プリすば!   作:負け狐

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巨大な敵との戦歴
三章  :ハンス
よりみち:ベトブヨニセドラゴン
六章  :アイギス
七章  :シルビア
八章  :鮭(New)


その146

「さあ、やっちゃいましょう」

「出来るかぁぁぁぁ!」

 

 キャルの全力ツッコミ。ノリノリのペコリーヌとの対比が凄まじいことになっている。が、いかんせんカズマも同じ気持ちなのでそれについては何も言わない。

 というかあれはどうにかなるものなのだろうか。彼の疑問はもっぱらこれである。

 

「でも、鮭ですよ?」

「意味分かんないんですけどぉ!」

「鮭って美味しいじゃないですか」

「だから何なのよ!」

「美味しいご飯のためなら頑張れる。そう思いません?」

「限度ってもんを知りなさいよあんたは!」

 

 そんなこんなのいつものやり取りをやったところで、巨大な鮭、斗鬼白頭のターンである。ギョロリと魚眼をこちらに向けると、ばしゃりと水面から飛び跳ねた。それに合わせるように、雨雲が周囲に広がっていく。

 

「おっと、向こうもやる気ですね」

「もういやぁ、あたし帰るぅぅ!」

「大丈夫ですよキャルちゃん。わたしが、キャルちゃんを守りますから!」

 

 雨雲から吸い取ったのか、斗鬼白頭が猛烈な勢いの水ブレスを放つ。ペコリーヌはそれを剣で受け止めると、押し返すように振り上げた。その光景を目にした鮭は再び水面へと戻ると、ならばこれだと言わんばかりに嘶いた。

 

「おい鮭が吠えたぞ」

「そうだな」

「……え? 鮭って吠えるもんなの?」

「いえ、わたくしは存じあげませんが……」

「あたしも知らないかな……」

 

 流したダクネスを、カズマ、コッコロ、クリスの三人が見やる。視線を向けられた彼女は、いやまあ私も知らないぞとのたまった。じゃあなんで流したんだよとカズマの追加のツッコミが入る。

 

「い、いや。向こうの攻撃をどう受けるか、あるいはどう避けるかの見極めに集中していたので、つい」

「いやお前は全部受けりゃいいだろ。それで一人で悶えてろ」

「そうしたいのは山々なのだが。あの鮭は荒魔鬼鮭の特殊個体なのだろう? ならば、特徴も同じくしているはずだ」

「だからなんだよ」

「あ、そっか。カズマ君知らないのか」

 

 ぽん、とクリスが手を叩く。何がだよ、というカズマと、申し訳ありませんがわたくしも、と眉尻を下げるコッコロがいて、彼女はなら今のうちに説明しようと指を立てた。

 

「元々荒魔鬼鮭はモンスターじゃないからね。所詮魚類、だから外敵から身を守る術も迎撃じゃなくてあくまで防衛なんだ」

「と、言いますと?」

「うん。あの鮭は水魔法に長けているって話はしたよね。だから、効率よく人間を撃退するために――」

「しぇふぃもいくよー」

「シェフィ、あまり前に出るな」

 

 クリスの言葉を遮るように、笑顔のシェフィが斗鬼白頭に向かって突撃していた。あの巨体を恐れないのは、中身が幼児だからとかそういうわけではなく、単純に自分の正体も巨体を持つドラゴンだからなのだろう。

 そんなわけで、彼女はカズマ達の目の前で雨雲を媒介にした泡の水流に直撃されて。

 

「あ、ふくとんでった」

「装備を吹き飛ばす攻撃をしてくるんだよ」

 

 素っ裸になったシェフィが、そこにいた。

 

 

 

 

 

 

「成程」

 

 中身が幼児でも見た目は同年代の美少女である。以前は予想が出来たので回避したが、今回は思い切り見てしまった。やれやれ、と息を吐きながら、カズマはゆっくりとコッコロから距離を取る。木にもたれかかると、足を組んで何やら考え込む仕草を取った。

 

「主さま? どうされたのですか?」

「ちょっと考えることがあってな。気にしないでくれ」

 

