プリすば!   作:負け狐

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アニメのあれアドリブなのほんとすげー


その134

「うーむ。これはそろそろ撤退を視野に入れた方が良いのではないかな?」

 

 離れた場所でシルビア操縦の偽キャルをモニタリングしていたドールマスターがそんなことを呟くが、当の本人であるシルビアは聞いている余裕がないのか無反応だ。意識を向こうにすべて持っていっているのか、とシルビア本体の様子を確認した彼は、さてどうするかと腕組みをした。もし倒されたとしても本体にダメージがフィードバックされることはないので、彼女自体は無事ではあるだろうが、しかし。

 

「精神的ダメージが大きいと支障が出るやもしれん」

 

 とはいえ、腐っても魔王軍幹部。そこまで心配することもないだろう。そう結論付けたドールマスターは、再び向こう側の監視へと意識を集中させた。どの道勝てば問題あるまい。そんなことを呟きながら。

 さて、では向こうはといえば。

 

「ぐ、このっ……! ちょこまかと!」

「ふむ。やはり魔術師殺しの装甲が厄介だな。まあ、ネネカ様が管理していたのだから、高性能なのは当然だが」

「言ってる場合か!」

「あはは。ん~、ちょっとやばいですね」

 

 キャルのツッコミを流しつつ、ペコリーヌも一旦距離を取る。マサキの言ったように、先程エリコによって一部破壊されたとはいえ魔術師殺しは未だ健在。彼やペコリーヌのような物理攻撃は通るものの、魔法攻撃が基本的にシャットアウトされるおかげでキャルや紅魔族組は牽制程度が関の山なのが現状だ。あるえとアンナはまだ打開策を練りつつその役目に準ずることが出来るが、いかんせん自分と同じ顔が暴れ回っているので、オリジナルとしては黙っていられないわけで。

 結果キャルは前衛の物理組と並んで立っている。

 

「なあキャル。お前」

「何よ。分かってるわよ。でも仕方ないじゃない! あの偽物、ぶっ殺さないと気が済まないもの!」

「だからって無駄に魔力使ってんじゃねぇよ。一旦落ち着け」

「そんなこと言われたって」

「キャルさま」

 

 カズマの言葉に尚も食い下がろうとしていたキャルは、横合いからの声で言葉を止めた。コッコロが、真っ直ぐにこちらを見ていた。

 彼女は述べる。キャルさまのご活躍の場は必ず訪れます。だから。

 

「だから、わたくし達を信じてくださいませ」

「……ぐぅ」

「そうですそうです。わたし達があの装甲をどうにかしますから、その後でキャルちゃんがドカンといっちゃってください」

「わ、分かったわよ。そこまで言うんだから、絶対何とかしなさいよ!」

 

 言葉はあれだが、信じた任せたと言わんばかりに彼女は下がる。そうしながら、先程からやけに静かなめぐみんを見た。あるえとアンナは別段気にしていないようだが、キャルはそのことでかえって気になった。

 

「ねえ、めぐみん」

「どうしました?」

「あんた、どうしたの?」

「どうした、とは?」

「いや、何だかいつもと違って静かだなって」

「集中していますからね。我が爆裂魔法を最も輝かせるそのタイミングを見極めるために」

「あ、うん。いつも通りだったわ」

 

 ちょっとだけ脱力した。が、彼女の言葉が偽りではないのは紅魔族特有のその瞳が薄っすらと点滅していることからも伺える。感情の昂りを抑えているのだ、あのめぐみんが。

 ふう、とキャルは息を吐いた。先程無駄使いした魔力を惜しみつつ、残っている全てを集中させ、前を見る。横の彼女と同じように、そのタイミングを逃さないように。

 

「で、だ。どうする? 物理パっつっても現状ペコリーヌのソロに近いぞ」

「ははは。いや済まない、私は基本ネネカ様を守る盾だからね。自分から打って出るのは少々苦手なんだ」

 

 そうは言いつつ、彼もきちんと攻撃の役目は果たしている。問題は火力不足と、それに伴ったワンパターン化だ。ペコリーヌがメインアタッカーなのは揺るがないので、牽制をマサキが担う。ここにバリエーションがないわけだ。

 

「主さま」

「ん?」

「それでしたら、わたくしにお任せを」

 

 支援を行っていたコッコロが前に出る。え、とカズマが一瞬目を見開いたが、彼女が小さく微笑んだことでその表情を変えた。頭をガリガリと掻きながら、しょうがねぇとプランを練る。今回の俺の出番はこっちかと弓を取り出し矢をつがえた。

 

「コッコロ」

「はい!」

 

 狙撃。突然のそれに虚を突かれたシルビアは、偽キャルの顔面に思い切りそれを受けてしまった。突き刺さってちょっぴりグロいキャルちゃんの出来上がり、にはならず当たった矢は弾かれたが、しかしそれでも多少のダメージはある。

 

「こ、んの……?」

 

