プリすば!   作:負け狐

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その202

「よし、この調子でいけば問題なく倒せそうだな」

「またあんたはそんなこと言って……。向こうが奥の手を持ってたらどうすんのよ」

「お前が言うのかよ」

 

 ダブルペコとアイリスによってトロールの討伐カウントがガリガリ増えていくのを見ながら、カズマとキャルはそんなことを話していた。言われずとも余裕ぶっこいてフラグ立てた挙げ句しっかり回収するような趣味は自身にはない。横の彼女に向かい、彼はそんなことを続ける。

 お前じゃないんだから、という言葉は口にはしなかった。表情は思い切り言っていたが。

 

「ぶっ殺すわよ」

「事実を言って何が」

「キャルさま、主さま」

 

 はい、ごめんなさい。コッコロの言葉に、二人は思わず反射的に謝る。完全に親に叱られた子供であるが、いつものことなのでここにツッコミを入れるものは新参者だけだ。

 

「……アイリス姫の兄上が、なんか俺よりも年下の女の子相手に親子みたいなやりとりしてるが」

「そういうプレイか何かでは? それよりも、今はダニエルをどうにかしなくては、アイドル達が不幸になります」

「お、おう……」

 

 吹っ切れたのか、それともテンションがバグったのか。カルミナからアイドル全ての後方腕組みプロデューサー面になったラグクラフトに若干引きつつ、ダニエルをどうにかするというのは確かに正しいので気を取り直す。

 だが、目の前で無双している三人の美少女を見ていると、杞憂なのではないかとも彼は思ってしまうわけで。

 

「それにしても、アイリス姫の姉上は双子だったんだな。兄も姉もここに来ているとなると……やっぱり婚約話を進めるのは無理か」

「レヴィ王子。今目の前の出来事に集中してください。先程自分で言っていたようにあいつはかつて幹部候補だった男です。……アイドルに入れ込むあまり仕事をサボりすぎて首になった時はアホだと思っていましたが、今なら奴の気持ちも分かる」

「分からないでくれ、頼むから」

 

 とはいえ、だからこそ魔王軍を抜けて後方腕組みプロデューサー面になったのだから、そういう意味では結果オーライとも言えるかもしれない。そんなことを思いつつ、レヴィはラグクラフトに言われたように目の前の戦闘に集中し始めた。どのみち現状自分は役立たずなので、アクセルハーツと共に邪魔にならないよう支援を行うことしか出来ない。

 そんな結論を出してしまったので、結局彼の誤解は解かれることはなかった。

 

「ぐぅ……まさか、ここまでとは」

「ダニエル様。どういたしましょうか」

 

 増援のトロールが文字通り雑魚にしかなっていない。そんな状況を眺めながら、ダニエルはしかし考え込む仕草を取るとすぐさまチャーリーに指示を出した。我々はアクセルハーツを推す者、スタジアムを溢れさせることなど造作もない。

 

「そう、これこそが私の推しへの課金!」

「いらんわそんなスパチャ!」

 

 カズマのツッコミなど気にせず、ダニエルは再度トロールのお代わりを呼び寄せる。先程迎撃されたものとは別のワイバーンが現れ、トロールを乗せた籠が会場に押し寄せてきた。

 が、いかんせんその上空にはホワイトドラゴンが一体、待ち構えているわけで。

 

「クァァァァ!」

「ナイスだシェフィ!」

「ふ、ですが、それだけでは全てを止められますまい」

 

 フェイトフォーが王都の方に行ってしまったことで、先程よりは迎撃率が低くなっている。本来ならばそれがどうしたであったのであろうが、何をどうしたのか推しへの課金力だとかいうダニエルのそれは、次々に押し寄せてくる。シェフィが頑張っているが、五体満足で降下する籠もそれなりに増えてきた。ペコリーヌ、ぬいペコ、アイリスのトリオはその程度で揺るがないものの、現状は好転しないままだ。

 勿論、後方支援のカズマ達もそれは承知の上である。

 

