プリすば!   作:負け狐

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ベルディア戦終わり


その40

 爆煙が収まった後には何も残っていない。などということもなく。ベルディアは膝をついているものの、五体満足を保っていた。見たところダメージは少なくない。後少し、ダメ押しさえ出来れば、このまま。

 

「ふ、ふ、ふ……まさか、この俺をここまで追い詰めるとは」

「いやそこは空気読んで死んどけよ」

「やかましいわ!」

 

 ゆっくりと立ち上がる。地面に突き立てていた剣を抜き、そしてそれを掲げると声を張り上げた。周囲に聞こえるように、待機させていた少数の部下へと届くように。

 

「あの魔法使い共を、殺せ!」

 

 その声に合わせて、アンデッドナイトが這い出てくる。各々の武器を構え、屍らしい緩慢な動きながら、命令に忠実に、殺意を込めたそれを対象へと突き立てんとする。

 げ、とキャルは顔を顰めた。魔力の殆どを使ってしまったので、精々撃てて後一発。隣のめぐみんに至っては使い果たしたので倒れている。彼女自身も、杖を支えにして立っていないとしんどいくらいだ。

 

「ふ。倒されそうだからって腹いせに部下に襲わせるとか、幹部の風上にも置けないやつですね」

「ぶっ倒れたまま挑発してんじゃないわよ!」

 

 めぐみんのそれにツッコミを入れたものの、キャル自身も大体同じような感想を持ってはいた。口にしたらマズい気がしたので飲み込んだだけである。

 とはいえ、言わなくても言ってもこのままだとアンデッドナイトに襲われるのには変わりないわけで。開き直った彼女は、キッと前を見るとこのヘタレデュラハンと叫んだ。

 

「……なんとでも言え」

「何? 一週間後に死ぬ呪いかけたくせに今すぐ始末しようとか、そんなに焦ってるわけ? それともビビってる? いいのよ別に、逃げても」

「あいつをぶっ殺せぇぇぇ!」

「言い過ぎですよキャル。あ、ちょっと今私動けないんでこのままだと踏み潰されるんですけど!」

 

 ぐりん、とアンデッドナイトが一斉にキャルへと向かっていく。はん、とそれを睨んだ彼女は、ただでやられてなるものかと残っている魔力を杖に流し込み、呪文の詠唱を。

 そこに割り込んだ影が、アンデッドナイトを切り捨てた。お嬢様特有の高笑いを上げながら、手にした大剣を斬り上げ別の一体を吹き飛ばす。

 

「威勢がいいのは結構ですが、そういう後先考えないのはどうかと思いますわ」

「あ、はい……。ごめんなさい」

 

 アキノの言葉に項垂れる。そんなキャルを見てクスリと笑った彼女は、有象無象の露払いは任せなさいと剣を構え直した。

 ワイヤーがアンデッドナイトに巻き付く。動きを封じられた屍は、銀の短刀による一撃で首を落とされ動かなくなった。

 

「そうそう。さっきはいいとこなしだったから、このくらいは頑張らせて」

 

 アキノの隣にクリスも立つ。それに合わせるように、ダクネスがめぐみんを背負い上げた。横ではクウカが珍しく普通の顔をしている。

 

「いいものを味わわせてもらったからな。このくらいはさせてくれ」

「く、クウカ達でよければ、遠慮なく盾に」

 

 口を開けばアレである。まあぶれていないということで流したキャルとめぐみんは、それならばと一歩下がった。

 魔王軍の幹部が用意している割には、その数はごく僅かだ。二十にも満たないアンデッドナイトは、少なくとも軍団と称するにはいささか無理がある。恐らくこれらが街へ侵入しても、大本であるデュラハン、ベルディアさえいなければ街中の冒険者でどうにかなる程度の規模、デストロイヤーとは比べ物にならないしょぼさだ。

 

「とはいえ、二人では少し厳しいでしょうか」

「ダクネス達は攻撃面ではそこまで頼りにならないからね。って」

 

 魔法と弓矢のコンビネーションがアンデッドナイトを一体撃ち抜く。視線をそこに動かすと、微妙に皆から距離をとっているアオイとゆんゆんの姿があった。

 

「び、BB団の掟その一!」

「BB団は、困った人を見捨てない!」

「そういうものに、我々はなりたい!」

「願望!?」

 

