昆虫愛好者のハイスクールD×D   作:滝温泉

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読者のみなさまへ。
評価が欲しいです、わりと切実に。
そしてこの話を書いている途中にコンセントが抜けました。……どうなったかはお察しください。


悪魔祓者フリード・セルゼン

時は流れ数日後、深夜に2人乗りで自転車を飛ばしていた兵藤とシグは一軒家へと訪れていた。

 

もちろん契約の仕事である。

 

自転車を降り玄関へと向かう二人。はたから見ればこれから空き巣を行うようにも見えるのだが、これはれっきとした『契約取り』である。

 

普通の悪魔は魔法陣を使い依頼者のもとへ転移するのだが、兵藤の魔力が子供以下であるためにこうして自分の足で行くことになっている。

 

「ん?」

 

「どしたの?」

 

「いや、玄関が開いてるんだよ。こんな深夜に物騒だな……っ」

 

どくん、と言い様ない不安が彼を襲った。いつまでたっても入ろうとしない兵藤にシグは顔をしかめ、隙間から中を覗き込んだ。

 

「…………」

 

「ど、どうしたんだ?」

 

兵藤が聞いた途端シグは音を立てずに家の中へと侵入していった。『ええー…』と不安がちになりつつ兵藤もその後ろについていく。靴は脱がなかった。

 

「やっぱりおかしい……人の気配がない」

 

「あ、ああ。それになんか血生臭い気が……」

 

「「!」」

 

二人が辿り着いた部屋はリビング、テーブルには一本のロウソクが灯っており僅かな灯りが部屋を薄暗く照らしている。

 

そしてその壁には上下逆さまに貼り付けられた男性の死体。刃物で切り刻まれたように身体中から血が流れており内臓も飛び出ている。

 

「な、なんだよ、これ……」

 

「文字?えと……」

 

「残念時間切れー。『悪いことする人にはお仕置きよ』って書いてあるのさ」

 

後ろから突然現れた男、振り向くとその容姿が整った白髪の十代ほどの若さの外人だった。彼は兵藤を見るとニンマリと気味の悪い笑みを浮かべた。

 

「おっおう、君は悪魔ちゃん?悪魔くんだよねー?俺ちんの名前はフリード・セルゼン。ちょっとおちゃめな『悪魔祓者』、悪魔をぶっころ____おっと、消滅させるのがお仕事さ」

 

言動が狂っている少年フリード・セルゼンは可笑しな口調で近づいてくる。

 

というか今聖職者のくせに『ぶっ殺す』と言おうとしなかっただろうか?

 

「おい、おまえか?この人を殺したのは?」

 

「イエース!俺が殺っちゃいました。だってこいつ悪魔を呼び出す常習犯みたいだったすぃ、殺すしかないと思ってねー」

 

「……結構簡単に殺すんだね、人間を」

 

「ん?もちろん悪魔だって殺すよ?ていうか悪魔に関係する奴はみーんな殺っちゃいますよ?だってそうしないと……ねえ?」

 

なにが『ねえ』だ。会話が成り立っていない、無茶苦茶である。

 

「悪魔はマジクソな存在だしぃ、そんな悪魔に魅入られた人間もクソな奴だと思わないかい?もうそこで人生はエンドよエンド。だから俺っちが殺してあげました。まる!」

 

「まあ君も悪魔みたいだし俺も悪魔なんかと長話するのは嫌なんでそろそろ死んでくんない?つうかすぐ死ね!今死ね!」

 

フリード懐からビームサーベルのような刀身が光でできた剣と拳銃を一丁取りだし、兵藤に切りかかるかかる。

 

「あ、危ねえ!」

 

しかし兵藤は寸前に剣をかわしフリードから距離をとった。フリードは今度は拳銃をシグに向けて発砲するも同じようにかわされた。

 

「おいおいおいおい。なーに避けてくれちゃってんですか悪魔のくせに.悪魔は素直に俺に斬られてりゃいいんですよ。おまけにそこの君も何簡単に銃避けてんの?銃声音がしない特別製なのに。ま最終的に死んでくれやいいや!」

 

フリードはそう言うと今度は兵藤へと銃口を向けた。その引き金が引かれる寸前、シグは兵藤の前へと飛び出た。

 

「お一人様あの世へご招待!アーメン!」

 

発砲音のない弾丸が撃たれる、しかしシグは銀色に光る太い腕(・・・・・・・・)を盾にし弾いた。接触時に発生する火花がその姿を一瞬だけ照らした。

 

