幸せを探しに。 作:あんバター
今朝はいい夢を見て寝覚めがいいし、珍しく早起きもできた。
最近は雨が降り続いていたが、今日は快晴。
朝ごはんの目玉焼きの卵には黄身が2つ入っていたし、スープもいつもより美味しく出来た。
なんだかいい一日になりそう!!
なんとなくご機嫌な気持ちで、少女は歩く。
ここしばらくの雨で道はまだぬかるんでいたが、久々に浴びる太陽の光と心地よい微風のおかげか、気分は上々。
今日はお仕事も休みだし、こんなに天気が良いのだからお昼はピクニックに行こうかしら?
美味しいパンを食べながら、お気に入りの本なんかも読んで。
きっと心地よい風が吹いているから、少し眠っちゃったりするのも気持ちがいいかもしれない。
ああ、なんだか楽しくなってきたわ!
幸せな想像に、思わず笑みがこぼれる。
鼻歌混じりに進むうちに、気づけば目的地のパン屋までたどり着いていた。
扉を開けるとふわっと、焼きたてのパンの香りが鼻腔をくすぐる。
少女はこの瞬間が好きだった。
立ち止まって胸一杯に空気を吸い込むと、カウンターから声がかかる。
「いらっしゃい、アイラちゃん。今日もいつものでいいのかい?」
「ええ!それと、こっちのパンもくださいな!」
「えらく上機嫌だなぁ。なにかいい事でもあったのかい?」
「久々の良いお天気でしょう?なんだか嬉しくなっちゃって!お昼にピクニックに行こうかと思っているの。」
そいつはいいねぇ、なんて言いながら店主の男はパンを詰めていく。
いつも通りの穏やかな時間。
違うと言えばちょっぴり贅沢をしたことだろうか。
いつもなら買わないチョコの入った甘いパンを買ってしまった。
気分がいいと財布の紐も緩むというものだ。
「お待たせ、気をつけて帰るんだよ。」
「ありがとう、おじさま。良い一日を!」
「ああ、良い一日を。」
店主と挨拶を交わす。
いつもと変わらない挨拶になんだか嬉しくなる。
ピクニックなんて久々だわ、早く帰って準備しなくちゃ!
そんなことを考え、少女は楽しそうに家へと帰っていった。
ーーーーーー
町から少し外れた丘にある一本の大きな木。
その日陰で少女は買ってきたパンを食べながら、自らの暮らす街をどこかふわふわした気持ちで眺めていた。
いつも見ている街並のはずなのに、遠くから見るとまるで違うものに見えてくるから不思議だ。
普段は自分もあの景色の一部のはずなのに、今ここにいる私には、そんな実感が湧かない。
そしてここには、私以外には何も無いように感じる。
時間や空間といった概念から切り離され、心だけがこの世界を揺蕩っているような気分。
先程まで読んでいた本の影響だろうか。
どこか感傷的になっているのかもしれない。
普段の自分からは想像もつかない詩的な考えに、なんだかおかしくなってしまった。
まるで雲になったみたい。
ポツリと、そんな感想を抱きながら、はむっ、と一口。
甘いチョコレートの風味が口の中に広がり、幸せそうに笑う。
どこまでも穏やかで、どこか寂しい昼下がり。
風が気持ちいいわ、なんて考えながら。
パンを食べ終えた少女は眠りに落ちた。