プリすば!   作:負け狐

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原作では酷いことになったキャラが救われる話

……嘘は言ってないデスヨ?


その191

 アゾールド、と名乗った豚の獣人の紳士に連れられて、カズマ達は商会らしき建物へと足を踏み入れた。店内ではゴーレムが店を切り盛りしており、それを指揮している一人の少女が、彼を見付けておかえりなさいと声を掛けていた。

 

「ああ、ただいま。それで、部屋の用意は?」

 

 出来てるよ、と少女は返す。それに頷いたアゾールドは、ではこちらへとそこまで案内した。カズマ達をソファーに腰掛けるように促すと、彼は一行を見渡し、そしてペコリーヌに頭を垂れる。

 

「では、改めて。ワタクシは貿易商を行っているアゾールド、と申します。お目にかかれて光栄です、ベルゼルグ王国第一王女殿下ユースティアナ様」

「あ~……やっぱりバレちゃってますよね」

「ははは。ワタクシはその手の情報には敏いのです。少し前に妹君が、第二王女のアイリス様がこちらにやってきたのも、知っておりますぞ」

 

 そう言って彼は恰幅のいい腹を揺らして笑う。そうしながら、視線をペコリーヌから他の面々に向けた。第一王女と第二王女が同時にエルロードにやってくるということは。何かしら事件が起こる前触れに他ならないだろう、と言葉を続けた。

 

「それは違うわアゾールドさん。私たちは」

「はいストーップ! いきなり何バラそうとしてんだよこのドラゴン娘!」

「むがっ!?」

 

 そんなアゾールドの視線を受け、迷うことなく今回の目的をぶっちゃけようとしたシェフィをカズマが慌てて抑える。キャルはそんな彼女を見て、ほらやっぱりゼーンの方がよかったじゃないとジト目を向けていた。

 そうして残った二人であるが。ペコリーヌは少し考える素振りを見せ、コッコロちゃん、と隣の少女に声を掛けた。

 

「どう思います? 話しても、問題なさそうですかね?」

「現状では何とも言えませんが……わたくしとしては、ある程度信用のおけるお方ではないかと思います」

「そうですね。まあ、そもそも言わなくても知っちゃってそうですけど」

 

 あはは、と苦笑したペコリーヌは、シェフィの口を塞いでいたカズマに声を掛けた。いいと思いますよ、と彼に述べた。

 

「お前正気か!? 初対面の怪しい商売やってるオッサンにそんな大事な話を」

「ふむ。怪しい商売、は少々心外ですな。少なくとも違法な商売を行ってはいませんぞ」

「店の中ゴーレムばっかりだったじゃねぇかよ。後は女の子一人だけだし、どう考えても違法だろ」

「ゴーレムは自前で用意した人手代わり、店内の愛らしい少女はワタクシの娘です。何もやましいことなど」

「……まあ、アクセルのあれよか普通よね」

 

 リッチーと悪魔が店員をやっている魔道具店とか、狂人がひしめき合っている研究所とか。あれらに比べればゴーレムを人手として使い、管理を娘に任せるのは至極真っ当だ。

 このおっさんの娘が割と美少女だった、という一点でカズマは微妙に信用していないが、しかしキャルの言うことももっともである。ううむ、と唸りつつ、その部分は引き下がるかと彼は締めた。信用したわけではない。

 

「貿易商、という職業柄、人手は常に必要です。最近はここエルロードを拠点としているのですが、ここはあまり人員が集まらないもので。そうそう、シェフィ嬢と出会ったのも、そんな時でしたな」

 

 兄上は息災ですか、とアゾールドはシェフィに尋ねる。ええ勿論、と頷いた彼女は、そのまま視線をカズマとキャルに向ける。この人は信用できると目で訴える、というか直接口に出したので、二人としても諦めたように溜息を吐くしかなかった。

 

「まあそもそも。わざわざシェフィの身元引受人になったくらいだし、場所も整えてたし、状況なんかとっくに知ってるんじゃないのか?」

「ふむ」

 

 カズマの言葉に、アゾールドは少しだけ考え込む仕草を取る。残念ながら、詳細は何も。そう言って彼は笑い肩を竦めた。そうしつつも、ある程度何かしら掴んでいることは隠そうともしない。

