昆虫愛好者のハイスクールD×D   作:滝温泉

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悪魔

駒王学園旧校舎に存在するオカルト研究部。そこでは学園内で様々に有名な生徒たちが集まっていた。室内のテーブルを囲んでソファーに全員が座っている。

 

「粗茶です」

 

「あっどうも」

 

「…どうも」

 

ソファーに座っている兵藤とシグにお茶を淹れる姫島先輩。兵藤は緊張しつつそのカップを手に取り、シグは礼を言うだけでそれは飲まなかった。

 

「ん?どうした伊瀬都、こんなにうまいのに飲まないのか?」

 

「……僕は猫舌だから、ちょっと冷めてから」

 

「あらあら。そうでしたの、でしたら次は温めにいたしますわ」

 

「…ありがとうございます」

 

「朱乃、あなたもこちらに座ってちょうだい」

 

「はい、部長」

 

姫島先輩がグレモリー先輩の隣へと腰をおろす。そして兵藤とシグ以外の全員の視線が二人に集まった。それに対しさらに緊張を高める兵藤と脚に力を少しだけ入れるシグ。そしてグレモリー先輩が口を開いた。

 

「単刀直入に言うわ。私たちは悪魔なの」

 

「_________っ」

 

悪魔。その言葉で警戒心が増すシグ。今度は体全体に力が入り一瞬だけ震えた。人の眼には捉えられないほどの小さな震えである。

 

それもそのはず、自分の受け継いだ力が生み出された原因であり親の世代を苦しめてきた存在。知識でしかその存在を知らないシグの警戒心を強めるのはそれだけで充分だった。

 

「信じられないって顔ね。まあ仕方ないわ。でもイッセー、あなたも昨夜黒い翼の男を見たでしょう?」

 

「え、ええ。少しボロくなったスーツを着てました」

 

昨夜の出来事を思い出し特徴を述べる兵藤。そのスーツの原因はシグが吹き飛ばしたからとは思いもしないのだろう。シグは『あ、この前の堕天使だ』と思ったがすぐに思考を戻した。

 

「あれは堕天使。元々は神に仕えていた天使だったんだけれど、邪な感情を持っていたため地獄に堕ちてしまった存在。私たち悪魔の敵でもあるわ」

 

「私たち悪魔は堕天使と太古の昔から争っているわ。冥界…人間界で言うところの『地獄』の覇権を巡ってね。地獄は悪魔と堕天使の領土で二分化しているの。悪魔は人間と契約して代価をもらい力を蓄え、堕天使は人間を操りながら悪魔を滅ぼそうとする。ここに神の命を受けて悪魔と堕天使を問答無用で倒しに来る天使を含めると三すくみ。それを大昔から繰り広げているのよ」

 

「……?」

 

シグは不思議に思った。グレモリー先輩の言っている悪魔、堕天使と自分が知っている2つの存在では微妙な点が違う。やはり本に書いてあること、本来にあったことでは食い違いが起きるのだろう。

 

「いやいや先輩。いくらなんでもそれはちょっと普通の男子高校生である俺には難易度の高いお話ですよ」

 

「普通の男子高校生には『変態三人組の一人』なんて言われないと思う」

 

「ぐはっ」

 

グレモリー先輩の話についていけない兵藤が口を開く、シグはそれに対し辛口なツッコミを入れると兵藤は衝撃を受けたようにのけぞった。

 

「ふふ、オカルト研究部は仮の姿よ。私の趣味。本当は私たち悪魔の集まりなの」

 

それを聞いて信じようとしない兵藤。しかしそれはグレモリーの次の言葉で変えられることとなる。

 

「天野夕麻」

 

「________っ」

 

「あの日、あなたは天野夕麻とデートをしていたわね」

 

「……冗談ならここで終えてください。正直、その話はこういう雰囲気で話たくない」

 

僅かながら怒気を含めて言葉を放つ兵藤。シグはそれを見てやはりあの日に兵藤の身に何かあったのだと確信した。

 