「こいつ、無限に仲間を呼ぶタイプのボスか」

「何言ってんのかよく分かんないけど、どうすんのよあれ、ヤバいわよ」

「落ち着け。あの手のボスは本体をぶっ倒せば戦闘終了だって相場が決まってんだよ」

「ふーん。で? どうやってあのダニエルとかいうトロールロードをぶっ倒すわけ? ペコリーヌたちは雑魚の処理に回ってるわよ」

「では、わたくしが単騎で」

「コッコロは支援の要だから! そういう危ないのは他に任せろ」

「そうよコロ助。そういうのは別の……ん? あれ?」

 

 そこでキャルは気付いた。現状ボスに攻撃できる火力役で動けるのは、見渡す限り一人しかいないことに。

 

「あたしぃ!?」

「よしキャル、行って来い」

「無理に決まってんでしょうが! あたしの防御力なめんじゃないわよ、あれに突っ込んでいったら秒でミンチよミンチ」

「そこはアクシズの巫女の加護とかでどうにかなるんじゃないのか?」

「あんたアクシズ教何だと思ってんのよ。……いや、考えてみるとそう思われてもおかしくないか。じゃなくて! だとしても、無理なものは無理よ!」

 

 ワンチャンどうにかなるかもしれないと一瞬ぐらついたものの、そんな博打みたいな考えで命は張れない。出来そうにないと思えたことはきっと出来ないから無理してやる必要はないのだ。女神アクアもそう言っている。

 

「毎度思うけど、あの駄女神ほんと碌でもないな」

「何かしっかり話したことがあるような口ぶりね。まあいいわ、とにかく、あたしには無理よ」

「ならばやはりわたくしが」

「だからコッコロは駄目だって。おいキャル、なんで突っ込むこと前提なんだよ」

 

 一歩踏み出したコッコロを抑えつつ、カズマはジト目でキャルを見る。その視線にひるんだ彼女は、何よとむくれつつ口を開いた。あんたが機材壊さないようにしろって言ったんじゃない、と。

 

「だとしてもだろ。あの場所に魔法ぶっ放して会場の機材全滅は流石にない。制御できない爆裂魔法じゃあるまいし」

 

 嘗めるな、制御などお手の物ですよ紅魔の里の活躍見ていなかったんですかとアクセルの爆裂娘が抗議をしていたらしいが、生憎カズマには届いていない。

 ともあれ。そんなことを挑発染みた口調で言われたキャルは、ふんと鼻を鳴らすと杖を構えた。そういうことなら、ちゃんと見てなさい。そう言い放つと、推しへの課金だとか抜かしながら呼び寄せたトロールの中心にいるダニエルへと照準を定める。余裕ぶった顔をして、ペコリーヌ達を物量でどうにかしようとしているあの野郎へと。

 そのタイミングで、キャルのチョーカーが薄っすらと光を放ち始めた。

 

「ん? おいキャル、何か光ってるぞ」

「へ? あれ? 何で?」

「おそらく、キャルさまのお気持ちに反応をしたのではないでしょうか」

 

 なんだかんだ、ああ見えて、あんなんでも。女神アクアは身内への愛情が深い。そしてその加護をがっつり受けているキャル自身も、なんだかんだ仲間が大好き人間である。相性がいいというか、なるべくしてなったというか。そういう意味でもアクシズの巫女に選ばれたのは当然ともいえるかもしれない。

 

「おいそれ大丈夫なやつ?」

「あたしに聞かないでよ!? ど、どうしよう。これこのまま魔法撃っちゃっていいのかしら?」

「お前が分からなきゃ誰も分かんねーよ! あれか? こないだみたいに変身するとか?」

「なるほど、確かに。キャルさまの、ペコリーヌさまたちを思う心に呼応したのでしょうし、主さまのおっしゃっていることが正しいのかもしれません」

「うぇ!? べ、別にあたしはあの連中がウザいって思っただけで、別にペコリーヌたちやシェフィがあれだけ頑張ってるからどうにかしてやらないとなんて思ってもいないし!」

「……お手本みたいなツンデレしやがったなお前」

「うっさい! ……えっと? じゃあこれ、あたしがどうにかしてみんなを助けたいって思うと光るってこと?」

 

