「外した!」
「焦るな、撃発を引いて次弾を装填しろ!」
岩場の影で
『トビーレミントン』
とあるガンスミスが作ってしまった世界最大の拳銃。ベースは南北戦争頃に開発されたシングルアクション式リボルバーのレミントンM1859。
その大きさはなんと全長1260ミリ、口径は28ミリ、弾頭重量は136グラム、総重量は約45キロという、もはや「拳銃」と呼んで良いのか怪しいほどの代物。ちなみにこの銃の名前は製作者の名前から取られている。
GGO内ではあまりの威力と射程距離から対物ライフルの一つとして実装されているが、重量が大き過ぎるため使うプレイヤーはおらず、オークションでも安値で取引されていた。この二人のプレイヤーは、それを拝借したのだった。
重量が大き過ぎる為、この二人のプレイヤー達は二人でパーツを一個一個分けて運んで来た。ランダム配置の中、二人が合流できるかどうかは賭けであったが、サトライザーにとっては運悪く成功してしまった。
そして、先ほどのサテライトスキャンで位置を割り出して森に突撃、他の四人のプレイヤーが戦っている隙に組み立てたのだ。ご丁寧に、狙撃銃として運用するために双眼鏡を取り付けて即席のスコープとしている。
その姿を陰から双眼鏡で確認したサトライザーは、想定していた戦術が完璧に崩れたことを悟った。あの
「やるしかないか……!」
サトライザーは狙撃手対策の訓練をリアルでした事がある。しかし、そのセオリーのほとんどは『カウンタースナイプ』と呼ばれる狙撃返しであることを見れば、今からサトライザーがやろうとしていることは無謀に近い。
サトライザーは背負ったパイファー・ツェリスカをベルトで背中に抱え、腰から切り札のスモークグレネードを置いた。スモークが炊かれ、相手の狙撃手から見えなくなったのを見計らい、今度は普通のグレネードを後ろに思いっきり投げる。
「行け!」
相手の狙撃手もそれに気づいたのか、グレネードに向かって照準を合わせる。彼は狙撃スキルが案外高く、巨大過ぎる銃であってもその照準を合わせるのに時間は掛からなかった。
「!!」
自分に向かってきたグレネードを1発で粉砕し、巨大な爆発が目の前を覆う。慌ててスコープ代わりの双眼鏡を暗視モードに切り替えるが、その頃にはサトライザーの姿はどこにも居なかった。
「やられた! レンジに入られるぞ!」
「任せろ! 必ず仕留めてやる!」
狙撃手『雷電』の観測手を務めていたプレイヤー『リココ』は、こう言う時のためにサブの武器も用意していた。腰から取り出したるは、グリップが完全に手にフィットする形をした……銃が逆さまに突いている拳銃である。
『MC-3』
この銃の特徴は、なんといっても銃が上下逆である事だ。これだけではなんのことか分かりにくいが、ソ連で作られた射撃競技特化拳銃、それがMC-3である。
モデルとなったマーゴリン社の競技用ピストルのフレームを切断、上下を逆にして新しくグリップを取り付けるという奇妙な設計の銃を生み出した拳銃である。
そもそも銃口の跳ね上がりとは銃身の延長線が重心を通っていない為に発生するものであり、銃身と腕が一直線上にあれば跳ね上がりを大きく抑えることが出来るのだ。
この銃の場合、構えると銃身が人差し指より下に来るため、理論上は跳ね上がりをゼロに抑えることが出来る。
その目論見は見事に成功して、なんと1956年のメルボルン夏季オリンピックにてこの本銃を使用したソ連チームが銀メダルを獲得、その他国内外の様々な競技会で記録を塗り替える大活躍を遂げた。
しかし、その後は「銃身の軸は手首上部より下に来てはならない」という、こいつを狙い撃ちしたルール改正によって短い天下となった。
GGOでもその反動の少なさは再現されており、さらに競技用拳銃である事から命中精度も高い。幸い、ここの岩場は森から露出しているため、サトライザーは遮蔽物の少ないこの場所を通って近づかなければいけない。
それまでに、二人の使っているサブアームで仕留めるしか方法はないだろう。しかし、サトライザーは必ず後ろから来る。そう読んでいたからこそ、勝機は見えていた。だが──
「!?」
リココの後ろにいた雷電が、いきなり足元を掴まれる感覚を覚えた。それが、後ろからではなく真正面から壁を登ってきたサトライザーだと知る間も無く、足を引かれて岩場から落とされる。
「うわぁっ!」
「おい!」
