共に見ていたサトライザーは、待機室でそっと準備をする。手には何も持たない、素手で戦い、相手の武器を奪って戦うスタイルで行く。銃社会でも何でもない日本人プレイヤー相手には、これだけでも十分対処できるだろう。
『10! 9!』
この大会に出場してくる日本人プレイヤーでも、彼らは実銃を触れた事のない者ばかり。本物の傭兵であるサトライザーの敵ではない。余裕である。
『8! 7!』
このゲームで合法的にプレイヤーをキルすれば、いずれまた触れることができるだろう。
『6! 5!』
あの時、あの日、自分の手で殺したあの少女の魂に、いずれまた触れられる。
『4! 3!』
その時まで、サトライザーは狩りを続ける。
『2! 1!』
「始めよう」
『0!!』
第四回BOB、開幕である。
◇◆◇◆◇◆◇◆
サトライザーが最初に降り立ったのは、岩場フィールドであった。ここは良いところだ、サトライザーが隠れて敵を待ち伏せするにはちょうど良いし、遮蔽物も多い。
とりあえずは、最初のサテライト・スキャンの前に一人くらいは殺したいところだ。制限時間は15分となるが、サトライザーにとっては余裕だ。
まずは隣の森林エリアに入り、敵をサーチ&デストロイする。敵の動きは心理戦が得意なサトライザーなら先読みできる。素早い動きで移動し始め、森を素手で駆け抜けると、そんなに立たないうちに御目当ての獲物を見つけた。
木の上から見えるプレイヤー名は『Keith』、サブマシンガン使い手で素早いAIG型のプレイヤーである。遠くなので手にしたサブマシンガンがどんな種類か見分けがつかないが、接近戦主体のサトライザーにとってはサブマシンガンは欲しい得物だ。
サトライザーは獲物が木の影に隠れ、こちらに気付いていないのを見計らって突撃した。木という木を掻き分け、枝を飛び越えてほんの数秒で背後に回り込む。
「な!?」
振り向き様にサブマシンガンが放たれようとするが、膝蹴りでKeithを蹴飛ばす。相手がサブアームのハンドガンに変えとうとした瞬間、それを蹴り上げて弾く。そして軍隊式体術で怯ませ、後ろから首を締める。
「ぐ……あが……」
Keithが苦しむ声が聞こえるが、手を緩めるどころかむしろ強める。そうしていくうちにHPバーが減り、あっという間に0になる。そして、DEADのアイコンと共に死体になり、その場に崩れ落ちた。
まずは一人目、サトライザーは喉の渇きのようなものを感じながら決め台詞を言う。
「
そして、素手のこちらの戦力を補うために相手の武器を鹵獲……しようとした時、サトライザーは驚かされる。
「何だこれは……?」
サトライザーはKeithが持っていた武器に対して驚く。西側、東側、ヨーロッパやアジアのありとあらゆる銃器の扱いをマスターしているサトライザーでも、この銃は存在は情報くらいでしか知らなかった。
『RSC 1918SMG』
正式名称はショーシャ-リベイロールス1918サブマシンガン。名前の最初の時点でもう嫌な予感しかしない。
その名の通りあのショーシャ軽機関銃をサブマシンガン化した短機関銃……ではなく、そのベースとなった第一次世界大戦中にフランスで試験的に開発・生産されたセミオート式ライフル「RSC 1917」を同じくベースとした別系統の銃。
……そう、セミオート式ライフルのサブマシンガン化である。作動方式をフルオートにして軽量化しているが、その弾薬はフルサイズライフル弾である。
そんな弾をバイポッド等の補助も無しにコンパクトな銃身でフルオート射撃なんかしたせいで、当然反動が凄まじ過ぎる事になった。狙った所にはまず飛ばない暴れ馬である。
当然ながらテスターになった兵士達からはその凄まじ過ぎる反動を含めて大不評であり、結局は試作品が数丁作られただけで終わっている。
「こんな物を何故……?」
GGOに実装されていたとは知らなかったが、こんな暴れ馬な銃は少なくともBOB大会で使うような銃じゃない。対人戦どころかモブ狩りにも使えないポンコツだ。一体なぜ、決勝大会に出るようなトッププレイヤーがこんなポンコツ品を所持していたのだろうか?