 やってくれたな、と反撃しようとしていたシルビアは、自身の体がやけに動かないとそこで気付いた。なまじっか本当の体ではないので自覚症状が出なかったのだ。毎度お馴染み、カズマの特製毒麻痺矢である。人形とはいえ結局の所モンスター、完全な生物よりは劣ってもある程度は効くらしい。

 そこに一瞬にして懐に飛び込んだコッコロの槍が突き刺さる。げぇ、と思わず叫んだシルビアに向かい、彼女はそのまま武器を振るう。

 

「風よ……刃に集え――《緑翠の絆風》!」

 

 それに合わせるように、コッコロの周囲に風が舞い、追撃となってシルビアへと放たれた。

 

「うぇ!? ちょ、ちょっと! アークプリーストがこんなこと出来るとかアタシ聞いてないんですけどぉ!?」

「ちょ、ちょっと! コロ助がそんなこと出来るなんてあたし聞いてないんだけど!」

「おい本物と偽物が同じリアクションしてるぞ」

「やばいですね」

 

 槍と風の刃が集中して突き刺さったことで、シルビアの動きが止まった。ついでにキャルの集中も止まったが、こちらはカズマ達にはあまり関係がない。

 ともあれ、先程までとは違い、今度はしっかりと攻撃が通る。行きます、とペコリーヌが一歩踏み出し、そして思い切り剣を振りかぶった。

 

「《プリンセスストライク》!」

「あ、しま――っぎゃぁぁぁぁ!」

 

 ペコリーヌのそれは魔法攻撃とは違う純粋な攻撃スキルのそれだ。分類的には《エクステリオン》に近いので、当然のことながら魔術師殺しの装甲の特性とかそれがどうしたである。とはいえ、先程マサキが言っていたように、ネネカが研究していた以上それでぶっ壊れるような代物であるはずがなく。

 

「ぐ、こ、の……!」

「やっぱりそう簡単にはいきませんね」

「だよなぁ……」

「ですが、効果はあるようです。もう一度わたくしが牽制を」

「させるわけねぇぇえだろぉぉぉ!」

「いけない。皆、下がれ!」

 

 マサキが前に出る。剣を構え、カズマ達の盾になるようにシルビアへ立ちふさがった。そこに放たれる火炎放射。一瞬にして周囲が火の海になり、後ろにいた紅魔族プラスアルファも慌てて後退する。周囲にいる紅魔の里の野次馬共は盛り上がっていた。

 

「マサキさま!?」

「心配いらない。今のうちに君達は後退を」

「……まああの人の盾をやってるってんだからある意味当然か」

 

 割と普通に返答が来たので、カズマはそのままコッコロを連れて攻撃範囲から下がる。尚も火の勢いを強めようとしていたシルビアは、周囲の被害の補修を終えたホーストが横合いからちょっかいを掛けたことで一旦その手を止めた。

 さてどうするか、とカズマは再び持ち直したシルビアを見やる。ダメージ自体は蓄積されているだろうから、もう少し突けば恐らくいけるであろうとは思うのだが、いかんせんそのための一手が足りない。やはり魔法を防ぐ装甲が邪魔をするのだ。

 

「あ、待てよ」

「どうされましたか? 主さま」

「ちょっとな。おーい、ミツキ先生」

 

 火の海でも平然としていた二人組の片方に声を掛ける。あら、私? と自身を指差したミツキは、それで何の用なのかと彼に問うた。

 

「さっき使ってた装甲を駄目にさせる薬剤って、まだ残ってたりは」

「診療所には在庫があるけれど、今の手持ちはこのアンプル一つ分しかないわよ」

 

 これ、と小さな小瓶を取り出す。思ったより少量ではあったが、しかし全く無いわけではないのならば大丈夫だ。カズマはそれを受け取り、踵を返した。これで後は、と今現在の面子を眺める。

 

「めぐみん」

「ええ、待ち望んでいましたよ。適切なタイミングは、こちらで判断しても?」

「おう。じゃあ後は」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。どうする気?」

「どうするもこうするも。見れば分かるだろ」

 

 キャルの抗議を受け流し、カズマはコッコロとペコリーヌを見る。コクリと頷いたので、ほれ二人は分かってると彼女を煽った。

 

「むっかつくぅぅぅ!」

「よし、じゃあ行くぞ」

「無視すんな! ぶっ殺すぞ!」

「あはは。でもキャルちゃん、本当は分かってるんじゃないですか?」

「そうでございますね。キャルさまならば、確実に」

「二人の信頼が重い!?」

 

 ぐぬぬと唸るキャルを尻目に、カズマはもう一度矢をつがえた。今回はブーストを全員に掛ける余裕がない。そういうわけだからと前置きし、彼は向こうの偽キャル、シルビアへと狙いを定めた。

 

「コッコロ!」

「お任せください、主さま」

 

 先程と同じように、槍から風を生み出して一直線に放つ。炎の海を切り開くようにして出来たその道は、ほんの僅かな時間ではあるが真っ直ぐシルビアへと通じていた。

 

「ペコリーヌ!」

「はい! 変身!」

 