 

「警察に提出した書類も、アイリス様がここに来たという情報を入手してすぐに用意したものでしたが。念の為のものが即座に活躍するとは思ってもみませんでしたな」

「えっと、それで、アゾールドさん。わたしたちに協力してくれるということで、いいんですか?」

「こちらの不利益にならない程度、という但書はつきますがな」

 

 彼のその言葉に、ペコリーヌはコクリと頷く。既に他の面々も反対はしなくなっていたので、彼女はそのまま今回の事情を語り始めた。アイリスは婚約話を踏まえて交渉をしに来ているが、こちらは婚約を解消した上で防衛費の撤回を取り消してもらうよう来たのだ、と。

 それを聞いたアゾールドは少しだけ驚いたように目を見開き、それはそれは随分と強欲なことで、と笑みを浮かべる。

 

「ですが。元々ワタクシはエルロードの民ではないですし、流れてくる情報を見る限り、エルロード側も婚約話には消極的な様子。どうにかなる可能性は十分にありますな」

 

 そう述べると、彼はふむふむと思案をする。考えをまとめたのか、カズマ達に向き直りではここを拠点とするのがいいでしょうと述べた。

 

「よろしいのですか? アゾールドさま」

「ええ。ここでベルゼルグ王家と繋がりを作るのは商人としてプラスに働きますし、何より」

 

 視線をシェフィと、そしてキャルの持っていたカバンへと向ける。その視線を受けて、彼女のカバンがごそごそと動いた。

 

「ホワイトドラゴンのシェフィ嬢はまだしも、そこの魔物の方はそのままでは外で活動できないでしょう? 人形型のようですから、ワタクシならばこちらのゴーレムとして仮登録して差し上げられますぞ」

「……だってさ、カズマ」

「はぁ……しょうがねぇな」

「ぷは。……迷惑、かけちゃいましたね」

 

 カバンから顔を出したぬいペコに、元々協力してもらう流れだったから気にすんなとカズマは告げた。

 

 

 

 

 

 

 シェフィとぬいペコが自由に動けるよう手続きを行う、ということで時間の出来てしまった四人は、さてどうするかとエルロードの街並みを見ながら考えていた。アゾールドの話によると、フェイトフォーに乗ってかっ飛んできたアイリス達は、早すぎた為にエルロード側の準備が整っていないらしく暫く足止めを食らっているらしいとのこと。すぐに向こうと合流するのも手ではあるが、いかんせんアイリスに同行しているのがなかよし部である。素直に宿にいるとは考え辛い。

 事実、彼女達が泊まっているであろう宿へと向かってみるとものの見事にもぬけの殻であった。全員一緒に行動していないらしいという噂のおまけ付きである。

 

「とりあえず問題は後回しにするか」

「そうね。探し回ってもしょうがないし」

 

 カズマの言葉にキャルが同意する。そういうわけなので、今日は観光でもするかということに相成った。王城でのやり取りを踏まえても、シェフィのおかげでまだ時間は昼過ぎだ。功労者が留守番状態なのは申し訳ないが、本人は気にせず楽しんできてと言っていたので変に気を使ってもしょうがないだろう。

 

「じゃあ、どうしましょう。まずはどのお店でご飯食べます?」

「選択肢の一発目すっ飛ばすのやめない?」

「え? でも、せっかく他国に来たんですから、その土地の美味しいものを食べますよね?」

「一点の曇りもないわねこいつ」

「ふふっ。ペコリーヌさまですから」

 

 いつものこと、と言ってしまえばそれまで。そんなやり取りをしたカズマ達は、街並みを見渡しながら飲食店を探し始めた。カジノとアイドルで経済を回しているだけあって、その手の店舗は文字通り腐るほどある。娯楽には事欠かないであろう。

 とりあえず適当な店に入るか。そうカズマが提案しようと思ったその時だ。

 

「おお? 随分と綺麗な冒険者だ。ねえ、そこの金髪美人のお姉さん。そんな冴えない男放っておいて、俺達とこの街でも巡らない?」

 

 どこからか聞こえてきた軽薄な声。視線をそこに向けると、ぶっちゃけてしまえばチャラそうな軽い雰囲気の男が三人立っていた。今声を掛けた一人以外も、こちらを見てなにやら色めきだっている。