「まあいい」
例えポンコツでも、使い方次第では使えなくはない。マガジン内の弾が9発しかないのが不安だが、サトライザーからしたら当てられなくはない。サブマシンガンにしては威力も高いため、反動を制御できれば使えるかもしれない。
そんな淡い希望を持ってサトライザーは次の獲物を探して岩場フィールドに戻って行った。待機している間にまもなく15分が経つ、まもなくサテライトスキャンの時間だ。いくらサトライザーでも、遠く離れた敵を把握して作戦を立てるにはサテライトは必須だ。
端末の電源を入れ、ホログラムで描かれた全体マップを見遣る。いくつもの光点が移動しながら描かれており、それぞれの光点をタップすると名前が出る。
近くの敵の名前を素早く覚え、次に遠くの名前を見る。闇風やシノンなどはまだ生き残ったおり、二人共5キロ以上離れた場所を移動している。闇風は砂漠フィールドを走っており、シノンは都市フィールドに居るようだ。
「まずはこいつか」
サトライザーは次の獲物を見定め、最も近くにいる一キロ先のプレイヤーに標的を絞る。事前情報は少ないが、それでもサトライザーの敵ではない。
スキャンが終わると同時に駆け出し、手にしたRSC 1918SMGを抱えて走り出す。サトライザーの戦闘の基本はサーチ&デストロイだ。敵を索敵し、見つけ次第倒す。それがモットーである。
そして、岩場フィールドにそいつは存在していた。手持ちのショットガンらしい物体が目を引くプレイヤーで、ショットガンは接近戦タイプのサトライザーにとっては天敵に等しい。
「フッ」
しかし、サトライザーにとっては容易い相手だ。岩陰から回り込み、相手の後ろに立つと気付く前に体術を仕掛ける。
「な!? 後ろか!?」
上からかかと落としをかけ、空中で回し蹴りをして吹き飛ばすと、そのまま反撃の隙を与えずにRSC 1918SMGを放つ。が……
「な、何だこれは!?」
その銃の反動はかなり高く、あっという間に跳ね上がった。弾倉内の9つの弾丸は、しっかり構えて撃ったのにも関わらずあらぬ方向に飛んでいき、敵プレイヤーには1発しか当たらなかった。
「くっ!!」
相手が反撃としてショットガンを片手で何発か放つが、その散弾は全てサトライザーの反射神経で容易く避けられる。そして姿勢を低くしたまま近づき、武器を蹴りで弾き飛ばして無力化。
そして後ろに回り込んで首を締める。力強く締め上げ、相手が抵抗できない体制でHPバーを全て削り切る。そして、DEADのアイコンが出たところで先程のポンコツとおさらばして新しいマトモな銃を鹵獲する……筈だった。
「こいつもだと……?」
サトライザーが拾った銃は、ショットガンにしてはかなり珍しい方式の……只の変態銃であった。
『メタルストーム MAUL』
オーストラリアのメタルストーム社が開発したセミオート式ショットガン。MAULはMulti-shot Accessory Underbarrel Launcherの略で、文字通りライフル等の銃身下に懸下する所謂アドオン式ショットガンである。ピストルグリップと専用のストックを取り付けて単独で用いることも可能。このプレイヤーの場合は単独で用いていた。
さて、この銃がどんな変態銃なのかというとまず弾倉がない。ではどうやって装填するのかと言うとこの銃、バレルの中に直接ケースレスタイプの弾薬が複数装填されており、リロードの際は弾薬が詰まったバレルをまるごと取り外して交換するというとんでもない構造になっている。
そんなバレルでどうやって撃つんだ? と思うかもしれないが、実は電気信号を炸薬に取り付けられたセンサーに送って着火し、バレル先端に込められた弾から順番に発射するという変態機構を使ってそれを解決しているのだ。着火用の電源はトリガーガード前方に収められた乾電池から供給している。
GGO内ではその弾薬のせいで弾代が馬鹿みたいに高く、ケースレス弾のため熱や湿気に弱いという欠点のおまけ付き。暴発の危険性だってある、非常に扱いづらい銃である。
しかも……
「弾が2発しかない……」
本来ならば5発入るが、この特殊な弾倉の内部には2発しか装填されていなかった。先ほどの戦闘で使ったのだろう。相手から拾った武器はサトライザーにはリロードはできないため、我慢するしかない。
「一体なんなんだ……この大会は……?」
サトライザーは疑問を呈する。二人もこんな変態チックな銃を持っているのは一体なぜなのだろうか?そう、今回のBOBはサトライザーが知らない内に変態銃のオンパレードになっていたのだった。
作中に登場する変態銃のアイデアを募集しております。
この作品のオチはどうするか?
-
サトライザーが生き残る(トラウマになる)
-
サトライザーが誰かにやられる。
-
爆発オチなんてサイテー!!!!