私はエリス・ロックドラス。
稼働を終えて廃棄されたはずなのだけれど、何故か真っ暗な空間にいる。
身体を動かしてみれば、10年前の新品のころのボディのようにスムーズに動く。
これは一体どうしたことか。
あちらこちらにガタがきてるから廃棄されたのであって……これは、走馬灯ってやつ?
人間が死に際に見る夢のようなものだとか。
本当にあるの?
最後の言葉が「そうまとう」だった人でもいるのかな。
掌のライトを点灯して周囲を確認する。
何もねえな。人生空虚? ロボゆえしゃーなし。
ほとんど何もないんだけど、ある方向は巨大な壁のようなものが発見できた。
行き止まりかしら。
「これは、一体なんだろう……」
『私の足です』
「うわぁ、何?」
驚いた。独り言に反応されるとビックリする。ロボットじゃなかったら飛び上がっていたかもしれない。というか足……?
ライトで照らしていくと、ずっと上の方まで壁が繋がっている。いや分からないわ。材質が石ということしか分からない。
「えっと、どちら様?」
『少し暗いですね。ではこれでどうでしょう』
謎の声がそういうと、ぱちりと周囲が明るくなる。
遥か上空からスポットライトで照らされているようだ。
いや、見えねえよ。でかいもん。
後ろ向きにブースターを吹かし、全体像が見えるまで後退する。
まるで山のような荘厳さ。
何かに祈りを捧げるかのように、腕を組んだ状態で固まっている女性型のロボット。
頭のてっぺんからつま先まで5000メートルくらいあるんじゃないだろうか。
まるで何の役に立つのか分からない大きさだ。そもそもどうやって作られたのだろう。
『私のことが分かりますか?』
うん? ……ああ!
「エンゼルさま?」
『そうですそうです』
「なぜこんな石像のような姿に?」
『ようなというか、石像そのものですよ。今の私は。貴女に見せた星の記憶、その結果として――』
「待って!」
『何でしょうか』
「その続きは映像で見たい」
結果だけ先に言われてもつまらない。
『……いいでしょう。後で探してみます。とにかく
「そのようで」
『あなたに手伝ってもらいたいことというのも、そこにあるのです。エリス・ロックドラス。貴女から見て、今の私はどのように見えますか』
私、名前言ったっけ?
まあいいや。
どのように見えるか、か……。
「でかい」
『そうですね、他には何がありますか?』
「白い」
『他には?』
「うーん、美人なのではないでしょうか。私は人型なんでメカメカしいところの美しさは判断できかねますけれど」
『他に』
「面接官か何かでいらっしゃる? 質問の意図が分かりません。活動期間終わったんだから寝かせて」
『本当にわからないのですか……。今、私は途方もない危機に見舞われているのです。見て分かる通り、私の身体は少し傾いています』
「…………いや、分からない。それで何が問題なので?」
どこかの斜塔だって観光名所だし。それはそれで。
『このままいくと9.74年後に私は前方に転倒します。封印され石化している現在の身体強度では、転倒に耐えうることができず破損するでしょう』
「意外と深刻だ」
『そこであなたに助けてもらいたいのです』
「うーん、そもそも今の私に何かできるとも思えないけど」
『そう、貴女はすでに死んでいます。でも、もしまだ活動することができるとしたらどうでしょう』
「いや寝かせてくれ。社築は終わったんだ。5分ちょっとならともかくあと十年弱は死ぬ」
『限界値が小さいですね……そもそもすでに死んでいるのと同じですが。今の世界はそういう時代なのでしょうか? 休みは自由に取って構いませんから!』
「それなら、まあ話くらいは……」
どうでもいい話だったら小指の先砕くぞ。
巨大ロボットが出てくるので実質コズミックブレイク。
次の話まで入れないとまだレギュ違反かしら。
転生する前にエタった異世界転生モノもあるって話は聞く。