 めちゃくちゃ恥ずかしい。公開処刑みたいな発動条件を聞いて、キャルは思わず奇声を上げてその場から逃げ出したくなる衝動に駆られる。女神アクア様、何故そんな仕様にしたのですか。ちょっぴり嘆いて天を仰いだ。

 尚当の女神は、溜まり場で一緒にモニタリングしていたアメスに問われた際に分かりやすくていいじゃないと言い放ったとかなんとか。

 

「あぁぁぁぁぁもう! そうよ! あいつらの負担減らしたいって思ったわよ! 大事な仲間なんだから当たり前じゃない! 当然コロ助だってそうよ、あんたが無理しないようにって」

「俺は?」

「うっさい死ね!」

 

 ニヤニヤしているカズマにそう吐き捨て、だから、とキャルはチョーカーに手を添える。女神アクア様、そこまでいうのならば、きちんと力をお貸しください。一言添えて、僅かに目を閉じ、そして開く。大事な仲間の力になるならば、女神の力を使うことを躊躇わない。

 

「――変、身!」

 

 

 

 

 

 

 それに気付いて振り向いたダニエルが見たのは、高速で飛行するウエディングドレスのような衣装の猫耳娘であった。青き女神の力を纏い、まるで踊るかのように空を舞いながら突っ込んでくる。それは一種幻想的ですらあり、アクセルハーツのシエロ推しであったチャーリーですら一瞬見惚れてしまうほどで。

 

「はっ! ダニエル様! 危ない!」

 

 慌ててチャーリーが前に立つが、それがどうしたとばかりにキャルは拳を握る。そのまま振りかぶり、スピードを落とさないまま思い切り振り抜いた。

 

「《ゴッドブロー》!」

「おぶぉ!」

 

 格闘漫画のインパクトの瞬間みたいな顔面のひしゃげ方をして、チャーリーの巨体が吹っ飛ぶ。思わず避けてしまったダニエルの背後で雑魚トロールを巻き込んで会場の壁に突っ込んでいくチャーリーを見ることなく、彼は勢いを削がずにこちらを睨む猫耳少女を見た。

 

「ぐぅ、アイドルの輝きが見える……馬鹿なっ、私は、私はリア推しなのだぞ! そのようなものに惑わされるはずが」

「勝手にアイドル力の鑑定するんじゃないわよ! いいから、さっさとぶっ殺されなさい!」

 

 指を鳴らす。杖の魔導書がパラパラと舞い上がり、彼女の後ろで魔法陣を形作った。膨大な量の魔力が集約されていき、目の前の相手を全てまとめて消し去らんと唸りを上げる。ただならぬそれに、雑魚トロールも動揺を隠せずダニエルを守ろうと、ではなくダニエルを盾にするように後ろへと下がっていく。推しへの課金というのはあながち嘘ではなかったようで、アイドルオタクの有象無象でありダニエルへの忠誠心はチャーリーほど持ち合わせていないようであった。

 

「ぐっ、私は、私はっ……リアの、推しの自分だけのコンサートを見るまでは――」

「《アビスエンドバースト》ぉぉぉぉぉ!」

 

 巨大な魔力の奔流がダニエルへと叩き込まれ、盛大な爆発とともに天に届かんばかりのオーラの爆風が上がる。その威力はまさに神のごとし。コンサート会場なんぞ木っ端微塵にしてしまうほどの強大なもので。

 

「……やっば」

 

 思った以上に力を貰っていたらしい。裏返せばそれだけキャルの仲間大好きパワーがでかかったのだが、それはそれとしてやり過ぎ感は否めない。というかこの規模の爆発だと普通に仲間も木っ端微塵である。

 まあそこは腐っても女神の力。器用にも仲間にはダメージが行かないようにされているらしく、被害はトロールの群れとダニエルにチャーリー、そして会場くらいであった。ちなみに最後が大問題である。そこは考慮してくれないのは加護を与えているのがアクアだからである。

 