 ティアラに手を添え、フォームチェンジ。そのままノータイムで出来た道を真っ直ぐかっ飛んでいった。

 嘗めるな、とシルビアが吠える。尻尾を振り上げ、同時に火も吐きながら突っ込んでくるペコリーヌを叩き潰さんと、燃やさんとする。

 が、しかし。持続時間は短いとはいえ、この姿の彼女は第二王女や宴騎士というベルゼルグ王国トップクラスのバーサーカーとも渡り合えるバーサーカー、第一王女ユースティアナなのだ。

 加えて。

 

「止まらない!? って、へ?」

 

 狙撃再び。ペコリーヌを追い越すように放たれたそれは、シルビアの振り下ろした尻尾に当たると盛大に弾けた。仕込まれた《ブービートラップ》によって、先程ミツキからもらった腐食液がシルビアの体全体にぶっかかる。

 そのタイミングで、ペコリーヌが接敵した。

 

「全力全開の更に先、にはちょっと足らないので――全力、超! 全開《プリンセスヴァリアント》!」

 

 押し潰そうとしていた尻尾が纏めて吹き飛んだ。何本もあった尻尾はこれで残り一本、魔術師殺しの装甲もボロボロで、かろうじて機能しているレベルだ。だが、そのかろうじてですら魔法を防ぐのだから厄介である。ダメ押しをするには物理攻撃を更に重ねるしかないが、残っている火力担当は魔法職。

 

「ふぅ……来ましたね」

 

 それがどうした。そう言ってしまえるのがここに一人。昂りを遂に抑えきれなくなったその瞳は紅く輝き、攻撃に耐えきったと判断し反撃しようと突っ込んでくるシルビアをハッキリと見据えている。

 

「狂乱に惑いし人形よ。伽藍堂を汚泥で満たされた人形よ。

 切なる願いも絶たれたこの地にて、せめて安らかなる静寂のあらんことを。

 ここに顕現せし理は、我が友の思いへと繋ぎその願望を体現せしもの也。

 さあ、刮目せよ! これぞ爆裂道! これぞ我が師ちょむすけより伝えられし覇王への道程! そして誇れ! やがて爆裂魔法の頂に至る礎になることを!」

 

 尋常ではない魔力が集まっていく。めぐみんの杖の先端は、迷うことなくそこへと向けられた。

 

「《エクスプロージョン》!!」

 

 それは、普段見慣れているものと比べると規模が小さいように思えた。何故ならば、周囲に被害が及んでいなかったからだ。だからカズマは流石の爆裂魔法も魔術師殺しに防がれたのかと一瞬眉を顰めた。

 だが、それが間違いだと知るのはその直後。いっそ清々しいほどに魔術師殺しの装甲を破壊されたシルビアが、偽キャルの顔を驚愕に歪ませて吹き飛んでいるのを見たからだ。信じられない、と呟いていたからだ。

 

「な、何が起こったの……? なんで、こんな」

「――当然でしょう? 私は目立つのが好きですが、今回あなたにとどめを刺すのは私の役目ではありませんから」

 

 その呟きにめぐみんがそう返す。ゆっくりと倒れながら、まあ、そういうわけですよと隣に立つ彼女に笑みを見せた。

 

「何よ、カッコつけちゃって」

「当然でしょう? 我が名はめぐみん! 爆裂魔法を極めしもの! だからこれくらいはやっておかないと」

「……ありがと。じゃあ、後は」

 

 自身と同じ顔をしたその人形を睨む。ふう、と息を吐くと、キャルはゆっくりと魔法陣を展開し始めた。

 狙いは勿論、自分の偽者。

 

「嘘でしょ……!? 爆裂魔法で魔術師殺しの装甲だけを狙って破壊した? どういう精密性をしていたらこんな芸当が出来るの……!?」

「我が師ちょむすけの教えの賜物ですよ。それより、いいんですか? 追撃が来ますよ」

「え? ――あ」

 

 倒れているめぐみんの横、そこに集まっている魔力を察知しシルビアの目が見開かれた。

 キャルの魔法陣が光り輝く。そこから生み出された無数の光弾が、あっという間にシルビアを蜂の巣にした。魔術師殺しの装甲が失われた今、それを防ぎ切る術はどこにもない。

 

「あたしの溜まりに溜まった怒りの分、何発だって打ち込んでやるわ!」

 

 回避はもう間に合わない。飛んでくる光弾の嵐の前に、同じ顔をした少女の放つそれに、出来ることはただただ蹂躙されることのみ。

 

「《アビス――」

 

 魔法陣が一際大きく輝いた。巨大な魔力の塊が、巨大な光弾となってキャルの前に展開された。杖を大きく振りかぶると、彼女はそれを思い切りぶん殴る。そうして叩き飛ばされた色々の籠もった魔力光弾は、真っ直ぐにシルビアへと着弾し。

 

「――バァァァストォォォォ》!」

 

 キャルの偽物を、綺麗サッパリ欠片も残さず消し飛ばした。

 

 

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