プリすば!   作:負け狐

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最初に謝っておきます。

思い切り原作改変しました
すいません


その15

 アメス教会を新たな拠点とした新たな生活も始まった。

 

「では、主さま。行ってまいります」

「おう、いってらっしゃい」

 

 ウィズ魔道具店への手伝いへと向かうコッコロを見送り、カズマは朝の光を浴びながら伸びをした。久しぶりにベッドで寝た気がする。そんなことを思いつつ、さてでは今日は何をするかとそのまま腹を掻きながら部屋へと戻った。その途中、同じように朝食を食べに来たキャルとすれ違い、おー、はー、という謎の挨拶を交わして別れる。

 そして、よし、とベッドに寝転がるとそのまま二度寝した。

 教会生活二日目。

 

「じゃあ、行ってきますね」

「おう、いってらっしゃい」

 

 ギルド酒場の仕事に向かうペコリーヌを見送り、カズマは朝の光を浴びながら伸びをした。昨日は結局ほぼほぼ寝て過ごしてしまった。なので、今日はもう少し違うことをしなければ。

 

「あ、カズマカズマ」

「おうカズマですよ。どうしたキャル」

「前の住人が残してた荷物突っ込んでた倉庫漁ってたら、こんなの出てきたのよ」

「ん? カードゲーム、か?」

「そうそう。ちょっと一戦、やってみない?」

 

 ニヤリ、と笑みを浮かべながらキャルはそんな提案をする。あの笑みは、間違いなく彼をボコして悦に至ろうとしている笑みだ。それをカズマも分かっているので、彼女の持ってきたカードを確認しながら、断りの返事を。

 

「……いや。いいぞ、やってやろうじゃないか」

 

 気が変わった。このカードを見る限り、恐らく自分のカードゲーム知識が普通に通用する。基本的なルールをキャルから聞くと、既に用意してあったらしい彼女のデッキ以外のカードを使って自分用のそれをでっち上げた。

 

「よし、じゃあやるか」

「ふふん。吠え面かかせてあげるから」

 

 自信満々にカードをシャッフル。ドヤ顔のままデッキからカードを引く。そして余裕の表情で先攻のキャルがカードをプレイ。

 そんなやりとりで始まったゲームは、勿論。

 

「何でよ!? あんたそれおっかしいんじゃないの!?」

「はぁ? なにいってんのおまえ? これはちゃんとルールに則った勝ち方だろうが」

 

 こんもりと手札を握らされたキャルが吠える。それに対し、カズマは鼻で笑いながらそう返した。デッキが無くなれば敗北、ルールとしては間違っておらず、彼の言うことは間違いではない。

 

「そういう問題じゃない! 何よ「とりあえず二千枚くらいカード引いてもらおうかな」、って。出来るわけないでしょうが!」

「そうだな。そして、出来ないからお前の負け」

「ぐぬぬぬぬ……」

 

 こんちきちぃ、とカードを机に叩きつけたキャルは、もう一回だと指を立てた。今度はカズマの方がドヤ顔で、彼女をボコしてやろうと笑みを浮かべている。何度でも挑戦を受けてやろう、そんな悪役のような宣言をしながら再戦をして。

 

「あぁぁぁぁぁ! もぉぉぉぉぉ!」

「おいおいキャルさんよぉ、そんなちょっとロックされたからって叫ぶんじゃない」

「毎ターンドローも出来ずにエンド宣言しか出来なきゃこうなるわ! 何なの? ふざけてんの?」

「至って大真面目にロックデッキ作りましたが何か?」

「きしゃー!」

 

 飛びかかってきたキャルをバインドで拘束し床に転がしたカズマは、他にも何かないのかと件の倉庫へと向かうため立ち上がる。カードで勝てないからリアルファイトとか、そういうのはゲーマーとして恥ずべき行為だ。ふ、と薄く笑いながら彼はそのまま部屋を出ていった。

 

「え? ちょっと! 縄解いてからいきなさいよ! あたしも、あたしも探すの手伝うから! カズマ、カズマ!」

 

 ジタバタと悶えるキャルはそのまま残された。

 

 

 

 

 

 

 そして三日目。

 

「カズマ」

「ん?」

「あたし思ったの。ひょっとして自分達はダメ人間じゃないかって」

 

 昼近くまで寝ていた二人は、起きたら食べてくださいという書き置きが残されたおにぎりを頬張りながらそんな話をしていた。確かに見送りすら出来ないのは致命的かもしれんな、とカズマは彼女の言葉に一部同意する。

 

「そこは問題じゃない! あ、いや、確かにコロ助やペコリーヌの見送りくらいはやらないとマズいわね」

 

 うーむ、と暫しそんなことを考えていたキャルであったが、それは今どうでもいいと一人でツッコミを入れた。そうした後、はい今日の予定とカズマへ指を突き付ける。

 

「寝る」

「ダメ人間じゃない!?」

「いやそう言われてもな。こうしてきちんとした場所で寝れるって素晴らしいことなんだぞ」

「あんたついこの間教会に住むのはちょっとって言ってたじゃないの……」

 

