TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA   作:佐遊樹

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PART16 予兆-Second Day-

 ──自分が選ばれた存在だと思っていたのは、何時ごろまでだっただろうか。

 

 シュテルトライン王国の貴族としては、魔法の才能は比較的上の方。でも決して上澄みではない。

 中央校への入学試験は、自分でも納得できるほどに資質も実力も足りず不合格。代わりにイースト校に入学した。そちらでは成績も実力も上位に食い込み、少しだけ気分が良かった。

 

 一年目の対抗運動会はヴァーサスで出場。予選は自分の理想通りの展開を通し続けて突破。この時点で悪くはない成績だった。

 だが予選を終えた本戦一回戦で、中央校の同学年の生徒に一方的に叩きのめされた。

 

 こんなものなのだろう、と納得した。頭打ちだった。

 幸いにも器量はそれなりに良かったし、家柄だってそこそこ。嫁の貰い手に困ることはないだろう。学校を卒業したら、しばらく実家に戻って家業を手伝い、どこかの貴族の次男か三男辺りと結婚する──漠然としたレールを感じていた。窮屈だとは思わないようにしていた。感じさえしなければ痛みはなかったことにできるから。

 

 それからまた一年が経ち、たいして実力が伸びていないことなど分かり切っているのに、前年度の成績を加味してまたヴァーサスの選手にさせられた。

 限界なんて自分も他人も分かっている。ただ穴埋めに使われている。上位入賞なんて期待されてはいない。そんなことは分かっていた。

 

 そのはずだったのに。

 

 

「まだ、上があったんだ……!」

 

 

 自分の口から転がり出た声は、震えていた。

 試合終了のブザーが鳴り響く中、身体はステージ上で膝をついている。

 当然、結果は負けだった。でも今まで得てきたすべての勝利をひっくるめても、今回の敗北ほどの価値はないと思った。

 

「私に、まだ、上があったんだ……!」

 

 あらゆる手を打っても上回られる。

 無我夢中で、必死に戦った。その半ばだった、明らかに自分は、瞬間瞬間ごとに、今までの限界を超え続けていた。

 魔法の撃ち方を初めて習ったような心地さえあった。自分でそうなのだろうと思っていた上限なんて存在していなくて、どこまででも上がっていけるような気さえした。

 

 けれど終わりはあっけなく訪れる。

 

 ついさっき自分を正面から打ちのめし、最後の最後に死力を尽くして放った一撃も腕の一振りで打ち砕いてみせた令嬢。

 痺れているらしき腕をひらひらと振りながら、彼女は不思議そうに首をかしげる。

 

「上? そこが?」

「……ッ!!」

「二年生ということは来年もまたお会いするでしょう。待ってますわよ、本当の上で」

 

 それだけ言って、彼女は颯爽とステージを去っていく。

 観客やアナウンスがその勝利を褒めたたえているのなど聞こえないかのように。

 

(──そうか。あの子はまだ上を見て、目指し続けているんだ)

 

 震える膝に力を込めて、ゆっくりと立ち上がる。

 彼女の背中は、遠いけれど、はっきりと輝いて見えた。

 

 

(……私も! 私も、あの場所に……ッ!!)

 

 

 少女は聞いた。

 かつて抱いていた情熱が燃え始める音を、確かに聞いた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 あ、あ、あっっっっっぶねえ……!

 最大出力自体は大したことはなかったものの、試合中に極端に動きが良くなったせいで、緩急でハメ殺されるところだった……! 冗談抜きにマジで危ない試合だった……!

 

 

 今の試合、限界突破みたいなことされたんですがもしかしてわたくしのせいですか……?

 

 

red moon 明らかにお前のせいなんだよな、反省してほしい

苦行むり お嬢、敵味方問わずバフかけまくるの何?

