果たして、川神百代よりも強くなることができるであろうか?
受け取った紙を読み終わると、老婆はその紙を燃やした。
「了解したよ。帝様に、ご助力感謝すると申し上げておいてくれ」
九鬼の従者は頷き、その場を去った。後に残された老婆は玲綺を見る。
「さて・・・初めまして。私は九鬼家従者の序列2位マープルだよ。今後はアタシの要望通りにあの四人を強くしておくれ」
このマープルという老婆からは、多少の覇気は感じるがクラウディオやヒュームほどではない。おそらく知力面で長けているのだろう。
「待って下さい」
玲綺はマープルの口を閉じさせた。
「なんだい? まさか今さら契約を破棄するって気かい?」
「いえ、お約束通り。『私なり』の流儀でその四人を強くしようと思っています・・・ただ・・・」
玲綺は一度目を閉じると、鎧類が現れて装着する。
「まずは、その四人の強さをみせてください。弱い者には興味ありません」
「・・・ほう」
マープルはニヤリと微笑んだ。
裏の話である。
数時間後、マープルは自室に戻ると備え付けてある呼びベルを鳴らした。
「はい、お呼びですかマープル」
現れたのは九鬼家の従者部隊序列42位桐山。彼はマープルにとって良い便利屋である。もちろん従者だからという理由だが、他にもあるだが・・・それはこの世界には関係ないので省こう。
マープルは椅子に座ると、ため息をついた。
「呂玲綺だったけ? あの子・・・危険すぎるね」
「危険とは? 報告では、記憶以外の欠落において武力や指導など申し分はないと聞いていますが?」
「あの子のは死を望んでいるのさ」
「死ですか」
別に珍しくはない話だが、なぜそんな自暴行為を?
「さてね。さっき義経達と戦いたいと言ってワザとボコボコにされていたよ」
「おやおや・・・それは物騒ですね」
九鬼は殺人集団ではない。そして、それは民を宝と唱える彼の思想でもない。だから、絶対に玲綺が殺されることはない。
「でも、帝様はこう言うだよ”彼女の思う通りにしてみろ”と、なぜなら英雄の娘なんだからと」
「・・・ふむ。つまりは義経達の実権を彼女に渡せと?」
マープルは再びため息をついた。
そもそもこのクローン計画は自身が始めたことだ。帝はそれを容認してくれただけだ。だから、彼女の矛先をこちらに向けさせればいいのに、なぜか帝は自分へと向けさせた。わざわざ彼女の怒りを買うような発言をして、一種の嘘をついてまで。
「私には帝様のお考えが、全然わからないよ・・・」
それが九鬼帝。
相手の考えなんぞ知らず、奔放に突っ走る自由人だ。
「・・・ま、とにかく今は様子見だ。彼女のお手並み拝見といこうじゃないか」
話は玲綺に戻る。
彼女の鍛錬は・・・地獄だ。
その一、義経の足を折る。
その二、弁慶の腕を折る
その三、与一を気を失わせる。
彼女の鍛錬は、鍛錬というのだろうか?
「・・・手加減は一切しない。貴様達も本気を見せてみろ!」
刃が与一の首に当たる。そして、この殺気は殺意だ。
「与一!・・・このっ!」
義経は自分の愛刀を再び握り、彼女へと飛び出す。すでに片足を折られている状態では、勝負などはない。
「はあっ!」
「あっ!?」
ガキンと義経の刀が宙を舞う。
そして、剣が地面に突き刺さった瞬間、義経は倒れた。
「義経っ!」
弁慶の目つきが変わる。怒りと憎しみの表情だ。
「・・・そう、その殺意を。それを私を殺すつもりで!」
「はぁぁぁ―――!!」
弁慶の咆哮が風をも切り裂き、玲綺に走った。
だが。
「遅い!」
ぐちゃと何か生ものを落としたような音がした。
彼女は弁慶を殺した。その後、義経を殺した。
与一も。
「はっ!?」
目が覚めた。気がつけば全身が包帯まみれ。
「よかった、ようやく気がついた。義経はすごく嬉しいぞ」
そこにいたのは義経、弁慶、与一が心配そうな顔で玲綺を見ていた。
「私は・・・?」
どうやら玲綺は夢を見ていたらしい。その証拠に三人は全くの無傷だった。
三人から話をきく。
玲綺はマープルに頼んで、四人と戦うことを望んだけど清楚は遠慮して三人と戦ってボロボロに負けて、気を失ってしまったので寝室で寝ていたという流れ。包帯は義経達がしてくれたようだ。
「全く、これじゃ・・・どっちが先生かわかんないね」
弁慶は呆れた顔で、玲綺を見た。
「・・・すまない。どうやら情けないところを見せてしまったようだ」
玲綺は頭を下げた。
「そ、そんな・・・私達がいけなかったんだ。あんな状態になってまでも・・・戦って」
「いや・・・しかし」
「おい」
その時、今まで黙っていた与一が二人の間を割って話かけてきた。
「あんた、本当に玲綺か?」
何を言っているだろうか?
「・・・?」
「いや、さっきまでと全然雰囲気が違うから」
雰囲気?
「雰囲気って、どういうこと?」
与一は頭をかきながら話す。
「さっきまでのあんたは、まるで別人格だったんだ」
別人格。
それはおかしいと玲綺思った。別人格なら、きっと義経達とはここでの初対面のような感覚のはずだ。だけど、初対面は戦う前であり・・・その時の記憶も。
「・・・っ!」
あるがない。
どうやって戦ったのか全然覚えていないことに気づいた。どうしてだろうか。
「それに・・・なんかさっきまでのアンタは、なんかこう本能的に・・・」
与一の口が閉じた。
「え?」
しかし、改めて与一はこう言った。
「なんか、殺意が出てくるんだよ。こう・・本当に・・・その」
―――この意味は一体?
そして、玲綺の記憶に一部ない理由は?
さてさて、いよいよ学園編突入です。
・・・え? 全然学園編じゃないって。
ソウデスネ。
一応、自分なりの解釈で呂玲綺をある一定から可愛くする設定ですが、モデル性格は西楚みたいな感じになるみたいだと思ってください。ちょくちょく原作のセリフは入れますが・・・。