 キャルのツッコミは虚空に消えた。

 

 

 

 

 

 

 アンデッドナイトは程なくして掃討されるであろう。それは予感ではなく、確信だ。だが、それは今すぐではない。だから、それまでにほんの僅か猶予がある。

 その間、ベルディアを止めるものは、ダメ押しをするものはいなくなる。回復するなり、撤退するなり、そういうことをされてしまう。

 だから、否が応でも残っている面々でどうにかする必要があるわけで。当然ながらバニル達は止め役にはなり得ない。

 つまり。

 

「……え? 俺?」

「主さま。参りましょう」

 

 カズマである。死にかけとはいえ、魔王軍幹部と直接戦わなければならないのである。コッコロもそうは言うものの、その表情は強張り槍を持つ手に力が入り過ぎていた。

 ふう、とカズマは息を吐く。隣でコッコロがそんな覚悟を決めている状態で、自分がみっともなく逃げるのは違うだろ、と。これが普段から自分を生贄にして逃げる算段を立てるようなアークプリーストであったのならば彼は迷うこと無く違う手段を取り戦いを避けたが、そこにいるのは自分を主と慕いおはようからおやすみまで見守ってくれているエルフの少女。恩を仇で返すほどカズマも腐ってはいない。

 

「主さまは援護を、ここはわたくしが」

「いや、ここは俺が行く。コッコロは後ろで」

 

 す、と彼女を手で制し、カズマはショートソードを構え走る。ベルディアにとってその動きは非常に遅く、容易く迎撃できる程度でしかなかった。だから、満身創痍であることも重なり、その動きに何か意味があるのではと考えることもなく、ただ真っ直ぐに剣を振り下ろした。

 

「は?」

「知ってるかデュラハン。俺はな、運だけは自信あるんだよ!」

 

 明らかに考えた動きではない。この間覚えたスキルによる自動回避だ。それによりベルディアの初撃を躱したカズマは、手をかざし、相手の背中に向かって呪文を唱えた。

 

「まずは、《クリエイト・ウォーター》!」

「なっ! おほぉぉぉぉぉ!」

 

 え、とそのリアクションに思わずカズマの動きが止まる。が、まあ今はどうでもいいと即座に気持ちを切り替え次の呪文を唱えた。《フリーズ》を発動させ、ぶっ掛けた水を全て氷へと変える。全身と、そして地面を凍結させられたベルディアは、忌々しげに首だけをカズマへと向けると、嘗めるなと吠えた。

 

「この程度で俺が止められるとでも」

「回避しづらくなってくれればそれで十分だ。なあ――」

「ていやぁぁぁぁぁぁ!」

「コッコロ!」

「な!?」

 

 飛び上がり、槍を突き立てんと落下してくるコッコロに反応するのが一瞬遅れる。穂先は丁度ベルディアの首の付根。デュラハンだからこそ存在している部位へと狙いが定められていて。

 まだだ、とベルディアは頭を放り投げた。上空に浮かべた頭部で、周囲を全て見渡し、死角を無くす。これにより上空は勿論、眼前も離れた場所でのアクションも見逃さない。

 だからこそ、コッコロとは別に、こちらへと呪文を放とうとしている猫耳娘に感付いた。

 

「コロ助! しっかり当てなさいよ! 《グリムバースト》!」

「ごふっ」

 

 先程の一撃とは比べるべくもない軽い衝撃。残っていた絞りカスのような魔力を使ったらしく、呪文と同時にキャルはバタリと倒れたが、ベルディアはそんなことを気にしている余裕がない。その軽い衝撃で出来た隙が、迎撃を不可能にさせてしまったのだから。

 ズン、とコッコロの槍がベルディアの鎧で覆われていない場所へと突き刺さった。アークプリーストの加護を伴ったその一撃は、アンデッドの体に致命的なダメージを刻み込む。

 

「ぐ、ぐぐ……」

 

 それでも尚倒れないベルディアに、コッコロの動きが一瞬止まる。雄叫びを上げながら、彼は目の前の少女を真っ二つにしようと剣を振り下ろした。カズマが助けようと手を伸ばすが、彼女に届くにはわずかに時間が足りない。

 

「やらせませんよ!」

「ペコリーヌさま!」

 

