めだかボックスの世界に、神様転生したヤレヤレ系憑依オリ主が転生するだけの短編だよ。

もしくは、人生が劇的だと実感する前準備。

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くだらねー話だぜ。


転生したら漫画の世界だった

 僕の目の前にいたのは、巨大な怪物だった。頭に生えた2本の角に鋭い爪、蝙蝠のような羽が生えた異形は、間違いなく僕たちを狙っていた。帰り道に突然現れた怪物は、僕たちを否応なしに非日常に引きずり込んだ。

 

「お前だけでも逃げるんだ!ここは僕が食い止める!」

 

 勇気を振り絞って親友に声をかける。呆然として動けなかった彼は僕の言葉にハッと気が付き、走っていった。

 

「生きてくれよ。親友」

 

「うおおおおお!」

 近くに落ちていた鉄パイプで殴りかかる。一瞬ひるんだ化け物だったが、すぐさま僕の胴体に爪を突き刺した。

 

「ぐ、ぐあぁ!」

 

 突き刺された腹は熱いのに、体はどんどん冷えていく。このまま死んでしまうのだろう。そう直感した僕の耳に雷の音が轟いて、そうして僕の意識は虚空に溶けた。

 

 

 

「よく頑張ったものじゃのお」

 

 しゃがれた声に意識を取り戻した。どういうことだ。僕は死んだはずじゃ……

 目を開くと、真っ白な空間が広がっていた。今立っているのが地面か空中か。それすらも分からないほど一面の白。

 

「おお、起きたかのお」

 

 声のする方に目を向けると、目を焼くような光が佇んでいた。

 

「おおすまんすまん。これはお主には眩しすぎたか。別に儂を見る必要はないぞ」

 

 如何にも老人のようにその声は喋る。声の主はその光で間違いないだろう。

 

「あなたは……」

 

「ああ、儂は神じゃよ。お主は言いたいことがあってここに来てもらった」

 

 僕は別に神様を信じていたわけじゃなかったが、本当にいるのを目にするとなると多少の畏敬の念は湧いてくるもので、自然と敬語になった。

 

「言いたいこと……ですか」

 

 なんとなく察しは着いた。教室の隅で固まって話していたクラスメイトたちがよく話していたからだ。こういう場合、大抵は──

 

「お主の思った通りじゃ。簡潔に言えば、お主は死んでしまったのじゃ。すまぬ」

 

 思った通りだった。それにしても悪魔とは。こういう時はてっきりトラックや雷だと思っていたのだが。それよりも。

 

「あいつは、カツジは助かったんですか!?」

 

 

「お主を殺した悪魔は儂が雷で倒した。お主と共にいたカツジとやらも助かっておるはずじゃ。」

 

 最後に聞こえた雷鳴はそういうことだったのか。

 

「それにしても、ただの人間が悪魔をひるませるとは。面白い男じゃな」

 

 神様が何か言ったようだが、よく聞こえなかった。とはいえ聞き返すのも不敬だろうとスルーする。

 

「いやはや自分が死んだことをあっさりと受け入れて、その上友達のことまで心配できるとは、やはりお主を選んで正解じゃったのお」

「まあそれでじゃ。お詫びとしてお主には新しい人生を歩んでもらおうと思っておる。転生先が発展途上の文明となるとお主は今の常識と比べて戸惑うじゃろうから、元いた世界にとても近い世界に転生するようにしておいた。それでいてお主らが大好きな戦闘もある」

「いや、安心するも何もそもそもがあなたのせいでしょう。それに戦闘って」

 

 やれやれ、僕は争いなんてあまり好きじゃないんだ。精々が不良に絡まれたときなんかに返り討ちにするくらいだ。ああいうやつらを見てると、暴力を誇示するのがカッコ悪いって分かるだろ。けど、戦わなくちゃいけないならしょうがない。大切な人を守るためにも強くなくちゃいけないからな。

 

「でだ、お主には最強になれるチートを授けてやろう。不安に思うことはない。お主なら絶対に使いこなせると神たる儂が保証しよう」

 

 素直にありがたかった。貰うだけ貰って使いこなせませんでしたなんて、洒落にもならない。昔から言われている通り不相応な力は身を滅ぼすだけだ。

 

「ありがとうございます」

「いやいや、儂こそそれで納得してもらえるならありがたい限りじゃ」

 

「では、行ってこい。よき人生となる事を祈っておるぞ」

「ええ、行ってきます」

 

 身体が宙に浮く感じがする。おそらく、僕は今から生まれ変わるのだろう。

 

「そうじゃ、お主の知識は忘れないように魂に刻み付けておいたぞ」

 

 また意識が途絶える直前、そんな声が聞こえた。

 

 

 

 転生したんだ。自分の身体があるという感覚でそのことを実感した。どうやら赤ん坊ではないようだ。意識は青年男性のものだから母乳を吸うのは恥ずかしいのだろうと神様が気を利かせてくれたのだろうか。

 目を開けると、そこには何もなかった。人も、空気も、宇宙も、ありとあらゆるものが存在していなかった。ただそこに自分が在るだけ。最初は焦ったさ。人は生身で宇宙空間にいると死んでしまうことくらいは僕も知っているからね。でも、自分が女の子になっていたことに対してもそうだけど、僕には神様から貰ったチートがある。性別を変えることなんて簡単だったし、宇宙空間だろうとどこだろうと適応するくらい造作もなかった。できないことなんてないんじゃないか?

 

 それにしても暇だ。せっかく最強になれるチートを貰ったんだから、この世界で無双できるかと思ってたのに。することもなくてのんびりと待っていると、次に宇宙が生まれた。生まれるまでずっと見ていたけど、どうやらこの世界に神様はいないみたいだ。七日で世界を創ったってアレは違ったようだね。

 

 さらに待つと、地球が生まれた。当然そこに降り立ったさ。空気を吸ったのは3兆と100億年ぶりだったからね。酸素がなかった時に降り立ってがっかりしたことは内緒だ。

 

 そこから6億年後、僕以外の生命がやっと発生した。前世の自分の名前なんてすっかり忘れてしまったけど、まあ大丈夫だろう。多分あの神様以上に長生きした僕からすれば、それは些細な事だぜ。

 

 長い年月が経った。恐竜を直に見たときは少しだけ心が動いたし、人類が生まれた時には久しぶりに会話ができたことが嬉しかった。

 

 そして僕は目の前の人物を見て、初めてこの世界が何なのかを理解した。

 

「不知火半纏?ってことは、ここはめだかボックスの世界じゃん」

 

 

 最強になれるチートを使いこなせる?当然だ。それは僕が持っていなくてはならなかったのだから。1京2858兆0519億6763万3865個のスキルがあれば、最強にだってなれるだろう。

 

この世界は漫画である

 

 転生してから3兆と4021億9382万2161年と159日。シュミレーテッドリアリティじゃないけど、その日(安心院なじみ)は原作と同じことを思ったのさ。





「それでも、生きることは劇的らしい」
「ままならねーな。人生は」

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