 

「お、本当だ。すげぇ可愛い。そこの黒髪の猫耳の女の子とか俺好みだ」

「俺は、そこのエルフの女の子が、なんて言うんだろう、こう、キュンとする」

 

 最後の一人は絶妙にアウトな気がしないでもないが、ともあれこれは俗にいうナンパというやつなのだろう。そのことを瞬時に判断したカズマは、あからさまに顔を顰めた。確かにこの三人はとびきりの美少女だ。見逃せない問題をそれぞれ最低一つは完備しているものの、それを除けば性格も悪くない。

 

「……え? あれ、これって」

「何? 今あたしたちナンパされてるの?」

「びっくり仰天でございます」

 

 が、いかんせんアクセルでこの三人を口説く人はいないわけで。経験したことのない状況に、ペコリーヌ達が思わずパチクリと目を瞬かせている。

 その反応にひょっとしたらいけるんじゃないかと判断したナンパ男達は、笑顔になってずずいと距離を詰めてきた。

 

「待て」

 

 そこにカズマが割り込む。ペコリーヌ達を守るように立ち塞がったカズマは、ナンパ男達を見据えながら、なんというか非常に勝ち誇った顔で口を開いた。

 

「悪いな。こいつらは俺にべた惚れなんだ。あんた達の割り込む隙はない」

「……何言ってんのこいつ」

 

 ドヤ顔のカズマを見ながら、非常に冷めた視線でキャルがツッコミを入れる。ナンパ男も、そんな彼女を見てどこか白けた目を彼に向けていた。どこがべた惚れだって? と呆れたように言葉を返す。

 

「何だ、知らないのか? こいつはツンデレだからな、素直になれないのさ」

「どこから湧いてくるんだその自信」

 

 微塵も揺らがないカズマにナンパ男がちょっと引く。そうしつつも、まあ嘘だろうと結論付けキャル以外の二人に目を向けた。一人がこの様子なので、残りもどうせ似たようなものだろうと判断したのだ。

 

「申し訳ございません、わたくしはお断りさせていただきます」

「え? あれ?」

「わたくしは身も心も主さまに捧げておりますので」

「……え?」

 

 そう言って丁重に断るコッコロが予想外だったのか、ナンパ男の動きが止まる。が、その後に続けられた言葉で今度は別ベクトルの衝撃を食らった。年端もいかない少女が身も心も捧げているとか言ったぞ今。流れ的に主さまってこの冴えない男だろ。そんな考えがぐるぐると思考を巡り、眼の前の現実を中々受け入れられない。

 

「カズマ。あれ大丈夫なの?」

「……そういえばすっかり忘れてたな」

 

 ちなみに当の本人も衝撃を受けていた。アクセルで過ごしていたおかげで完全に慣れきっていたが、普通あの年の少女が年頃の男を主さまと呼んで甲斐甲斐しくお世話していたら間違いなく事案だ。紅魔族ですら初見は引くのだ。エルロードの一般人がどういう反応をするかなど想像に難くない。

 

「な、なあ、どうする? 警察に通報したほうがいいのか……?」

「いや、でもなんか女の子の方がノリノリだし……そういうプレイなのかも」

「それはそれでマズくないか? せっかく観光に来たのに、羽目外しすぎたか……」

 

 ヒソヒソとナンパ男が相談し始める。ちょっと可愛い女の子に声をかけたら、想像以上に闇深な光景を見せ付けられたのだ。軽い気持ちでの行動だったので、こういう状況に首を突っ込むのは非常にまずい。

 とりあえずあのエルフの娘はパスで。そう結論付けたナンパ男は、残りの一人を見た。ツンデレがどうとか言っていた猫耳少女は性格上手こずりそうだが、天然で明るそうな金髪巨乳美少女なら案外いけるかもしれない。というわけで、男達はペコリーヌに声を掛け。

 

「えっと……わたしは本当にこの人にべた惚れなので」

『え?』

 

 予想外の角度から、ど直球に断られ玉砕するのだった。

 

 

 

 

 

 

「にしても、意外ね」

「何がだよ」

 