 その剣とコッコロの間にペコリーヌが割り込む。ベルディアの剣を弾くと、そのまま振り上げ相手をふっ飛ばした。

 その辺りでカズマの伸ばした手が届く。当然ながらその場にはペコリーヌがいるわけで。

 

「……」

「……」

 

 何をとは言わないが、鷲掴みにしてしまった。夢で体験した感触をリアルで味わってしまったせいで、カズマの思考が一瞬オーバーフローする。

 

「フ、ハハハハハハハハハッ! 流石だ小僧! 我輩、ここまで見事なラッキースケベを見るのは久しぶりである」

「ば、バニルさん! そういうこと言っちゃ駄目ですよ!」

「まあ、傍から見ていると笑えるけど……」

「いいですね。残しておくべきハプニングとして記録しておきましょう」

 

 何故かカズマの方が奇声を上げながら後ずさった。目をパチクリとさせていたペコリーヌも、ほんのちょっとだが、後ろに下がる。

 なんだこれ。一瞬空気が止まったのを、その場にいる誰もが感じた。

 

「お、おま、おまえぇぇ! なんてうらやま、けしからん、破廉恥なことをしているのだ! 俺だってどさくさに紛れて出来ないかちょっとしか考えなかったのに!」

「ベルディアさん……」

 

 どこか死んだ目でウィズが叫ぶベルディアを見る。ある意味どこまでもぶれない男だ、と思えばいいのだろうか。そんなことを思いながら、隣で大爆笑しているバニルを小さく小突いた。

 死ねぇ、とベルディアが剣を横薙ぎに振るう。自動回避と逃走スキルをフルに使ってダイビング回避をしたカズマは、その体勢のまま自身と糸で繋げるかのようにショートソードの切っ先をペコリーヌに向けた。

 

「後よろしく!」

「任されました!」

 

 

 

 

 

 

 先程の空気は霧散し、再度緊張した空気が漂い始める。直前の発言さえなければベルディアのその姿は様になっていたかもしれないが、生憎「でもこいつ戦闘のどさくさでセクハラしようとしてたんだよなぁ」感が残っているためどうにも完全に張り詰めきらなかった。

 ともあれ、ボロボロになりながらもまだその足で立ち武器を構えているベルディアに、ペコリーヌは剣を向ける。まだやるんですよね、そう尋ねると、当たり前だと彼は返した。

 

「ここまでいいようにやられ、無様に逃げるわけにはいかんよ。……それに、ここで倒さねばお前の仲間達は一週間後に死ぬぞ?」

「解いてくれればいいじゃないですか。そうすれば、別にわざわざ」

「甘いな……。だが、うむ。美しい女騎士はそうでなければいかん。あっちのドMみたいなのじゃなくて、こういう正統派がいいんだ。それでこそだ」

「やばいですね……」

 

 何か熱く語り始めたベルディアにペコリーヌはちょっと引く。が、まあそのくらいはある意味普通かと思い直し、表情を真剣なものに戻すと剣を構え直した。わかりました、と彼を見詰めた。

 

「女騎士よ。お前の名前を、教えてはくれないか?」

「え? さっき名乗ったじゃないですか」

「いや、本当の名前を知りたい。お互い、これが最後になるだろうからな」

 

 す、と剣を上段に構える。片手で大剣を支えるその力もさながら、彼の言葉にも力があった。有無を言わさぬ迫力があった。

 だが、ペコリーヌはそれに首を横に振る。そうしながら、本当も何も、と笑みを浮かべた。

 

「わたしは、ペコリーヌです。それが、冒険者のわたしの名前です」

「……そうか。無粋なことを聞いたな」

 

 兜の奥の目が光る。いくぞ、と足に力を込めると、ベルディアは頭を頭上に放り投げ、一気に間合いを詰めた。それと同じタイミングで、ペコリーヌもまた一足飛びで間合いを詰める。彼女の頭上のティアラがキラキラと輝きを増していた。

 ベルディアの一撃と、ペコリーヌの一撃がぶつかり合う。満身創痍の騎士とは思えないその力に、彼女は少しだけ圧され顔を顰めた。

 が、それだけ。即座に気合を入れ直すと、彼女らしからぬ雄叫びを上げて、ベルディアの剣を逆に押し返す。頭上の兜からスキルらしき視線が降り注いだが、そんなものは関係ないとばかりにペコリーヌはその剣を叩き付けた。