無敵 覚醒スプリンクラー

 

 

 

 ◇

 

 

 

 対抗運動会2日目。

 

 わたくしは自分のヴァーサスの試合を終えて本戦ブロックの勝ち抜け……つまり決勝戦への進出を決めて、あとは観戦するだけになっていた。

 

 ちなみに直前のプログラムであるファストボール(かけっこ)に出場したわたくしだが、普通に一着を取った。

 詠唱が三節まで許されていたので、一緒に走る人間全員ボコボコにしてから走ろうかと思ったけどユイさんに禁止されたので普通に走って普通に勝った。

 

「今日の午前のレリミッツはエグかったなあ」

 

 当然のように隣の観戦席に座っているのは、ヴァーサスで本戦ブロックを圧倒的な強さで勝ち上がっているクライスだ。

 

「ユートの指揮が光りましたわね。正直あれは敵チームが可哀想でしたわ」

「これで中央校が、スカイマギカとレリミッツを優勝したわけや。細かい方でも、ナイトフォースやらファストボールやらでポイント稼がれとるし。もう俺っちたちの面目丸つぶれやで」

 

 ヘラヘラ笑いながらよく言う。心の底ではどうでもいいと思ってるんだろう。

 

「で、ちょっと聞きたいんやけど」

「何ですか?」

「君の婚約者、どしたん?」

 

 クライスが指さした先、闘技場中央のステージ。

 そこで行われていたのはわたくしとは別ブロックのヴァーサスの試合で、今しがた試合を終わらせたロイの姿があった。

 

「ここまで5試合やって全勝、ここまではええけど、平均終了タイムが5秒切っとるのおかしいやろ。昨日と全然違うねんけど」

「あれが本来の実力……とまでは言いませんが。まあ、昨日は調子悪すぎですので、こんなものでしょう」

 

 今日のロイはのびのびと戦えているな、という印象を受ける。

 魔力伝導に隙が無いし、収束・拡散どちらもスムーズに行っていた。並の魔法使いでは同じ速度感で戦うことすら許されないだろう。

 

「ハー……俺っちとぶつかるの、あの子になりそうやなあ」

 

 そういえばロイが順当に勝ち進んでいった場合、準決勝でこの男と対戦するのか。

 勝った方が決勝でわたくしと戦うことになる。

 

「前の練習試合の時に見た感じのままやったら……まあ、ちょいと捻ったことすれば勝てそうやったけどなあ」

「今はそうでもなさそうですか」

「アレはガチンコやないと無理やね」

 

 クライスはあっさりと断言した。

 

「……つまり、小手先の技を置くぐらいなら、そのリソースを正面衝突に割いた方が結果につながりやすいと?」

「お、流石は御前試合二百戦無敗の才女。こういう説明は一瞬やね」

 

 お互いに何をやるか分からない状態は怖いのだが、ある意味では、どちらかが手持ちのカードを押し切って通せば勝てるとも言える。

 問題は互いのカードが割れている状態で、いつそのカードを切るのか、そのカードは本当はどれぐらい強いのか、そういう段階に至ってからの領域だ。

 トップ層との戦いでビックリドッキリメカは通用しない。この領域に至ってからが本番と言ってもいいレベル。

 

「君の婚約者って考えた時に、若干の格落ちは感じてたんやけど……今日の戦いぶりを見ると得心がいったわ。こら普通の選手やったらなーんもできんままヤラれてまう」

「ウチのロイをお褒めいただきありがとうございます。ただ感覚的には、それでもアナタを相手取ると分が悪そうなんですよね」

 

 腕を組んで唸っていた、その時だった。

 

「それはどうかな」

 

 わたくしもクライスも、ちゃんと気づいていた。

 後ろの席にこそこそと座って、さもいつの間にかいましたよみたいな顔をしている男、即ち『世紀のエース』ことロビン・スナイダーである。

 

「また似合わないカッコ付け方をして……」

「うっせえな」

 

 理想通りの登場ができて満足したのか、ロビンは客席の背もたれを長い脚でひょいと乗り越えて、クライスの隣に座った。

 

「というか、アナタがロイをそこまで評価するのですか? 少し意外な気がしますが……」

 

 先ほどの発言について問うと、ロビンは唇を忌々しそうに歪めた。

 

「分かるさ、見ただけで分かる……()()()()()()()()()。分が悪い? 本調子じゃない? そんな甘っちょろいことを言って速度を緩めるようには見えないな」

「そんなことわたくしの方が分かっていますが?」

「いいや分かってない。お前は、お前を追う人間の執念を少しも理解できていない」

 