 まあ中身が中身なので半減してたのが幸いだ。無知シチュはカズマの好物とは少し離れているからだ。もし恥じらいがあったらヤバかった。

 

「とりあえず、装備っていうか服を剥ぎ取る攻撃があるわけだな」

「ああ、そうだ。それ以外はいくら食らっても構わんが、それだけは流石に私も抵抗がだな」

「今更何言ってんだよ汚れ令嬢」

「そういう名誉を辱めるのは――それは、それでまああれだが、実際になってしまうのは問題があるのだ……」

「ペコリーヌ! ちょっとダクネス盾にしてやってくんない?」

「え? ララティーナちゃん、いけるんです?」

「しょ、少々お待ち下さい! 心の、準備が……!」

 

 深呼吸を一つ、二つ。そしてよし、と覚悟を決めると、ダクネスはペコリーヌの隣に並んだ。お待たせしました、と彼女に述べた。

 

「……えっと。あまり無理はしちゃだめですよ?」

「いいえ。王国貴族として、貴女様があられもない姿になるくらいならば、私が」

「いえあの、わたしの装備は王家の装備なので、向こうの水魔法でも吹き飛ばないんですよ」

「……え?」

 

 一瞬ダクネスが呆けた隙を狙い、斗鬼白頭は再び装備を剥ぎ取る泡水流を生み出した。初撃を受け止められたことで、確実に脅威を排除するように動きを変えたらしい。

 危ない、とペコリーヌがそれを受け止める。成程確かに彼女の言う通り、ティアラを筆頭とした王家の装備は相手の攻撃でも揺らがないらしい。

 が、しかし。

 

「ユースティアナ様!? 靴が!」

「お、っとと。受けきれませんでしたね」

「剥ぎ取られているではないですか!?」

「そりゃあまあ、服まではカバーしてませんし。でも装備は無事なので」

「それは駄目ではないですかぁ!」

 

 水流で吹っ飛んでいった靴を大慌てで回収する。幸いというべきか、完全破壊するというわけではないらしく、普通の水とは違い生臭い液体でベッチョベチョではあったものの、装備し直すことは可能のようであった。したいかどうかは別として。

 

「さて。クリス、いけるか?」

「いけるわけないよね!? このやり取りで何を理解したの!?」

「当たらなければ大丈夫なんだろ? クリスは身軽さが売りの盗賊職、問題ないじゃないか」

「何かもっともらしいこと言い出した……っ」

 

 ぐぬぬ、と表情を歪めながら、向こうでべっちゃべちゃの服を着直しているシェフィを見る。最悪、食らったら即座に離脱して服を回収すればギリギリ大丈夫な気がしないでもないような。

 

「ゼーンさんはドラゴンだから、カズマ君にさえ見られなければ」

「《千里眼》」

「何やってんの!?」

「いやフォローのためにも視力強化はしとくべきだろ?」

 

 反論しにくい。しにくいが、まず間違いなくこいつは自分がひん剥かれるのを待っている。そんな確信はあるものの、じゃあやめるかといえばそれも出来ないわけで。

 こんちくしょー、とヤケになりながらクリスも斗鬼白頭の戦闘エリアへと突っ込んでいった。カズマはそんな彼女を見ながら、出来るだけ範囲外にいようと弓を構える。

 

「あんたも行きなさいよ」

「いや何でだよ。この状況なら俺は後方支援だろ。というかお前は何でここに?」

 

 そこに声。いつの間にか戦闘範囲外に逃げていたキャルがジト目でカズマを見ていた。カズマはカズマで、そんな彼女を見ながら不満そうに表情を変える。あの巨体を倒すにはそれなりの攻撃力が必要だろうから、キャルも向こうに行くべきだ。そういう主張である。

 

「嫌に決まってんでしょ。あたしはこの辺から魔法でちょくちょく援護する役よ」

「ここからじゃお前の魔法も制限されるだろ? ちゃんと向こうに行くべきだ」

「お互い様でしょ。あんたも罠とか使えないじゃない。もっと前に出なさい」

 

