プリすば!   作:負け狐

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前置きパートが長い


その222

「あったあった。これだこれ」

 

 ペリエのもってきたそれは、デュークが残した荷物。跡形もなく消し飛ばしてしまったため、件のあれそれについての情報を探ることが出来なかったためである。

 勿論消し飛ばした張本人は弟くん・お兄ちゃんのためにやったことなので何を反省することがあろうかと悪びれなかった。流石はアクシズ教徒である。

 とはいえ、だからといって放ったらかしにはせず、調査のアイデア出しには加わった姉妹を含め結果そこそこの人数になった相談の結果、何か残してるんじゃないという結論になったわけで。泊まっていたらしい場所を探し当て、荷物を丸ごと運び出し。ある程度中身を知っているペリエに照合させて。

 そうして机にあるのが、デュークの報告書である。この場に残っているというのは、これが向こうに送られなかったから、と考えるのは楽観的であろうか。

 

「あいつの性格的に、多分これ写しだと思うけど」

 

 彼女の言葉に、確かに神経質そうでしたしねとウィズの同意が入る。割と辛辣なその物言いに、カズマは何どうしたのこの人とちょっと引いた。

 

「コッコロさんを無理矢理連れて行こうとした人ですよ」

「言われてみればそうだな。遠慮いらないか」

 

 が、ウィズのその言葉に彼もあっさり手のひらを返す。で、これなんなんだと書かれている文章を目で追った。えーっと何々。などと言いながら、なんとはなしにそれを読んで。

 

「……アクセルに、魔王軍をぶつける!?」

「なんでまたこの街に」

 

 同じように文章を覗き込んだペリエが不思議そうにそう述べたが、残りの面々、というかウィズとキャル、あとペコリーヌあたりはこう思った。勿論一瞬驚いたカズマもこう思い直した。

 そりゃそうだよな。

 

「というか、それはただ単に魔王軍が自爆しに来るだけなんじゃ」

「そんなことは……とも言い切れないのがちょっと。うん、やばいですね」

 

 魔王軍幹部が後どのくらい残っているか分からないが、これまでのことを考えると、もうここに攻め込めるほど強力な戦力が残っているかも怪しい。デュークがいい例である。

 

「まあ、流石に魔王もそこまで考えなしじゃないでしょ。それこそ何が何でもここに攻める理由でもなきゃ――」

 

 やれやれ、とキャルが肩を竦める。そうしながら言葉を続け、そしてピタリと止まった。魔王軍が、あるいは魔王がここに攻め込まなければならない理由があるとすれば、それは。

 

「……わたくし、でございますね」

 

 ゆっくりと、しかし別段動揺することもなくコッコロはそう述べた。ほんの少し前であればもう少し取り乱していたかもしれない。しかし、もう彼女は決めたのだ。たとえ自分が魔王の娘であろうとも、己はコッコロでいるのだと。

 あるいは、コッコロでいることと、八坂こころであることを両立しようと。

 

「であれば、ここに攻め入る魔王軍の目的はわたくしを魔王城に連れて行くこと」

「そんなことはさせません」

 

 いつになく真剣な表情でペコリーヌが言葉を返す。そんな彼女を見て、ありがとうございますと頭を下げたコッコロは、しかし、と述べた。ただ守られるだけになるつもりはありません、と言い切った。

 

「何言ってんのよ。そんなの当たり前でしょ。コロ助にはがっつり支援してもらうんだから」

「ふふっ。ありがとうございます、キャルさま」

 

 そう言って微笑んだコッコロであったが、ふと視線を感じてそちらへと向いた。バニルが、仮面越しでも分かるほどに呆れた表情をしていたからだ。

 ああ、やはりお見通しでございますか。口には出さずにそんなことを心中で述べると、彼女はその視線を見なかったことにして皆へと視線を戻す。他の面々は、別段その行動に違和感を持ってはいないようであった。

 

「報告書、まだあるみたいだよ。意外とマメだったんだね」

 

