プリすば!   作:負け狐

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体調がちょっとだけ上向いたので続きを書くことにしました


その224

 コッコロを追いかけ魔王軍の本拠地へと乗り込もうとしているカズマ達一行の前に現れたその面々を見ても、当の本人らはまあそうだよなとしか思えなかった。そもそも、このアメス教会の書類上の管理者は向こう側でアキノの横に立っているユカリである。なんだかんだあっちへ行ったりこっちへ行ったりとしている彼らに代わって掃除やらなんやらの手配、あるいは自らによる管理を行っているのは彼女なのだ。そんなわけでバレないはずがない。

 

「ユースティアナ様、何故こちらに何も言わずに魔王城へだなどと」

「あはは……」

 

 そしてユカリはもちろんアキノに報告するであろうし、そうなると必然的にアクセルの二大貴族の片割れのダスティネス家にも伝わるわけで。そこの令嬢かつペコリーヌ関係者であるララティーナ――ダクネスが来ない理由がない。

 とはいえ。ペコリーヌとしてもそこには理由がちゃんとある。現在アクセルの街、ないしはベルゼルグ王国の有名な地域に魔王軍が攻め込もうとしているという状況で、こちらのわがままに貴重な戦力を割くわけには行かない。彼女としてはそういう腹積もりであった。自分自身がその貴重な戦力の一端を担っているというのはまあ、置いておいて。

 

「だから、ララティーナ達にはアクセルを守って欲しいんです」

「ぐっ……しかし」

 

 言っていることはもっともだ。王家のバーサーカーの片割れである腹ペコ姫がいなくなる以上、防衛の戦力ダウンは免れない。ただでさえ新生魔王軍としてコッコロ、ウィズ、バニル、ちょむすけ、セレスディナがいなくなったのだから、そこに追加してとなると。

 

「というか新生魔王軍扱いなのね、コロ助」

「いやまあ、あの面々がいるとどうしてもなぁ……」

 

 字面だけ見るとめちゃくちゃ深刻でシリアスな感じがしないでもない。が、実際は自称父親をぶん殴りに行っているだけである。色々重なってクライマックス感を醸し出しているところが難点であるのだが。

 

「だとしても。コッコロは私やここにいる皆の、いえ、アクセルの街にとってもかけがえのない友人です。彼女を追いかけることに、何の躊躇いがありましょうか」

「ララティーナ……」

 

 そんなキャルとカズマのツッコミを他所に、ダクネスはペコリーヌへと真っ直ぐ言い切った。後ろにいる面々も、同意するように頷いているものばかりである。あのネネカですら、そこに異は唱えなかった。

 

「そういうわけです。私はそこに加えて師匠を追いかけるという目的もありますからね。何と言われようが同行しますよ」

 

 ずずい、とめぐみんが追加で割り込む。こちらはダクネスと比べると非常に分かりやすく、かつ断りにくい回答であった。なにせ自分達と目的が明確に重なっている。

 

「めぐみん。それでは私の理由が何か弱いように聞こえるのだが」

「まあ実際私に比べれば弱いのでは? ペコリーヌが心配だから、とかですよね?」

「コッコロも心配しているに決まっているだろうが! お前は私を何だと」

「まあその辺りはどうでもいいですけど」

「くぅ、聞いておいてその返しはっ……」

「喜ぶんじゃねぇよ変態」

 

 ジト目でツッコミを入れるカズマを見て追加でちょっと悶えたダクネスは、コホンと咳払いをすると姿勢を整えた。シルフィーナがいないのが幸いであった。

 ともあれ。少なくともやってきた面々の中でもこの二人は、めぐみんとダクネスはカズマ達の魔王城突入に参加する気らしい。

 

「いや、でも。いいのか? こんなのでも貴重な戦力だろ?」

「こんなの、とはどういう意味か聞かせてもらおうじゃないか?」

「そうだぞカズマ。流石にそれは私でも看過出来ん」

「何が何でも爆裂魔法で解決しようとする変態一発屋とある意味街の伝説になったドMの片割れが何を抜かす」

 