「彼女は存在したわ。確かにね。まあ念入りに自分であなたの周囲にいた証拠を消したようだけれど」

 

否定するように、ハッキリと言うグレモリー先輩。指をひと鳴らしすると隣にいた姫島先輩が懐から一枚の写真を取り出した。

 

「この子よね?天野夕麻ちゃんって」

 

写真を受け取ると兵藤は写真を強く握りしめながら見つめていた。隣にいるシグも横から覗き込むようにしてその写真を見た。

 

そして写っていたのは、誰も覚えているはずのない天野夕麻の姿。彼女の背中にはシグがあの日出会ったドーナシーク同様に黒い翼が生えている。

 

「この子は、いえ、これは堕天使。昨夜、あなたを襲った存在と同質の者よ」

 

そこまで聞いて、シグは自分の推理が正しかったと確信する。だが同時に疑問も生じる。確かに今の話通りのことが起きたのなら兵藤は死んでいるはず、なのになぜ兵藤は生きているのか。そして_____

 

「この堕天使はとある目的があってあなたと接触した。そして、その目的を果たしたから、あなたの周囲から自分の記憶と記録を消させたの」

 

なぜ自分はあのことを覚えているのか。

 

「目的?」

 

「そう、あなたを殺すため」

 

この瞬間、兵藤の体に力が入った。

 

「な、なんで俺がそんな!」

 

「落ち着いてイッセー。仕方なかった……いいえ、運がなかったのでしょうね。殺されない所持者もいるわけだし……」

 

「運がなかったって!」

 

「あの日、あなたは彼女とデートして、最後に公園の槍で殺されたのよ」

 

「待って、だったらなんで兵藤は生きてるの?」

 

「そ、そうっスよ!だいたい、なんで俺が狙われるんだよ!」

 

ここに来て話に介入するシグ、それに反応して兵藤は声を強く叫んだ。

 

「彼女があなたに近づいた理由はあなたの身にとある物騒なモノが付いているかいないか調査するためだったの。きっと反応が曖昧だったんでしょうね。だから、時間をかけてゆっくりと調べた。そして確定した。あなたが神器(セイクリッド・ギア)を身に宿す存在だと……」

 

「セイクリッド・ギア?」

 

聞いたことのない単語に首をかしげるシグ。それを説明するように木場と姫島先輩が口を開いた。

 

「神器とは特定の人間のみに宿る規格外の力。例えば歴史上に残っている人物の多くがその神器所有者だと言われているんだ。神器の力で歴史に名を残したのさ」

 

「現在でも体に神器を宿す人々はたくさんいるのよ。世界的に活躍する方々がいらっしゃるでしょう?彼らの多くが神器を有しているのです」

 

「その大半は人間社会規模しないものばかり。ところが、中には私たち悪魔や堕天使の存在を脅かすほどの力を持った神器があるの。イッセー、手を上にかざしてちょうだい」

 

「え?あっ、はい」

 

「目を閉じて、あなたの中で一番強いと感じるモノを想像してみてちょうだい」

 

「い、一番強い存在……。ドラグ・ソボールの空孫悟かな……」

 

「じゃあそれを想像して、その人物が一番強く見える姿を思い浮かべて。そしてその人物の一番強く見える姿を真似るの。強くよ?軽くじゃダメ」

 

「え、ま、マジですか……?」

 

「ほら、早くしなさい」

 

まさかこの年で必殺技ごっこ染みたことをしなければいけなくなるとは思っても見なかった兵藤、そんな彼にシグは助言を述べた。

 

「兵藤、オススメはヘラクレスやオオスズメバチとかだよ」

 

「ドラゴン波!」

 

目を瞑り、両手を上下に合わせて前へと突きだしたまま声をあげた兵藤。シグの助言に対し『どんなポーズするんだよそれ!?』と思った結果である。

 

