それではどうぞ。
私はプラズマ団を追いかけて行ったアーティさんたちに追いついた。
「あっちか! ジムの方向だな!?」
そう言ってアーティさんはジムのある方へ向って走っていく。それにトウヤ、トウコ、M、私もついていく。そしてジム近くの建物の前に着く。
「……間違いなくココだね」
そうアーティさんが言う。確かにこれは誰が見てもわかる。なぜなら目の前の建物の前にプラズマ団が陣取っているからだ。こいつらはバカなのか? これじゃまるわかりだろうに。まあ、別にプラズマ団がどうなろうが知ったこっちゃないけどな。すると勝手にプラズマ団の男が話し出す。
「いないいない! この中に仲間とか七賢人様はいない! 嘘だと思うなら俺達と勝負してみるか?」
……語るに落ちるとはまさにこのことだな。プラズマ団にはアホしかいないのか?
「やっぱり勝負して中に入るしかないのかな。ようし、勝負しようじゃないか」
アーティさんは勝負をすることに決めたようだ。
「くそー! 俺らはこっちの弱そうなヤツらの相手をするからお前らまとめてあっちの強そうなヤツにむかえ」
そう言ってプラズマ団の一人が私のほうを向く。どうやら私が弱そうなヤツに見えたらしい。ほう、面白い、この私に挑もうとはな。返り討ちにしてやる。トウヤ、トウコ、Mにもそれぞれプラズマ団がつく。
「……ったく! というわけで君たち、そっちの相手はおまかせするよ」
アーティさんが多数のプラズマ団を相手取るさなか私たちは一人ずつを相手にする。
「おらおら、いくぞ! いけ! ハーデリア!」
『ガウガウ!』
そうして出してきたのは犬に似たちゅうけんポケモンのハーデリア。ならこちらが出すのはこの子だ。
「出てきて、リオ」
『は~い、メイ』
相性のいいリオを出す。
「ハーデリア! とっしん!」
『ガウ!』
ハーデリアがリオに向かって突進してくる。
「リオ、きあいだまで返り討ちにしてあげなさい」
『オーケー。はあっ!』
リオは両手を構え、等身大の波導の玉を生み出し、それを突進してくるハーデリアにカウンター気味に当てる。ドオオンという音を立ててあたりに風を生み出したきあいだまを喰らったハーデリアは一撃で沈む。
『キュウウウン』
ハーデリアは目を回して倒れている。
「うおおおい! ハーデリア! なにをしているんだー!」
それを見たプラズマ団は叫んでいる。……弱いな。ハンパなく弱い。それともこっちが強いのか? できれば後者であってほしいところ。周りをみてみると、トウヤ、トウコ、アーティさんはまだ戦っていたがMはすでに戦闘が終了していた。これはMも一撃で決めたんだな。
「お疲れM。どうだった?」
私は戦闘を終えたMに話しかける。
「どうって……余裕」
そうか、そりゃそうだよな。Mはバッジを八つすべて集めた実力者だもんな。プラズマ団の下っ端なんかに負けるはずないか。
「んだよ! 人のポケモン奪ったくらいでマジかよ!」
プラズマ団の男が言う。いやいや人のポケモン盗っちゃいかんでしょ。まったく呆れるな。そんなこともわからないとは。いやわかっててやってるのか。余計に質が悪いな。
そうして呆れながら、アーティさんのほうを見る。アーティさんは複数のポケモンを同時に使い指示を出している。さすがジムリーダー、変則バトルもお手の物か。何か学ぶことがないかとアーティさんのバトルを注視する。ふむ、やはりいかに自分のポケモンの状態を把握するのかが重要っぽいな。しばらく見ているとバトルが終了する。当然アーティさんの勝利だ。ついでにトウヤ、トウコのバトルも終わったようだ。
「マズイ……」
「マズイぜ」
「マズイな」
「マズイわ」
「マズイね」
「マズイよ」
「マズイって」
「プラズマ団としてマズイ」
「「「縮めてプラズマズイ!」」」
