プリすば!   作:負け狐

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今までと毛色が違いすぎるやつ


その159

 桃源郷入り口。中の様子を一通り話し終わり、さてではどうするかと話していた面々は、そこでなにやら不穏な空気を感じ取り視線を中心部の方向へと向けた。

 

「むむむ。これは中々にピンチなオーラ?」

「とはいっても、向こうの連中がやられるとは思えないけどね」

 

 ナナカの言葉にルカが返す。そうですね、とナナカもあっさりとそれに同意した。そしてそんな二人を見ながら、メリッサは別にどうでもいいと鼻を鳴らす。別段お宝もないようなこのダンジョンがどうなろうと彼女には関係ない、というわけだ。

 

「どうせ戻ってくるでしょ」

「メリッサさんが評価をするのは珍しいですわね」

「別にそういうのじゃないわ。厄介そうな連中ってだけよ」

「クスクス。そうですか」

 

 エリコの微笑みに再度鼻を鳴らしたメリッサは、そこで怪訝な表情を浮かべた。この場にいる残り二人、片方は元より無口でぬぼーっと立っている事が多いので気にしていなかったが、もう片方がやけに大人しい。

 

「……ん、あ」

「ん? おいシェフィ、どうしたんだい?」

「しぇ……ふぃ……。わ、私……は」

 

 立ち上がる。頭を押さえながら、ふらふらと足を踏み出し。そしてゼーンに支えられた。焦点の合わない目で自身の兄を見上げたシェフィは、そのまま口をパクパクと動かし何かを伝えようとする。だが、思考が追い付いていないのか別の理由か、そこからはすぐに言葉が出ず。

 失礼、とエリコがシェフィの顔を覗き込んだ。ミツキから預かっていた道具で彼女の瞳を確認し、口を開けさせ口内を覗き込む。それで分かるのかよこの状況、とツッコミを入れてくれる人物が生憎といなかった。ルカ達にはいつもの光景だからだ。

 

「え、りこ、さん……」

「……どうやら、呪いが解けかかっていますわね」

「どういうことだ?」

「そのままの意味です。恐らく向こう側が原因の排除に成功したのでは?」

「ご、め……さい、兄さん。迷惑、ずっと……」

 

 急激に回復してきたことで、少し混乱しているのだろう。幼い物言いと見た目相応の口調が混在し、ちぐはぐな状態になっている。そんなシェフィを、ゼーンはゆっくりと優しく撫でた。気にするな、と笑みを浮かべた。

 

「お前が迷惑をかけるのはいつものことだ。一々気にしてはきりがない」

「台無しだよこのドラゴン!」

「流石は竜、でいいのかねぇ……」

「前半部分だけなら、いい話で終わったかもしれないのだけれども」

 

 三者三様の呆れ具合を見ながら、エリコは一人クスクスと笑った。

 

 

 

 

 

 

 グシャリ、とドールマスターが叩き潰された。それを後ろで見ていたカズマは、そのあっけなさに思わず目を瞬かせる。

 

「おいこいつ滅茶苦茶弱いぞ」

「そうね。魔王軍幹部って言ってた割には、その辺のモンスターと同じくらいの強さしかないみたいだけど」

「弟くんが、それだけ強いんだよ。立派な勇者でお姉ちゃんは誇らしいなぁ」

「あ、やっぱり? 伝説の勇者カズマさん始まっちゃった?」

「……あの」

 

 調子に乗って高笑いを上げるカズマの真下から声。視線を落とすと、バインドで拘束されたままカズマが抱きしめているコッコロ人形の姿があった。絵面がこれ以上ないほどの犯罪である。ちなみに隣のコッコロは目が死んでいる。

 

「おっと、暴れないほうがいいぞ。向こうの手助けをするようなら、俺達だって手荒な真似をしなくちゃいけないからな」

「……通報したほうがいいのかしら」

「弟くんだから大丈夫だよ」

「カズマだからアウトなのよ」

 

 そもそもダンジョン内でどこに通報するというのか。そこを指摘できそうな唯一の人物は、自分の人形が優しく抱きしめられて(コッコロビジョン)いることで頭がイッパイイッパイになっている。