「……おい、なんだよその腕?」

 

クワガタ(・・・・)

 

シグはフリードが銃口を兵藤に向けた瞬間。すかさずその姿を変えていた。

 

 

 

その名はタランドゥスオオツヤクワガタ。体長90mmを超えるアフリカ最大のクワガタムシである。

 

 

このクワガタの特徴はがっちりとした重量感のあるボディとくの字型に湾曲した大顎。その挟む力は大型のヒラタクワガタを超えるほどである。

 

 

そしてその防御力も申し分ない。まるで『漆を塗ったかのような』艶の輝きを誇る甲皮は屈指の強度を持つ。

 

 

『タランドゥスオオツヤクワガタ』

 

 

『学名Mesotopus tarandus』

 

 

その異名は『昆虫界のダイヤモンド』

 

 

 

「兵藤、神器は発動できる?」

 

「ばっちりだ!って言いたいけど…まだ不安定でうまく出せねえ」

 

「わかった。じゃあ兵藤は離れてて」

 

「ああ……」

 

兵藤は後退し、その前にシグが出る。

 

「カモン。銃でも剣でもばっちこい」

 

「なめんなよ虫野郎!」

 

クイッと手を自分に向け挑発するシグ。それを見たフリードは青筋を立てながら剣をを構え突っ込んでいく。

 

「ちっ!結構硬えじゃねえの、僕ちん興奮しちゃう!」

 

「どうも、それじゃついでに大顎もいっくぞー」

 

 

タランドゥスオオツヤクワガタの特性は横幅のある甲皮だけではない。その先端にあるくの字型の大顎も武器として存在する。

 

 

「フワッフー、いいねいいねェ!」

 

フリードの剣とシグの大顎が火花を散らす、鋭い光の剣とタランドゥスオオツヤクワガタの大顎の強度は互角のようだ、シグは左腕の甲皮で弾丸と剣を防ぎ右腕の大顎で追撃する、しかしフリードの実力も確かであり、懐から取り出した二本の光の剣で受け流している。

 

「結構強いね」

 

「そりゃどうも!そっちこそおもしれえもん持ってんじゃん!本当に人間?」

 

2人の小競り合いが続く。しかしそれは1つの声によって終盤戦へと入った瞬間に突然と終わることになる。

 

 

「やめてください!」

 

フリードは二本の剣を構えたまま、シグも甲皮での防御態勢の状態で立ち止まり、戦闘を茫然と見ていた兵藤もその視線を声のした方へと向けた。

 

「……アーシア?」

 

そう、そこには先日出会った金髪のシスター。アーシア・アルジェントがいた。

 

「あら、これはこれはアーシアちゃんじゃないの。どったのどったの?結界は張り終わったの?」

 

「!い、いやぁぁぁぁぁっ!」

 

壁に打ち付けられた遺体を発見したアーシアは悲鳴をあげた。

 

「おお、かわいらしい悲鳴だこと。そういやアーシアちゃんはこんなスプラッタな死体は初めてだっけ?ならよーくごらんなさいな、これが悪魔に魅入られた人間の死にざまでーっす」

 

「そ、そんな……。……フリード神父……その人たちは……」

 

遺体から目を逸らすアーシア。彼女が次に捉えたのはフリードと対立している2人の姿であった。

 

「人?あー、こいつらはクソの悪魔くんとよくわかんない化け物だよ。勘違いもいいところだっての」

 

「___っ。イッセーさんが…悪魔……?」

 

「ん?なになに?君らもしかして知り合いだったり?ワーオこりゃびっくりんこ。悪魔とシスターの許されざる恋とか?そして君が混じって3Pとかそんなオチ?」

 

「でも残念!悪魔と人間は相容れません!特に教会関係者と悪魔は天敵さ!それに俺らは神にすら見放された異端者ですぜ?堕天使様からのご加護がないと生きていけないのよ?わかった?わかったら返事してみ?さんはい」

 

「……そんなことありません」

 

「は?」

 

「そんなこと、間違っています。悪魔に魅入られたからといって、人間を裁いたり、悪魔を殺したりなんて、そんなの間違ってます!」

 

「……ふーん。なーるほ-どねー……。っざけんじゃねえよ!バカこいてんじゃねえよこのクソアマが!悪魔はクソだって教会で習わなかったのか!なに考えてんだオメェは!悪魔はみーんな敵、そんな悪魔に魅入られた奴も!まともなのがいねえんだよ悪魔ってのは!」

 

「わ、私もこの前まではそう思ってました……。でもイッセーさんはいい人です。悪魔だとしてもそれは変わりません!シグさんだって私を助けてくれました。悪魔にだっていい人はいるんです」

 

強い子だ。死体を見かけ、出会った人物が悪魔だと知り、心はかなり傷ついているであろうにこの少女はそれでも、フリードに物言いしていた。

 

「ふざけんじゃねえぞクソアマ!」

 

フリードは剣の持ち手をくるりと反対にするとその柄でアーシアを殴ろうと襲い掛かった。

 

ガッ!

