サトライザーは周りに六人のプレイヤーが集まってきている事をサテライトスキャンで知り、とっさに鉄橋を渡って森林エリアに舞い戻った。
ここなら遮蔽物が多くて、ゲテモノ銃でもそうそうたやすくは撃たれない。たとえ近づかれたとしても、手に持ったビラール・ペロサで蜂の巣である。
「来たな……」
いよいよ、一人目のプレイヤーがやって来た。冴えない顔立ちの、迷彩服の上にコートを羽織った灰色のプレイヤーで、みたところ武器は見えない。
しかし、だからといって油断はできない。ここまで変な銃ばかり出てくるとなると、どんな武器を隠し持っているかわかったモノじゃない。もしかしたら、隠密性に優れた拳銃を隠し持っている可能性もある。
しかし、そのプレイヤーはサトライザーに気付いておらず、だんだんと近づいていっている。これはチャンスだ、武器を持たれる前に一瞬で殺す。
「ッ!!」
サトライザーはビラール・ペロサをその場に置いて、素早く飛び出す。その音に気づいたのか、そのプレイヤーもやっとの事で武器を取り出した。
「は?」
思わず、そんな声がサトライザーから出てしまうほど、その銃は狂気に満ちていた。二丁拳銃かと思いきや、それは連結されていたのだった。
『ドッペルグロック』
銃を二丁繋げれば火力も二倍だぜヒャッハァ!!!!!(二度目)
なんとグロック拳銃二丁を向かい合わせに繋ぎ合わせただけの狂気の変態銃。映画やアニメ等で二丁拳銃を撃つ際、グリップを外側に向けつつ水平に構えるお洒落なスタイルで銃を撃ちまくるシーンを一度は目にしたことがある人は多いだろう。が、この銃はそれ以外の構え方を許さない。
なんでも、2丁のグロックを同時に撃てばスライドの反動が相殺し合って高精度の射撃ができる……という理屈らしい。連結のための金具の上には20ミリピカティニーレールが設置されており、ここにダットサイトを取り付けられる。
そのドッペルゲンガーが二丁同時に放たれ、サトライザーを襲おうとしてくる。奴も拳銃の使い方に関しては上手いようで、照準器を介して放たれるバレットラインはサトライザーを上手く捉えていた。
「くっ!!」
バレットラインを頼りに横に跳び除け、最後に3回転ジャンプで飛んで避ける。着地する頃には相手の後ろに回り込んでおり、そのまま首を折る。
「ぐへっ!」
急所を折られたせいでHPが全損し、そのプレイヤーは死亡した。バタリとドッペルゲンガー持ちは倒れる。
「そういえば……」
一つ言っていないことがあった。先ほどまでの戦いでは変態銃に気を取られて言うべきことを忘れていたので、改めて言い直す。
「
と、最後まで言おうとしたその時、サトライザーの顔の横に弾丸が放たれた。それに気づいた一瞬、サトライザーは顔を後ろに倒してその弾を避ける。そして、後ろに一気に倒れ、横にゴロゴロと転がる。
「消音銃か……!」
サトライザーはどこから放たれたか分からない弾丸から身を隠し、とにかく危機から逃れる。サトライザーは彼の姿を見ておらず、何処にいるかの検討はついているが正確な位置まではわからない。
そんな彼を狙撃したのは、緑色の迷彩服に身を包んだプレイヤーが持つ、暗殺業に向いた消音拳銃であった。
『ウェルロッド』
サイレンサーと一体化した消音ボルトアクション式拳銃。製造したのはあのイギリス。いつもの英国面。
静粛性の高い隠密用拳銃を作ろうとした結果、スライドの作動音が問題になり、ボルトアクションで一発一発手動で装填と排筴を行う方式になった。グリップは弾倉も兼ねていて、携帯時は取り外すことでコンパクトに収めることができ秘匿性を高めるとされた。
銃身には複雑な構造のサプレッサーが内蔵されており、発射ガスを受け止めるだけでなく弾丸を亜音速まで減速させることで衝撃波の発生を抑えて極限まで発砲音を消す事ができる銃だ。
GGOでは狙撃銃と同じく、初弾のみバレットラインが出ないで撃つことができるユニークな拳銃として使える。しかし、そのボルトアクション式の為連射が効かず、拳銃なので至近距離でないと当たらないという欠点もある。
「くそっ! 外した!!」
相手のプレイヤーは冷静になってヴェルロッドのボルトアクションを引く。そして再び木の上からヴェルロッドを構える。
「いない? どこだ!?」