 

「いえ。どうせわたくしたちは使い捨てなので。自分から命を懸けてまで守ろうとは考えておりません」

 

 はぁ、と諦めたような溜息を吐いたコッコロ人形は、とはいえ、と視線をそこに向けていた。カタカタと揺れている、倒れ伏したドールマスターを。

 

「マスターはこの空間の主。ここそのものですので」

「――人間ドモめぇ!」

 

 起き上がると同時に、周囲の空間が揺れた。作り物の街がまるで意思を持った一つの生物のように蠢き、そこにいるものを害そうとし始める。

 

「な、なにこれ!? ヤバいんじゃないの!?」

「許さんぞ、貴様らのような人間が、私の街を、道具の楽園を汚すなどと!」

「何が道具の楽園ですか!」

 

 声が割り込む。過負荷を与えられているペコリーヌ人形の猛攻を凌ぎながらも、ペコリーヌは街と一体化しつつあるドールマスターを睨み付けた。急なその叫びに、カズマたちも思わずそちらを向いてしまう。

 

「大事な部下を、大切な仲間を。こんな自分の都合で使い捨てようとしているあなたが! 一体何を偉そうに!」

「私に説教をする気か? 人間」

「違います。わたしは、怒っているんです!」

 

 そう言い切ったペコリーヌは、視線をペコリーヌ人形に戻すと一歩踏み出した。急なそれに人形は迎撃が一瞬遅れてしまい。

 ぎゅ、と抱きしめられ、思わず目を見開いた。

 

「もうこれ以上、無茶しないでください」

「……わたしは、自分で望んで戦っていますよ」

「勝っても負けても壊れちゃうような勝負をしたいわけじゃないですよね」

「……」

 

 ペコリーヌ人形が項垂れた。青白いオーラが勢いを減らしていき、それと同時に関節部の悲鳴も少なくなっていく。そんな彼女を見ながら、ペコリーヌは微笑んだ。大丈夫です、と彼女に告げた。

 

「わたしは、いつでも勝負を受けますから。剣でも、恋でも」

「恋は、わたしが勝ってます」

「それは、これからです。これからです……」

「……ふふ」

 

 抱きしめられ、ほんの少しだけ口角を上げるペコリーヌ人形。そんな光景を眺めていたカズマは、よかったよかったと満足そうに頷いた。これでこっちは一件落着だななどと呑気なことを言いつつ、自分の彼女が二人抱き合っているどこか倒錯的な光景を視界にしっかりと収め。

 

「……あの、申し訳ありませんが、本物の主さま」

「ん? どうしたコッコロ人形」

「わたくしのお尻に、その……当たっております」

「え?」

 

 コッコロ人形の言葉を聞いて、そこでカズマはようやく気付いた。何がきっかけだったのか、向こうのドールマスターが一度倒されたからなのか。どうやらカズマのカズマさんは無事に大人へと戻れたらしい。

 そしてその反動で、思い切り飛び起きてしまったのだろう。

 

「…………」

「待てキャル! 無言で杖を振りかぶるな! これはあれだあれ! 朝起きた時になるやつ!」

「あんたついに、コロ助の前でおっ立てたわね……」

「だから違うって、いや違わないけど! ていうか言うなよ、誤魔化せなくなるだろ!」

「お姉ちゃんは気にしないから、どんどん大きくしても大丈夫だよ」

「俺は全然大丈夫じゃないよ!?」

「あの、主さま……戻られたのならば好ましいのでは? 馬小屋時代にわたくしは何度か確認しておりますし、ご心配なさらずとも……」

「いやぁぁぁぁ!」

 

 ヨロヨロとカズマは後ろに下がる。コッコロ人形を抱えたままなのでどう考えてもエロ本の導入部なのだが、もはやこの世の終わりのような表情をしている彼ではそこに思い至る余裕がない。ちなみに突如降って湧いた衝撃の真実によって無事カズマさんは平常となった。

 