 凄い低い声で言われて、思わず押し黙った。

 空気が固くなったのを察してから、クライスが首を横に振って声を上げる。

 

「あーやだやだ。歴史の教科書に名前が載るかもしれん天才サマたちに挟まれてもーた」

 

 気遣いもできるなんて、ウエスト校は優秀だなあ。

 

「良かったですわね。裏返ってアナタも天才になれるかもしれませんわよ」

「今のは流石にライン越えやない?」

「茶化すにしても限度があるだろ……」

 

 他愛ない雑談をしながら、三人でステージ上の試合を見守る。

 ただ、試合に集中してると思いきや、クライスは時々客席を、特に貴族院の連中が居座っている来賓席に視線を送っていた。

 

「どなたか、アナタの観戦に来ている人でも?」

「おとんが見には来てるらしいけどなあ……家柄が家柄で、敵が多い人なんや」

「アナタも恨まれてるのですか?」

「結構な」

 

 はあ、と嘆息してクライスが肩を落とす。

 

「俺っちやっぱ向いてへんわあ」

「え、何がです?」

「まーだ分かってないねん。自分のために戦ってんだか、誰かのために戦ってんだか……まあなんちゅーか、泥臭いのと綺麗なの、どっちがええんかなあって感じで」

 

 何も考えてない馬鹿だとは思っていなかったが、彼にもいろいろと事情はあるようだ。

 というかその辺に答えが出ないまま準決勝進出決めてるの、どう考えてもおかしいけどね。

 

「フン。そんな下らない悩みでぐるぐるしているから貴様は凡人なんだ」

 

 わたくしが呆れていると、クライスを挟んだ向こう側に座るロビンが、ステージを見ながらぼそりと呟いた。

 

「君あんな試合やっといてまだクールキャラで行くつもりなんやね」

「……一応言っておくが、確かにこの振る舞いは意識して身に着けている。しかしもう身についてしまっていて、その、アレだ」

「ああ、はいはい。この子と戦ってる時は素が出るっちゅーか、昔に戻ってまうってことか」

 

 で、どういうこと? とクライスが言葉の続きを促す。

 

「どっちもだ」

「でしょうね、同意見ですわ」

 

 わたくしとロビンの言葉に、クライスは黙り込んだ。

 

「泥臭く、そして美しく勝ちなさい」

「その通りだ。こいつから聞いたが、泥の中にしか咲かない華というものがあるらしい。つまり、そういうことだ」

「ええ、それで万事解決ですわ」

 

 天才二人からのありがたいアドバイスを受けて。

 クライスはしばらく口を閉ざした後、ふっと静かに笑みを浮かべる。

 

「……天才サマたちの言葉、ムズいわあ」

 

 言ってる割にはちょっと吹っ切れたみたいだけどな。

 ただ、それはそれとして。

 

「…………」

「ん? どしたん?」

 

 今の話、特に家が恨みを買っているというのを聞いて、少し気になったことがある。

 運動靴のかかとで地面を叩き、そこを起点としてわたくしの宇宙を簡易的に生成、半径1メートル程度に広げる。ちょうどクライスを包括する間合いだ。

 

「むう……」

「ん? え? 何やこれ」

 

 彼の中を探っていくと、やはり常人とは違う。悪い意味でだ。

 魔力の流れを阻害するように、あちこちに断絶が感じられる。だがその配置を総合的に見ると、わたくしが抱いていた違和感の正体がうっすらと分かって来た。

 ──先天的な不適合、と片づけるには、阻害のされ方が効率的過ぎる。端的に言えば人為的な配置に見えるのだ。

 

「何かやってんのか……?」

「なんかぞわぞわするんやけど……え、何も感じんの」

「こっちはな。それより黙ってるそこの女、アレだろ原因」

「集中してますのでちょっと黙ってくださいます」

 

 だが本質的なところにはまだ踏み込めていない。それぞれのバグが指定した場所で発生するように、妨害システムの設計図が組み込まれているはずなのだ。

 探っていき、より深い場所へと潜れば……あった。存在の中核一歩手前だ。ここに仕込めば、確かに取り除きようはないし、そもそも感知もされないだろう。

 

