フェイトの巧みな空中戦に、なのはは翻弄されていた。
なのははフェイトの近接攻撃をシールドではじき返すと、すかさず魔法弾で反撃する。フェイトは落ち着いて回避するが、魔法弾は3つに分裂した。それぞれ誘導弾となったことに気づく。悪態を吐きながら対処する。近接で破壊し、シールドで防ぐ。最後の誘導弾のコントロールが甘くなる。
バルディッシュが警告を発した。フェイトはとっさに身をひねって、なのはの砲撃魔法を回避した。
「もうちょっとだったんだけどな」
悔しそうになのはがつぶやく。空中戦では、速度の速いフェイトの方が有利だと、なのはは感じていた。
着々と次の攻撃準備を整えるなのはに、フェイトは警戒レベルを上げた。
「フェイトちゃん、ていうんだよね? 私、なのは。高町なのは」
なのはの名乗りを合図に、フェイトは斬撃魔法を放つ。シールドで防ぐと、フェイトの姿が消えていた。高速移動だ。
なのはの背中に、フェイトは一撃を振りかざした。直前に気づき、シールドで受ける。かつてない、重たい一撃だった。
「一体何のために、ジュエルシードを集めてるの。これは危険なものなんだよ」
「お前には関係ない」
フェイトは力のままになのはを弾き飛ばすと、バルディッシュをデバイスフォームへ変形させ砲撃魔法を放った。なのはが懸命に回避するも、やがて連発される砲撃魔法に捉えられた。直撃する。
以前のままであれば、これでなのはは撃退されていた。しかし、なのはは戦意を露わに、フェイトを睨むのであった。
フェイトは苛立った。前回の戦闘から、ひと月も経っていないはずであった。だがこれはなんだ。戦術、防御力、攻撃力、すべてが強化されている。フェイトをして、たやすい相手ではないことを認めざるを得なかった。
「お願い、話を聞いて。私はお話がしたいだけなの」
「こんなところで、手間取るわけにはいかないんだ」
バルディッシュから強烈な閃光が放たれる。予期しない目潰しでなのはの目が眩んだ。
《あいつ、ジュエルシードを奪う気だ》
政一の念話がなのはに届く。
「やらせない」
乱暴にデバイスを振り回して大雑把に砲撃魔法を放つと、なのははジュエルシードに急行する。
フェイトは砲撃魔法をかいくぐり、ジュエルシードを手にしようとした瞬間、直感のままに体をよじった。頭のあった場所を、なのはのデバイスが通過した。
そして、ジュエルシードを挟んで、なのはとフェイトは対峙した。
ジュエルシードはふたりの目の前にあった。
勝者がジュエルシードを手にするのではない、ジュエルシードを手にした方が勝者なのである。
なのはとフェイトは絶叫しながら、デバイスを突き出した。回収しようとするふたりの強力な魔力がジュエルシードを刺激する。ジュエルシードが発動する。周囲の魔力を糧として、瞬く間にジュエルシードは自らの性質を強化していった。
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ユーノとアルフがジュエルシードの発動に気づいた。次の瞬間には、ジュエルシードから強力な魔力が周囲に溢れだしていた。
「まずい。ジュエルシードが暴走し始めてる」
「フェイト、はやく封印して」
なのはとフェイトの魔力が暴走の原因であることは明らかだった。
《ユーノ、これはどうすればいいんだ》
ハッとして、ユーノは政一を探した。魔力への耐性が最も低い政一を守らなければ、ジュエルシードに取り込まれて暴走体になる可能性があった。
《急いでこっちにくるんだ。一度距離を取るよ》
《でも高町が》
《そうしないと君が魔力光にやられる。なのはなら大丈夫だ》
なのはとフェイトは主導権を奪い合いながらも、協力してジュエルシードを抑え込んでいるようであった。ジュエルシードの魔力を抑え込むことで、魔力切れを目指しているのである。
「ユーノ、こっちだ」
政一の声で、アルフも政一の存在に気づいたようである。「なんだってこんなところに、無防備なままで」
「とにかく助けないと」
舌打ちしながらも、アルフはユーノと一緒に救助に向かった。