 すごすごと去っていくナンパ男を見送り、改めてと飲食店を三軒ほど本日営業終了に追い込んでから、さて次はどうするかと街を歩くカズマにキャルがそんな言葉を掛ける。彼の返答に、彼女はあんたのことだから、と指を一本立てた。

 

「こいつの食事代払えるなら、とか言って体よく自分の懐痛まないようにしそうだったし」

「お前俺のこと何だと思ってんの?」

「ゲス」

 

 迷うことなく即答したキャルに、カズマがジト目を向ける。そんなことないですよ、と言ってくれそうなペコリーヌもコッコロも、これが普段の軽口だと分かっているので別段何も言わなかった。

 おかげでたまたま聞こえていた通行人は、ああこいつゲスなんだ、と誤解のようでそうでもない認識を抱く。

 

「相手がお前だけを狙ってたんならそうしたかもしれんが、ペコリーヌとコッコロもだぞ? ナンパ成功とかさせるわけないだろうが」

「いやそこはちゃんとあたしも加えなさいよ」

「え? 何お前ほんとに俺に惚れてんの?」

「ぶっ殺すわよ」

 

 今度はキャルの目が据わる。勿論いつものことなのでそのままやり取りが見逃され、何も知らない通行人は何だかギスギスしてるなあのパーティー、と少し距離を取った。

 ともあれ。腹を多少満たしたペコリーヌは、話を元に戻すようにせっかくですから何か遊びましょうと提案する。コッコロも笑顔で頷き、キャルもそうね、と同意した。

 

「とはいっても、ここってカジノの国だろ? 気楽に遊べるのか?」

「今はアイドルの方が勢い強いですからね。カルミナのファンの人たちも楽しめるような施設も増えてるみたいですよ」

「カルミナ……ノゾミさまたちでございますね」

「そういや、アイドルフェスで何かやりあってたわねあんたたち」

 

 トップオブアイドル。揺るぎないその称号を持つアイドルグループ『カルミナ』が存在し続ける限り、エルロードは安泰だと言われるほど。噂では彼女を見出したのはこの国の宰相だとかで、エルロードに乾杯ならぬ宰相殿に乾杯とか言われているらしい。

 

「別の意味でこの国が心配になるな」

「でもまあ、そういう意味じゃ防衛費自分の国に回したくなる理由も分かるわね」

 

 宰相が後方プロデューサー面で腕組みしている限り、財布の紐は緩みそうにない。その辺りをどうにかするのが今回の課題になるだろう。アイリスは同盟であることを強調し、この国も守ると信用させる方向のようだが、カズマはそれで上手くいく可能性は低いだろうと睨んでいる。

 

「まあとりあえずはこの場所のことをもう少し知るところからだな。っと、ん?」

 

 歓声が響いてきた。なんだろうと視線を向けると、どうやら建物内でなにかの大会が行われているらしい。カジノとは違うそれに興味を惹かれた一行はそこへと入り、そしてカズマとキャルは思わず声を上げた。

 

「ねえカズマ、これってあのカードゲームじゃない?」

「そうだな。お前が俺にボッコボコにされたやつ」

「うるっさい。……何か飛び入りもできるみたいよ」

 

 どことなくそわそわしながら、キャルがカズマにそう述べる。ふーん、と返しつつも、カズマはカズマで向こうのカード販売エリアに目を向けていた。

 二人の視線が交差する。行くか、行くわよ。目だけで会話を済ませた二人は、そのままカード販売エリアへとダッシュしていった。

 

「お二人とも、目がキラキラしておりましたね」

「やばいですね☆」

 

 童心に返ったかのような二人を、コッコロとペコリーヌが優しく見守る。パックを箱買いし、足りない分をシングル買いしながらデッキを組み立てていくカズマとキャルは正直大人げなかったが、周りの連中も似たようなものなので問題はないだろう。

 そうして出来たデッキを手にエントリーした二人は、隣り合ったステージ上で勢いよくカードを引いた。

 

「カズマ、あたしと当たるまで負けるんじゃないわよ」

「こっちのセリフだっての」

 

 眼中にない、と言われたも同然の二人の対戦相手は、そんな態度に顔を顰めながら同じようにカードを引く。そして、司会進行であろうサングラスを掛けた男が勢いよくその手を天に掲げた。

 

「デュエル開始ィィィ」

 

 

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