 ひょい、とシズルが別の書類を取り出す。それを覗いたペリエはどうやら自分が作戦を実行する少し前に送ったものらしいという補足をし、ついでに自身が作戦の捨て駒扱いにされていたらしいことも知ることになった。跡形もなくなったデュークに彼女は少し同情していたが、これでどうやらそれも綺麗サッパリなくなったらしい。

 

「どうやらこの時点ではお兄ちゃんと勇者候補サトウカズマを同じ人だとおもってなかったみたいですね」

「で、あの場面で同一人物だって分かったから余計に、ってことか。バカよねぇ」

 

 とはいえ、サトウカズマを警戒していたことには変わりがない。この時点で既に警戒対象として記述がされている以上、魔王軍も同じ考えを持っていると見ても問題ないはずだ。つまりは、ここに攻め込む理由は魔王の娘八坂こころの奪還と、伝説の勇者と同じ名を持つサトウカズマの討伐の二つ。

 

「この手の理由としては最大級のが揃ってんな……」

「報告書が届いていると考える以上、理由が消える可能性も低いでしょうし」

「……でも、そうなると」

 

 カズマとウィズの言葉に、ペコリーヌが顎に手を当てながら考え呟いた。なんだどうした、と尋ねるカズマに向かい、あくまで予想であり、実際の魔王がどういう思考をしているかは分からないけれどもと前置きをした後、続ける。

 

「戦力を集めて迎撃されないように、他の場所も同時に攻める。という可能性もありますよね」

「自爆する可能性が跳ね上がるだけじゃないの?」

「なあキャル、真面目な話してるんだぞ」

「別にふざけてないでしょうが、ぶっ殺すわよ」

 

 ジロリとカズマを睨みつけ、視線を戻した後にだってそうでしょうがと続けた。アクセルの街にはちょっと石を投げたら奇人変人に当たるほどひしめき合っているが、ならベルゼルグ王国の他の場所なら違うのかといえばそうでもないわけで。

 王都、紅魔の里、アルカンレティア。この三ヶ所は、質の点では間違いなくアクセルの奇人変人に匹敵するのが隔離されずにうろついている。

 

「……王都の心配は、まあ、そうですね」

 

 その中でも襲撃される可能性が最も高い場所にいる誰かさんを思い浮かべ、ペコリーヌは言葉を濁した。滅茶苦茶喜ぶんだろうなぁ、と察した他の面々も何とも言えない表情になる。

 

「じゃあ別に問題ないじゃない。ペコリーヌは何が心配なのよ」

「被害は止められませんから」

「クリスティーナさんの?」

「戦えない人達の方ですよ。そっちはもう諦めてます」

 

 若干のツッコミを入れつつ、それはこちらも同じだろうと皆を見る。まあそれは確かに、とカズマもキャルも頬を掻いた。ウィズも、シズルとリノでさえその一点だけは真剣に考えを巡らせている。

 

「まあ、その辺りはギルドの人たちに避難誘導とか頑張ってもらうしかないんじゃないか」

 

 規模を考えると、これ以上はこの面々だけで話していてもしょうがない。そう結論付けたカズマが、机の書類を手にして立ち上がった。それをひらひらとさせながら、なにはともあれ、と言葉を紡ぐ。

 報告に行こうぜ。そう言って、彼は口角を上げた。

 

 

 

 

 

 

 いきなり冒険者ギルド、でもよかったが、どうせなら直通ルートを進もうとカズマ達四人はダクネスとアキノに事の次第を報告していた。コッコロのことも含めた全部を話すには、流石にギルドはまずいと考えたこともある。

 当然というかなんというか、ダクネスもアキノもコッコロが魔王の娘八坂こころであるらしいという衝撃の事実についてはそうなんだと流した。というか別にだからなんだと言う感じであった。

 公爵級悪魔とプリン幽霊が居候している貴族ダスティネスと公爵級悪魔とリッチーに店の一つを任せている貴族ウィスタリアなので、まあそりゃそうだろうとしかならないが。

 

「とりあえず、王都には襲撃の可能性大だと報告を行った」

「後でリオノール姫にも伝えますので、そちらは何の問題もありませんわ」

 