と、そうしているうちにサトライザーは相手プレイヤーの下側から回り込み、ジャンプで木にぶら下がる。相手プレイヤーがサトライザーの存在に気づいた時には木の上の袖を引き、高い木の上から地面に叩き落とした。
「ぐわぁっ!」
地面に勢いよく叩きつけられる相手プレイヤー、サトライザーは先ほど捨てたビラール・ペロサを拾って持ち直し、片方のトリガーだけを引いて至近距離で撃ちまくる。
「嘘だろ!?」
しかし、相手はBOB決勝にまで勝ち進んできた凄腕プレイヤー。すぐさま横ステップで弾幕を避け、サトライザーにむしろ近づく。
「こっのぉ!!」
相手プレイヤーは金色のナックルダスターを取り出して構え、サトライザーに殴りかかる。しかしそれは、普通の近接武器としてのナックルダスターではない。
『アパッチ・ピストル』
拳銃+ナックルダスター+ナイフの機能を合わせ持つ拳銃版万能ナイフ。銃として使う際にはナックルダスター部がグリップになる。
携行性に特化させた為銃身が存在せず、有効射程が異様に短いという銃として見れば致命的な欠陥を抱えているが、ナイフにもナックルダスターにも出来て携帯も隠蔽もしやすい造りがウケ、兵隊や警察には向かない一方で、悪い大人達(要はギャングやゴロツキ)には大人気になってしまった。
喧嘩しながらいざという時は至近距離でバーン!だの、すれ違いざまにバーン!だの、悪い大人達による悪い扱い方のせいで悪い意味で有名になった。
今回のプレイヤーはナックルダスターとしてそのまま殴って来た。普通に銃として使うよりも、近接攻撃にアドバンテージが掛かるナックル形態の方がいいと判断したのだろう。
しかし、相手はあのサトライザー。拳を避け、重たいビラール・ペロサを捨て、相手プレイヤーの腕を掴むと軍隊式格闘術の要領で思いっきり投げ飛ばした。
「グヘェッ!!」
そして、こいつが持っていたアパッチを奪うと一瞬で銃に変形させて、頭めがけて弾丸を発射する。相手プレイヤーはHPを全損し、沈黙した。
しかしまだ油断はできない、半分ほど弾の残ったビラール・ペロサを拾って逃げ出す。その道中を、幾つものバレットラインと弾丸達が通り過ぎていった。
三人目のお出ましだ。相手はマシンピストルを持っており、それを両手で二丁拳銃スタイルで持ってサトライザーに当てようとする。しかも、相手の銃からは薬莢が出ていない。
『VAG-72/73』
1970年代のソ連で開発された試作型拳銃。この頃のソ連は来る冷戦を見据えてか、よく言えば先進的で独創的、悪く言えば頭のおかしい兵器武器を大量に研究開発していた。
その状態は正に闇鍋状態であり、これは後のAN-94アバカンが出てくる『アバカンプロジェクト』まで続く事になる。
さてこの銃の実態は、ケースレス弾を使った拳銃である。かの有名なケースレス弾を使う小銃『G11』が出る前なので、恐らくケースレス弾を使用する銃器としては世界最古。
ケースレス弾だがG11のように炸薬で撃ち出すのではなく、何を考えたのかあのジャイロジェットピストルでも散々な結果に終わったロケット式弾薬を使用。しかも装弾数を増やすために複列弾倉にしたのは分かるが、何を思ったか左右2列ではなく前後二列。そして仕舞いには安全装置無し。
これだけでも狂気の産物と言う他無いが、このプレイヤーが持っていたのは改良型のVAG-73。なんと、フルオート射撃機構が備わっている。
「食いやがれ!!」
相手プレイヤーは立ち止まって二丁のVAG-73をフルオートで連射する。バレットサークルが大変な事になっているが、それも気にせずにサトライザーを仕留めるために撃ちまくる。
その合間を縫い、サトライザーはビラール・ペロサで牽制し、相手に弾丸を当てる。そして、怯んだ隙に素早い動きでそのマシンピストルの射程の間に入った。照準が追いつかず、弾はサトライザーのいた場所を通過していく。
そして、弾が切れたと同時に首根っこを掴み、思いっきり膝蹴りを喰らわせる。大きく吹っ飛んだプレイヤーが、再び立ち上がろうとする隙を与えずに腕を掴んで投げ飛ばす。
「!!」
そして、同時にある事に気づいた。それと同時にサトライザーは投げ飛ばしたプレイヤーを首を掴んで持ち上げ、即座に盾にした。
プレイヤーは胸に弾丸が当たり、そのたったの一撃でHPが粉砕された。それと同時に一人の大きな銃を抱えたプレイヤーが突撃してくる。
「なんだあれは!?」
思わずサトライザーも驚くほど、そのプレイヤーが構える銃は巨大で狂気に満ちていた。
