TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA   作:佐遊樹

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PART12 空戦-In the Sky-(中編)

 観戦していて思ったが──『スカイマギカ』のルールは、わたくしがクラブに所属していたころのものと大きく変わっていない。

 

 フィールド上には各チーム3つのリングが形成され、宙に浮かんでいる。

 選手がボールを相手のリングに通すことで得点がカウントされ、試合終了時の得点を競う。至ってシンプルなゲームだ。

 

 禁止事項は、専用の魔導器(アーティファクト)を使い空中で戦うという前提があるため他の競技よりも多い。

 例えばサーフボード型の魔導器は個人ごとにカスタムが許されているが、一定数以上のパーツ組み換えは禁止だし、根本的に競技シーンでは禁じられている種類のパーツもある。

 また、シュートされたボールを魔法で叩き落すのまではセーフだが、リングを覆う形で防御魔法を展開するのは禁止されている。そりゃ試合が動かなくなってしまうからな。もちろんキーパーが自分に防御魔法を付与してシュートを防ぐのはオッケー。

 

 要するには空で魔法を使って行うサッカーという認識で問題ない。

 かつてわたくしが、これに人生を費やしてもいいかもな……なんて気の迷いを抱いた程度には楽しいスポーツだ。

 

 だが、全ては過去。

 今のわたくしは選手ではなく、大空を翔る人々を、地上で見上げる立場にある。

 それぐらいは分かっている。ちゃんと分かっている。

 

 ボードから降りることを決めたのは、自分自身なのだから。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「結構善戦してるじゃない」

「ええ……意外とやりますね」

 

 リンディの言葉にうなずく。

 現在行われている試合は中央校とサウス校のカードだが、意外にも我が校のチームは点数差をキープした手堅い試合運びを見せていた。

 

 

第三の性別 見栄えめっちゃいいよなこのミニゲーム

red moon 操作性はクソオブクソだけどな

 

 

 中央校の司令塔は、学園祭でお世話になった生徒会の副会長さんだった。鋭い声で的確な指示を飛ばし、チームを有機的に動かしている。

 それだけではない。エースを張っているのは同学年の女子──ていうか、さっきの借り物競走で、美術課題を手伝ってくれた子と一緒にいた無表情系女子だった。

 

「エースがそれなりに強くて、司令塔もそれなりによく見えている。この二枚を揃えられているチーム、意外とありませんからね」

「……そういうものなのね」

 

 サウス校の選手が焦りからか、魔法を撃つ回数が増えてきている。

 馬鹿が。余計な所に集中力を割くから、ボードの操作が甘くなっている。この競技は魔法を撃ち合う競技じゃなくて、ボールをゴールに入れて点を取る競技なんだよ。

 副会長さんも相手の焦りを見て取ったらしい、左右や上下に選手を振り分けて攻勢を繰り出す陣形から、中央に戦力を集中させて突破する陣形に切り替えた。

 

「う、わ……激しいですね……」

「サウス校は、こちらにミスをするよう要求していますわね」

「え? どういうことですか?」

 

 首を傾げるユイさん相手に、説明の言葉を選ぶ。

 将棋で言うところの、あやをつけるに近いのだが、これ通じねえしなあ。

 

「ああして敵を攪乱して、ミスを誘発したいのです。ですが冷静に対応すればなんてことはありません。直接的な魔法攻撃は禁止されていますから、流れ弾さえ回避しておけばするっと進めますわよ。試合中の魔法はすべて合理的な理由で放たれるので……スカイマギカにおいて、敵チームが放った魔法に当たるのは、その選手がシンプルに下手であることの証明になるのです」

「へぇ~……」

 

 

みろっく って言ってるけど、どうなん?

適切な蟻地獄 魔法を飛ばして相手に当たったらこっちのペナルティになるのゲームとしてどう考えてもおかしいだろォン!? オォン!?