 二人の抗議をばっさりと切り捨てながら、まあでもだからこそなんだろうなとカズマは溜息を吐く。刺さる時にはとことん刺さる特化型、特定のデッキにのみ効果抜群のメタカードみたいな存在は、むしろこちら側で使う方が輝ける可能性がある。そう結論付けられてしまう辺り、自分も大分毒されていると顔を顰めた。

 

「それに、その辺りの心配は無用です。もし必要ならば、私が複製を作りますので」

「なんかしれっと凄いこと言ったわねこの人」

 

 立ち話もなんだしといつの間にかテーブルに座っていた残りの面々、ネネカ、アキノ、ユカリ、ミフユ、タマキ、イリヤとおまけのミヤコであったが、ネネカが別段気にすることなくそんなことを言い放った。付け加えると、と眼の前の紅茶をかき混ぜながら言葉を続ける。

 

「オリジナルには勿論及ばないでしょうが、向こうの新生魔王軍の面々も複製することは可能ですよ」

「魔王の前にこの人どうにかした方がいいんじゃないのか?」

 

 流石に疲れるのでやらないとは思いますけれど、と締めるネネカにさしものカズマもドン引きである。ちなみにそれに引いてないのはイリヤとあまり分かっていないミヤコくらいだ。そのイリヤも引いてはいないが呆れてはいた。

 まあそういうわけですので、とこの中で一番彼女との付き合いが長いめぐみんがいち早く復活し話を進めにかかる。心配無用なので連れて行け、と結論付けた。

 

「カズマ」

「カズマくん」

「俺!? ……いやまあ、しょうがねぇよな」

 

 断る理由が潰された以上、後はなんとなく嫌だとかそういうことでしか拒否が出来ない。そしてそうなるとこの二人は無理矢理にでも付いてくる。まあつまりはどうあがいても確定事項だというわけで。

 こうして結成されたカズマ、キャル、ペコリーヌの三人にめぐみんとダクネスを加えたコッコロ追跡パーティーは、なんだかんだ話し込んでいた時間を補うべく、急ぎ馬車を探さんと教会から出発を。

 

「そこは任せてちょうだい! 私もマ――ッコロさんの追跡に参加するわ!」

 

 しようとしたタイミングで、更に追加で乱入者が現れるのであった。

 

 

 

 

 

 

「いいのかよ、お前」

「兄さんには許可を貰ったわ。……飛は成っても切り込みすぎるなとは言われたけど」

「なんのこっちゃ」

「多分無茶するなってことだろ。あいつほんと言ってる意味分かんねぇな」

「あはは。まあ、妹のことを心配するのはしょうがないですよ」

 

 そう言われても、とペコリーヌの妹を思い浮かべたカズマは何とも言えない表情になる。アイリスを心配する場合、多分それはゼーンがシェフィに対するそれとはベクトルが違うような気がする、と追加で思ったが口にはしない。

 ともあれ。ホワイトドラゴンが協力してくれるのならば、それこそ魔王城までひとっ飛びだ。コッコロ達と合流することも容易いであろう。そう考え、じゃあよろしくとカズマは述べる。キャルもペコリーヌもそれならばと反対はしない。めぐみんは言わずもがなだ。ダクネスだけは希少種のホワイトドラゴンをこんな手軽に移動手段として使っていいのかと少しだけ悩んでいたが。

 

「じゃあ、行くわよ。――グルァァァ!」

 

 教会の外でドラゴン形態に戻ったシェフィは、体を屈めるとさあ乗れと目で合図をする。五人はそれに頷き乗り込むと、教会に残った面々へと向き直った。

 

「よし、それじゃあちょっとコッコロを迎えに行ってくる」

「ええ。なんなら、そのまま魔王討伐をしてくれても構いませんわよ」

「そうね、そのほうが効率的だわ」

「それはそれでどうなのにゃ……?」

 

 アキノの言葉にミフユが付け加え、タマキがツッコミを入れる。

 