リココも気付いたが、もう遅い。雷電は足元を掬われて20メートルはあろうかと言う岩場から落とされていた。そして、サトライザーは撃鉄の引かれたトビーレミントンの引き金を、雷電が銃口に重なる瞬間に引いた。
「ぐえっ!!」
必殺の大口径拳銃弾は、雷電の上半身と下半身をおさらばさせ、遙か後方に吹き飛ばす。ついでにサトライザーは、残った雷電の下半身から飛び出した一つの銃を掴み、崖に駆け上がる。ここまで僅かコンマ一秒の出来事だ。
「こいつ!」
リココがMC-3を放つが、中距離用にカスタマイズされた競技用拳銃は至近距離にいるサトライザーには不利であった。
限界レンジまで近づかれたリココは、なんとかサトライザーに弾丸を当てようとするが、その前にサトライザーは上に飛び上がる。そして、銃を持った左手に向かって先ほど雷電から奪った
『サンダー.50BMG』
Triple Action社が技術デモンストレーション目的で開発した試作拳銃。
この銃が放つ弾は50口径弾。つまりは、バレットM82やヘカートⅡ等の対物狙撃銃や、M2といった重機関銃に使用される12.7ミリ超大口径実包だ。つまりこの銃は対物ライフル用の弾を拳銃で発射しようという狂気の発想で作られたゲテモノ銃なのだ。
そのためマガジンは無く、銃後部の蓋を開いてチャンバーに直接弾を込める。つまりは、かのトンプソンコンテンダーのように一発一発装填と排筴を手動で行わなければならないという超時代錯誤な銃である。
雷電がその名に肖ったこのゲテモノ銃を持っていたとは予想もつかなかったが、サトライザーはこの銃のことを存在だけ知っていた。あまりに強い反動で、よく訓練された屈強な兵士でも、油断すれば凄まじい勢いで跳ね上がった銃身が射手の顔に激突する事態になるという。
しかし、今回サトライザーは空中でそれを撃った。それも横向きに。するとどうなるか? 反動で跳ね上がった銃口が、サトライザーの空中回転をサポートしたのだ。
「ぐわぁっ!」
左腕を吹き飛ばされたリココは、そのままトビーレミントンの方向に倒れる。が、そこは伊達にBOB本線に出場したプレイヤーだ。すぐさま受け身を取って、右手であるものを掴んでサトライザーに向かって振り回す。
「うぉぉぉぉぉぉ!!!」
着地したサトライザーは、それに気づいて慌てて背中に回したパイファー・ツェリスカを盾にする。大きな質量を持った鈍器を、その硬い銃で受け止める。
「トビーレミントンをハンマー代わりに!?」
その鈍器の正体は、先ほど狙撃をしていたトビーレミントンであった。その重量は45キロ越えであり、フルスイングをまともに食らったら内臓が飛び出そうだ。
「くっ!!」
いくらパイファー・ツェリスカが、巨大な弾を打つために頑丈になっているとはいえ、さすがにトビーレミントンの重量には耐えきれない。このままでは押し切られる。
そこで、サトライザーはツェリスカを剣術の受け流しの要領で滑らせる。重いトビーレミントンはそのままするりと抜けていき、リココの目の前にはツェリスカの銃口が……
「
強烈な一撃が、重さ6キロの鉄塊から放たれる。爆発音にも似た銃声は、リココを丸ごと吹き飛ばし、ポリゴンと化して殺した。爆圧から出てくる煙と熱に耐えながら、目眩がする視界を持ち直す。
やっと、この森に集まっていたプレイヤーを全員倒し切れたようだ。サトライザーは疲れた体で腰を下ろし、一息つく。
この戦場は、サトライザーの軍人としての知識がほとんど役に立たない場だ。サトライザーが使ったこともないような変態銃たちが、こぞって集まってきている。次また変な変化球を喰らったら、いよいよ勝てるかどうか怪しい。
「とにかく生き残って全員殺す……」
サトライザーは新たな決心を心に秘め、近くにいるプレイヤーから倒すことに決めた。必ず生き残る、今度はどんな変態銃を使っているか見当もつかないが、恐怖を押し殺して勝ち残る。
全ては、このイカレた大会を終わらせる為に……
作中に登場する変態銃のアイデアを募集しております。
この作品のオチはどうするか?
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サトライザーが生き残る(トラウマになる)
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サトライザーが誰かにやられる。
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爆発オチなんてサイテー!!!!