「やらんとは思うけど、俺っちが次の試合で勝てないように何か仕込んだりとかしてるわけやないよな?」

「クライス」

 

 問いに答えることなく。

 わたくしはクライスの左胸に手を当てた。

 

「えっ何してんのこれ。勝利のおまじない?」

「なんでアナタに勝利のおまじないをしなきゃいけないんですか……」

 

 敵に塩を送るって意味なら、そうかもしれねえけどさ。

 わたくしは手のひらを介して、クライスの体内へと魔力を送り込む。

 強度自体はなかった、あんまり固すぎても場所とミスマッチなんだろうな。

 座標は割れている。詠唱をするまでもない。送り込んだ魔力が、彼に埋め込まれていた呪詛を破壊した。

 

「どうです?」

「え? あ、れ────」

 

 自分の身体を見て、手を握ったり開いたりして、クライスが言葉を失う。

 生まれて初めて魔力が循環し始めたわけだ。そりゃ想像を絶して気持ちいいだろうな。

 

「先天性と言っていましたが、これ、呪詛ですわね」

「……こいつの肉体的魔力不適合のことか?」

「ここまで存在の中核、アモ……前に会ったことのある悪魔が言う『魂』のレイヤーに近いところに打ち込まれていては、先天性と誤認するのも仕方ありません。恐らく出生前、母親の胎内にいるころに仕掛けられた気がしますわね」

「悪魔と会ったことあるって、サラッと凄いこと言うじゃんお前」

 

 ちょっと引き笑いを見せた後、しかし、とロビンは納得の様子で頷く。

 

「詳しい事情は知らんが、確かに先ほど、恨みをよくかっていたと言っていたな。ならばあり得ない話でもないだろう」

 

 あ、クールキャラの方のロビンだ。

 本当に似合わねえなと彼を半眼になって見ていると、隣のクライスが勢いよく立ち上がり、わたくしをじっと見つめる。

 

「~~~~~~っ!!」

 

 目に涙を浮かべ、それから彼は深々と頭を下げた。

 

「ほんま……ほんまに、ありがとう……!」

「これぐらいお安い御用です。それと、感激している暇はありませんわよ。今すぐにでも感覚を再調整しておかないと……ほら、あの男に瞬殺されて屈辱のデビュー戦になりますわ」

 

 ちょうどステージへ顔を向ければ、またもやロイが対戦相手を三秒足らずで切って捨て、ステージ上で喝采を浴びているところだった。

 いやいや本当に調子いいなお前! え、聞かされてないだけで、もしかして暴走問題クリアしてたりする? でも出力総量は前と比べてはるかに小さいし、何なんだお前。

 

「……デビュー戦、かあ」

「そうでしょう? クライス・ドルモンドの真価は、今日初めて問われるのですから」

 

 頬杖をつきながら言うと、クライスは涙を手で拭った後、気持ちのいい笑みを浮かべ、深く頷いた。

 

「じゃ、見守っといてくれや。君の婚約者を俺っちがブチのめすところ」

「それは勝ってから言いなさい」

 

 笑顔で返すと、彼は頷き、颯爽と観客席から去っていく。

 その背中を見ながら、ロビンが空いた隣の席に詰めて、顔を寄せてきた。

 

「おい。ところであの男は結局誰だったんだ?」

「ウエスト校最強のエースですわ」

「……は? 天才(おれたち)側じゃね?」

「わたくしもそう思います。自覚のない天才って一番タチ悪いですわよね……」

 

 

 

 ◇

 

 

 ヴァーサス本戦準決勝。

 既に反対側のブロックを勝ち抜いたマリアンヌ・ピースラウンドの決勝進出は決定しており、あとはその対戦相手を決めるだけとなっている。

 

『さアアアアア! この時がやってまいりました、ヴァーサス準決勝Bブロック! 勝つのは新進気鋭のルーキー『強襲の貴公子』ことロイ・ミリオンアークか! それとも本年度優勝候補と名高きウエスト校のトップ・オブ・トップことクライス・ドルモンドか!』

 