「あ、そうそう。バニルさんとウィズにも、お店が大変になるからちゃんと戻ってくるように言伝しておいて」

「確かに。バニル殿はここを気に入ってはいるが、なんとも気まぐれじゃからな」

「ミヤコはそのへんどうでもいいの。さっさと行ってさっさと戻ってくるの」

 

 ユカリの伝言にイリヤが同意し、ミヤコはどうでもよさげに呟く。

 

「気負うこともありません、などというのはあなた達には野暮でしょうから、私からは特に。まあ、お土産でも期待しておきましょうか」

 

 最後にネネカがそう締めたのを聞いて、シェフィが翼を広げる。アクセルの街を飛び立ち、目的地へと向かって空を舞う。コッコロがどこにいるのか正確には分からない以上、魔王城へと向かっていけば自ずと出会えるはず。そう判断しシェフィに伝えると、了解とばかりに嘶いた。

 

「そういえば、ダクネス」

「どうした?」

 

 その道中、カズマはふと気になったことをダクネスへと尋ねた。先程の面々の中にいなかった人物、いるであろうと思っていた少女のことを。

 

「クリスはどうしたんだ?」

「ああ、そのことか。魔王軍がこちらに攻めてくるという話が出てから、忙しくなると言い残して姿を見せなくなってな。……無茶をしていないといいのだが」

「無茶を、ねぇ」

 

 これまでのことを考えるとそれは割と望み薄ではないだろうかとは思ったが、カズマはそこを口に出さない。まあなんだかんだあの変人窟の連中だから大丈夫だろうと結論付けたからだ。

 なお、アメスの夢空間で盛大にくしゃみをしてアクアにからかわれる女神エリスがいたが、まあそこは置いておく。

 そんな会話をしつつ、上空から見覚えのある変人の集団がいないかと地上を見ていた一行は、そこで何やら慌てているらしい集団を見付けた。移動馬車と護衛の冒険者、それに対峙するモンスター。よく見る光景といえばそれまでだが、しかし。

 

「あれって……?」

 

 あまり見覚えのないモンスターの姿にカズマが怪訝な顔をする。遠目で見ても馬車より大きなその体は、普通の冒険者では厳しそうではあった。

 

「オーガね。結構な数がいるし、武器を持ってるのと一際でかいのがいるし……あの連中だとちょっと苦戦するかしら」

「かも、しれませんね」

 

 キャルの言葉にペコリーヌが立ち上がる。何をしようとしているか、は一目瞭然であった。

 

「おいペコリーヌ。お前あそこに行く気か?」

「はい」

「迷いなく即答しやがったな。いやまあお前ならそうするだろうけど」

 

 ついでに彼女なら別に苦戦することもなく倒せるだろう。そうは思ったが、今優先するのはコッコロを見付けることだ。ここで時間を掛けている間に、新魔王コッコロが爆誕してしまう可能性だって無きにしもあらず。

 そうは思うのだが。しかし。

 

「ここであれを見捨ててコッコロ探しても」

「まあ、コロ助はいい顔しないでしょうね」

「きゅい」

 

 キャルと、同意するようにシェフィが鳴いたことでしょうがねぇなぁとカズマはガリガリ頭を掻いた。めぐみんとダクネスも、まあそうなるよな、と笑っている。

 

「シェフィ。高度落とせ、俺たちが降りられるように」

「きゅい!」

 

 そうして一気に地上に降りるホワイトドラゴン。それに面食らったのはまず冒険者と馬車の乗組員達だ。突如現れた真っ白な竜を、到底敵わないような力を持っているであろうその存在を目にし、その表情に絶望の色を濃くさせた。

 が、その背から人影が飛び降りてきたことで即座にそれを打ち消した。護衛の冒険者にはベルゼルグの者たちもいる。つまり、着地した面々が何者かというのも分かるわけで。

 

「これシェフィか!?」

 

 冒険者の誰かがそんな声を上げた。その声に反応し人型に変化した彼女は、誰だと思っていたんだと文句の声を上げる。突然ドラゴンが飛来してくれば普通はこうなるという文句はアクセルの住人には通じない。というか変人窟以外でも適用されるとは普通は思わない。

