世界には強いやつらが沢山いるというが、彼らは川神市の前では弱者だ。
圧倒的な力を持った川神百代。最強世代と言われている川神学年の生達。そして、その学園に組み込まれれるクローン武士。
学園を出れば九鬼の従者、川神院を含めての手強い猛者。
おそらくこれほど、おそろしくて頼もしい都市は世界を見渡してもそういないだろう。
玲綺は考える。それらを統一させるほどの川神百代とはどんな人間なのか。
そう考えた玲綺は、川神百代の強さを視察して驚愕した。その圧倒的な強さは常識をはるかに超えた存在者であったからだ。
人々の認識は彼女を自然現象の一つと考え、一種の恐怖のトラウマを植え付けるレベル。
その姿にあるイメージを浮ぶ。
三国志の呂布奉先。武においての最強と言われた英雄であり、自身の祖先。もちろんそれは三国志時代においての最強伝説に過ぎないし、呂布は曹操に負けて殺されている。だから最強なのかといえばそうでもないかもしれない。
そして、それは川神百代も同じこと。いや、人としての個体で生きているなら必ず人には弱点がある。
つまりは、思考を巡れば川神百代を倒す方法は必ずあるということだ。
玲綺の結論がそう導いたとき、九鬼側からある話を持ちかけられた。クローン達を川神学園へと入学する話だ。
玲綺はその話に乗って、川神学園へ3年F組として入学した。自分には記憶がないため、苗字は不明のため入学の際には九鬼と相談して呂玲綺という名前になった。
最初の頃は色々とみんなに聞かれたりしたが、幸いすぐに視線はクローン達に目が向いたり、同じように転校してきた松永燕に目が向いて自身の存在は目立つことはそれほどなかった。
そんなある日、転校して来て数日後の放課後にて松永燕が玲綺と二人で話したいことがあると誘われる。玲綺はそれを同意して屋上へ。
「・・・お話とはなんでしょうか? 松永殿」
「うん。実は玲ちゃんにききたいことがあるの」
この玲ちゃんとは、燕が友達という証としての呼び名である。ちなみに玲綺はいつものように殿を最後に残している。これが影響してかなんとなく矢場さんと仲良くなったのだが、それは別の話。
「玲ちゃんって、もしかしてモモちゃんを倒すこと真剣に考えているの?」
別に珍しくもない質問である。武道家なら誰しも一度は戦ってみたいと思う考えることだ。
「ああ。私もそれなりに武道の心があるからな。百代殿と戦ってみたいというのはある」
「でも、モモちゃんに勝てる算段とかあるの?」
燕は何が言いたいのだろうか。とりあえず、玲綺はあえて本当のことをいう事にした。彼に川神百代にバレてもまだ、準備中ですと言えばいいだけの話。
「ある。後はその計画を実行するだけの話だけだ」
「ほうほう。それってどんな計画なの?」
燕も武道家であり、川神百代と同等の力を持っているからだろう。少しでも真剣に勝負した時に、勝つ確率を上げるためと玲綺は思った。
「・・・」
燕の目もその思考に対して、読まれてもお構いなしらしい。
「調べたら簡単だった。川神百代の弱点を一番知る人達。2年F組の直江大和・・・」
「ん? それって・・・」
「本当に敵を倒すためには内部から情報が必要。そしてそれを一番よく知っているのは直江という生徒で、彼が一番に川神百代を知っていると思った」
確証は川神百代は直江大和に対して一番誰よりも心を許していること。そして、彼は自身を知略家として存在をアピールしていること。この二つを重ねた時に『そんな知略をアピールしている人間が川神百代の弱点を知らないわけがない』のだ。
「でも、大和くんってなかなか弱点を教えてくれないさそうだよ?」
ここで燕が『大和くん』といったことを玲綺は見逃さない。この話から察するに彼女も自身と同じ考えを持っているが、上手くいっていないという事実が得られたからだ。
「・・・心の底から倒したいって思っていないからじゃないの?」
「む・・・」
数日間だが、燕のことを少しだけ観察した玲綺は思う――甘いと。
おそらく恋愛感情でもその直江に抱いていることもあるのだろう。本でもよくある話だ。
「それに、私自身が倒す必要はないのよ。私の目的は『川神殿』を完全に敗北させることが目的。そう考えたら、手なんていくらでもある」
「・・・まぁ。そうだね」
彼女自身も『倒す』だけの算段ならどうやらある口ぶりだ。しかし、彼女の場合は『松永』という名で挑むために、その悪手が使えないらしい。
「でも、収穫は出来たよ。色々と」
「そうね」
本当に何気ない出会いで、何気ない会話から暗躍話。二人の心に『川神百代』を倒すという共感が得られていた。それは何気ない『同士』の証。
――きっかけなどいつ起こるかわからない。どこで友達が生まれるかも。
しかし、こうして玲綺に学園で二人目の信頼者が出来たともいえるのだった。
九鬼従者の大和ってかっこいいと私は思います。