 アナウンスが響き、会場の盛り上がりが最高潮に達する中。

 対照的にステージの上では、身が凍えてしまうのではないかと錯覚するほど冷たく、静かな空間が広がっていた。

 

「君とこういう形でやり合うことになるとは、あんまし考えてへんかったけど……でもよく考えてみれば当然の結果やったかもね」

 

 既にトンファーを両腕に装備したクライスが、薄く笑みを浮かべてロイへと話しかける。

 

「僕としては、こうなってもらわなければ困りました。貴方は、この手で倒さなければならないと思っていましたので」

「ふーん……」

 

 両者が規定ラインに佇み、試合開始のランプが順番に光をともす。

 

「多分、なんやけど」

「?」

「俺っちのことを通過点だと思ってるやろ? 心意気としては正しいんやけど、今はアカンよ」

 

 クライスがそう告げると同時だった。

 

 

戦術魔法行使を許可します(E N G A G E F R E E)

 

 

 試合終了タイムが5秒を切っているロイにとって、先手を取ることは当然の選択肢だった。

 事前に詠唱していた二節分の魔法が発動し、彼の剣に雷撃を纏わせる。

 

(え?)

 

 身体が勝手に動いた。

 踏み込み、叩き切りにいくことしか考えていなかったのに、ロイの身体は思考を無視すると、防衛本能に従って防御体勢を取っていた。

 直後、衝撃。ロイの身体がステージを転がった。あわやリングアウトというところで、無意識下で剣をステージに突き立てギリギリのところに留まる。

 

「へえ……防ぐんか。でもせっかくや、一瞬で終わるのもつまらんと思ってたしちょうどええか」

 

 会場が騒然としている。

 だがその驚きは明らかに、ウエスト校の面々が見守る場所からのものが大きかった。

 

『なん、で……!?』

『クライスさん、まさか今……!?』

 

 驚愕に揺れる会場の中で、ロイもまた対戦相手の異変に気付く。

 

「な……ッ!?」

 

 顔を上げたロイは自分の目を疑った。

 練習試合ではトンファ―にのみ展開されていた炎属性魔法。

 それが今は──()()()()()()()()()()()()()()()

 

「見たら分かるやろ? そういうことや」

 

 先天性肉体的魔力不適合。

 実力主義のウエスト校でエースを張るクライスが、中央校に入れなかった唯一にして最大の理由はそれだった。

 しかし、今広がっているこの光景は何だ。

 

「な、何故……!? 今日の別の試合では、まだ伏せていたとでも!?」

「いんや、ほんまについさっき治ったんや。微熱かっちゅー話やな、ハハッ」

 

 言葉は軽くとも、彼の様子は普段と違った。

 声にも表情にも身体捌きにも、今までにない本気の熱が込められていた。

 クライスは唇をつり上げ、自らの新生を祝福するかのように、不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「──今日の俺っち、ちょっと最高潮やけど堪忍してや」

 

 

 呪いから解き放たれた男の焔が、天を衝かんと猛り狂った。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「……おい。これお前の婚約者負けたらお前のせいじゃね」

 

 最初の接触を見て、隣の席に座るロビンが頬を引きつらせながらつぶやいた。

 

「負けませんわよ」

「はあ?」

「ロイは負けません。この程度の試練、あいつにとっては何でもないでしょう」

「……はいはい、あーはいはい、ソデスネー」

 

 

 

 ……で、この覚醒ってわたくしのせいですかね?

 

 

 

日本代表 当たり前だろうがバーカ!!バ~~~~~カ!!学べよ!!

火星 うお……フルスペック発動クライス……お前設定資料集でしか見れないと思ってたが……

第三の性別 クライス村めっちゃくちゃ焼かれてて笑う

トンボハンター 神ったー落ちてて草

鷲アンチ おかげで供給がやばいから感謝したいところだけど、この女に感謝だけはしたくない深刻なバグ

つっきー 分かるってばよ……

 

 

 

 














書籍版の発売が今月末となっております。
専門店様でつく特典の情報などは下のツイートのツリーなどで触れていきますので、各種情報はこちらでご確認ください。
https://twitter.com/syosetsuwokake/status/1546847958292783105

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