 はぁ、とキャルは溜息を吐く。手に残っていたおにぎりを口に突っ込むと、とにかくこれ以上ここでダラダラしているのは駄目だと言い放った。次いで、口にもの入れたまま喋るな行儀悪い、と指摘された。

 

「で、一体何をさせる気だ? 俺に労働させたかったらそれなりの覚悟を持てよ」

「そろそろユカリさんが昼間から麦しゅわ摂取するタイミングじゃないかしら」

「よし出掛けるか、たまには外の空気を吸わないとな。決して麦しゅわガンギマリ状態のユカリさんが鬱陶しいと思ったわけじゃないぞ、ほんとだぞ?」

「こいつ……」

 

 そう仕向けたのは自分なのだけれど。そんなことを思いつつ、テキパキと準備をするカズマを見ながら、キャルも自身の身だしなみを整えようと席を立った。

 そうして暫く後、ここ数日のほぼ寝間着でだらけていた状態から普段通りの服装となった二人は、ではどこへ行こうかと教会から出たすぐそこで立ち止まっていた。

 

「ノープランかよ」

「うっさい。でもまあ、適当にぶらぶらするのもあり、かな?」

 

 んー、と顎に手を当てながらキャルがそう呟く。カズマはそんな彼女の提案に、めんどいと一言で切って捨てた。一人でぶらぶらするのならばともかく、誰かとぶらぶらとか色々考えることが出来てしまう。

 

「そもそも、俺とお前でどこかにぶらぶらとか絶対意見合わんだろ」

「……それもそうね」

 

 そうなると。再度考え込んだキャルは、結局ギルドへと向かうことを提案した。もういっそ何か適当な軽いクエストでも受けて時間を潰そう。そういう腹積もりである。

 行ってもいいが俺は見てるだけだからな。そう宣言して彼女と同行したカズマは、そのままギルドの酒場へと足を踏み入れる。テキパキと仕事をしているペコリーヌと、それを何とも言えない表情で見守っているダクネスの姿が視界に入り、思わず表情をうげ、と歪めた。

 

「どうかしたの? ……ああ、あのクルセイダーか。確か、ダクネスとか名乗ってたわね」

「絡まれると厄介だ。帰るか」

「何かしら理由をつけて帰ったところでユカリさんに捕まるだけよ。ほら、諦めて何かクエスト見るわよ」

 

 ぐいぐいと引っ張られ、カズマは無理矢理クエストボードの前に押し出される。面倒くさそうな顔を隠そうともせず、そこに貼ってあるクエストを適当に流し見していた彼は、よし何もないとあっさり見るのをやめた。勿論隣のキャルに睨まれた。

 

「いや本当に何もないぞ。こないだのあれ騒動のせいか、ちょっと依頼の条件厳しくなったんじゃねぇの?」

「……適当なこと言ってるわけじゃないみたいね」

 

 カズマと同じように貼ってあるクエストを眺めて、ふう、と小さく溜息を吐く。どうやら目論見が外れ、一気にやる気が失せたようだ。もう今日は酒場で暇潰そうかな、そんな呟きがカズマの耳に届く。

 そうしろそうしろ、と返しながら、彼はもう一度クエストボードを見た。普通のクエストはほぼ全滅、残っているのは終わりがあるのかないのか分からないような代物ばかり。

 

「なあ、キャル。このデストロイヤーってのは何だ?」

「あんた知らないの? 機動要塞デストロイヤー、巨大な蜘蛛みたいな形をした、滅びた国の暴走したゴーレムよ。そいつが通った後にはアクシズ教徒くらいしか残らないって言われてるわ」

「アクシズ教徒ってのはよく分からんが。そいつの進行方向予測の偵察が貼ってあるのはあれか? こっち来るかもってことか?」

「その手のクエストは多分どの街にも貼ってあるやつでしょ。大して気にすることもないわよ」

 

 ほんとかよ、と訝しげな表情でキャルを見る。こいつがこの手の話をした場合、高確率で裏目に出るような。そんなことを考えつつも、確かに気にしていてもしょうがないと視線を外した。

 と、そこで気が付いた。どうやら同じようにクエストを眺めている冒険者がいたらしい。いつのまに、と思いながらもカズマはそこに立っている人物を見る。

 いかにも魔法使いといった帽子を被り眼帯をつけた紅い瞳の少女と、ゆったりとしたローブを来ても尚分かる豊満な肉体を持った美女。そんな二人組がクエストボードを一通り眺め、ふう、と息を吐いている。

 

「碌なクエストがないわね」

「普段クエストを殆ど受けないので分かりませんが、まあ師匠が言うのでしたらそうなのでしょう」

 

 美女の呟きに、眼帯の少女がそう返す。やっぱり慣れないことをやろうとするのが間違いなのだ、と少女が続け、確かにそうねと美女も頷いていた。

 そうしてクエストボードから視線を外した二人は、思わずガン見していたカズマと目が合った。二人揃って目をパチクリとさせ、次いで何か用なのかと問い掛ける。

 

