プリすば!   作:負け狐

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これダストの方が真っ当な主人公してない?


その181

「で?」

 

 縛られ転がされている連中を見下ろす。やる気のない表情のまま、ダストはロリコン団の親分に問い掛けた。お前らはなんでここに来たんだ、と。

 

「何度も言わせるな。俺たちは、ここにいる可憐なロリを守りに来たんだ!」

「頭おかしいのか?」

 

 さっきから質問の答えはこれである。男達はこんな場所にロリっ娘を探しに来たのだと言い張っているのだ。いくら危険が少ないとはいえ、小さな少女がふらふらとやって来られるような場所ではない。男達もその辺りを見越してなのか、最終目標はその少女の保護だと抜かしていた。

 

「あ、じゃあひょっとして私たちを攻撃してきたのは」

「噂の正体はお前たちなんじゃないか、とは思った」

 

 こんな場所にやって来るロリ顔少女二人と、ロリっ娘三人。そして適齢期を過ぎた女と少女たちを率いた男。それを見て勘違いしない理由はない、そう彼は言ってのけた。というより、未だに疑っている。

 

「なんだか知らねぇが、噂と俺たちは関係ないな」

「そうそう。変な疑いは止めて欲しいわね」

「はっ。可憐な幼女を引き連れてる怪しい男と、水も弾かない熟れた女の言う事なんぞ信用できるか!」

「誰が水も弾かないよ! まだ二十歳も過ぎてないピッチピチの美少女ですぅ!」

「アウトじゃねぇか。せめて十代前半だろ」

「お前その基準だとここに該当者いないからな」

「あ、わたくしは一応生まれたばかりですので、該当するかと」

 

 リーンは普通にアウトであるし、モニカはリーンより年上だ。シェフィとフェイトフォーは、そもそも人型になれるドラゴンという時点で数百年は軽く越えている。そんな彼女らと正反対の状態であるぬいコロが付け加えていたが、まあだとしても向こうの主張に合っているとはいえないだろう。

 まあいい、とダストは頭を掻く。こちらが向こうのターゲットではない以上、言葉を信じるのならば森の何処かに年端もいかない少女がいることになるのだが。勿論そんなことは普通ありえないので、彼としてはただの頭のおかしい変態集団で片付けるつもりである。

 

「さっさと突き出して金に変えようぜ」

「ん~。ブライドル王国ならこの程度じゃ懸賞金出ないと思うけれど、ベルゼルグ王国だと違うの?」

「多分こっちでも同じじゃないかな」

 

 ダストの言葉を聞いて、リオノールとリーンがそんなことを言っている。やっぱりそうかと二人の会話を耳にした彼は、じゃあ放置でいいかと興味を無くしたように男達から視線を外した。しょっぴくだけしょっぴけとモニカに窘められていたが。

 

「待て! お前ら、このまま俺たちを突き出したりしたら、森にやってきた可憐なロリっ娘が危ないだろうが!」

「いねぇよそんな存在」

「そんなはずはない。俺たちは確かな情報で行動している。いるんだ、この場所に! 可憐で、華奢で、ふわとろのロリっ娘が!」

 

 本気の顔である。こいつマジか、と言いたくとも、完全なるマジ顔なので聞くまでもないという中々の地獄である。男達はこの湖近くの森に、ロリっ娘がいると信じて疑わない。

 ああそうか、とダストはもう考えないことにした。どちらにせよ金にならない以上、彼の中ではこいつらの始末の優先順位は低い。クエストの目的である安楽少女の果実を採取してからでいいだろう程度だ。

 

「行こうぜ。こいつらのことは後でいいだろ」

 

 そう言うとダストは森を進む。安楽少女の正確な場所は分からないが、あの男達の行動範囲にはいないだろう。そうあたりをつけて、一行は男達とは逆側へと足を進ませ。

 暫くして、少しだけ開けた場所に出た。位置としては湖の近くで、シェフィが暴れまわっていた付近。あの時の鬼ごっこで出来たスペースだ。

 そこに、新しく生えたような木がポツンと一本。そして、その下には少女が一人。ダストたちがやってくるのを見ると、ビクリと怯えたように震えた。

 