火星 あと少しでパーフェクトゲームの時とかに限って撃った魔法に突っ込んでくる馬鹿がいて直撃してペナルティ取られて負けたりする

TSに一家言 思い出しただけでムカついてきた

 

 

 ヘタクソ共が何か言ってやがるな。

 そういうのはちゃんと逆置き撃ちしなきゃダメなんだよ。敵の動きぐらい読み切っとけ。

 

「そ、そうは言っても魔法が飛んできたら、そっちに意識がむいちゃいそうですけど」

「入学後に始めた選手であればそうでしょうね、実際に先ほどの試合中も、良くないタイミングで集中がボールから逸れている生徒がちらほらいました。ですがクラブに所属するなどして、数年間この競技をしておけば感覚はそれ用に調整されています。頭部を保護するアタッチメントが見えるでしょう? あれは身体に魔法が直撃した際に威力を相殺する保護魔法がかけられているのです。ですから危険性は……」

 

 と、そこで。

 テントの下に座っているクラスメイトや同学年の生徒たちが、ぽかんとした表情でわたくしを見つめていることに気づいた。

 

 

つっきー はいオタクバレ

日本代表 正体現したね

 

 

 こほん、と咳払いをする。

 

「まあ出場するわけではありませんし。魔法の調整でもしておきますかね」

「うわ……今の流れ、見てるこっちが恥ずかしいぜ……」

 

 うるせえぞユート! こっちはもう羞恥心が限界超えてんだ!

 わたくしは空間に光の線で意味言語を並べ、指先で魔法構築式として弄り始める。

 さながら黒板に数式を書き連ねていくような光景だ。別に変なことじゃない、自分の競技に向けて同じ作業をしている生徒はそこら中にいる。

 

「まったく集中できてないわね」

 

 不意にわたくしの魔法の構築式を覗き込んで、リンディが鼻を鳴らす。

 

「そんなことはありませんわ。元々調整の難しいところでしたので……」

「いやこことここおかしいでしょ。魔力伝導線ブッ壊れてるわよ」

「…………」

「あ、ここも良くないわね、効率が悪いわ」

「うっさいですわね! 誰が添削を頼みましたか!? 人の魔法を添削するのがそんなに楽しいですか!?」

 

 さっきから『ここのデッサン狂ってるね』みたいなこと言ってきやがって! 許せねえ!

 立ち上がってブチギレると、リンディはやれやれと肩をすくめた。

 

「アンタにしては珍しいから、気になるのもしょうがないでしょ。普段ならこんなミスしないくせに」

「ぐっ……」

 

 言い返せない。

 久しぶりにスカイマギカを間近で見ているとあって、無意識のうちに、集中がそちらへと逸れている。

 言われてみれば今書いてた構築式、見直すと本当にわたくしが組んだのかってぐらいガタガタだし。

 

「でも、それぐらい好きなんですね」

 

 苦笑いを浮かべながらユイさんが呟く。

 

「……ええ。好きでしたわ」

「?」

 

 言葉は、正確に使わなければならない。

 わたくしは事実として宇宙最強なので宇宙最強だ。

 そして、わたくしはスカイマギカは、好きだったのだ。

 

「それって──」

「……来客ですわね」

 

 ユイさんが言葉を続けようとしたその時、わたくしはふっと顔を横に向けた。

 生徒用のテントに、正装姿の大人の男性が近づいてきたのである。

 どっかの家の人かな、って見覚えあるわミリオンアーク家の人だ。

 

「坊ちゃま」

「ああ……父上からか」

 

 体操服姿でも何故かめちゃくちゃ気品のあるロイは、帯剣用に腰に巻いていたベルトを外して立ち上がる。

 

「ユイ、ちょっと剣を見ておいてくれるかな」

「はーい。何かご用ですか?」

「ああ、来賓席にいる父上から呼ばれてね」

 

 来賓席には、貴族院の連中たちが雁首揃えて並んでいる。

 最近は騎士団の影響力が減じられているからか、そこはかとなく顔色がよさそうだ。勢力争いのゲームごっこがそんなに楽しいかねえ。

 

「運動会の最中も、貴族様たちは社交に勤しんでるってワケですわね。随分とお忙しそうで、心の底から感服いたしますわ」

「アンタも貴族様よ」

 

 リンディの冷たい指摘を、肩をすくめて受け流す。

 会釈してから立ち去っていったロイの背中を見送った後、わたくしも意味言語ウィンドウを閉じて立ち上がった。

 

「っと、わたくしも少し離れますわ。コーヒーを売りさばかないと」

「そうね、とっても美味しいわよこれ」

「冷えてるのもイイよな。終わったら、この店に連れて行ってくれるんだろ?」

「楽しみですよね。マリアンヌさんが手伝ってたお店……!」

 

 順にリンディ、ユート、ユイさんの発言を受けて。

 わたくしはあの、キッザニア版地獄みたいな店に友人たちを連れて行っていいものか、かなり悩むのだった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 中央校とサウス校の対戦は、途中の流れが覆らないまま中央校の勝利となった。