「お気になさらず」

 

 真顔でそう言い切ったカズマに、二人の動きが一瞬止まる。が、まあこの手の変人はアクセルには腐るほどいる、とすぐに流した。

 

「とりあえず昼食でも食べて、それから考えましょうか、めぐみん」

「そうですね、師匠」

 

 踵を返し、そんなことを言いながら二人は酒場の方へと向かう。そこで気になる単語を耳にしたカズマは、思わずそれを呟いていた。

 めぐみん。それは確か、BB団の団員ゆんゆんが友達なのか自信がないので断言できないけど一応そうだといいなとか抜かしていた人物ではなかったか。

 

「私の名前が何か?」

「ああ、いや。ちょっと知り合いがその名前を出していたから」

 

 くるりと振り返り、めぐみんと呼ばれた少女がカズマを睨む。不機嫌そうであったその顔は、しかしカズマの言葉で何だそういうことでしたかと和らげられた。そうした後、今度は興味深そうに彼を見やる。めぐみんのその様子を見て、美女の方もカズマへと振り返っていた。猫を思わせる黄色い瞳を、彼女と同じように彼に向けている。

 

「あなた、ゆんゆんの友達?」

「いえ。知り合いです」

「そ、そう……」

 

 そこ否定しちゃうんだ、と美女は少しだけ引く。対するめぐみんは、まあゆんゆんですからそんなものでしょうと一人納得していた。

 そんな辺りでキャルがカズマの足を踏む。何やってんのよとジト目で彼を睨み、すいませんでしたと一言述べそこから離れようと。

 

「ちょっと待った。どうせなら、一緒に食事でもどうかしら?」

 

 そんなキャルを引き止めるように、美女は薄く微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

「はい、じゃあ今日のランチですね」

 

 テーブルに四つのランチを置く。そうしながら、珍しい組み合わせですねとペコリーヌが四人を見た。座っているのはカズマとキャル、そして先程の二人だ。

 

「え? 何ペコリーヌ、この二人と知り合いなの?」

「そうですね。ギルドでクエストは受けませんけど、酒場へ食事には来ますから」

 

 そんなに頻度は高くないけれど。彼女の言葉に補足するように美女が苦笑し、改めて自己紹介でもしましょうかと対面の二人を見た。

 では私から、とめぐみんがコホンと咳払いをする。そして、立ち上がると持っていた杖をくるりと回転させた。あ、これ知ってる。カズマは何となくこの先を察した。

 

「我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とする、紅魔族随一の爆裂魔法の使い手なり!」

「やっぱり」

 

 目が赤いし、ゆんゆんの友達? の時点でそんな気はしていた。隣を見ると、まあそうだろうなという顔でキャルがめぐみんの名乗りを聞いている。

 そうなると、と彼はめぐみんの横にいる美女を見た。彼女の目は赤くない。紅魔族ではないのならば、彼女の自己紹介は普通のものになるはず。

 

「我が名はちょむすけ。爆裂魔法の伝承者にして、怠惰と暴虐を司る女神なり……」

「あんたもやんのかよ!」

 

 しかもすげぇ名前だったぞ。そんなことを思いながら、美女、もといちょむすけを見やる。どう考えても名前間違ってるだろ、もう一度そんなツッコミを心中で行い、気持ちを整えた後に極々普通の自己紹介を行った。キャルに至ってはもう短く簡潔に一言述べたのみである。

 

「……で、一体俺達に何の用なんです?」

「どっちかというとそれはこちらのセリフだと思うの……」

 

 お互いの名前も知ったところで。カズマは奢りのランチを遠慮なく食べながらそんなことを言い出した。ちょむすけは呆れたように溜息を吐き、キャルも同意するようにうんうんと頷いている。唯一めぐみんだけは、何かを見定めるようにじっとカズマを見詰めていた。

 どうしたの、とちょむすけは彼女に問い掛ける。それに対し、めぐみんはまあ大したことではないんですがと前置きした。

 

「彼を所長の実験動ぶ――もとい、協力者に推薦するのはどうでしょう」

「おいこら今実験動物って言いかけたな」

「……? ネネカの満足するような何かがあったかしら?」

 

 ちょむすけはまじまじとカズマを見る。どう考えても、彼を連れて行ったところで『真似る価値もない相手』という判定を貰うようにしか思えない。

 彼女がそんな感想を持ったことを覚ったのだろう。めぐみんは口角を上げながら、だからこそですと返した。

 

「こんなに酷い冒険者久々に見ました。これはある意味貴重な存在です」

「おい喧嘩売ってんなら買うぞ眼帯ロリ」

 

 あー、昼ごはん美味しい。そんなやり取りを見ながら、キャルは一人それを視界に入れずに食事を続けていた。

 現実逃避とも言う。

 




爆裂魔法が使える人がこれで四人(含ネネカ)
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