玲綺の知らぬ話。つまり、裏側の話だ。
九鬼は玲綺から採取したデータを元に彼女の身元を割り出した。その結果は人間にとっては、目を疑うような内容だった。
「呂玲綺・・・それが、彼女の正体でございます」
玲綺を最初に尋問した九鬼家従者で序列3位のクラウディオ・ネエロのメガネが光った。
「・・・呂玲綺? 呂がついているから、彼女は呂布の娘のクローンか何か?」
彼は興味深々に尋ねた。
彼の名は九鬼帝。クラウディオの上司であり九鬼家の総帥つまりトップの男である。
特にクローンに関しては、数十年前に手を出して、四名のクローン人間の誕生に成功したこともあって、複製人間に関しては興味があったのだ。
「いえ、クローンではなく・・・正真正銘の呂布の娘でございます」
「意味がわからんな。もう少しわかりやすく話してくれよ?」
―――クラウディオの話はこうだ。
彼女から採取した血液から、クローン人間を作成する時に集めていたある遺伝子が合致した。それが呂布奉先の遺伝子である。
最初、彼女は呂布のクローンか子孫かのどちらかと認識していた。クローンならクローン特有の遺伝子が混ざっているはずだし、子孫なら呂布の歴史についてより知ることができると期待をしていた。
しかし、詳細に調べていくとそのどちらにも当てはまらないことが判明する。クローン特有の遺伝子はなく、子孫についてもあまりにも呂布の遺伝子が多すぎたのだ。まるで子供だろと言わざるほどの遺伝子が多く存在していた。
当然ながらそんなことはありえないとなり、彼女は一種の突然変異でそうなった人間と考え始めた頃に、ある情報を手に入れた。
歴史では娘がいると書かれているだけで、名前も歴史も書かれていない呂布の娘。しかし、もしも仮にあの鬼神と言われる呂布の娘が、同じように武芸を学んで戦場を駆けていたらどうだろうという人々の『妄想』として生まれた人間。
それが『呂玲綺』だ。
「・・・つまり、彼女は空想から生まれた呂布の娘ということか?」
帝は今までの説明を聞いて、再度確認する。
「はい。彼女の名前は玲綺・・・少し付け加えると呂玲綺になります」
さらにとクラウディオはある映像を見せる。その映像は、玲綺が九鬼の従者と戦った時のもの。
「拘束した時に、逃れるために正当防衛として発動した能力の一部である彼女の武器が改造された方天画戟だも判明しました」
人々の妄想によって生み出された武器と人間。
しかし、それは紛い物ではなく今は自分たちと同じ人してここに生きている。
「ふーん・・・」
帝は一度考え込んで、こう言った。
「んじゃ、彼女も武士道プランに組み込んじゃえ。そうしたら今後も彼女の監視も研究も出来るだろう?」
武士道プラン。
九鬼帝が歴史上に名を残す人間達のクローン達がいることで、世界の刺激として変革を変えるために生み出された人間達。そして本心は川神の武道家達を倒す目的で生み出された者達。
「また、リスクも考えないで・・・帝様は」
クラウディオは、その意味がどういうことかを全く理解出来ていないのではと思い、ため息をつく。しかし、帝はそれを鼻で笑いつつ言葉を続けた。
「おもしれーじゃんよ? 理由はどうあれ本物を手入れたわけだし、それになんかあってもお前らがなんとかしてくれるだろう?」
傍から見たり、聞いたりすれば九鬼帝の考えや行動はきっと悪といってもいいだろう。もちろん本人自身もそれは自覚はしている。彼にとって悪や善などの基準などは人が定めたものである以上、気にする必要はないと考えていた。仮にそれで殺されるなら仕方がないことだと開き直っているのだ。
しかし、結果的には彼の行動は多くの人々を救い、救済していることも多いも事実である。もちろん逆も然りだが・・・。
そして、今回も彼は彼女に賭けた。
――『敵』か『味方』の運命を――
私は個人的に九鬼帝は大嫌いです。
理由は、九鬼紋白を苦しめているから。理屈ではなく性格ですね。
まぁ・・・それが原因で、九鬼の子供はあんな感じなんでしょうが・・・。