『パイファー・ツェリスカ』
全長550ミリ、重さ6.0キロのクソでかい鉄塊。
もはや拳銃と言っていいのかどうかわからないブツだが形だけなら曲がりなりにも拳銃。現実での価格は1丁200万円ほど。GGO内でも高く、値段は対物ライフルの3分の2。
世界最強の拳銃として認知された本銃だが、本銃で使う.600.N.E.弾のエネルギー自体は12.7ミリ弾の半分ほどに収まっているため、単発の威力では劣っている。しかし、これは装弾数5発のリボルバー。総合的な火力ではやはり最強の拳銃である。こんなモノをまともに撃てるならの話だが……
このプレイヤーはサトライザー対策の会でガンスミスの下、様々な変態銃から自分の銃を選ぶ時にこれに一目惚れした。デカイ銃、デカイ弾、そしてデカすぎる反動。筋肉モリモリマッチョマンがプレイスタイルのこのプレイヤーには、これ以上無いくらいぴったりの代物であった。
それ以来今まで鍛えたSTR値とVIT値にものを言わせ、これ以外の武器を装備せずにサトライザーと戦う事にした。6キロという重量だが、もっと重い銃はいくらでもある。拳銃とはいえない代物だが、GGOでは持って走れなくは無い。
「喰らえ!!」
そして、そのプレイヤーは両手で持ったパイファー・ツェリスカの引き金を引いた。巨大な爆炎と強烈すぎる反動が彼を襲うが、必殺の弾丸はサトライザーに向かって放たれる。
それを、ギリギリのタイミングで避けたサトライザー。外れた弾丸は後ろの木の幹を根元から粉砕し、強烈なソニックブームがサトライザーの顔を伝う。
「くそっ!!」
あまりに規格外の銃を使う相手に舌打ちしながら、2発目のバレットラインを避けようとするが、相手は正確に照準を定めてくる。避ける暇はない、なら──
「うわっ!!」
その銃口を掴み、無理矢理に射線をずらす。強烈な弾丸が暴発気味に放たれ、仮想の耳と目を揺さぶる。その弾丸は、それを持っていたプレイヤーに放たれて頭をポリゴンの塊として粉砕した。あまりにオーバーキルなDEADがつくと同時に、サトライザーは一息つく。
「くそっ……なんなんだこいつらは!?」
こんな変態銃を使いこなして襲ってくるなんて想像つかなかった。BOBに出場出来るとはいえ、相手は実銃を触ったことのない日本人。サトライザーの敵とは思っていなかった。日本人プレイヤー達が、サトライザーにとって扱いに困る変態銃でしか武装していないなんて、完全に想定外だ。
にしても、相手が結託している事はさっき知ったが、それでも一体誰がこんな変な銃を集めて俺をいじめるアイデアを思いついたんだ? と、サトライザーはこのアイデアを思いついたプレイヤーに対して、かなり恨み気味だった。
最も、サトライザーはこの状況が、これから相手にするとある氷の狙撃手のアイデアのせいだとは、全く勿論知る由もない。
サトライザーはひとまずこの
さて、このパイファー・ツェリスカの話に戻るが、気づいた読者の方もいるかもしれない。この拳銃はとんでもない代物だが、ここまで一言も世界最大とは言ってないことに。
「?」
と、サトライザーの超人的な感覚が何かを感じ取った。それは殺意か、はたまたこちらを見定める狩人の目か。そして、遠くの岩場でマズルフラッシュが見えたかと思うと、サトライザーは駆け出した。そして、そのサトライザーがいた場所を、強烈すぎる弾丸が地面ごと抉った。
「ぐわっ!!」
この大会で初めてそんな声を出した。サトライザーは地面をゴロゴロと転がり、体を打ち付けられる。
「なんだ今のは!?」
サトライザーは伏せながら思わずそう呟く。その元凶は、相手のプレイヤー二人が遠くの岩場で対物狙撃銃として運用している
頭のおかしい拳銃達は、サトライザーに猛威を奮い続ける。
作中に登場する変態銃のアイデアを募集しております。
この作品のオチはどうするか?
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サトライザーが生き残る(トラウマになる)
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サトライザーが誰かにやられる。
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爆発オチなんてサイテー!!!!