それではどうぞ。
次の日、泊まった部屋にて。いつもの体操と訓練を終えた朝食時。
「さ、今日はヤグルマの森に行こうと思います」
「は~い」
ヤグルマの森は実は整備されている道があり、その道の通りに行けば迷うことなくシッポウシティまでたどり着くことができる。だがそうすると野生のポケモンに会う確率がぐっと減ってしまう。一応ポケモン図鑑の完成も旅の目的の一つなので、できるだけポケモンには会っておきたい。
「ヤグルマの森では整備された道じゃなくて森の中を進もうと思ってるから、かなり時間がかかると思う。それでもいい?」
「いいよ、私はメイの言うことに従うから」
「よし、決定ね。じゃあ準備して行くとしようか」
朝食を終えて準備を整え、ゲートのある一階に下りてきて部屋の鍵を受付に返す。
「はい。確かに受け取りました。ご利用ありがとうございました。またのご利用お待ちしております」
受付の女性がスマイルを浮かべて言う。また使うかは……わからんな。さあ、ではヤグルマの森に出発だ。ゲートから出てヤグルマの森の入口に立つ。
「いよいよヤグルマの森かあ。Mは二回目なんだよね?」
「正確には三回目かな。一度目は森の中を。二度目は整備された道路を通った」
「森の中にはどんなポケモンがいた?」
「う~ん、たくさんい過ぎて忘れちゃった」
「そ、まあいいけどね。じゃあどんなポケモンに会うかは後のお楽しみというわけだね」
と言ってもある程度は検討ついているけど。一度ゲームもやってるし。そうして森の中に入っていく。さてヤグルマの森、どんなポケモンを見せてくれるのかな。
森に入って早一週間、もう森のポケモンには粗方会い尽したかな。そんなこんなで今は森の中にある平原に来ている。雲の隙間から溢れる日の光が幻想的に周囲の木々を照らす。ここが思索の原だったりしないかな。そしてあわよくば伝説のポケモンの一体、ビリジオンに会えないかなーなんて。
「ちょうどいい、ここで昼休憩にしない?」
「さんせーい」
そうして休憩の準備を整え、まったりと休憩タイムを満喫する。
「いい景色だね」
「そうね。ヒウンシティの夜景もよかったけど、ここの風景もいいものね」
二人でゆっくりと景色を眺めながら昼食をとる。私とMのポケモンたちもモンスターボールからでて昼食であるポケモンフーズを食べている。すると遠くから何かの気配がするのを感じ取る。ん? なんだ? ポケモンたちが……。森の中で出会った様々な種類のポケモンたちが次々に集まってくる。おいおい、何が起きているんだ? ポケモン集会でもあるのか? じゃあ、なぜ人間である私たちのいるところでするんだ? 普通こういうのはポケモンたちだけでやるもんでしょ。Mも怪訝そうにしている。考えこんでいると『フルルルル』という何者かの鳴き声がした。え? この声って……もしかして!? 立ち上がって鳴き声のした方向を見る。
「ここが思索の原だったんだ。ビリジオン……」
森の奥から現れたのは、4本足で立つスラリとした体躯に草のように伸びた体毛が特徴的なそうげんポケモン、ビリジオンだ。ビリジオンはこのイッシュ地方の伝説のポケモンで、その昔他に2体いる同じく伝説のポケモン、コバルオン、テラキオンととも人の起こした大火事からポケモンたちを救ったという伝説がある。真偽のほどは定かではないが。するとビリジオンのいるところから声が聞こえてくる。
『ようこそ、我が領分へ。人の子よ』
……もしかしてビリジオンがしゃべってる?
「あ、えっと、こ、こんにちは?」
「ふうん、初めて見る」
Mはというと冷静にこの事態を捉えている。
『ふふふ、そう緊張しなくてもよろしいですよ』
どうやらビリジオンがしゃべっているようだ。ビリジオンが穏やかな雰囲気を醸し出している。
「あ、はい。あの、どうして、ここに?」
いやいやさっき我が領分とか言ってたじゃん。何を言ってるんだ私は。
『ふふ、あなたが言いたいのはなぜ私があなたたちの前に姿を現したか、ですか?』
「あ、えっと、はい」
『簡単なことです。あなたたちは私たちポケモンを大切にしてくれているからです』
「どうしてそんなことがわかるの?」
Mもどうして伝説のポケモンが目の前にいるのか気になる様子。
『こういうとき、あなたたちの言葉でこういうのでしたか。“目は口ほどにものをいう”とね。あなたたちの目を見ればわかります』
ビリジオンの読心術のような能力に私もビックリだぜ。
「むう、なんかずるい」
Mは何故か悔しそうだ。
「あ、それと、なぜこんなにポケモンたちが集まってきているの?」
それが解せない。なぜポケモンたちが集まってきているのか。
『それはここが私の領分だからです。私は人とポケモンが、そしてポケモン同士が争うことのないように見張っているのです』
「へえ、じゃあ、あなたは言うならこの森の守護者みたいなものなんですか?」
『そうですね。そのような認識で構いません』
ということはビリジオンの周りは平和があふれていてそばにいれば安全であるっていうことか。
「ふうん。そういうこと。あなたのそばにいると安心して休めるというわけね」
Mの言うとおり周りにいるポケモンたちは皆警戒を解いてくつろいでいる印象を受ける。
『あなた方もゆっくりしていってください』
さすがにこんな雰囲気のところで戦おうという気は起きないな。お言葉に甘えてゆっくりさせてもらおうかな。ふわ~あ、昼飯も食ったしなんだか眠くなってきたな。