 

「…やらせない」

 

しかしその間にシグが入り、受け止めた。シグはフリードをそのまま睨みつけた。

 

「おいおい、なんですかその目?俺はシスターにあるまじき行為をするこの子にお仕置きをしようとしただけですけど?」

 

「それが顔を狙った暴力じゃなかったら止めなかったかもね」

 

両者睨み合う。だがその時、突然床が青白く光りだした。青い光は徐々に形を作っていき、グレモリ眷属の魔法陣を形成した。完成された魔法陣からはオカルト研究部のメンバーが現れた。姫島先輩、木場、塔城が姿を現す。

 

「ひゃっほー!惨殺祭りだ!まずは君の首からチョンパさせてもらうぜ!」

 

ギィン!

 

シグから離れ今度は木場へと剣を振りかぶるフリード。木場はそれを自身の持つ剣で受け止めた。

 

「見たところ君は『悪魔祓者』かい?」

 

「YESYESYES!その通り、俺がこの世の悪魔たちを切り刻む悪魔祓者でごぜーますよ!見事正解した君にはこの光の剣をプレゼント!」

 

「……下品な口だ。とても神父とは思えない……それに君は僕たちにとって一番厄介なタイプのようだ。悪魔を狩ることだけが生き甲斐としている……」

 

「あっはっはっは!悪魔ふぜいがほざいてんじゃねえっつうの!俺が君たちにとって厄介ならそっちは全世界の人間にとって厄介だ!人間を殺しまくって好き勝手やってるもんなあ!」

 

「悪魔にだって、ルールはあります」

 

微笑みながら言う姫島先輩。笑ってこそはいるが敵意と戦意を込めた目をフリードへ向けている。

 

「いいねいいねそのあつーい視線!もーう溜まりません!そんな目で見られたら殺意が沸いちゃうZE!最高ですっ!」

 

「なら、消し飛ぶがいいわ」

 

スッと兵藤の横からリアス部長が現れた。

 

「ゴメンなさいね。まさか依頼主のもとに『はぐれ悪魔祓者』が訪れるなんて計算外だったの。怪我はない?」

 

「は、はい……」

 

答える兵藤、しかしその声には悲しみが含まれているように小さい。リアス部長は視線を兵藤からフリードへと向けた。

 

「私は、私の下僕を傷つける輩を絶対に許さないことにしているの。今回は怪我もなかったけれど、私の下僕を襲ったことは許せないわ」

 

刹那、凍えるような殺気が室内を包み込んだ。その迫力でリアス部長の周囲に魔力が発生している。

 

「!部長、この家に堕天使らしき者たちが複数近づいていますわ。このままではこちらが不利になってしまいます」

 

気配を感じた姫島先輩の言葉にリアス部長は顔をしかめた。

 

「くっ……朱乃、イッセーを回収しだい、本拠地に帰還するわ。ジャンプの用意を」

 

「ぶ、部長!?伊瀬都はどうするんですか!それに、アーシアは!」

 

「無理よ。魔法陣を移動できるのは悪魔だけなの。しかもこの魔法陣は私の眷属しかジャンプできないわ」

 

「そんな!?じゃあ伊瀬都は置いて行くってことですか!?」

 

「兵藤。僕は大丈夫だから、ついでにアーシアを連れて逃げかえるくらいなら全然問題ない」

 

なんの問題もないように言うシグ。兵藤は彼とアーシアの無事を祈りつつ、自身の弱さに悔しみながら魔法陣へと向かった。

 

しかしフリードはそれを許さない。

 

 

「逃がすわけねえだろっ!」

 

フリードは兵藤へと光の剣を振り下ろす。

 

ガキィン!