 

「全力全開!」

 

 よろめくベルディアへと追撃を放つ。カズマによりブーストされた一撃を、強化された一撃を放つ。元々が王家に伝わる物理スキル、強化されていれば、魔王軍幹部でもただで済むはずもなし。

 刀身が光り輝き、目の前の相手を薙ぎ倒すべく唸りを上げる。剣で防御をしようとベルディアが構えたが、そんなことは気にせんとペコリーヌは振り抜いた。

 

「《プリンセスストライク》!」

 

 光の奔流がベルディアを飲み込む。次いで、まるで王冠のような衝撃波が立ち上った。

 ひゅん、と剣を一振りしたペコリーヌは、そのまま自身の剣を地面に突き立てる。小さく息を吐くと、疲れたのかその場にへたり込んだ。

 

「ペコリーヌさま!?」

「あはは。ちょっと力使い過ぎちゃいましたかね」

 

 ぐぅぅぅ、と彼女のお腹から音が鳴る。それを聞いたコッコロは一瞬目を見開き、そして小さく笑みを浮かべた。

 は、と視線を前に向ける。あの一撃を食らっても、まだそこにベルディアは残っていた。剣も手放し、鎧はボロボロ。己の頭も地面に落ち、膝をついたまま動かないが、それでもまだ、討伐しきれていなかったのだ。

 

「どんだけタフなんだよ……」

 

 カズマの言葉にベルディアは鼻を鳴らす。だが、それだけだ。もはや抵抗する気もないのか、彼はそこに静かに佇んでいた。

 コッコロがゆっくりと前に出る。自身の槍を構え、そして、浄化の呪文を唱え始めた。

 

「ベルディアさま。……アークプリーストのわたくしが出来る、これが精一杯の手向けでございます」

「律儀なことだ。しかし俺には魔王様の加護がある。生半可な呪文では浄化は出来んぞ」

「それでも、です」

「そうか。……だが、まあ、そんな最後も、悪くは」

 

 魔法陣が展開される。それを受け入れるように、ゆっくりと浄化の光が彼を包んでいった。やはりそう簡単にはいかないのか、本来ならば即座に浄化されるそれは、中々発動しきらない。

 

「あーもうまどろっこしいの! これだけ弱ってるんだったら、とっととプリンにして食っちまえばいいの!」

「え?」

「え?」

 

 そこに割り込んだ悪霊がいた。出来かけの浄化呪文などなんのその、ベルディアを持っていたスプーンでぶん殴ると、それに合わせるように地面に皿が一枚現れ、そして。

 

「え、ちょ!? 何!? 何が起きた!?」

 

 ベルディアが一個のプリンとなった。ぷるるんと震えたベルディアプリンは、そのままミヤコが引っ掴んで自身の口元へと持っていく。

 

「ま、待て! いやそもそも空気読め! ここは綺麗に浄化されて終わるところだろう!? 何だプリンって! これで食われて終わるとか流石にないだろ! せめて! せめて死に方くらいはもう少し考えて! 普通に終わらせて!」

「うるさいやつなの。プリンは黙って食われるの」

「やめて! あんまりだ! これならまだ頭蹴り飛ばされながら無理矢理浄化されたほうがまだマ」

「あむ」

 

 むしゃむしゃとミヤコに食われたベルディアを、一同は半ば呆然と眺めていた。衝撃の展開に、流石の面々も頭がついていかない。

 ふう、とプリンを食べ終えたミヤコが息を吐いた。

 

「普通なの。口直しにプリンを食べに行くの」

『あ、はい』

 

 ふよふよと街へと戻っていくミヤコを見ながら、一行はどうしようかと暫しその場から動けなかった。

 

「ベルディアさん……」

「流石の我輩も、あの終わり方は少し同情をしてやらんことはないな」

「あの娘、ひょっとして相当ヤバい悪霊なんじゃないの……?」

 

 それは元魔王軍幹部ですら例外でもない。

 

「ふむ。とてもいい結果が得られました。非常に満足です」

 

 ただ一人、ホクホク顔をしていたネネカを除いて。

 

 

 

 

 

 