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ジュエルシードの放つ魔力は暴力的であった。バリアジャケットが破れるほど鋭く、なのはであっても気を抜けば意識を刈り取られかねないほどであった。それは眼前のフェイトも同様で、懸命に制御しようと力を尽くしていた。
このまま消耗させればよい立場のジュエルシードとは違い、なのはたちにとっては魔力を強奪しようとするジュエルシードとの対抗戦である。なにか手を打たなければ、ふたりは魔力切れとなり、ジュエルシードが強大な魔力をものにするだけとなる。
フェイトは手をこまねいているなのはを目にすると、ひとつの作戦実行を決意した。
「今すぐ引け。これは私がやる」
フェイトの命令に、なのはは驚いた。
「ふたりで制御しようとしているから収集がつかなくなってる。だから、どいて」
「そうかもしれないけど、渡す訳にはいかない」
「なら、こうするまで」
フェイトは、ジュエルシード越しに攻撃魔法を放った。予想外の行動に、なのはは硬直した。レイジングハートが輝き、瞬時にシールドを張るが、レイジングハートの処理能力はすでに限界であった。砲撃はシールドもろともなのはを吹き飛ばした。
地面を転がされ、満身創痍となったなのはは、レイジングハートがヒビ割れていることに気づいた。
「大丈夫? レイジングハート」
ノイズばかりの不明瞭な返事しかない。もはや廃棄寸前の状態であった。
フェイトは継戦能力を失ったなのはをちらりと見やると、ジュエルシードの制御に取り掛かった。
先の砲撃でバルディッシュも損傷を負ってしまった。ここからはフェイトただひとりが全力を尽くさなければならない。
ジュエルシードは発動するだけで自身の魔力を消耗する。よって、ジュエルシードの魔力が尽きるまで、魔力の流れを一方通行にすることが解決策である。バルディッシュが正常であっても難しい制御であるが、フェイトは身を挺して実行しなければならなかった。
ジュエルシードをシールドで囲むと、フェイトはその上から抱きかかえた。障害を排除し、また魔力を奪おうとするジュエルシードの暴力的な足掻きが、フェイトのバリアジャケットを破り、小さな肉体を駆けめぐる。フェイトは、ただひたすらに苦痛に耐えながら、制御し続ける。
「お願い、治まって」
はたして、ジュエルシードは徐々に力を失い、暴走状態から脱したのであった。
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ジュエルシードを抑え込むフェイトをただ見ているしかなかったアルフであったが、フェイトが倒れるのを見るとすぐさま駆け付けた。
「大丈夫かい、フェイト」
「アル・・・・・・フ」
「喋らなくていい、すぐに離れるよ」
「そうはいかない、ジュエルシードは置いて行ってもらうよ」
フェイトの努力を奪おうとするフェレットに、アルフは怒りを覚えた。しかし、優先順位はわきまえている。
「お前に構ってる暇はないんだよ」
フェイトを抱きかかえ、離脱しようとするアルフの頭上から言葉がかけられた。
「邪魔して悪いが、こっちには構ってもらうぞ」
「なに?」
鋭い魔力弾の嵐がアルフとフェイトに降り注いだ。アルフが咄嗟にシールドを張るが、たまらず悲鳴を上げる。
ユーノは発射元を確認する。時空管理局員の小隊が周りを囲むように編隊を組んでる。そして、街頭やビルのさらに上空に、航空戦艦が浮かんでいるのが見えた。
そこで、いつの間にか結界が取り込まれ、膨大な範囲に拡張されていることにユーノは気づいた。自身の結界に対してこんなことが出来るのは、ユーノが知る限り多くない。
「くそっ、逃げられたか」
地面に空いた大穴を目にし、時空管理局員のひとりが悪態を吐いた。
攻撃を受けながらも、アルフは地面に穴を開けて離脱を図ったようだった。管理局員が追いかけないところを見ると、その作戦は成功したようである。ただの盗賊にしては機転の利く奴だと、ユーノは思った。
「僕は時空管理局の執務官、クロノ・ハラオウンだ。君たちは逃がさないからな」
そう言って現れた執務官の後ろに、政一の姿があった。