「とりあえず七賢人様に報告しないと……!」
そう言ってプラズマ団達は建物の中に入っていった。お前らはコント集団か。そしてその直後、ベルとアイリスがやってくる。
「……はあ、迷っちゃった。ライブキャスターで説明されてもさっぱりわかんないよ!」
アイリスがぼやく。いつの間に連絡してたんだろう。
「ここにプラズマ団がいるようだね。もしかしたら奪われたポケモンもいるかもしれない。じゃあボクはいくよ!」
そう言ってアーティさんは建物の中に入っていく。
「よーし! 今度はあたしも!! さあ、ベルおねーちゃんも行くよ!」
アイリスもベルの手をとって引っ張っていく。
「ちょ、ちょっとお。トウヤとトウコも来てえ!」
アイリスに引っ張られていくベルは悲鳴に近い声をだしてトウヤとトウコを呼び、二人もそれに応えて中に入っていく。
「さ、私たちもいこう、M」
さて、これでMの正体が分かるかもしれない、いやでもわからない可能性のほう高いか。プラズマ団の真のボスであるゲーチスは相当の切れ者だしMを見たからといって何か反応を示すとは思えない。まあやるだけやってみよう。
Mが頷き私たちも中に入る。中には七賢人と思われる人たちとゲーチスがいた。ゲーチスは私たちを見まわす。
「これはこれは、ジムリーダーのアーティさん」
目をかたどった貴族のようなローブを身にまとい、右目に赤いモノクルを付けたゲーチスが言う。
くっ、やはりMを見ても何も反応なしか。Mは本当にプラズマ団と関係ないのか?
「プラズマ団って人が持っているものがほしくなると盗っちゃう人たちなのかな?」
アーティさんが皮肉気に言う。
「ポケモンジムの目の前に隠れ家を用意するのも面白いと思いましたが意外に早くばれましたな」
アーティさんを気にする様子もなく七賢人の一人が笑みを浮かべる。意外でもなんでもないわ!
「確かに……まあワタクシたちの素晴らしきアジトは既にありますからね。さてアナタ方、イッシュ地方建国の伝説はご存知ですか?」
ゲーチスが私たちに問いかける。
「知ってるよ! 黒いドラゴンポケモンでしょ!」
ゲーチスの問いにアイリスが答える。
「そう、多くの民が――」
ゲーチスの演説がしばらく続く。言葉の端々に説得力が感じられる。だがだまされない。ゲーチスが望むのはプラズマ団の目的であるポケモンの解放ではない。ゲーチスの野望は確か世界征服だっけ? それと原作のラストで“ワタクシだけがポケモンを使えればいいのです!”とか言ってたかな。
「このヒウンにはたっくさんの人がいるよ。――」
今度はアーティさんが話し始める。その内容は、皆ポケモンを大事にしている。だからプラズマ団のやっていることはポケモンを解放させるどころか逆に人とポケモンの繋がりを強めることになるということだ。するとアーティさんの言葉にゲーチスは笑い出す。
「フハハハ! つかみどころがないようで思いのほか切れ者でしたか。ワタクシは頭のいい人間が大好きでしてね。王のため世界各国から知識を持つ人間を集め、七賢人を名乗っているほどです。よろしい! ここはアナタの意見に免じて引き上げるとしましょう。そこの娘、ポケモンは返してやろう」
プラズマ団の下っ端がモンスターボールをベルに渡すと、中からピンク色のクッションのようなゆめくいポケモン、ムンナが出てきてベルに抱きつく。
「あっ、ありがとう! ムンちゃん! おかえり!!」
ベルの口から感謝の言葉が出てくる。おいおいムンナを奪った張本人にお礼を言ってどうする。
「おねーちゃん!? こいつら人の大事なポケモンを奪った悪者なんだよ!?」
アイリスもベルにツッコミを入れる。
「で、でもお、ムンナが無事で嬉しくて」
ベルは嬉しさのあまりお礼が口に出てしまったようだ。