 総当たり戦の結果、戦績上位2チームが決勝で雌雄を決する。

 既にイースト校の決勝進出は確実な状態、そして恐らく相手は中央校で決まりだ。今行われている中央校とウエスト校の試合は、誰が見ても中央校優勢で、勝利すれば決勝進出が決まる。

 

「油断するなよ、ロビン。中央校の連中、仕上がってるぜ」

「ええ。見ていて、感心しましたよ。頭でっかちのエリートなんかじゃない」

 

 イースト校の、スカイマギカ選手たちに割り当てられたテントの下。

 各自ボード等の整備に勤しむ中、エースであるロビンは、主将の言葉に深く頷いた。

 

「気を抜いてたらこっちが食われるかもしれませんね」

「ああ。だが、俺たちが試合で気を抜いたことは一度もない。そして、これからもない。分かるな?」

「無論です。それに、絶対俺たちが勝ちますよ──世界で一番スカイマギカが上手いのは俺なんですから」

 

 いつも通りの台詞を聞いて、主将は笑みを浮かべ、頼もしい後輩の肩を叩く。

 そこでロビンはふと、中央校のテントに目を凝らした。

 先ほど試合終了後、あそこにいたはずの長い黒髪の少女。今は見当たらない。

 

「……主将、すみません。少し席を外しても?」

「ん? おお、決勝前に整備間に合わせられるなら好きにしていいぞ」

「あざっす」

 

 軽く頭を下げた後、ロビンはスカイマギカ用のユニフォームのまま、小走りにスタジアムの廊下を見て回った。

 先ほどはあの少女と絶対に目を合わせてはならない──()()()()()()と相手に感じさせてしまう──角度だったためすぐ顔を逸らしたが。

 同じ地面に立っているのなら、むしろ、ロビンは会話をしたかった。

 

「あ……」

 

 いた。

 少女は空っぽになったクーラーボックスを抱えて、ベンチに座って一休みしていた。

 ロビンは数度深呼吸すると、気配を殺して、彼女と同じベンチに腰掛ける。

 

「ん?」

「よお」

 

 声が震えないように気をつけながら、ロビンは顔を前に向けたまま飄々とした態度を装った。

 彼と同じベンチに座る少女、マリアンヌ・ピースラウンドはその様子に眉根を寄せる。

 

「……何をカッコつけてますの? 死ぬほど似合っていませんが」

「うるせーな殺すぞ!」

 

 ロビンの沸点はかなり低かった。

 深呼吸して自分を落ち着かせた後、改めて身体ごと向き直り、かつてのチームメイトに口を開く。

 

「元気してたか」

「ええ」

「そうか。なら、良かった」

 

 会話が途切れた。

 久しぶり過ぎて、かつてどんな会話をしていたのかがあやふやだ。

 というか会話していただろうか。怒鳴り合って取っ組み合いになってばかりだったような気がする。

 言葉を必死に探すロビンに対して、マリアンヌは首をかしげながらも自然に話を切り出した。

 

「アナタの名前は、ウチのクラスに来た留学生でも知っていましたわ。流石ですわね」

「……当然だ。俺は世界で一番スカイマギカが上手いんだぞ」

「はいはい」

 

 国内有数、どころではない。スカイマギカは大陸に共通したスポーツだ。

 それのスター選手となれば、ロビンの名は文字通りに、大陸中に轟いているに等しい。

 

「随分と……置いていかれてしまいましたわ。とはいえ、アナタはわたくしに匹敵する才能を持っていたので、当然かもしれませんが」

「置いていったのはお前だろ」

 

 ──ロビンはとっさに自分の口を覆った。緊張からか、意図しない言葉を放ってしまった。

 

「……ええ、そうかも、しれないですわ」

「…………ごめん。こんな恨み言を、言うつもりじゃ……いや、言っちまったのは、事実だ。ごめん」

「お気になさらず。アナタには怒る権利があります」

 

 かつて二人は、同じジュニアユースクラブに所属する選手だった。

 技量も体力もセンスも、同世代どころかコーチすら圧倒する、クラブの二枚看板だった。

 

 いつか悪役令嬢として追放されるために魔法の技術を磨いていたマリアンヌは、魔力操作の精度を上げる訓練としてスカイマギカに目を付けた。競技そのものにのめりこむつもりはなかった。