 

それをシグはタランドゥスオオツヤクワガタの甲皮で防ぎ、剣を弾いた。その間に転移の準備は整い、部屋にはフリード、アーシア、シグの3人だけが取り残された。

 

 

 

「……ったく、なんで君は邪魔ばっかりするんですかねえ?」

 

弾かれた剣を拾いながら愚痴を溢すフリード。シグはそれに答えずにアーシアのいる方へと足を進める。

 

「大丈夫?」

 

「は、はい……」

 

シグの手を取って起き上るアーシア。シグは姿を人間に戻している。フリードは拾った剣の切っ先を2人に向けた。

 

「まさか君逃げれるなんて思ってちゃったりする?無理無理!外にはここに向かってる堕天使様たちがいるしなにより俺が逃がさないから!」

 

両手に持った光の剣を振りかざし突っ込んでくるフリード。

 

「………」

 

しかし、シグは動かない。アーシアは体を屈めて剣刃に触れない位置にいるがシグのいる位置はその真逆。確実に斬られる位置に立っている。

 

「姿は変えないのか!だったらこの光の剣で細切れにしてやるぜ!」

 

行動を起こさないシグにフリードはにやけ、走る速度を加速させた。人間にしてオリンピックに出られるほどの速度で突っ込んできたフリードに対してもシグは動かない。

 

「アーメン!」

 

光の剣が振り下ろされる。

 

「……しっ」

 

シグは動いた。左脚を軸にして体を回転させ振り下ろされる剣を避け、もう一本の剣での追撃を不可能にするために、そのまま右脚で背中を踏みつけた。

 

「ペンゾっ!?」

 

剣をかわされ背中ががら空きの状態での踏みつけにより見事に床に叩き付けられたフリード。さらにシグは剣を左脚で蹴り飛ばすと、首に手刀を当て気絶させた」

 

「あ、あの…フリード神父は、生きてますよね……?」

 

動かなくなったフリードを見て不安になるアーシア。シグは『気絶してるだけ』と説明すると、脱出経路を探した。

 

「んー?」

 

窓からは数人の堕天使がこちらに向かって来ているのが見える。ここに到着するのは恐らく30秒ほどだろうと推測したシグはアーシアと共に玄関へ移動させたあと、姿を変化させる。

 

「アーシア。ちょっと荒っぽくなっちゃうけど、ごめんね」

 

「は、はい。できるだけ我慢しますぅ」

 

『よかった』と言い終えたところで、その姿は完全に変異し終えた。

 

その姿の特性(ベース)となる昆虫は『メダカハネカクシ』

 

ハネカクシとは、甲虫目ハネカクシ上科ハネカクシ科に属する昆虫の総称である。前翅が小さく、ここに大きな後翅を細かく折りたたんで隠しているように見えるものが多いことからこの名がついという。

 

このメダカハネカクシはメダカハネカクシ亜目に分類される。そしてその特徴は____

 

 

「……行くよ。背中丸めてて」

 

「え?は、はい」

 

シグは勢いよく玄関を開くとアーシアを抱きかかえた。咄嗟に言われた通りアーシアを脚を畳んで背中を丸めた。

 

「GO」

 

「え?きゃあぁぁぁぁぁぁ…!」

 

____ガス噴射による高速移動である。

 

 

メダカハネカクシは自長の150倍の距離を1秒で移動することができる。そしてこれを人間サイズに換算すると約時速945kmに相当するという。

シグの身長は凡そ165cm。計算式に表せば

 

『身長×倍率=距離』

 

『165×150=24750』

 

『1秒=247.5m』

 

つまり

 

時速=891kmである。

 

 

姿を変化させメダカハネカクシの特性を使用可能となったシグは自身のガス噴出口である。ヒョットコのように変形した口吻から超高圧のガスを吹き出して後ろへ飛んだのである。

 

アーシアに背中を丸めてもらったのは『噴射時の風の抵抗にアーシアの体が耐え切れないから』である。これは自身の体で受け切ることでクリアすることに成功した。

 

 

そしてその結果、堕天使と2人の距離は200m以上開いた。2人は堕天使からの逃走に成功したのである。

 

「きゅ~……」

 

だがいくら風の抵抗を減らしたとはいえ、超スピードでの移動はやはりきつかったらしい。アーシアは目をクラクラさせてしまっている。

 

「……ごめんね?」

 

「だ、だいじょうぶですぅ……」

 

それから、再び噴射を繰り返す……ではなく普通に遠回りをして三十分後、堕天使に見つかることなく2人はオカルト研究部へと戻ることができるのであった。

 

 




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