「……こいつが安楽少女だな」

「え、っと……お兄さんたちは?」

 

 おずおずと安楽少女が口を開く。見た目と纏う雰囲気は、一見すると可憐で華奢でふわとろな感じが見受けられた。何も知らない人間ならば、否、安楽少女のことを知っている人間でも、その見た目と仕草に絆されてしまうのかもしれない。

 

「こんにちは。あなたが安楽少女ね」

「安楽ちょうじょ。だちゅと、これがたーげっと?」

「……え? ひぃ! ドラゴン!?」

 

 が、いかんせんこの場にいるメンバーの大体半分が人外である。ついでにいうと人間側も安楽王女と知り合っているので今更表面上の仕草には騙されない。今までの獲物とは明らかに違う連中に、安楽少女は今度こそガチで怯えた。表情も雰囲気もマジもんである。

 

「ちょっとダスト、女の子を怯えさせるんじゃないの」

「いやどう見ても怯えた原因そこのドラゴン共だろ。まあいいや、この方が交渉はやりやすいしな」

「んー、まあ、確かにそうかもね」

 

 騙されない、とはいえ、やはり見た目が見た目である。リーンは危害を加える気がないと安楽少女に伝え、今回ここに来た目的を彼女に伝えた。任せろと前に出ようとしたリオノールはモニカに止められた。絶対余計なことをする、という信頼の賜物である。

 なあ、とダストは安楽少女に声をかける。ビクリと震えた彼女は、何でしょうかと彼に問い掛けた。

 

「お前の作り出す実が欲しいんだが、何個かもらえるか?」

「へ? あ、はい……どうぞ」

 

 質問に一瞬キョトンとした安楽少女は、しかし意味を理解すると自身が寄りかかっていた木に生っている果実を二・三個もぎ取り手渡してきた。受け取ったダストは、よし依頼達成とその実を袋に放り込む。

 

「え?」

「あ?」

 

 そんな彼の行動を見て目を見開いたのは安楽少女だ。食べないんですか、とダストに尋ねるその姿は、もう少しで捕まえられそうな獲物を逃さんとする捕食者のようで。

 

「フォーちゃん。あの娘食べてもいいわよ」

「あんまりおいちくなちゃちょう」

「姫様!」

 

 ぽん、とリオノールがフェイトフォーの肩を叩く。こらこらと引き止めるモニカであったが、しかしその表情は安楽少女を思ってのことではないのが傍から見ても分かる。視線をリオノールから安楽少女に動かすと、彼女は問い詰めるように言葉を紡いだ。

 

「ここで食べないと何か問題があるのか?」

「ええ、っと。その実は日持ちしないから、すぐに食べないと美味しくないの、だから」

「そうか。どの程度持つのだ?」

「え? そ、その……は、半日くらい、かな?」

 

 しどろもどろの安楽少女の言葉を聞いたモニカは、しばし考え込むような仕草を取る。視線をリオノールへと動かすと、彼女は分かったとばかりに頷いた。

 

「困ったわねぇ。それじゃあ私たちの依頼が達成できないのよ。そうなると……アクセルまでついてきてもらうしかないかしら」

「え? リールさん、それはマズいんじゃ。この娘連れて行ったら、多分そのまま実験材料になっちゃうよ」

「ひぃ!?」

 

 リオノールの言葉に、リーンがそう返す。わざとらしい演技というわけでもなく素の言葉だというのは、普段から人を騙す演技をしている安楽少女にはよく分かった。本気で自身を実験材料にする存在がいる、あるいはそんなことをしそうだと周囲の人間が納得してしまう輩がアクセルという街にはいることになる。

 そうよねぇ、とリオノールがわざとらしく述べた。リーンのその返事を引き出したことをどこか満足そうに頷くと、彼女は視線を安楽少女に向ける。

 

「そういうわけなんだけど。もう少し日持ちする果実って、ないかしら?」

 