 

「染まりきっていないのでしょうね」

「その評価はどうなのよ」

 

 めぐみんの言葉にキャルが律儀にツッコミを入れる。まあいいや、と気を取り直した彼女は、一足先に飛び出していったペコリーヌを見ながら自身も呪文を唱え始めた。

 

「ユ――ペコリーヌさん! 一人で飛び出さないでください!」

 

 そう言いながらダクネスも前に飛び出す。突如突っ込んできた二人の姿にオーガは一瞬目を見開いたものの、しかし即座に気を取り直すと武器を構え声を上げた。

 

「ナンジャァ、ワレェ!」

「ヤル気カ!? イテモウタルデェ!」

 

 オーガは武器を振り下ろす。それを自身の身体で受け止めてびくともしないダクネスは、人間業ではないそれに驚くオーガなど気にすることなく口角を上げる。中々の気持ちよさだと堪能している、などとは知る由もない。

 その一方、ペコリーヌはオーガの攻撃を剣で弾くと、返す刀で斬り伏せた。一撃で仲間を倒された別のオーガは思わずそちらを向くが、その時には既に彼女が剣を振り上げているところで。

 

「俺の出番ないな」

「まあ、今更オーガに遅れを取るような面子ではないでしょうからね」

「言ってないで手伝えぇ!」

 

 魔法でオーガを吹き飛ばしたキャルが叫ぶ。が、カズマは別に大丈夫だろうと返し、めぐみんは今は我が輝く時ではないと動かない。

 

「こんちきちぃ!」

「キャル、じゃあ私がやるからキャルは休んでいて」

「あんたに任せるとそれはそれで問題があるのよ!」

 

 ふんす、と出張ろうとするシェフィを押し戻す。カズマとめぐみんにそいつ見張っててと言い放つと、自棄になったようにオーガの群れに突っ込んでいった。

 

「キャル!? お前はこんな前衛に出てきて大丈夫なのか?」

「しょうがないでしょ! 後ろのが役立たずなんだから! 別にこの程度あたしでも、って」

「ハァ!? オンドレェナメトンノカァ!?」

 

 しまった、と思った時にはもう遅い。どう見ても一撃で倒せそうな相手を倒さない理由がないとばかりに武器を振り上げたオーガが目の前に。

 そのタイミングでオーガの顔面に矢が飛んできた。目を狙われたそれを手でかばったオーガは、キャルではなく矢を飛ばした相手を睨む。

 

「目ェ狙ウタァ、ケンカノキホンワカットルノ――」

 

 トラップ付与の矢を肉体で防御した時点で詰みである。そのまま凄もうとしたオーガはバタリと倒れる。痙攣するオーガを見ながら、矢を放ったカズマは危ないところだったなとキメ顔をした。

 

「最初からやんなさいよ!」

「嫌だよ疲れるし。それに、この状況だとトラップばらまくと他に被害も出るだろ」

「くぅぅぅ」

 

 なんか良いところだけ持っていったカズマを思い切り睨みつけたキャルは、八つ当たりとばかりに倒れているオーガとその周囲の仲間をまとめて吹き飛ばした。ついでにダクネスも吹っ飛んだ。

 

「ララティーナ! ――は、大丈夫そうですね」

「くぅぅ。キャルの一撃に加えユースティアナ様からのぞんざいな扱い……ふぅ」

「堪能してんじゃないわよ」

 

 やはり何事もなかったかのように立ち上がったダクネスにジト目を向けたキャルは、もういいやとペコリーヌに声を掛けた。

 

「残りは任せた」

「あはは。やばいですね☆」

 

 よっこらせと座り込んだ彼女を見て苦笑したペコリーヌは、了解と剣を構え残りのオーガへと一足飛びに間合いを詰める。ある程度の実力を持った冒険者でもある程度は苦戦するといわれるオーガでも、結局のところベルゼルグ王家のバーサーカー腹ペコ姫ではどうしようもないわけで。

 モンスターが全滅するのに、そう時間は掛からなかった。

 

 




でも話はほとんど進んでない
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