死んだはずのニンゲンに意識があるとしたら、果たして何を思うだろうか。
……いや、考えていてもわかりはしないか。
死んだはずのボクは目を覚ましていた。どこもかしこも真っ黒いだけの何もない空間で、ただ独りでポツンと立っていた。
いいや、立っているのかも怪しい。そこに感覚はなく、ただ普段立っていたからそう感じているだけなのかもしれない。
…………中々興味深い空間だ。
『
……
けれどまぁ、ボクがこうして人らしくないことはよくわかっているさ。
ボクはいつだってニンゲン擬き、らしいからね。擬きがニンゲンと同じ反応をできるわけがない。
[
それで、この気色の悪い空間の中で一体何があるんでしょうね。
ボクに望むことは一体何でしょうかね。
《
……なるほどそういうことか。ならば望もう。
ボクの望みはただ一つ。
【
きっと狂っているだろうさ。
けれどボクはそれ以外を望めない。
〈
ああ、これがボクの望みだ。
ボクはいつだってボクが大っ嫌いだった。
いつも誰かの事を考えることができずに、人の考えも汲み取ることもできずに。
それでいつも人を傷つけてばかりいたボクが誰よりも嫌いだった。
だから、これでいい。
いいや違う。これがいいんだ。ボクはいつだって自分勝手で自分本位だ。
だったら、
これはそのための力。
ボクがボクでない誰かになるための力。
これを持っていたら、きっとボクは誰かに――――――
〔
ああ、きっと目の前の子の存在からしたらただの気まぐれでしかないのだろう。
ただ自分が楽しむというただそれだけの為にボクみたいな面白くもない、死んだニンゲンを使っている。
それがどうした。
たとえ超常なる存在の娯楽のためだとしても構いはしない。
ボクはずっとそればかりを望んできたんだ。
何度も試して、何度も諦めようとして。
それでも諦めることのできなかったボクの目的。
今それに手が届いたんだ。だからもう、ボクはどうなったっていい。
この力さえあれば、きっとボクは……。
そう思ったその瞬間に真っ黒なこの空間に穴が開く。
穴が広がり、ボクを飲み込む。見ることはできず、音もなく広がる穴を感じて、落ちる。
落ちる、落ちる、落ちる。
――
その言葉が誰のものかを考えるよりも先に強制的に意識を閉ざされて――
目を開けばそこは金色の花が咲き誇っていた。