「さあ、行きますよ。ドールマスター」

「お前あれを背景にしながらよくやれるな……」

「いつものことですから」

 

 それはそれとして。満身創痍のペコリーヌ人形を庇うように、ペコリーヌは剣を構えドールマスターと対峙した。ドン引きのドールマスターにさらりとそう返したので、向こうの顔が嫌そうに歪む。人間嫌だなぁ、とこれまでとは別ベクトルの評価を下していた。

 地面から巨大な腕が生えた。眼の前の相手を叩き潰そうとその拳を振り下ろしたが、ペコリーヌは避けることもせずに真正面から受け止める。ほんの僅か地面に足がめり込んだが、それだけで済ませた。

 

「なん、だと……!?」

「はぁぁぁぁ!」

 

 驚愕するドールマスターをよそに、ペコリーヌはその腕をかち上げる。破片が飛び散り、そのまま巨大な腕はゆっくりと後ろに倒れていった。

 ならば、と爪のように鋭い何かが生えてくる。彼女を串刺しにせんと一斉に襲い掛かっていったが、ペコリーヌは慌てることなく剣を構え直した。

 

「《プリンセスストライク》!」

 

 迫る爪を全て叩き切る。いともたやすくへし折られたそれに、ドールマスターは再度目を見開いた。嘘ぉ、と間抜けな声を上げた。

 ちなみに一旦落ち着いたカズマ達であるが。

 

「もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな」

「そうね。あたしたちは応援してましょうか」

「主さま!? キャルさま!?」

 

 そんな声が聞こえたので思わず振り向いたコッコロは、しかし言葉とは裏腹にちゃんと準備をしている二人を見て目をパチクリとさせた。バインドが解かれたコッコロ人形は、そんな二人のやり取りを無表情で眺めている。

 

「あの、本物のわたくし」

「どうされました?」

「この方々は、頭がおかしいのですか?」

「……ふふっ。いいえ、このような軽口は、信頼の現れです」

「でも、頭はちゃんとおかしいと思うよ」

「よりにもよってあんたが言うな!」

 

 恐らくこの空間で一番頭のおかしさがぶっちぎっているアクシズ教会アクセル支部長にツッコミを入れながら、キャルは行くわよと前に出る。へいへい、とカズマもそれを追うように足を踏み出した。

 

「にん、げん、どもめぇェェェェ!」

「ああもう、うるっさいわよ。コロ助、カズマ、シズル!」

「お任せを」

「お姉ちゃんに任せて」

 

 アメス教徒の支援とアクシズ教徒の支援が二重に掛かる。それによって上昇したステータスを更に跳ね上げるように、カズマはショートソードを構え二人へと線を繋いだ。

 街の建物で押しつぶそうとしてくる眼の前の敵に、キャルは真っ直ぐに杖を構える。そしてその横では、同じように剣を構えるペコリーヌの姿が。

 

「さ、見てなさい! 《アビス――」

「はりきっちゃいますよ。《プリンセス――」

 

 呪文を唱える。剣を振り下ろす。その二つによって、道具の理想の世界だとかドールマスターが抜かしていた場所が、自分自身で滅茶苦茶にした街が。

 

「――バースト》ぉ!」

「――ヴァリアント》!」

 

 所詮は偽物だったのだ。そう言わんばかりに、吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

「派手にやったねぇ、お前さんたち」

「あはは。ちょっとやばかったですね」

 

 桃源郷の中心部を吹き飛ばした一行は、ダンジョンの崩壊に巻き込まれる前にその場を離れた。この場所はドールマスターそのものだ、とコッコロ人形は言っていた。ならば主を失えば消え去るのみ。

 

「……カズマくん」

「なんだ」

「重くなかったですか?」

「重かったよ」

「そうですか……」

 

 入り口で座り込んでいるペコリーヌ人形は、そこで言葉を止めた。彼女の四肢はヒビだらけで、これ以上酷使しては間違いなく壊れてしまう。そういうわけでカズマが背負ってここまで来たのだ。口ではああ言ったものの、人形とはいえおっぱいの感触をずっと堪能していたので彼としてはプラマイゼロだ。