 もし、横の純情そうな少女と同じ顔で中身の性根がひん曲がってそうな彼女の脅しを真に受けなかったとしても、どのみち目の前には人化している上位と最上位のドラゴンが二体いるわけで。

 

「は、はひ……すぐに、用意させて、いただきます……」

 

 安楽少女が抵抗出来ることなど、ないのだ。

 

 

 

 

 

 

「貴様らぁ! 可憐で華奢でふわとろなロリっ娘になんて仕打ちを!」

「うお、こいつらどうやって」

 

 もらうもん貰ったし帰るか。そんなことを思った矢先、彼らの背後から叫び声が聞こえた。振り向くと、先程ふんじばったはずのロリコン団が全員こちらを睨んでいる。変態が不死身なのはどのレベルでも共通なのかもしれない。

 

「許さん……許さんぞ!」

「うるせぇよ。ロリコンの集団に許してもらおうとも思ってないしな」

「開き直りやがってこの悪党が……! そこなお嬢ちゃん、今俺たちが助けてさしあげますからね!」

「え? ……え?」

 

 突如現れた変態共に、安楽少女も動揺が隠せない。というか状況が飲み込めない。そもそも現状として、自身に起こったのは脅されて日持ちするようにした果実を渡しただけで、これからどうなるかは未知数なのだ。従順にしていればなんとか命は助かるかもしれない、という状況なのだ。

 

「あらら。……抵抗されちゃったなら、仕方ないかしらね」

「ひぃ! ま、待って! 待ってください! 私は何もしていませんから、だから、どうか、どうか命だけは!」

「おいこらそこの年増! 純情可憐なロリっ娘を泣かせるんじゃねぇ!」

「誰が年増よ! 大体、そんな口利いていいと思ってるの? この娘が生きるか死ぬかは私の手にかかっているのよ?」

「くっ……卑怯者め!」

「おーっほっほっほ! いくらでも敗北者が吠えるがいいわ!」

「……ねえダスト。どっちが悪人なんだっけ?」

「心配するな。向こうが悪人で、あれは俺たちの仲間じゃない」

「リーン殿。あれはこちらとしてカウントしなくて大丈夫だ」

 

 呆れたようなモニカを見て、シェフィ達魔物組も何となく察する。察するが、それでリオノールの暴挙を咎めるかと言えばそうでもないわけで。所詮向こうは変態共の集まりであるし、脅されている相手も知り合いでもない魔物だ。人の世界で生活しているとはいえ、その辺りの感性はやはり魔物寄りなのだ。

 もっとも、アクセルの変人達の中でもこの状況を咎めるのは数人であろうが。

 

「……っ? みなさま! 何かがこちらに来ております!」

 

 そんな中、ぬいコロがピクリと反応した。不意打ち気味にロリコン団が現れたことを反省し、周囲をそれとなく探っていたのだ。その結果、大きな何かが複数迫ってきているのを探知した。

 

「ぬいコロ、そんなこと出来たの?」

「今のわたくしは、本物のわたくしと主さまが混ざり合って出来ていますので」

「ぬいころ、ちゅごい」

「それはいいが、何か来るって一体何がうおぁ!」

 

 バサバサと羽音が響き、巨大なコウモリが飛来してくる。メガバットと呼ばれるモンスターで、討伐依頼が出されることもある中々の魔物。それが複数、こちらを睨んでいた。

 

「おいおいおい。ここにいるモンスターじゃねぇだろ」

「こんなのいたら討伐依頼が出てるはずだし」

 

 舌打ちし、ダストが武器を構える。その横で、リーンも同じように杖を構えた。何だかんだで変人達に揉まれて成長しているし、いつぞやのグリフォンとマンティコア二体に比べればこの程度は問題ない。そんなことを思っていた彼らだったが、しかしメガバットの視線が自分達に向いていないことに気付いて怪訝な表情を浮かべた。

 

「ん? こいつら、俺たちには目もくれねぇな」

「うん、どっちかっていうと見てるのは」

 

