放課後。教室に一人の人物が訪れた。
「やあ、兵藤くんはいるかな」
学園一のイケメン王子こと木場佑斗である。彼が教室に入ると女子たちは黄色い歓声をあげ、男子たちは嫉妬の目で彼を見ていた。木場は不機嫌そうな兵藤に対しても爽やかなスマイルを保ち続けている。
「…なんのようですかね」
おもしろくなさそうに答える兵藤、だが木場は笑顔のまま兵藤の問いに答えた。
「リアス・グレモリー先輩の使いで来たんだ」
その言葉を耳にした兵藤は目を見開いた。
「……オーケー、で、俺はどうしたらいい」
「僕についてきてほしい」
その瞬間、教室は女子たちの悲鳴で包まれた」
「そ、そんな木場くんと兵藤が一緒に歩くなんて!」
「汚れてしまうわ、木場くん!」
「木場×兵藤なんてカップリング許せないわ!」
「そうよ!伊瀬都くん×木場くんが最高傑作なのよ!」
「いや、伊瀬都くん×木場くん×兵藤もありよ!」
「3Pね!受けは伊瀬都くんに決まりよ!」
「……腐ってやがる。完全に…遅すぎたんだこいつら……」
教室に広がる婦女子たちの妄想。その割合なんと半分以上、それを見た兵藤は顔を歪ませながら呟いた。さすがの木場も苦笑いである。
「その伊瀬都くんにも要があるんだけど、彼はどこだい?」
教室を見渡す木場だがこの教室にシグはどこにもいなかった。兵藤は『なんであいつもなんだ…?』と思うも木場の質問に答えた。
「あー、あいつならこの時間は校舎内にはいないぞ。たぶん花壇にでもいるんじゃないのか?」
「なるほど。じゃあ兵藤くん僕についてきて、途中で伊瀬都くんを探さないと」
「わかった」
木場と兵藤は予想通り花壇でアブラムシを捕まえていたシグを発見し、目的の場にへと足を運ばせた。
ちなみにシグが捕獲したアブラムシは缶詰に入れた状態で鞄に入ったままである。
◆
三人が向かった先は校舎の裏手。木々に囲まれた場所には旧校舎と呼ばれる現在使用されていない建物があった。使われていないにしては窓ガラス一つ傷ついておらず、壊れている部分もわかりづらいほど、遠くから見れば外見が古いだけで誰も使ってないとは思えないだろう。
内見も綺麗であり塵やほこり一つ落ちていない。基本的には古い建物には蜘蛛の巣や床のヒビなどが見られるものだがこの旧校舎にはそれが一つも見当たらなかった。蜘蛛がこのどこかにいるのではと期待していたシグだったが蜘蛛の巣一つ存在しないとわかると残念そうに肩を下げた。
それから少し移動した後、木場は目的の地であろう教室の前で立ち止まった。
『オカルト研究部』
教室の戸にはそう書かれているプレートがかけられていた。兵藤はそれを見て驚愕の顔を浮かべている。シグはと言えばなんのそのと言ったようにテンに昆虫ゼリーを食べさせていた。これは兵藤の要望であり、今度虫探しに付き合うということでシグは了承した。
「部長、連れてきました」
「ええ、入ってちょうだい」
中から聞こえる女性の声、リアス・グレモリーから確認をとった木場が戸を開け、そのあとに続いて兵藤とシグが室内に入る。二人が見たその中の様子はオカルト研究部に相応しいものだった。
室内の至るところに謎の文字が書き込まれており、床、壁、天井に至るまで見たことのない面妖な文字が記されていた。中央には教室の大半を占める巨大な魔法陣が描かれていた。
教室にいくつも存在するソファーの一つには小柄な女子が座っているた。駒王学園1年生の塔城小猫である。高校生にしては幼さを感じさせる顔つきに小柄な体を持ち、男女平等に人気が高い『駒王学園の二大マスコット』の一人である。眠たそうな表情のまま黙々と羊羹を食べ続けている。
「こちら、兵藤一誠くんに伊瀬都シグくん」
「あ、どうも」
「こんにちは」
彼女の視線に気づいたのか木場が連れてきた2人を紹介する。彼女もペコリと頭を下げて挨拶をしてくる。そして再び羊羹を食べるのを再開した。
「……なんですか?」
彼女の元に歩み寄り鞄をごそごそと漁るシグ。そんな彼に気づいた塔城は羊羹を食べるのを続けながらシグの方を見た。
「…くれるんですか?」
「うん、昆虫ゼリー、あげる」
「いりません」
おいしそうに羊羹を食べていた塔城にゼリーを差し出すシグ、彼女はそれを受け取るもその正体を知るとすぐにシグの手に置き戻した。それを見たシグはガーンとショックを受けテンに食べさせた。昆虫ゼリーを食べたいと思う女子はいないのである。
そんな2人のやりとりを見ていた兵藤だったが、その目線はすぐに室内の奥にあるシャワーカーテンのシルエットに向けられた。女性がシャワーを浴びているのである。兵藤の顔は中年親父のようににゃけてしまっている。
「……いやらしい顔」
その兵藤に向かってぼそりと呟く塔城。だが呟くだけでありこっそり羊羹を食べようとしていたシグからそそそっと羊羹の乗った皿を遠ざけている。
「ゴメンなさい。昨夜、イッセーのお家にお泊りしてシャワーを浴びてなかったから、いま汗を流していたのよ」
カーテンから出てきたのは制服を着込んだリアス・グレモリー先輩であった。濡れていて艶っぽい紅の髪をなびかせている。そしてその後ろ隣にいたのは『駒王学園の二大お姉さま』の一人である姫島朱乃であった。いつも絶やすことのない笑顔に黒髪ポニーテールの和風感漂う佇まいであることからその名称がつき、男女問わずの憧れである。
「あらあら。初めまして、私、姫島朱乃と申します。どうぞ、以後お見知りおきを」
「こ、これはどうも。兵藤一誠です。こ、こちらこそ初めまして!」
「伊瀬都シグ。初めまして姫島先輩」
挨拶を交わす3人、グレモリーはそれを見ると『うん』と確認した。
「これで全員揃ったわね。伊瀬都シグくん。兵藤一誠くん。いえ、イッセー」
「は、はい」
「私たちオカルト研究部はあなたたちを歓迎するわ」
「?え、ああ、はい」
「悪魔としてね」
「____!」
その一言を耳にしたシグは一瞬だけ目を細め、無意識の内に体に力が入っていた。
私立駒王学園2年生伊瀬都シグ。
彼の物語はここから始まるのである。
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