びしょびしょになりながら、アテもなく歩く玲綺。目的地などないが、あそこで留まる理由もなく、とにかく玲綺は『自分が誰か』ということを求めていた。
びしょびしょになりながら、アテもなく歩く玲綺。目的地などないが、あそこで留まる理由もなく、とにかく玲綺は『自分が誰か』ということを求めた。
「・・・?」
ずぶ濡れの顔を見上げると、大きな建物が遠くから見えた。あそこにいけば何かしらの情報を得られるかもしれない。
玲綺の思考はそこに行くしかないという一点しかなかった。その理由としては、玲綺の体は数時間も雨を浴びたせいで、体が冷えてしまった影響で、体の本能が救いを求めていたのだ。
一歩、また一歩とその建物へと歩く玲綺。
「・・・止まれ」
背後から声が聞こえた。見えないが殺気をこちらに向けている。間違えれば、怪我だけではすまないかもしれない。
「・・・あの」
「よーし・・・そのままこっちを向け」
相手側は会話をさせてくれないようだ。玲綺はゆっくりと振り向くと、相手は布切れようなテカテカとした服装を着た女性だった。
「ここは九鬼の領域で、関係者以外立ち入り禁止だ。それなのになぜここに来た?」
「九鬼・・・?」
玲綺は九鬼という名前には聞き覚えはなかったが、その者の土地だということは理解出来た。すなわち現時点においては、ルールや取り決めといった概要語などの意味を知っていることを意味する。そして、仮の予測としてそこまでの複雑な意味用語がわかっているということは日常面での、食事方法や排泄方法などの基本的動作は覚えている可能性が高いとも理解した。
では、次の問題は自分が何者かということだ。
「名前をいいな・・・?」
「・・・玲綺」
玲綺という名前に、彼女は眉を潜める。あれは聞き覚えない名前を聞いた場合に、よくする表情だ。
「聞いたことない名前だな。お前、川神の住人じゃないな?」
「川神・・・」
新しい情報を仕入れた。ここは川神という国らしい。しかし、玲綺は国の名前を聞いてもピンとしなかった。反応しないもしくは忘れているかのどちらかだろう。
「・・・ちょっと待ってな」
女性は懐から四角い鉄の塊を取り出す。よく見れば、中心部には光が灯っていた。
「B地区で侵入者を発見。名前は玲綺・・・」
四角い鉄の塊を持ちながら、女性は誰かと会話しているらしい。口調や部分的な内容で、自分の身元を探してくれているのだろう。
「・・・」
玲綺はそれを黙って見ていた。とにかく彼女は、自身のことを知りたかったために、方法などどうでもよかったのだ。
だが、しばらくして女性の顔が険しくなる。この意味は・・・。
「・・・悪いな。ちょっと拘束させてもらうぜ?」
瞬間、女性の姿が消えた・・・いや、回り込まれたのだ。
「っ!?」
両手が後ろに回されて身動き出来ない状況となる。さらに、追い打ちをかけるかのように両膝を蹴飛ばされて地面に叩きつけられた。
「うっ!」
強い衝撃が体全体に響く。
「・・・悪いな。ちょっと、手荒い行動をさせてもらうよ」
女性は玲綺の両腕を片手で抑えつつ、もう片方の手で二つの輪になった鉄の紐らしき物を取り出した。きっと、それで完全拘束する気だ。
「・・・うう」
危機感を覚えた。いや、これは思い出したと玲綺は気づく。それはつまり以前にも、似たようなことがあったということだ。
では、一体それはいつなのか?
『生きろ、玲綺!』
プツンと頭の糸が切れたのを玲綺は・・・確かに感じ取った。
第二話です。
最初は、基盤である玲綺の居場所を見つけるためや頼れる仲間と出会うため、内容はつまらないかもしれませんね。
彼女の設定を公開します。
主人公:呂玲綺
三国無双7の猛将伝の住人。
曹操軍によって軍は壊滅され父も亡くした彼女は、途方に暮れて自害したはずが『まじこい』の世界へときてしまう。
異世界に入った影響で、記憶もなくし服装も現代服装に変わっている。
自分:『私』。性格:普段は勝気な性格で父譲りの武芸を発揮し、非常に勇敢で自ら率先して前線に立つ女性。困難へ立ち向かう芯の強さを持っているが、過去の経験から孤独を怖がるところがある。また、この世界の影響なのか観察力がついた。