 後顧の憂いはなし。そう断言した二人は、だからこちらはアクセルの防衛を考えればいいと伝える。そろそろ冒険者ギルドの方も、人を集めて説明を始めるはずだ。事前準備は終了とばかりにそう述べ、そちらはそちらで好きに動いてくれて構わないと言葉を締めた。

 そうして屋敷を後にした一行は、さてどうするかと帰路につきながら考える。

 

「思ったよりあっさり終わったな」

「そうね」

「あはは。いや、まだ終わったわけじゃないんですけどね」

「終わったようなもんでしょ。少なくともあんたの心配事は」

「そうですね。……とはいえ、完全にゼロには出来ないでしょうけど」

「それはしょうがないでしょ。別に全部守りたいっていうのが悪いとは言わないけど、そればっか考えてたら疲れちゃうわよ。その時はその時、やる時にだけ考えればいいのよ」

「お前ほんとアクシズ教になったなぁ」

「あぁ? 何言ってんのよ、ぶっ殺すぞ」

 

 そうして始まるギャーギャーという二人の口ゲンカ。それを見ながらペコリーヌはあははと笑い、そうだその通りだと頬を叩いた。

 

「それで、コッコロちゃんは何を考えてるんですか?」

「え? いえ、わたくしは、別に」

「ふふっ。だめですよ~、そういうのって結構分かりますから」

「……ふふっ。そうでございますね」

 

 二人は顔を見合わせ笑い合う。そうした後、コッコロはペコリーヌに一つ尋ねたいことがあると述べた。ペコリーヌではなく、ユースティアナに。ベルゼルグ王国第一王女に聞きたいと告げた。

 

「民を守りたいというのは、王族としての思いからでしょうか?」

「え? そうですね……確かに、そうじゃないというのは嘘になりますけど。でも、そういうのとは関係なく。わたしはこの国が、アクセルが好きですから。だから守りたいって、そう思うんです」

「……はい。ありがとうございます、ペコリーヌさま」

 

 何かお礼を言われるようなことだっただろうか、と彼女が首を傾げる中、コッコロは気にしないで欲しいと微笑む。そんなタイミングで、冒険者ギルドから招集の連絡が入った。事態が事態だからだろうか、伝えてから即座に動いたらしい。

 そうして集められた面々に、ギルドの職員は近々魔王軍の襲撃がベルゼルグの王都等の重要拠点とアクセルに行われるらしいと告げる。それを聞いた冒険者はざわめき、そして王都はともかく何故ここにという疑問も飛んだ。

 

「ここは始まりの街、と呼ばれる場所です。ここで冒険者は育っていく。逆に言えば、ここがなければ新しい冒険者は育たない。そう魔王軍が考えたのだろう、というのが見解です」

 

 説明の代表者として前に出ているルナとカリンがそんな説明をしたが、どうにも取ってつけたような感じがする、とあまり納得は得られなかった様子。絶対何か他の理由もあるだろう、と冒険者たちは胡乱な目だ。

 

「あの、気持ちは分かりますが。一応アクセルは始まりの街というのが一般的な通称なので……。実際に住んでいる皆さんが疑うのはもっともなんですが。魔王軍がその辺の事情とか知ってるわけでもないので……」

 

 言いながら、ルナは視線を思わず動かした。こちらを見ている冒険者達から、そこまで注目していない面々へと。

 どこぞの研究所ご一行、どこぞの魔道具店ご一行、大貴族の居候組、BB団、ホワイトドラゴン兄妹とぬいぐるみ型魔物二人、アクシズ教会アクセル支部のやべー姉妹とやべーシスター、チンピラ冒険者プラスドMと、そこに一緒にいる怪しいお嬢様と護衛の少女、なかよし部。

 それらを一通り見渡してから、溜息混じりに彼女は再度述べた。ここは一応始まりの街なのだ、と。決して奇人変人の坩堝でもなければ、変人大バーゲンでもない、と。

 

「そういうわけですので、皆さんは防衛のための割り振りを決めてもらいます」

 

 納得したのかしてないのか微妙な表情になった冒険者達に向かい、カリンがそう述べ職員達が動き出す。どうやら一般職員は冒険者達を、ルナとカリンは変人窟を担当するようであった。さもありなん。