 

「それで? そいつらがここのお宝ってことかしら?」

 

 碌に動けないペコリーヌ人形と、所在なさげに立っているコッコロ人形を見る。誰かを模したのではないオリジナルの人形なら使い道もあったのだけど、とメリッサはつまらなさそうに視線を外した。

 

「まあ、俺としては自分の呪いが解ければそれでよかったからな」

「はいはい。んで? そこのはどうなの?」

「え? あ……」

 

 コッコロ人形よりも更に所在なさげにしている少女をキャルは見た。オロオロと視線を彷徨わせ、彼女を見て、何かを思い出したのか顔を真っ赤にして俯く姿は、とてもではないが笑顔でタックルをかましてきたガキんちょには見えない。

 

「あの、その……迷惑かけて、ごめんなさい」

「いいえ。わたくしは、迷惑だなどとは微塵も思っておりません。ですから、そのような顔をなさらないでくださいませ」

「……うん。ありがとう、ママ」

「え?」

「え? ――あ、いや違うの!? これまでずっとそうやって呼んでたからつい、じゃなくて! えっと、その」

「ふふっ。どうぞ、シェフィさま」

「……ままぁ」

「駄目じゃん」

 

 コッコロに甘えるシェフィを見ながら、キャルは短く簡潔にそう結論付けた。いや呪いは解けたかもしれないが、手遅れなのには変わりない。そういうわけだ。いいのあれ、と視線をゼーンに向けても、別段表情を変えていないので、多分アレでいいのだろう。

 

「よし、じゃあ帰――」

「ニガス、モノカァァァァ!」

 

 入り口が、否、残っていた桃源郷が盛大に揺れた。崩壊する街が蠢き、巨大な何かへと作り変わっていく。もはやここまで来ると道具のためでも何でもない。否、恐らく魔王軍幹部という存在へと変貌した時から既にそうだったのかもしれない。道具の必要とされる世界を作ることよりも、人間を憎み復讐することを優先してしまったのだ。

 

「シェフィ」

「任せて。さあみんな、私に!」

 

 ホワイトドラゴンの姿へと変わったシェフィが、同じくドラゴンになったゼーンとともに皆を乗せて舞い上がる。桃源郷を組み替えてできた巨大な蛇のようなそれは、カズマたちを決して逃さんと襲い掛かってくる。

 

「このまま逃げたら、あいつ絶対追ってくるぞ!」

「そうね。てことは」

「ここで倒すしかないですね」

 

 シェフィとゼーンに頼み、高度を下げてもらう。降りて戦う、という提案はシェフィが頑なに却下したのでこうなったのだ。

 とはいえ。巨大な街全体を作り変えたドールマスターは、生半可な攻撃で倒せない。それこそ、爆裂魔法のように超威力の呪文なりスキルなりが必要となるのだ。

 が、しかし。一番それが可能そうなペコリーヌは、先程までの戦闘で消耗しており足りない。キャルも同様で、二人揃っての攻撃だけでは破壊しきれないだろう。

 

「ワタシはああいうのと戦うようには出来てないわよ」

「アタシも流石にあれ相手だと厳しいかね」

 

 しれっとそう述べるメリッサと、ううむと悩むルカ。そんな二人を見て、そういうことならば仕方ないとナナカが立ち上がった。

 

「ではでは。やっちゃうぜ☆ 私の必殺技パートツー」

 

 巨大な蛇人形の周囲に魔法陣が浮かび上がる。それら全てが猛烈に光り輝くと、魔力が激流のように放たれた。四方八方縦横無尽、光の奔流に飲まれた桃源郷は、その輝きの中に消えていく。

 

「《ナナカ・∞・グリッド》!」

 

 そうして起こる大爆発。ふっふっふ、と決めポーズまでしていたナナカは、しかしあれ、と振り返った。煙を吹いているものの、桃源郷だったものは未だ健在。

 

「おおっとぉ? これはどうしたことだ?」

「ふむ。形からして、あれは恐らく《魔術師殺し》の特性を携えているのでしょう。あの時の人形も、つまりはそういうことでしたか」

 