「M、私ひと眠りするわ」
「そう、じゃあ私も」
二人揃って眠る体勢を整える。
「みんな、自由にしてていいよ。あまり遠くには行かないでね?」
「あなたたちもね」
私とMは自分のポケモンたちに自由にしてて良いと言っておく。さてとそれじゃおやすみ……。
ん、ううん……ふわ~あ、よく寝たな。時計を見ると数時間ほどたっていた。Mの方を見るとまだ寝ていた。まじまじとMの寝顔を見つめる。うん。やっぱり美少女だな。何度見ても印象は変わらない。これで頭がよくて運動も苦手ではないときたもんだ。どんな完璧人間だよって話だ。天はMに二物を与えたんだな……。私なんて自慢できるのはポケモンの知識ぐらいなものだって言うのに。まあそれはこの世界においてはチートと呼べる代物だけどな。それにしてもかわいいなMは。なんていうかぎゅってしたい。薄幸の美少女って感じで守ってあげたくなる雰囲気がMにはある。あたりを見てみると私とMのポケモンたちが私たちを守るように周りを囲んで眠っていた。おお、主人思いのいいポケモンたちじゃないか。私、感動。野生のポケモンたちも眠っていたり遊んだりしていた。
『おはようございます。よく眠れましたか?』
ビリジオンが話しかけてくる。
「あ、おはようございます。おかげさまでゆっくり休めました」
そういっても旅であたりを警戒しなければいけないほど危険なことなんてないんだけどね。
『そうですか。それは重畳』
「ん、うむう、う~ん」
ビリジオンと会話しているとMが目を覚ました。
「おはようM」
『おはようございます』
「う~ん、おはよう、メイ、ビリジオン。よく眠れた」
『私はそろそろここを去ります。あなた方はどうされますか?』
ビリジオンはもう行くみたいだ。
「そうですね。じゃあ私たちも十分に休息もとれましたし、そろそろお暇させてもらいます。いいよねM?」
「そうね、もう十分やすんだし、いいよ」
『そうですか、では、またここに来る機会があればゆっくりしていってください。あなた方なら歓迎します』
そういってビリジオンは森の奥に消えていった。すると集まってきていたポケモンたちも次々と森の中へ帰って行った。
「ふう~、それにしてもまさか、伝説のビリジオンに会えるなんてね」
「そうね。私も初めてみた。伝説と呼ばれているポケモンに会えるなんて私たちは幸運ね」
いやあ本当にな、私の運もなかなか捨てたもんじゃないな。
「でもMは伝説のポケモン、初めてじゃないでしょ。ほら、ラティアスとラティオス。あの二匹がいるじゃない」
Mはすでに伝説のポケモンと会ってるからあんなに冷静だったのかな。
「それなら、メイだってすでに会ってるでしょう? 見せてあげたじゃない。今もそばにいるし」
「あ、それもそうか」
「ふふふ、それにしてもメイも緊張するんだね。ちょっと面白かったかも」
そんなに面白かったか?
「むう、一体私をどんな風に思ってたのよ」
Mにとって私って何なんだろう。
「どんなときでも物怖じしない、大胆不敵な性格だと思ってた」
Mは人差し指を立て、首を傾げ、笑顔で言う。くそ、かわいいな。
「何それ、どうしてそうなったの?」
大胆不敵? 私が? ないない。私はむしろ小心者だって。痛いの怖いのはいやだし。
「だって、ヒウンシティのとき、カルチャだっけ? ほら、あのひどいトレーナーにいろいろ言ってたじゃない。年の差とかもあったでしょうに」
「あれかー。別に大したことじゃないと思うけど。思ったことを言っただけだし」
あのときはただ夢中だったんだよね。あまりにひどいもんだったから。
「ま、いいわ。それで、これからどうするの?」
「ああ、もう休憩は終わり。探索再開といこう」
「りょうか~い」
そうして休憩のために出したものを片づける。……よし、終わったな。さて、もうこの森のポケモンには会い尽したし、そろそろヤグルマの森から出るとしようかな。
ビリジオンに会ってから、森の東エリアと西エリアで生息しているポケモンが違うのに気付いて今まで探索していた西エリアを抜けて東エリアを探索すること一週間、さすがにこれだけ探せばもう十分だろう。さらにポケモンを見つけ出そうとするのは……ね。流石にそこまでやる気は起きない。一言で言うとめんどくさい。
それはそうと探索の途中で試しの岩がありそこでちょっとした修業をした。試しの岩というのは、トレーナーたちがこぞって自分のポケモンたちの修業に使う、と言われている岩のことだ。みんなの現時点で最も強力な技を試しの岩に打ち込んだが、岩が砕けることはなかった。どんだけ頑丈なんだよこの岩って感じだ。リオのきあいパンチなんて大地を砕くレベルなのに。
それにしてもどうしようかな、残りのパートナーと呼べるポケモン。手持ちに加えられるのはあと二体、さてはてどうしたものか。タイプ的にはあと水タイプとかほしいなあ。あとドラゴンタイプとかもできればほしい。りゅうせいぐんとか自力でいけそうな気がするし。さっき水タイプがほしいといったが、水タイプなら水場に行けば手に入れられるしお手軽だな。そういえばシッポウシティを過ぎ、3番道路方面にずっと行くとたどり着くカラクサタウンとカノコタウンの間にある1番道路の水場には確かミロカロスがいたはずだ。出会える確率は低いがビリジオンと会えた私ならきっと出会える……はず。そんなこんなありながらヤグルマの森の探索を終えて私たちはシッポウシティにたどり着いた。
ありがとうございました。