 譲らない。両方ともに、自分はここにいるからお前は向こうに行けと言い張った。

 そうして睨み合っている二人の間に、それならば、と割り込みが入る。当然というべきかなんというか、やり取りを見守っていたコッコロであった。

 

「わたくしがあちらに向かいますので、お二人は後方で支援を」

「コッコロは向こうに行っちゃ駄目だ」

「コロ助は向こう行っちゃ駄目よ」

「キュッ!?」

 

 全力で止められた。他はまあともかく、コッコロだけは駄目だ、と二人は断言した。まあ正確には多分全員アウトなのだが、それでもコッコロだけは駄目なのだ。

 ですが、と眉尻を下げながら向こうの様子を見る彼女を見ていると、カズマもキャルも思わず言葉に詰まってしまう。恐らくここで、いいから三人で見てようと言ったところで彼女は納得しないだろう。

 だから。

 

「俺とキャルが行くから、コッコロは後方支援!」

「ちょっと何どさくさに紛れてあたし巻き込んでんのよ!」

「しょうがねぇだろ。コッコロ、俺達を頼んだぞ」

「え、っと。よろしいのですか?」

 

 キャルを見る。え、と一瞬動きが止まった彼女は、ああもうと頭をガリガリ掻いた。

 

「行くわよ。行けばいいんでしょ行けば! いいコロ助、その代わり、あんたは絶対に前に出ちゃ駄目よ。分かったわね!」

「は、はい……」

 

 半ば圧される形で返事をしたコッコロを見て、よし、と二人は頷く。そしてそのまま揃ってヤケクソ気味に突撃していった。クリスと大体同じような状況なあたり、なんというか物凄くブーメラン味がある。

 

「あ、カズマくん、キャルちゃんも」

「お前達、大丈夫なのか?」

 

 装備を吹き飛ばされるのだけは死守しているタンク組二人が途中参加メンバーを見てそんなことを述べたが、カズマもキャルも大丈夫なわけないだろうと全力で即答した。

 

「え。じゃあ何で来たの? ぶっちゃけカズマ君あたし達がひん剥かれるのをニヤニヤしながら見てると思ったんだけど」

「俺のイメージ悪過ぎない!?」

「何よ、妥当でしょ。あんたあたしを素っ裸にさせようとしたじゃない」

「誤解だ誤解。俺は純粋に戦力としてだな」

「わぷ」

「ユースティアナ様!? 服が」

「え?」

 

 ぐりん、と会話を打ち切って思わず視線を動かした。肩部分が吹っ飛んでノースリーブになっているペコリーヌが見えて、ああそういうことかとカズマはほんの少しだけがっかりと。

 

「……ねえカズマ。もう一回言ってくれない?」

「誤解だ」

「ぶっ殺すぞ!」

 

 

 

 

 

 

「あの~。カズマくん、ちょっと恥ずかしいので、あまり見ないでくださいね」

 

 上半身の露出が大分マシマシになったペコリーヌが、少しだけもじもじしながらそう述べる。カズマはそんな彼女を見て、ああごめんと反射的に返してしまった。

 

「……ね、ねえダクネス。ペコリーヌとカズマ君って、その、そういう関係なの?」

「馬鹿を言うな、そんなはずがないだろう。……ない、はずだ」

 

 直接確かめていないので、と少しだけ自信がなくなる。そもそも確かめなくとも断言出来る状況ではない時点で大分問題なのだが、そこを言っていてはきりがない。

 とにかく今はそこを問題にしている状況ではない、と半ば力押しで話題を打ち切ったダクネスは、視線を改めて斗鬼白頭に戻す。先程から防戦一方で、あまり有効打が与えられていない。食材として確保しなくてはいけない、という縛りがあるので、やたら強力なスキルは必然的に封印されてしまうのだ。おかげでドラゴン兄妹も割と暇を持て余し気味だ。

 

「まあぶっ倒すだけなら火力でゴリ押しすればいいものね」

 