「わぁ……やばいですね☆ きれいに吹き飛びましたよ」

「そうですねお姉様。綺麗さっぱり吹き飛びました」

「……それは問題なのでは……いやまあ、魔物のわたしが心配することじゃないですね」

 

 パチパチと手を叩いているペコリーヌと同意しているアイリスの脳筋姉妹を見ながらぬいペコは溜息を吐いたが、いつものことかと諦めた。上空ではシェフィがうんうんと同意している。どちらの同意かは聞かないことにした。

 そして当の本人である。やっば、と思わず呟いたキャルは、空中に浮かんだままゆっくりと後ろを振り向いた。やりましたねキャルちゃん、と拳を突き上げているペコリーヌを見てちょっぴりドヤ顔をし、そしてお見事ですと笑顔を浮かべているコッコロを見てドヤ顔を強くさせて、そして最後に。

 

「……よし、宰相に弁償させよう」

「あれ?」

「何だよその顔。俺がここで責めるようなやつに見えるのか?」

「うん」

 

 即答である。ついでに割と食い気味であったことでカズマの眉がピクリとしたが、ふんと鼻を鳴らすと、自分はそんな器の小さな男じゃないと何故かキメ顔でそう言い放った。

 そもそも、ラグクラフトとダニエルは顔見知りであり、ある意味協力関係でもあった間柄だ。今回の事態を引き起こした原因の一つは間違いなくそれであり、だからこそ多少の便宜は図って然るべき。時間が掛かれば掛かるだけ王都の被害も増えていただろうから、この程度で済んでむしろ喜ぶべきだ。

 まあつまりそういう方向で自分達は悪くないということにするらしい。

 

「別に間違ってもないしな。アイドルのためだし、あの宰相ならそれくらいやってくれるだろ」

「……確かに、そうかもしれないわね。ふう、安心したら気が抜けちゃった。この格好でいるのも結構力使うし、さっさと元に――」

 

 背後が光った。ん? と振り向いたキャルは、何だかよく分からない輝きとともに一点に集まって結晶化していくそれを見た。まるで雷が武器へと変貌したようなそれは、巨大な金槌にも見えて。

 

「ふ、ふはははははは」

 

 瓦礫からダニエルが姿を現す。あの攻撃でも無事だったのかと目を見開くキャルを視界に入れた彼は、いえいえとゆっくり首を振った。

 

「まともに喰らえば私も木っ端微塵でしたよ。ですが、何という僥倖。長年の研究で持ち出した封印された古代兵器が守ってくれたのです」

 

 バチバチと光るハンマーを見やる。そうしながら、まさか封印まで解けるとは、とダニエルは心底楽しそうに笑った。これで形勢逆転だと言わんばかりに笑みを浮かべた。

 

「『女神の如き舞いを披露せしもの、青き衣をまといて封印の地に降り立つべし』。この条件を満たさずとも封印が解けるとは……どうやら運は私に味方しているようです」

「……んん?」

 

 今なんつった。ダニエルの言葉に一瞬動きを止めたキャルは、確認の為にカズマに視線を向ける。

 こくり、と何か色々諦めた顔で彼はゆっくりと首を縦に振った。

 青き女神の力を衣のようにまとったキャルが空を舞いながらダニエルに、正確にはダニエルの持っていた封印物に魔法をぶっ放した結果、ガバ判定で条件を満たしてしまったらしい。

 

「なぁぁぁぁんでよぉぉぉぉ!」

「流石にこれは不可抗力では……」

「やばいですね」

「はい。……やばいですね」

「クルゥゥゥ」

「主さま。どうか」

「いや責めないって……キャルの不幸嘗めてたわ……」

 

 封印された古代兵器を構えるダニエルを見ながら、集結した一行はどうしたものかと前を見る。明らかに普通とは違うそれは、古代兵器というよりはむしろ。

 

「お姉様、あれは」

「そうですね。わたしの持っている王家の装備と同じ感じがします」

「じゃあれ、神器ってことかよ……」

「やばいですね」

 

 アイリスとペコリーヌの装備もそうであるし、これまで見てきた神器は完全なる使用者でなければその力を発揮することは出来ない。であれば、あの古代兵器もある程度の制限はかかるであろうことは予想出来るが、しかし。