 とはいえ。あの面々がしっかりと防衛を担当できるかと言えば答えは否。研究所組は基本遊撃担当であるし、バニルとウィズは本人の意志もあって後方支援。ミヤコはプリンがないと制御不能で、BB団人間組は他と組ませると機能しないので単騎。アクシズ教徒トリオやクウカは今回はある程度人の言葉が通じる状態だったのでルナは安堵し、ダストと一緒のリオノールとモニカについてはそもそもこちらからどうにか出来る権限がないので向こうに任せた。なかよし部は諦めた。

 一番話を聞いて指示に従ってくれたのはBB団の常識担当安楽王女とゴーストのルーシー、公爵級悪魔イリヤ、ホワイトドラゴン兄妹のゼーンとシェフィ、ぬいぐるみ型魔物のぬいペコぬいコロであった。オール人外である。

 

「で、なんで俺達もこっちに含まれてるんだ?」

「あんたはしょうがないでしょ。まったく、巻き込まれた身にもなってほしいわね」

「お前が言うなアクシズ教の巫女」

「ぶっころ――」

「まあまあ、二人ともその辺で」

「てかお前も原因だろ」

「そうよそうよ。何他人事みたいな面してるわけ?」

「えぇ!?」

 

 全員ですよ、と思いはしたが口にはせず、カリンはカズマ達に担当はこの辺りでお願いしますと広げた地図を示す。それに了承をされたので戻っていった彼女を目で追いながら。カズマは椅子の背もたれに体重を預けた。緊張感の感じられないその体勢に、キャルはやる気がないと毒づいた。そんなことは当たり前と述べ、カズマはお前も同じだろうと言い返す。勿論キャルも終わった終わったとだらけていた。

 

「どうする? もう帰るか?」

「もうここにいてもしょうがないし、それもいいかもしれないわね」

「主さま、キャルさま。流石にそれは」

「まあまあ。カズマくんやキャルちゃんの言う通り、あんまりここにいても邪魔になっちゃいますし」

 

 そう言ってペコリーヌはコッコロの手を取ると、わたしたちは帰りますねとギルドを後にする。カズマとキャルもそれに続いたが、別段冒険者達は何も言わなかった。既に変人窟の幾人かも帰っていたからだ。具体的にはバニル達とかなかよし部とか。

 結局、思ったよりも大騒動にはならなかった。これまでのようなものとは違う、本気で魔王軍が襲撃してくるというにもかかわらず。それは慣れきっているからなのか、それとも。

 いつも通りだろうと油断しているのか。

 

「ペコリーヌさま」

「どうしました?」

「……襲撃の原因を、皆様にきちんと伝えなくてもよいのでしょうか」

「大丈夫ですよ。コッコロちゃんが心配しているようなことは起こりませんから」

 

 そう言ってペコリーヌは彼女に向き直る。じっと目を見詰め、そっくりですねと小さく述べた。

 

「今のコッコロちゃん、あの時のわたしにそっくりですよ」

「あの時……というと」

「アイリスとこじれて王城を逃げ回っていた時に。……コッコロちゃん、その決め方は、良くないかもしれないです」

「そんなことは」

「開き直った、と思ったつもりでも、結構後ろを見ちゃうんですよね。あはは。未だになんだかんだ引きずっているわたしが言うのもなんですけど」

 

 苦笑しながら頬を掻いたペコリーヌは、だから、とコッコロに言葉を続けた。そういう時は、みんなにちゃんと相談してくださいね、と。

 

「……はい。ありがとうございます、ペコリーヌさま」

 

 

 

 

 

 

「それで? 腹ペコ娘の助言はガン無視というわけか」

「そういうわけではございません」

 

 実際、相談はしているのだから。そう述べると、言うようになったなと仮面の悪魔は口角を上げる。その横では、滅茶苦茶苦い顔のウィズがコッコロにお茶を用意していた。

 

「本当に、やるんですか?」

「はい」

 

 迷いなくそう答えたコッコロを見て、彼女はその表情を更に苦いものに変えた。そんなウィズを見てバニルはいい加減諦めろと笑う。キッ、とそんなバニルを睨んだ彼女であったが、諦めたように大きく溜息を吐いた。