 はぁ、とキャルが溜息を吐く。自身の魔導書付きの杖に魔力を込めながら、そうなると何を使ったもんかと思考を巡らせた。

 ん? と思考が中断される。周囲の地面が淡く光り輝き始めたのだ。それと同時に、ステータスが上昇するのを実感する。

 

「コロ助? あんたは下がってなさいって」

「勿論、出しゃばりはいたしません。あくまで後方支援でございますので」

 

 振り返ると、成程確かに距離を取った状態で支援呪文を唱えている彼女の姿が。お任せいたします、と微笑んでいる彼女を見て、しょうがないわねぇとキャルは肩を竦めた。

 

「見てなさいコロ助」

 

 杖を振る。そこから生み出された雷撃は一直線に斗鬼白頭に向かって伸び、鮭を行動不能にせんと襲いかかる。

 それが着弾する直前、斗鬼白頭が嘶く。それに合わせるように周囲の雨雲が輝き、ベクトルを変更された雷はそのまま雨雲に吸収された。

 

「……え?」

 

 雨雲が雷雲に変わる。ゴロゴロと響いたそれは、お返しとばかりにキャルに向かって雷閃を放った。

 危ない、とダクネスが間に立つ。直撃した雷は、彼女をいい感じに痺れさせた。

 

「あの雲は中々に厄介だな」

「一応ダクネスの心配してあげようよ……」

「案ずるなクリス。これならば服が剥かれる心配もなし、いくらでもやってくれ」

「ちょっと罪悪感覚えたあたしが馬鹿みたいじゃない」

「あはは、やばいですね☆」

 

 既にペコリーヌが流しているのでもういいか、と一行はダクネスを無視って次の手に出る。じゃあこれはどうだ、とカズマが弓を引き絞った。狙撃によって狙い違わず鮭に向かって飛んだ矢は、先程の雷と同じように雨雲に受け止められた。当然、矢に仕込んでいたトラップがその場で発動する、が。

 

「ねえちょっとあれ罠吸い込んでない?」

「うむ。いい感じに膨れているな」

「て、ことは?」

「退避ぃ!」

「やばいですね!」

 

 予想がついたので、即座に距離を取った。破裂するように、雨雲から麻痺の雨が降り注ぐ。ここで麻痺ると間違いなくひん剥かれる。そういう判断をしたのか、ダクネスですら回避を選択した。

 

「遠距離攻撃じゃ駄目だ」

「いやでも、雷とか麻痺とか、いかにも雲が吸い込みそうなのだったのが悪いのかも」

 

 カズマの出した結論にクリスは反論を行う。一応試してみるべきかもしれない、と彼女はあの雲が吸い込みそうにない属性を提案した。

 

「つまり、火ってこと?」

「うん。あ、ドラゴンのブレスでも」

「俺のブレスは加減が利かん」

「しぇふぃ、ひをふくのにがてー」

 

 そういうことらしい。げんなりした顔をしたキャルが、結局また戦闘エリアに行くのか、と肩を落としていた。

 では気を取り直して、と再び一行は戦闘エリアへと駆ける。ぶっちゃけ待っていたかったカズマも、何だかんだ引っ張られて向かっていった。

 斗鬼白頭は魚眼を向ける。しつこいぞ、とっとと失せろ、これ以上痛い目に遭いたくなければ、と。

 だがそんな視線を受けても、目の前の面子は引き下がらない。絶対をお前を倒して、そして食してやるという気合が、言葉を交わさずとも伝わってくるのだ。

 

「さあ、第二ラウンドですよ」

 

 ペコリーヌの言葉を皮切りに、皆が一斉に武器を構え直した。

 

「……このまま被害が無いといいなぁ」

「クリス、それフラグだぞ」

「不吉なこと言わないでくれる!?」

 

 いやあたしもそう思うわ。そうよね、私もそう思うわ。そんな言葉がどこからか聞こえた気がしたが、クリスは聞かなかったことにした。

 

 




一応言っときますけど、このすば原作だと鮭のこれは装備破壊だから、もっと酷いかんな!
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