「さあ、目を開けて。この魔力漂う空間でなら、神器も容易に発現するはず」

 

言われるがままに目をカッと開ける兵藤。すると左腕が光だし、しだいに形を成していき左腕を覆った。

 

「な、なんじゃこりゃああああ!!?」

 

光が止むと、兵藤の左腕には赤色の籠手らしき物が装着されていた。見た目からすればかなり凝った装飾が施されたコスプレである。

 

「それが神器。あなたのものよ。一度ちゃんとした発現ができれば、後はあなたの意志でどこにいても発動可能になるわ」

 

その言葉に驚愕する兵藤。ガボーンと言った効果音が合っているだろう。

 

「あなたはその神器を危険視されて、堕天使に殺されたの。そして、瀕死の中、あなたは私を呼んだのよ。この紙から私を召喚してね」

 

そう言い、グレモリー先輩が取り出したのは一枚のチラシ。そこには『あなたの願いを叶えます!』というなんとも胡散臭い文字と魔法陣が描かれていた。

 

「これは私たちが配っているチラシなのよ。魔法陣は、私たち悪魔を召喚するためのもの。最近は魔法陣を描くまでして悪魔を呼び寄せる人はいないから、こうしてチラシとして悪魔を召喚しそうな人間に配っているのよ」

 

「そしてこれを手にしたイッセーが死の間際に私を呼んだの。私を呼ぶほど願いが強かったんでしょうね。普段なら眷属の朱乃たちが呼ばれているはずなんだけれど」

 

そこまで聞くと喉が乾いたシグは自分の下に置いてあるお茶を手に取り、匂いを確認して毒が無いだろうかと思いながらお茶を飲んだ。おいしかったようだ。

 

「召喚された私はあなたを見て、すぐに神器所有者で堕天使に害されたのだと察したわ。問題はここから、さっきの伊瀬都くんの質問の答えにもなるわね。イッセーは死ぬ寸前だった。堕天使の光の槍に身を貫かれれば、悪魔じゃなくても人間まら即死。イッセーもそんな感じだったの。そこで私はあなたの命を救うことを選んだ」

 

命を救う。確かにそれならば兵藤が生きていることにも頷けるが、本当にそんなことが可能なのか?シグは続きを待つようにグレモリー先輩を見つめた。

 

「そう、悪魔としてね。イッセー、あなたは私、リアス・グレモリ―の眷属として生まれ変わったわ。私の下僕の悪魔として」

 

バサッ!

 

その瞬間、シグ以外の全員の背中から翼が生える。堕天使とは違う、コウモリのような翼である。それが全員の背中……もちろん、兵藤にもだ。

 

「「!?」」

 

自分の背中にいつの間にか翼が生えていたことに驚く兵藤。いつの間にか兵藤が悪魔になっていたことに驚くシグ。

 

「改めて紹介するわね。佑斗」

 

「僕は木場佑斗。兵藤一誠くんと同じ2年生ってことはわかっているよね。えーと、僕も悪魔です。よろしく」

 

「……1年生。……塔城小猫です。よろしくお願いします。……悪魔です」

 

「3年生、姫島朱乃ですわ。いちおう、研究部の副部長も兼任しております。今後もよろしくお願いします。これでも悪魔ですわ。うふふ」

 

「そして、私が彼らの主であり、悪魔でもあるグレモリー家のリアス・グレモリーよ。家の爵位は公爵。よろしくね、イッセー」

 

「は、はい。2年生の兵藤一誠です、これからよろしくお願いします!」

 

全員が自己紹介をし悪魔であることを告げる。そして、その全員の主であるグレモリー先輩は今度はシグの方へと向き直った。

 

「さて、今度はあなたのことを教えてもらえるかしら。伊瀬都シグくん?」

 

名前を呼ばれて再び警戒するシグ。そんな彼を見据えるようにグレモリー先輩は尋ねた。

 

「あなたは、いったい何者かしら?」

 

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