 視線の先は、リオノール。辿ったことで二人も彼女を見ることになり、見られた本人は目をパチクリとさせている。ロリコン団は悪は滅びる運命だからな、と笑っていた。

 

「いやいやいや! いくら私でも知らないモンスターに恨まれるようなことはしてないわよ!」

「知らないうちに恨み買ってそうなんだよなぁ」

「姫様だからな」

「ラインもモニカも酷くない!? って、あれ?」

 

 んん? とメガバットが敵意を向けている先をしっかりと見る。その視線はこちらだが、敵意そのものは自分ではなく、自分の抱えている。

 

「ねえ、安楽少女」

「な、なんですか?」

「あのメガバットに心当たりは?」

「丁度いい獲物がいなかったので、この間ちょっと罠にはめて食べました」

 

 てへ。と可愛く舌を出してウィンクしたので、リオノールはそのまま迷わず安楽少女を放り投げる。勿論投げた先はメガバットの集団だ。え、と目を見開いている安楽少女は、そのままコウモリの爪と牙で八つ裂きに。

 

「い、いや、待って。やだ、いや、死にたくない! 死にたくない! 助けて、誰か! 助けて! 助けてよ! 死にたくないぃぃ!」

 

 元来戦闘能力は碌に無い安楽少女だ。メガバットの集団へと投げられれば、後は為す術もなく蹂躙されるだけ。悲痛な叫びも命乞いも、魔物相手には何も通用しない。

 

『勿論だ!』

「――え?」

 

 だから、彼女を助けるのは人だ。メガバットの攻撃を受けながらも、ロリコン団は己の持てる力を振り絞ってメガバットの集団から安楽少女を助け出した。少女を抱きしめ、その身で攻撃を防ぐ盾となったのだ。

 

「な、何で……?」

「泣いているロリっ娘を笑顔にさせるのが、俺たちの使命だからさ」

 

 傷だらけになりながら、団員達は笑みを浮かべる。安楽少女を用意した椅子に座らせると、決して通さんとばかりにメガバットへと立ち塞がった。ダメージは決して軽くなく、立っているのもやっとな者もいる。それでも、愛らしいロリっ娘のためならば、彼らは命を懸けるのだ。

 

「このまま共倒れしてくれねぇかなあれ」

「無理っぽいわね。それに」

 

 うげ、と顔を顰めながらその光景を見ているダストに、リオノールは苦笑しながら向こうを指差す。その方向を見た彼は、浮かべていた表情をさらに苦いものに変えた。

 

「たとえ魔物でも構わず助けるその心……これが、人の暖かさなのね」

「ちょうなの?」

「いえ、多分……違うかと」

 

 うんうんと何か分かったような素振りを見せているシェフィが、メガバットの方へと駆け出した。そういうことならばと同じように走り出すフェイトフォーを追って、ぬいコロもしょうがないと後を追う。

 

「メガバットの餌にするより、あの連中に愛でてもらう方が安楽少女は嫌がりそうね」

「あいつらが餌にされて終わりじゃないのか?」

「大丈夫でしょ。だってその時はあの娘もドラゴンの餌か実験材料だもの」

 

 キシシ、と笑うリオノールを見て、ダストは呆れたように溜息を吐く。フェイトフォーに食わせたら腹壊しそうだから却下だ。そう言って彼女のほっぺたを摘んで伸ばすと、彼はガリガリと頭を掻き手に持っていた槍をくるりと一回転させた。

 そうして頭に浮かんだ言葉を口にして、それが親友だとこちらが宣言している少年のものと同じなのに気付き、笑う。

 

「ったく。しょうがねーなー」

「ふふ、ダストもカズマに似てきちゃった?」

「うるせぇよ。行くぞリーン、モニカ。ついでにリオノール」

「おっけー」

「ああ、任せろ」

「何で私ついでなのよー! って、うぇ!? ちょ、ちょっとライン! もう一回!」

「とっとと働けバカ姫」

「酷くない!? でもそれくらい遠慮ないのもそれはそれでありだからまあいいわ」

 

 いいのかよ。というダストのツッコミはさらりと流れていったとかなんとか。

 

 

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