「これは麗しいポケモンと人との友情! ですがポケモンを愚かな人間から自由にする。そのために伝説を再現し人の心を操りますよ……。それと、久しぶりですねM。何年ぶりになるかな。アナタもワタクシたちの仲間になりませんか? さきほども言ったようにワタクシは頭のいい人間が大好きでしてね。アナタなら歓迎しますよ。どうですか?」
ゲーチスはMをプラズマ団に勧誘する。どうやらMとゲーチスは知り合いのようだ。いったいどういう関係なんだろう。
「断る」
Mはゲーチスの勧誘に耳を貸すつもりはないらしい。
「やはり、惜しいな。アナタの頭脳を生かせるのはこちら側だと思うのですがね」
ゲーチスは大げさに手をふり残念そうな様子を見せる。
「私の頭脳は私だけのもの。使い道は自分で決める」
M……一体何者なんだ? ゲーチスにも称賛される頭脳を持つのは前のわずかなヒントで答えにたどり着いたことからもわかる。
「ふむ、残念だよ。さてそろそろ行くとしよう。では、ごきげんよう……」
Mは無表情でゲーチスたちを見つめている。ゲーチスたちプラズマ団はそんなMをしり目に去っていく。ゲーチスたちが去って行ったあとアイリスが話し始める。
「どーしてあいつらを見逃しちゃったの!?」
アイリスはプラズマ団を見逃したことに異を唱える。
「そうは言うけどね、奪われたポケモンたちにもしものことがあればボク達はどうすればいいのさ」
アイリスはアーティさん反論されてふくれっ面をする。
「大丈夫だよアイリスちゃん、ありがとう! みんなケガなかったし、なにより大事なポケモンとこうやってまた会えたんだもん!」
ベルはポケモンが戻ってきただけで満足のようだ。まあ、ベルのムンナだけでも間に合ってよかったと思うことにしよう。
「そっか……だったらいいんだけど……」
アイリスはどこか消化不良の様子だ。
「で、みんなはこれからどうするのさ」
アーティさんが私たちに問いかける。
「……あたしはヒウンシティをいろいろ見て回りたいけど……」
ベルはやはり一人では不安らしい。こんなことがあったばかりだからね、そうなるのも当然だ。
「だいじょーぶ!! あたしがベルおねーちゃんのボディーガードを続けるから!!」
アイリスはまだベルと一緒に行動を続けるようだ。
「アイリスちゃん……」
ベルもアイリスの言葉で少し安心したみたいだ。この様子を見る限りアイリスは強いんだろうな。
「んーいいねえ。アイリスはとびっきりのポケモントレーナーだけどこの町は苦手みたいだし、それにほら人もポケモンも助け合いが大事だって言うしね」
アーティさんはうんうんと自分でうなずいている。
「あと、おねーちゃんたち! ポケモン探してくれてありがと! これあげる!」
そう言ってアイリスは私たちに木の実をくれる。
「これは?」
トウコが尋ねる。
「これはヤチェの実、これを食べたポケモンはしばらく氷タイプの技に強くなるの」
アイリスが木の実の説明をしてくれた。この世界ではそんな単純なものになっているのか。
「へえ、そんなのがあるんだ」
「ありがとう、アイリス、貴重な木の実を分けてくれて」
トウヤが微笑んでお礼を言う。おお、さすがイケメン。中身もしっかりしている。これはモテるだろうな。
おっと私もお礼を言うのを忘れていた。私とMもお礼を言う。
「どういたしまして。それじゃーねー! ほらいこ! ベルおねーちゃん!」
アイリスはベルの手を引っぱっていく。
「ちょ、ちょっとお」
ベルは手を引かれ、アイリスにされるがままに連れ去られていった。
「じゃあ君たち、ボクはジムで待っているよ」
そう言ってアーティさんも去っていった。そして残されたトウヤ、トウコ、M、私の四人は、その場で佇んでいた。
ありがとうございました。