 

「どの程度まで、制限されるのでございましょうか……」

「そこが分からないとなぁ……」

「ふむ。では見せてあげましょう、この古代兵器の力を! 唸れ……稲妻よ!」

 

 カズマ達のやり取りを聞いていたのだろう。余裕を取り戻したダニエルはそのハンマーを天に掲げ、強大な力を叩き込もうとする。それだけで、まともに喰らえば一巻の終わりであろうことを感じさせた。

 

「アイリス!」

「はい、お姉様!」

 

 そう判断した二人の行動は素早かった。キャルは変身の力はもう残っていない。ぬいペコとシェフィでは力が足りない。ならば自分達でやるしかない。

 変身したペコリーヌと、剣に力を込めたアイリスは、真っ直ぐにダニエルを見る。神器だからどうしたというのだ。それをいうのならば、自分達だってそうだ。否、勇者の血筋を持っているのだから、こちらの方がずっと。

 

「《超! 全力全開――」

「《セイクリッド――」

「む……!? 成程、小手調べでは駄目なようですね。いいでしょう、最初から全力でいかせてもらいます! トールハンマー!」

 

 三つの神器が唸りを上げる。怪獣大決戦のような様相を帯びてきたそれに、見ているものは緊張で思わずごくりと喉を鳴らした。

 どの攻撃も、こんな場所でぶっ放すものではない。そういうツッコミを入れられる者も、当然いない。

 

「――プリンセスストライク》!」

「――エクスプロード》!」

「唸れ、稲妻!」

 

 大爆発二回目。木っ端微塵になったコンサート会場が再び木っ端微塵になるほどの威力のぶつかり合いの余波で、カズマ達は思い切り吹き飛ばされてしまう。アクセルハーツ達を含めたそんな全員を、シェフィがギリギリでなんとか抱きとめた。

 そうして出来上がったクレーターの中心部には、剣を振り切ったペコリーヌとアイリスの二人が。

 

「ペコリーヌ! アイリス! 大丈夫か!?」

「あ、あはは。ちょっとやばかったですけど、わたしは大丈夫です。アイリスも」

「はい、お義兄様。この通り」

 

 カズマの声に、二人はひらひらと手を振ることで無事なのをアピールする。そうしながら、彼女たちは視線を戻して前を見た。神器の力がぶつかりあったことで、お互いに攻撃は届かなかったらしい。それはつまり。

 

「ダニエルもダメージがないのか」

「はい、恐らく……あれ?」

 

 緊張の表情でそう返し剣を構え直したペコリーヌであったが、そこでふと気付いて目を瞬かせた。アイリスも同じように、そこに立っているダニエルを見て、首を傾げている。

 カラン、と彼の持っていたハンマーが地面に落ちた。チャージが必要なのか、輝きが収まったそれを拾うことなく、トロールロードの巨体はピクリとも動かない。

 何が起こったんだ。そんな疑問が渦巻く中、カズマの眼前に何か紙が落ちてきた。それを拾い上げると、何やら説明らしきものが書かれている。この度はトールハンマーをご利用いただきありがとうございます。そんな一文から始まって、そしてその先には、非常に危険ですので生身のご使用は避けてくださいとの文字が。

 

「……それ、防御用の魔導具が無いと、使った分のダメージを自分も受けるみたいだな」

「えっと? と、いうことは……」

「自分の攻撃のダメージで……」

 

 小手調べを最初に放っておけばこうはならず、ダメージは最小で済んだ後説明書に気付き防御用の魔導具を探したのだろう。だが、眼の前の相手のせいでいきなり全力使用をする羽目になってしまった。

 その結果が、目の前のダニエルの惨状である。封印をガバ判定で解いた辺りで彼の運は尽きたのだろう。

 

『……やばいですね』

 

 立ったまま力尽きた害悪アイドルオタクの末路を見ながら、王女姉妹は言葉を揃えてそう呟いた。

 

 




我が生涯がいっぺんに台無し!
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