 だが──やってみて、端的に言えば、ドハマりした。

 

『おい馬鹿女ァ! お前さっきの突撃マジで何!? 勝手に突っ込むなって言ってんだろ!!』

『バカ女ァ────!?』

『そこじゃねえよ話聞け!』

『アナタも突っ込んでいましたが!?』

『俺のは有効なんだよ! 結果的に崩れたんだからよお相手がよお!』

『わたくしも相手崩してますがあああああ!?』

 

 競い合う相手がいたのも、マリアンヌがスカイマギカに一時的に傾倒する理由になった。

 魔法使いとしては、既に同年代に敵はいなかった彼女は、ロビンと切磋琢磨する時間にこそ、充実感を見いだしていた。

 

 ある日の練習試合だった。

 なんてことはない、互いの速度の計り違えか、集中が切れてしまったのか。

 マリアンヌとロビンは衝突事故を落とし、あわや墜落という事態を引き起こした。

 幸いにも二人は卓越した技量でリカバリーを利かせたが、珍しいことがあったものだと、チームメイトたちに心配された。

 マリアンヌはたまたまタイミングがずれた、と簡単に片づけていたが──ロビンは沈黙を守った。彼には、また別の理由が見えていた。

 

 その日以降、ロビンが競技に打ち込む態度は変わった。

 以前ほど軽口を叩かなくなったし、一人で残って動きの確認をすることが増えた。

 彼のプレーは見る見るうちに洗練されていき、元々視察に来ていたプロチームのスカウトマンすら驚愕させるレベルになった。

 けれど彼は、代わりに、笑顔をあまり浮かべなくなった。プレーごとに反省点を洗い出すのに必死になっていて、誰かと勝利を分かち合い、喜ぶことすらめっきりなくなった。

 

 マリアンヌは、気づいていた。

 恐らくこの変化は、自分のせいだ。具体的にどうしてなのかは分からずとも、彼は、自分がここにいるせいで、スカイマギカを楽しめなくなっていると。

 

 そこで、思ったのだ。

 自分がいるとロビンが楽しくなくなってしまうのなら。

 自分がこんなにもスカイマギカを楽しいと思えていた理由が曇ってしまうのなら。

 

 ──自分は、やらない方がいいなと。

 

 だからクラブをやめた。

 自分で驚いてしまうほどにマリアンヌはすぐに決断した。

 即座に、誰かが説得する暇もなくクラブをやめた。ロビンはお別れ会には来なかった。

 

 そして代償行為のように、御前試合にのめり込んだ。

 挑んで来る者すべての挑戦を受け入れた。

 やがて挑んで来る者がいなくなれば、格上と目される相手に片っ端から挑んだ。

 

 二百戦無敗。それはマリアンヌの、逃げの記録に過ぎない。

 御前試合は確かに競技である。しかし同時に死闘でもある。

 その塩梅は、空を駆ける熱を忘れたかったあの時のマリアンヌにとっては最適だった。

 

「……腕を上げたようですわね、ロビン」

 

 自分がスカイマギカを辞めた理由を再確認して、マリアンヌは首を横に振って、感傷をかき消した。

 マリアンヌの言葉に、ロビンは無言で顔を逸らす。

 

「よく集中できていたと思います。当然ではあるのですが、技量もさらに磨かれたようで……」

「当たり前だ。今の俺は、空に心を売った。空こそが俺の居場所だ」

「いい返事です。かつてのわたくしでもきっと、そのような返事は出来ないでしょう」

 

 振り向いたロビンの表情が、驚愕に染まった。

 驚くほどに、マリアンヌは優しい表情を浮かべていた。

 

「ねえ、ロビン」

「あんだよ」

「今は……今はちゃんと、楽しいですか?」

「楽しいとか楽しくないとかじゃねえ、空が俺の居場所になった。それが答えだ」

 

 らしい答えを聞いて、マリアンヌは微笑む。

 

「バカですね……アナタは、ずっと前から空の虜でしょうに」

「……さあ、どうだったかな」

 

 フン、と自嘲するようにロビンは口元をゆがめた。

 その時、スタジアムの方から、試合終了のブザーが鳴り響く。

 

「そろそろ決勝のカードが決まるころですか。恐らく中央校(ウチ)とそっちになるでしょうが、手加減なんてしないように」

「するわけねーだろ」

 