 エリコの説明に、ナナカはあちゃーと額を叩く。所詮模造品だろうから、完全防御ではないものの、魔法攻撃は大分軽減されてしまう。

 ということは。魔法でない攻撃スキルで、それも巨大な相手を薙ぎ倒す一撃を繰り出さなくてはいけない。

 

「いえ。お待ち下さい」

「どうした、コッコロ人形」

「……あれはもはやマスターではありません。道具の怨念でもない、ただの残留思念。ですから」

 

 槍を構える。桃源郷の動きが鈍くなり、そのままゆっくりと地面に落下していった。そして、それと同時に、コッコロ人形の体にヒビが生える。

 

「お、おい!」

「……わたくしが、新たなドールマスターとなります。向こうの制御を乗っ取り、防御を解きますので」

「ちょ、ちょっと偽コロ助! それ、あんたが大丈夫じゃないでしょ!?」

「……いいえ。わたくしは、大丈夫でございます」

 

 真っ直ぐにそう言い切った。間違いなく大丈夫じゃない。そう感じさせる一言であったが、しかし。

 コッコロがこくりと頷く。ペコリーヌが前に出て、剣を構えた。コッコロの支援を貰い、ゆっくりとティアラに手を添えて。

 

「――変身」

 

 無駄にはしない。そう言わんばかりに、彼女はそのまま桃源郷へと突っ込んでいく。剣を振り被り、それを打ち倒さんと。

 

「カズマくん」

 

 そんなペコリーヌを見ていたペコリーヌ人形がゆっくりと立ち上がった。ギシギシと音を立てながら、カズマの名を呼び、お願いがありますと言葉を続ける。

 

「さっき本物に使っていたスキル、わたしにも使ってくれませんか?」

「は? いやだってお前」

「お願いします」

 

 真っ直ぐに、彼の目を見て。それだけを告げたペコリーヌ人形を見たカズマは、ものすごく複雑な表情を浮かべた。分かっている。これをやったらどうなるかなど、すぐに分かる。

 

「大丈夫です。わたし、まだ本物との勝負が終わっていませんから」

「……いいか。絶対戻ってこいよ、絶対だからな!」

「勿論ですよ。だって――」

 

 スキルを使い自身を強化してくれた彼に一歩近付く。クスリと、ペコリーヌとは少し違う笑みを浮かべた彼女は、彼へそっと囁いた。

 

「呪いが解けたから、続き、してくれるんですよね?」

 

 へ、と間抜けな声をあげるカズマに背を向けると、ペコリーヌ人形は空を駆けた。変身しているペコリーヌに並ぶように突き進むと、彼女に合わせるように己の剣を振りかぶる。

 

「どうしてあなたまで!?」

「わたしが、やりたかったんです。さあ、行きますよ」

 

 文句は腐るほど言いたい。だが、今はその場面ではない。ペコリーヌはぐっと堪え、彼女と共に剣に力を込めた。人形の怨念を消し去らんと、本当に、道具のための街に戻さんと。

 

「超! 全力全開! 《プリンセス――」

「ここで決めます……! 《オーバーロード――」

 

 二人のペコリーヌが剣を振るう。偽物などそこにはどこにもおらず。

 

『――ストライク》!』

 

 桃源郷だったそれが崩れ落ちていく。本質を失った主が立てた理想郷は、そのまま残骸へと変わるのだ。

 そしてそれは勿論、そこで作られた人形も例外ではない。

 

「どうですか? わたしも、やれるんですよ――」

「何で、どうして! 何で笑ってるんですか!?」

「当たり前じゃないですか。……これでわたしは、両方、あなたに、勝ったんです」

「だからって、そんな……勝ち逃げなんかしちゃ、駄目ですよ!」

「ふふっ。――やばい――ですね☆」

 

 泣きじゃくるペコリーヌの腕の中で、もう一人のペコリーヌは、ゆっくりと砕け散っていく。

 これまで見せなかった、満面の、笑みで。

 

 




一応ちゃんとオチつけるよ!
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