 数日後。ギルド酒場に呼び出された冒険者達は、この間のデストロイヤーの時と同じように報奨金が出るという話を聞いて湧き上がった。が、今回はその規模はそこまで大きくないらしい。参加報酬が殆どで、貢献度による特別報酬は限られた面子にだけだからだ。

 そんなわけで、ベルディア討伐報酬がアキノ達やめぐみん達、BB団に渡されていったわけなのだが。

 

「それで、貢献度の高さで言うと、魔王軍幹部を完全に討ち取った人は当然高額報奨金が出るわけなのですが」

 

 ルナがちらりとその人物を見る。ふよふよと浮きながら、ワイワイ騒いでいる冒険者達を眺めてプリンをたかっていた。

 

「ミヤコ」

「ん? ダクネス、何か用なの?」

「お前に渡す報奨金の話だ」

 

 冒険者でもなければ人ですら無い。そんな存在であるミヤコが魔王軍幹部の討伐のラストアタッカーなのだ。当然ギルド職員としてもそんな報告を上に出来るはずもなし。結局最後に止めを刺した貢献度の人物は不明ということで、うやむやになった。

 

「ですから、ミヤコちゃんには報奨金が出ないんです」

「なんだ、そんなことかなの。ミヤコはプリンが食べられればそれでいいの」

「はい。ですから」

 

 どいたどいた、と酒場のマスターが巨大なプリンを運んでくる。それをミヤコの目の前にどどんと置くと、これが報酬ですと言い放った。正直この程度で済むとは思っていない。が、こちらで出来る精一杯がこれだ。

 

「わぁぁぁぁぁ! でっかいプリンなの~!」

 

 良かったらしい。大はしゃぎして巨大プリンを食べ始めるミヤコを見て、ルナもカリンも小さく笑みを浮かべた。

 

「良かったのか?」

 

 報奨金を貰ったカズマがコッコロに尋ねる。本当ならば、あの位置にいたのは彼女の方だったのだから。討伐者として讃えられ、今以上の報酬も手に入るはずだったのだから。

 が、コッコロははいと笑みを見せる。元よりそんな名声に興味はない。自身が必要なのは、大事な仲間と大切な主が笑顔でいられる生活だけだ。

 

「何より。わたくしの神聖魔法では浄化が出来たのか分かりませんし。ミヤコさまの、その、スキルで討伐できたのならば、それで」

 

 少し言い淀んだ。あの光景を肯定するのは少しばかり勇気が必要だったからだ。カズマもそれを察したのか、ああそうだなと具体的に述べることなく流した。

 まあ、本人がいいならいいか。向こうでまたクリスと騒ぎ始めたミヤコを一瞥しながら、カズマはコッコロと共にパーティーメンバーの座っているテーブルへと歩いていく。遅かったじゃない、とキャルが二人を見て笑みを浮かべ、山盛りの料理を食べていたペコリーヌもそちらへと振り向いた。

 

「どうでした? 報酬」

「ま、今回は大体みんな同じくらいだろ」

 

 ペコリーヌの言葉にそう返しながら席につく。それと同時、ウェイトレスが宴会用にスタンバっていたのか、ででんと飲み物と料理が置かれていった。カズマは酒だが、コッコロは当然ジュースである。

 それを待っていたかのように、キャルもペコリーヌも自身のカップを手に持つ。当然その意図が分からないカズマではない。笑いながら、同じようにカップを手にとった。コッコロも同じように、微笑みながらカップを持つ。

 

「はい、ではみなさん!」

「今回の討伐」

『おつかれさまでしたー!』

 

 ガチン、と四つのカップがぶつかり合い、小気味いい音を立てた。そうして乾杯を済ませ、グビグビと酒を飲みながらカズマはぼんやりと思う。今回も前回も、とんでもないものを相手に、理不尽な事が起きながらも、なんとかこうしてやってこれた。

 それはきっと。

 

「どうしたのよカズマ」

「いや…………お前達って、めんどくさいパーティーメンバーだなって」

「一番めんどくさい奴が何言ってんのよ!」

「あはは、やばいですね☆」

「主さま、わたくし、面倒くさかったでしょうか……」

「冗談に決まってんだろ! コッコロは俺の隣にいてくれないと困る」

「主さま……!」

「……めんどくさいわよね」

「やばいですね……」

 

 それはきっと、絶対にカズマは言わない。

 




第二章、完!
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