 マリアンヌはさっと立ち上がると、クーラーボックスを抱えて去っていく。

 

「では、ご健闘をお祈りしておきますわ」

「……どーも」

 

 彼女の背中をじっと見つめながら。

 ロビンは少しの間、ベンチから動かなかった。動けなかった。

 

(空の虜、か)

 

 先ほどのマリアンヌの言葉が、何度も頭の中に響く。

 

(……本当は、あいつがいるから。あいつと共に飛べるから、好きだったんだがな)

 

 やっとの思いでベンチから立ち上がると、頭を振って意識を切り替え、選手用のテントに戻る。

 既にボードの整備を終えた先輩たちが、心配そうにロビンを出迎えた。

 

「おお、戻ったかロビン。相手はやはり中央校だったぞ」

「珍しいな、すぐ戻ると思ったらなかなか戻ってこなくて……どうしたんだ?」

 

 チームメイトたちの質問に、ロビンはなんてことはないように口を開く。

 

「ちょっと、会ってたんですよ……初恋の相手に」

 

 その言葉に、チームメイトたちは目を見開いて数秒沈黙した。

 恐る恐ると言った様子で、主将が口を開く。

 

「ロビン、お前……惚れた腫れたの話なんて分かんないと思ってたぜ。誰に言い寄られてもなびくどころか、興味すら見せなかったじゃねえか。何人マネージャーがお前にフラれて辞めたと思ってんだ」

「ウチの女子共には、輝きが足りてないんです。自分以外の総てはゴミだって断言できるようなギラつきが」

「……お前の性癖終わってるよ」

「自覚はあります」

 

 心底不服そうにロビンは吐き捨て、自分のボードの整備を始めるのだった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 少しの時間を置いて始まった、対抗運動会初日最大の目玉──スカイマギカ決勝。

 空に中央校とイースト校の選手たちが並び、ボードから魔力を噴射して滞空している。

 

『さあ運動会初日も大詰め! スカイマギカ決勝は中央校VSイースト校の対戦カードとなりました!』

 

 アナウンスが響く中で。

 イースト校が誇る、国内最強クラスの選手、ロビン・スナイダーは目を見開き一点を凝視していた。

 

『なお中央校に関しまして、予選にて選手が一名負傷したため、リザーバーであった選手が代わりに出場しています!』

 

 ロビンは目が飛び出るほどに両眼を見開いて、()()()を──そう、緊急出場したわたくしを見ていた。

 

「なんで??」

「色々あったんです……」

 

 そもそもわたくしが補欠になっていたのすら初耳だしな。

 詳しく話すのはダルいが、要するには、生徒会長とかいう女狐にハメられた。

 

『それでは、試合開始です!!』

 

 開始のブザーがなると同時。

 ハッとしたロビンが、パスされたボールを抱えてボードを起動させる。

 噴射された魔力が空中に尾を残して──ぐっと彼の高度を下げた。

 

 あいつ、わたくしを迂回して進もうとしてやがる!

 

「かかってきなさいよコラァッ!」

「げぇッ──!」

 

 こちらから急制動をかけて上空から奇襲、一瞬の交錯。

 彼が抱えていたボールを奪い取った。スカイマギカの感覚は失われているが、要するには空中戦だ! そっちの経験は嫌というほど積んでるんだよ!

 

『な……!? マリアンヌ選手、ロビン選手から一瞬でボールを奪い取りませんでした!? 見間違い!?』

 

 幸いだったのは。

 確かに技量も上がったし体格も変わったが。

 微細な癖は、ジュニアユースで一緒に飛んでいたころと変わっていない。

 つまりはだよ! 今お前について最も詳しい選手って、このわたくしなんだよねえ!

 

「この頭スカイマギカ男が! 身の程を知って黙って地上を這ってなさい!」

「はああああああああああああ!? 頭わるわる女にしちゃ頑張った言葉を並べてくれるじゃねえか! ぶっ飛ばされてえのか!? ぶっ飛ばす!!」

「頭わるわる女ァ!? ぶっ飛ばしますわよ!? ぶっ飛ばします!!」

 

 他の選手たちがプレーしながらも、突然大声を張り上げたわたくしと、今までのクールさを捨てて罵倒合戦に応じ始めたロビンをガン見する。

 知るか! あったまきた!

 今度こそ地面に叩き落としてお前に分からせてやる! スカイマギカにおいてもわたくしの方が最強だってなァ!!

 

 

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