 

「私は、一応、なんちゃってではありますが、魔王軍幹部です。だから」

「だから、汝は何の問題もないであろう。ポンコツ店主よ」

「……そうですけどぉ」

 

 フハハハ、と笑うバニルを再度睨むと、彼女はもう一度諦めたように息を吐く。さっきも諦めたが、もう一度諦めた。スパンが短すぎる。

 それで、とバニルはウィズをスルーしてコッコロに向き直る。決行はいつだ。そう尋ねると、出来るのならばすぐにでもと彼女は返した。

 

「やれやれ、せっかちなことだ。まあ、幸いにして魔道具店には店番も増えたのでな。オーナーの許可も既に二人分申請済みだ」

「え? 私の分も!? いつの間に!?」

 

 というかそれはアキノにバレるのでは。そんなウィズの心配は、それがどうしたというバニルの一言でばっさりといかれた。そのまま視線をコッコロに向けると、同意するように彼女もこくりと頷く。ウィズは三度目の諦めの溜息を吐いた。

 

「で、でも。カズマさんたちには」

「行きたくないのならば行きたくないと素直に言うがいい」

「そういうわけじゃなくて……ああもう、分かりましたよ!」

 

 でも、ともう一度ウィズは述べる。先程とは違い、真剣な表情でコッコロを見る。

 

「せめて、準備だけはしっかりしてください。色々な意味で、ですからね」

「……はい」

 

 そのやり取りを見て小さく笑ったバニルは、ならばこちらも相応の準備を済ませておこうと述べた。だから、ゆっくりと晩飯でも食べてくるがいいと続ける。バニルさんも大概お人好しですよね、というウィズの言葉は聞かなかったことにした。

 その日の夕食。コッコロはいつもよりも味わって食べ、そしていつもよりも皆のお世話をした。じっとそんな彼女を見詰めるぬいペコの視線をあえて見ないようにしながら、食事を済ませ、洗い物をし、そして。

 皆が寝静まったころ、鞄に荷物を詰め、準備を済ませた。

 

「……こちらに来た時には、荷物も肩掛け程度だったのですが」

 

 部屋を見渡す。拠点となったアメス教会の自室、そこに置いてある様々な物を一つ一つ眺めながら。コッコロは誰ともなしに呟いた。

 

「いつの間にか、随分と増えてしまいました」

 

 自身の槍と、そして鞄を持ち。皆に気付かれないよう部屋を出る。三人の部屋の扉をゆっくりと見詰め、そして目を閉じ何かに思いを馳せた。

 

「ペコリーヌさま、キャルさま、主さま」

 

 教会を出る。その直前に、もう一度振り返り、ここにいる、眠っている皆の名を呼んだ。

 

「おまけでもいいから、わたしも入れてくれると助かりましたけど」

「っ!」

 

 ば、と声の方に向き直る。窓枠に腰掛けていたぬいペコが、どこか呆れたように彼女を眺めていた。思わず身構えたコッコロに、彼女はやれやれと肩を竦める。

 

「別に、止めませんよ。なんなら、伝言も聞いておきましょうか」

「……では、一つだけ」

 

 コッコロは、みなさまの幸せを願っております。それだけを伝えて、彼女は今度こそ教会を出る。

 月明かりに照らされた教会の外には、彼女を待っていたとばかりに四つの影が。実際待っていたらしく、随分と時間を掛けたなと影の一つ、バニルは笑った。

 

「申し訳ありません。では、道中よろしくお願いいたします」

 

 そう言って頭を下げる彼女に、バニルと、残りの三つの影は頷く。そのうち一つは言わずもがなのウィズ。そして、勿論ですと微笑んだ彼女の横には。

 

「乗りかかった船よ。久々に、ウォルバクに戻るのも悪くないわ」

「あたしは巻き込まれただけで……いやまあ向こうに残るよりはマシそうだから来たけど」

 

 どこか楽しそうに笑うちょむすけと、やる気なさそうに不貞腐れるセレスディナの姿があった。

 

 




八坂こころと四人の魔王軍幹部
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